【上田明也の探偵倶楽部48~夢~】
「さて、あとは明也さんを探すだけですね。
聖杯がまだ動き出してないと良いのですが……。」
聖杯がまだ動き出してないと良いのですが……。」
ステンドグラスに天井を覆われた廊下を一人で歩き続ける男。
「組織」のF-№0、サンジェルマン伯爵である。
彼は「組織」に偽りの報告をしながら自らの戦力を使い聖杯の確保に動いていた。
それは全て自らが聖杯を使用する為である。
数千年の時を老いず病まず生きてきた彼の願いは至ってシンプル。
まるで初恋をした少年のように単純。
愛する人の蘇生。
それが実験と探求の名の下に数多の人間の人生を狂わせてきた男の願い。
「組織」のF-№0、サンジェルマン伯爵である。
彼は「組織」に偽りの報告をしながら自らの戦力を使い聖杯の確保に動いていた。
それは全て自らが聖杯を使用する為である。
数千年の時を老いず病まず生きてきた彼の願いは至ってシンプル。
まるで初恋をした少年のように単純。
愛する人の蘇生。
それが実験と探求の名の下に数多の人間の人生を狂わせてきた男の願い。
「――――――――!」
腰から素早く『オーパーツ』の内の一つである銃を抜き取って撃つ。
黒くてドロドロしたその塊は見事に空中で凍結、爆散した。
黒くてドロドロしたその塊は見事に空中で凍結、爆散した。
「さっきからずっとこれだ。聖杯にとって私は異物なんですかね?」
その通り、聖杯は今の持ち主である上田明也を守るべくサンジェルマンの進入を阻んでいるのだ。
「しかしね、空亡か。小さいから良いですけど厄介ですねえ。
私みたいな都市伝説は触れたら一発でお了いじゃないですか。」
私みたいな都市伝説は触れたら一発でお了いじゃないですか。」
サンジェルマンは不意の攻撃から身を守る為に緋色のローブを羽織っている。
これも元はと言えば名のある都市伝説だ。
だが空亡にそんな防御は通用しない。
空亡、闇を切り裂いて空に現れ全ての怪異を打ち払う太陽と月を司る妖怪である。
特性は都市伝説などの怪異に対する攻撃力補正だ。
防御するまもなく焼き払い、削り取られる。
契約した瞬間に契約者すらも怪異と見なし自動的になぎ払うので今まで契約した人間が発見されてないそうだ。
何故こんな物が聖杯内部にはびこっているのかは解らない。
だが何度か聖杯の内部に潜入したことのあるサンジェルマンにはその理由の見当がついていた。
これも元はと言えば名のある都市伝説だ。
だが空亡にそんな防御は通用しない。
空亡、闇を切り裂いて空に現れ全ての怪異を打ち払う太陽と月を司る妖怪である。
特性は都市伝説などの怪異に対する攻撃力補正だ。
防御するまもなく焼き払い、削り取られる。
契約した瞬間に契約者すらも怪異と見なし自動的になぎ払うので今まで契約した人間が発見されてないそうだ。
何故こんな物が聖杯内部にはびこっているのかは解らない。
だが何度か聖杯の内部に潜入したことのあるサンジェルマンにはその理由の見当がついていた。
「明也さんを守る為に、日と月の光を操る怪異が現れたというなら……。
出来すぎていますね。ひどく出来すぎている。
やはり聖杯はもう明也さんの願いを叶える為に動いているのか。」
『だとしたら急がなくてはいけない。違うか?』
「―――――!」
出来すぎていますね。ひどく出来すぎている。
やはり聖杯はもう明也さんの願いを叶える為に動いているのか。」
『だとしたら急がなくてはいけない。違うか?』
「―――――!」
突然、後ろから響く聞き慣れた声。
驚いて距離を開けてその方向を確認する。
声の正体を確認した瞬間、サンジェルマンの目から涙が落ちる。
驚いて距離を開けてその方向を確認する。
声の正体を確認した瞬間、サンジェルマンの目から涙が落ちる。
『やぁ、久しぶりだね。』
『元気してた?』
