【上田明也の探偵倶楽部38~遠い日の記憶~】
「先生、私あとどれくらい保ちますかね?」
「長くてあと十年、短ければ一年内でしょうね。
上田さんがこの先成長すればするほど、貴方の性能は引き出されます。
『赤い部屋』の枠を越えるレベルまで。
そしてその先に待っているのは貴方の消滅です。」
「あはは、ですよねー。
そもそも私みたいな普通の都市伝説が、明也さんの傍に居ること自体が無理なんですよ。」
「彼が最初から契約している都市伝説も本来中々格の高い都市伝説なのですが、
彼の成長する容量と都市伝説への適正の高さでむしろ飲み込まれかけています。
最初の頃こそ彼の方が自我を奪われ欠けて人を殺すことを楽しむようになってましたけど。
契約する都市伝説に生き方を歪められることこそ有れど、
契約する都市伝説の在り方を歪めるほどの強烈な自我なんて、
都市伝説を飲み込むなんて現象、
彼を除いて今まで二人しか見たことがない。」
「長くてあと十年、短ければ一年内でしょうね。
上田さんがこの先成長すればするほど、貴方の性能は引き出されます。
『赤い部屋』の枠を越えるレベルまで。
そしてその先に待っているのは貴方の消滅です。」
「あはは、ですよねー。
そもそも私みたいな普通の都市伝説が、明也さんの傍に居ること自体が無理なんですよ。」
「彼が最初から契約している都市伝説も本来中々格の高い都市伝説なのですが、
彼の成長する容量と都市伝説への適正の高さでむしろ飲み込まれかけています。
最初の頃こそ彼の方が自我を奪われ欠けて人を殺すことを楽しむようになってましたけど。
契約する都市伝説に生き方を歪められることこそ有れど、
契約する都市伝説の在り方を歪めるほどの強烈な自我なんて、
都市伝説を飲み込むなんて現象、
彼を除いて今まで二人しか見たことがない。」
真っ赤な部屋の中。
サンジェルマンは部屋の主である『茜』と呼ばれる都市伝説の身体を診察していた。
彼女は赤い部屋という都市伝説である。
彼の契約者と友人であるサンジェルマンは時々彼女の健康を調査していた。
サンジェルマンは部屋の主である『茜』と呼ばれる都市伝説の身体を診察していた。
彼女は赤い部屋という都市伝説である。
彼の契約者と友人であるサンジェルマンは時々彼女の健康を調査していた。
「先生、私ね。」
「どうしたんです?」
「明也さんに『面白いもの見せてやるからついてこい』って言われたんですよ。
それで彼と一緒に色々してみることを決めました。
彼を通してみる外の世界は素敵でした。
彼は私に黙って好き勝手していますけど、それでも私を愛しています。
不器用で、駄目な人で、自分勝手で、子供みたいだけど、何故か自信満々で。
格好良く決めるところは決めていったりもしちゃって。
でも格好付けようとするとどこか滑っていて。
それを自分でもあんまり解ってなかったりして。
…………好きなんですよねえ、そんな彼のこと。
少しでも一緒に居たい反面、彼が成長していくのも期待してて。」
「契約を解除すれば長生きできますよ?」
「あはっ、契約で押し上げられているだけで彼と契約しなきゃ私なんて三流都市伝説ですよ?
何の役にも立たないじゃないですか。
それならあの人の役に立って死にたいです。」
「どうしたんです?」
「明也さんに『面白いもの見せてやるからついてこい』って言われたんですよ。
それで彼と一緒に色々してみることを決めました。
彼を通してみる外の世界は素敵でした。
彼は私に黙って好き勝手していますけど、それでも私を愛しています。
不器用で、駄目な人で、自分勝手で、子供みたいだけど、何故か自信満々で。
格好良く決めるところは決めていったりもしちゃって。
でも格好付けようとするとどこか滑っていて。
それを自分でもあんまり解ってなかったりして。
…………好きなんですよねえ、そんな彼のこと。
少しでも一緒に居たい反面、彼が成長していくのも期待してて。」
「契約を解除すれば長生きできますよ?」
「あはっ、契約で押し上げられているだけで彼と契約しなきゃ私なんて三流都市伝説ですよ?
何の役にも立たないじゃないですか。
それならあの人の役に立って死にたいです。」
その言葉を聞いてサンジェルマンは何かを思い出したらしい。
彼は深くため息を吐いてからぽつぽつと昔の話を喋り始めた。
彼は深くため息を吐いてからぽつぽつと昔の話を喋り始めた。
「そうは言いますけどね、好きな女が死ぬのって辛いんですよ?
