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連載 - ハーメルンの笛吹き-81

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【上田明也の探偵倶楽部41~サンジェルマンの×××~】

『やぁ、こんにちわ。私の名前はフェリシア、神様の恵みとかいう意味だそうだ。
 でも名前に意味なんて無いよね、下らない。
 君の名前はなんて言うんだい?』
「……フェリックス、フェリックス・フランクリン。」
『これは面白い、偶然とはいえ似たような名前の持ち主に会えて嬉しいよ。
 でも君も結局匙を投げるんだろう?期待してるから精々頑張ってくれ。』
「今日は貴方の特異体質について診察するように所長に言われたのですが……。」
『ああー、それなら無駄無駄。
 だってもう大概のことはやったからねえ。
 今更私について研究してもなんの成果も出ないと思うよ。』
「結果が出るまで帰ってくるな、と言われてまして……。」
『ああ、そりゃあアンラッキーだ。
 君は体よく左遷されちゃったんだね、まあ左遷先ですらここなんだから、能力はあったんだろうね。
 なにしちゃったの?
 上司でもぶん殴った?
 面白そうだから聞かせてよ、フェリックス君。』




私はとある研究機関に勤める研究員だった。
理不尽に研究を邪魔されたことで頭に血が上って上司を殴り飛ばしたところ、
上司の親戚の貴族様の逆鱗に触れたらしくとある王立の病院に飛ばされてしまった。
そう、全ては彼女の言うとおりだったのだ。
私の名前はフェリックス、この国では魔法使いと呼ばれる人間の一人である。
魔法といっても大した物ではない。
人々の魔法は実在するという信仰から生まれるエネルギーを適切に管理して本当に奇跡を起こしているだけなのだから。
人間が【本当に存在する】と認識することにより生まれるエネルギーを魔法として扱い、
この国……、否、この文明はそこそこ平和にそこそこ豊かに発達していたのだ。

「いや上司ぶん殴ったらそれを機会に俺を恨んでる奴らが結束して……、
 そうだなあ、まあ左遷ですね。」
『あはは、そんなかしこまらなくて良いよ。
 私だって一応貴方と同じくらいの年頃なんだからさ。
 お父様も研究のお仕事なさってたんでしょう?』
「まあ、そうです。ジャンルは違いますけど。」
『私は文系だから理系でひとくくりにしちゃうけどね。』

……あんまりだ。

『そんな「……あんまりだ。」みたいな顔しないでよー。
 私も意外と繊細だから傷ついちゃうなあー。』

口をふくらませて彼女はすねてみせる。不思議と可愛らしかった。
そうだ、思えばこの時から私の長い探求は始まっていたのかもしれない。






「……とりあえず最低限事務的な手続きはとらせて貰いますね。
 貴方はフェリシア・アトランティス。
 女性、十九才、現在の科学で説明不可能な特異体質の検査の為に入院中。
 特異体質について貴方から説明して貰えますか?」
『私の特異体質は【吐いた嘘が五分五分くらいで現実になっちゃうこと】だね。』
「へ?」
『嘘だよ。そんなどっかの猫型ロボットの秘密道具みたいなものなんて有る訳無いだろ。』
「なんですかその猫型ロボットって。」
『知らないのかい、ドラえもんだよドラえもん。』
「まったく知りません。」
『まったくもう、これだから困るぜ。』
「良いから貴方の特異体質を言ってください。」
『書いてあるだろう、【夢と現実の区別がついていない痛い子です】ってさ。』
「書いてませんね、【説明の付かない予知能力を所持】としか書いてません。」
『だからそれ予知じゃないんだってばさ。胡蝶の夢って知ってるかな?』
「知りません。」
『ったくもう、だから他人と話すのは面倒なんだ。
 こっちの常識がてんで通じないんだから。』
「貴方の常識は我々の非常識なのではないでしょうか?」
『主体的真理の追究こそが人間存在にとって唯一の幸福追求である。
 と言った人が居るんだがそれもまだ未来の話か。』
「…………?」

最初は本当に何を言っているのか解らなかった。
しかし解らないと言うことは嫌いだったから解るまで彼女の元に通い詰めた。
その時は愛情とか友情とかそう言う感情を別に私は彼女のことが気になっていた。




彼女の所に行くようになってから数週間。
彼女の予知能力の程度を検査する為にカードゲームをやっていた時だった。
それにしてもこのゲームが後に今で言うところの古代エジプトで流行るとは思ってなかった。

『それにしてもなんか知らないけどやたら私の所に通ってくるねえ。
 もしかして私に恋しちゃった系かな?』
「……別にそういうわけじゃないさ。」
『別に良いよ、口では言えないあーんなことやこーんなことをしても黙っていてあげる。』
「―――――マジで!?」
『うーそ。』
「な、なんだと……。純真無垢な青少年を騙しやがって……。」
『おー、そんな顔できるんだね。いつも仏頂面だったのに。口元があがってるもん。』
「え?」

言われて見ればその時の私は笑っていた気がする。

『良いよ、その恥ずかしそうに微笑んだ顔が一番素敵だ。』
「素敵だと言われても困るなあ。」
『解った解った、じゃあ少しだけ君を喜ばせてあげよう。
 私の体質について気付いたことを少しだけ話してあげようじゃないか。』
「え、良いの!?」





『じゃあ説明してあげようか。私は自分のこの体質を【作者視点】と呼んでいる。
 物語とかの地の文ってあるじゃない?
 それみたいな感じなんだよねー、予知してるんじゃなくて私が書いているイメージ?
 だから私が○○は××である、って思うとそういうことになる。
 でもそれを決めるのは私の意志なんだけど私の意志じゃないっていうかー。』

まったく訳がわからない。
予想外だ。
もっと合理的な答えが返ってくると思ってたのに。
そんな訳のわからないものがこの世にあっては溜まらない。

『一人称小説ってあるじゃん?』
「あるね。」
『三人称小説ってあるじゃん?』
「まあそう呼ぶのか知らないけどあるね。」
『下手な人が書いてそれが混じったような文章ってあるじゃん?』
「……あるの?」
『好きでも文章書くのが下手な人は居るんだよ、私とか。
 温かい目で見守ってください。』
「見たこと無いから何とも言えないなあ。」
『じゃあ今度見せてあげる、とにかくまあ大体そんな感じ。』
「なるほどねえ……。」
『じゃあさっき言っていたエッチなこともしてあげよう。』
「やった!」
『勿論、嘘だけど。今の私の体質の説明も含めて。』


そこで夢は途切れた。


どうやら自分は眠っていたらしい。
あれは夢だったのか。
意識を取り戻した私はいつも通りの「組織」の図書館に居た。

「…………夢ですか。
 随分昔の夢を見ていたものです。」

あれから月日は流れたのに、人間の馬鹿さ加減は変わっていない。
あれから月日は流れたのに、彼女の夢は未だ叶っていない。
誰よりも邪悪たるが故に誰よりも善良だった彼女は人々の幸せを願っていた。
本当の意味で“誰もが”幸せになれる社会を本気で夢見てた。

『君は頭良いんだからそれくらいなんとかしたまえよ。
 ……嘘嘘、君みたいな馬鹿野郎もう二度と見られないと思ってるよ。
 私はもうとっくにそんなこと諦めてるから。』

これだけ生きるとそれが無理なことも解ってくる。
それでも彼女を幸せにするのはあの時の自分でもで来たんじゃないだろうか。
何万何億回と繰り返してきた自問自答を今晩もまた私は一人で続けるのだ。
私は馬鹿だ、私は馬鹿だ。
【上田明也の探偵倶楽部41~サンジェルマンの×××~fin】

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