私なんて人間だった頃はとある超古代文明で科学者やってたんですけどね。
その頃の恋人が私の実験の失敗のせいで死んでしまいましてね。
……ていうか、私の故郷が滅びましてね。
いまじゃあ海の底だ。
都市伝説化した私は死ねない身体と彼女の思い出だけを引きずって今も生きている。
彼女が居ればと思わなかった時はないですよ。
今も彼女とまた出会う為だけに生き続けている。
彼女は上田さんのような特異体質の持ち主でしてね。
そのせいで周囲の人間から避けられていました。
私も最初は医者と患者という立場で接していたのですが……。」
私なんて人間だった頃はとある超古代文明で科学者やってたんですけどね。
その頃の恋人が私の実験の失敗のせいで死んでしまいましてね。
……ていうか、私の故郷が滅びましてね。
いまじゃあ海の底だ。
都市伝説化した私は死ねない身体と彼女の思い出だけを引きずって今も生きている。
彼女が居ればと思わなかった時はないですよ。
今も彼女とまた出会う為だけに生き続けている。
彼女は上田さんのような特異体質の持ち主でしてね。
そのせいで周囲の人間から避けられていました。
私も最初は医者と患者という立場で接していたのですが……。」
サンジェルマンが目頭を押さえてうつむき始める。
どうやら泣いているようだった。
どうやら泣いているようだった。
「申し訳ありません。
少し昔のことを思い出してしまいました。
彼女がね、言うんですよ。
私みたいな人でも幸せになれる世界にして欲しいって。
普通の人も普通じゃない人も皆幸せになれる世界にして欲しいって。
その為なら私は悪魔に魂を売っても良かった。
でも私が魂を売るには悪魔はあまりに無能すぎた!
悪魔如きにできることなど、私の科学力でどうとでもできる。」
少し昔のことを思い出してしまいました。
彼女がね、言うんですよ。
私みたいな人でも幸せになれる世界にして欲しいって。
普通の人も普通じゃない人も皆幸せになれる世界にして欲しいって。
その為なら私は悪魔に魂を売っても良かった。
でも私が魂を売るには悪魔はあまりに無能すぎた!
悪魔如きにできることなど、私の科学力でどうとでもできる。」
「先生も色々苦労なさっているようですね……。」
「ああすいません、妙な話を聞かせてしまって。
でもこれだけは解っていて欲しい。
本当に好きなら傍に居てくれるだけで幸せなんですよ。
あの頃の私は彼女一人の為に世界でも敵に回せる気がして、毎日が幸せだった。
役に立たないからなんだって言うんです?
彼の傍に居る、それだけで意味がある。
彼がこれ以上曲がらぬように歪まぬように傍に居て支える誰か。
何も出来なくてもその誰かで居ることは出来る。
私にはそんな人もう居ない。」
「は、はぁ……。」
「だから、彼に力を貸せなくても生きてください。
絶対に生きて彼の傍に居てください。
彼を受け入れて、彼を許して、彼を愛し続けてください。
そうしないと彼は不幸になる。」
「ああすいません、妙な話を聞かせてしまって。
でもこれだけは解っていて欲しい。
本当に好きなら傍に居てくれるだけで幸せなんですよ。
あの頃の私は彼女一人の為に世界でも敵に回せる気がして、毎日が幸せだった。
役に立たないからなんだって言うんです?
彼の傍に居る、それだけで意味がある。
彼がこれ以上曲がらぬように歪まぬように傍に居て支える誰か。
何も出来なくてもその誰かで居ることは出来る。
私にはそんな人もう居ない。」
「は、はぁ……。」
「だから、彼に力を貸せなくても生きてください。
絶対に生きて彼の傍に居てください。
彼を受け入れて、彼を許して、彼を愛し続けてください。
そうしないと彼は不幸になる。」
それならば
それならばもう傍にそんな人はいないと言うこのサンジェルマン伯爵は
どこまで曲がって歪んでしまったのだろうか
どれだけ不幸になって成り果てようとしているのだろうか
赤い部屋、茜と呼ばれた彼女は素直に疑問だった。
それならばもう傍にそんな人はいないと言うこのサンジェルマン伯爵は
どこまで曲がって歪んでしまったのだろうか
どれだけ不幸になって成り果てようとしているのだろうか
赤い部屋、茜と呼ばれた彼女は素直に疑問だった。
【上田明也の探偵倶楽部38~遠い日の記憶~fin】