『なんの間違いだか知らないけれど、私生き返っちゃった。』
『いやーあれだよね、武道館満員にして引退したアイドルが』
『三ヶ月後くらいに復活しちゃうレベルの恥ずかしさだよねー』
『私やっぱり此処が自分の居場所だと思うからー、なんつってー。』
『あひゃひゃひゃひゃ、そんなびっくりするなよー。』
「貴方は……、貴方は、やっと会えたのですね?」
『そう、私の名前はフェリシア。君の愛する女だよ。』
『涙拭いて喜べよ、また来る別れのために。』
「ああ……間違いなく貴方だ。会いたかったですよ。」
『はっはっは、そんな顔してちゃせっかくのイケメンも台無しだねえ。』
『嘘だけど。』
『元気してた?』
『なんの間違いだか知らないけれど、私生き返っちゃった。』
『いやーあれだよね、武道館満員にして引退したアイドルが』
『三ヶ月後くらいに復活しちゃうレベルの恥ずかしさだよねー』
『私やっぱり此処が自分の居場所だと思うからー、なんつってー。』
『あひゃひゃひゃひゃ、そんなびっくりするなよー。』
「貴方は……、貴方は、やっと会えたのですね?」
『そう、私の名前はフェリシア。君の愛する女だよ。』
『涙拭いて喜べよ、また来る別れのために。』
「ああ……間違いなく貴方だ。会いたかったですよ。」
『はっはっは、そんな顔してちゃせっかくのイケメンも台無しだねえ。』
『嘘だけど。』
【嘘だけど】
それが彼女の口癖である。
それを聞いてサンジェルマンはまた涙を流す。
彼はフェリシアに向けて駆け寄って、彼女を抱きしめた。
それが彼女の口癖である。
それを聞いてサンジェルマンはまた涙を流す。
彼はフェリシアに向けて駆け寄って、彼女を抱きしめた。
「変わりませんね、貴方は。」
『君はすっかり変わったね、目が濁ってしまった。』
『それに手も血まみれだ。本当に救いようがないね。』
『だから、私が一緒に居てあげる。』
「本当ですか?」
『これは、これだけは【本当】だよ。』
「もう二度と貴方を放しません。」
『そうしていただけるとありがたいんだけどね。』
『でも早速手を放してもらわないと行けないようだよ。』
『君はすっかり変わったね、目が濁ってしまった。』
『それに手も血まみれだ。本当に救いようがないね。』
『だから、私が一緒に居てあげる。』
「本当ですか?」
『これは、これだけは【本当】だよ。』
「もう二度と貴方を放しません。」
『そうしていただけるとありがたいんだけどね。』
『でも早速手を放してもらわないと行けないようだよ。』
フェリシアは廊下の奥を指さす。
そこには空亡が大量に蠢いていた。
そこには空亡が大量に蠢いていた。
「知ってますよ、そんなこと。」
サンジェルマンの視界にも、つまりフェリシアの後ろの方の廊下にも空亡が湧き出ていた。
既に彼は戦闘態勢に入っている。
サンジェルマンはフェリシアに一枚の紙切れを渡す。
既に彼は戦闘態勢に入っている。
サンジェルマンはフェリシアに一枚の紙切れを渡す。
『なぁにこれ?』
「こちらでは契約書と呼ばれています。“契約”が簡単に行えるアイテムですよ。」
『へぇー、便利な時代だね。昔はもっと契約が面倒で重要だったのに。』
「こちらでは契約書と呼ばれています。“契約”が簡単に行えるアイテムですよ。」
『へぇー、便利な時代だね。昔はもっと契約が面倒で重要だったのに。』
一応古代人であるフェリシアは技術の進歩に驚いている。
だが彼女が本当に驚いているのは別のことだった。
だが彼女が本当に驚いているのは別のことだった。
『これで“昔とはすっかり変わってしまった君”と契約すればいいのかい?』
「話が早くて有りがたいですね。」
『しかし私との相性は大丈夫なのかい?』
『蘇ってすぐに飲み込まれるとかギャグにもならないよ。』
『まあ、大丈夫か。』
『君ったら私と相性の良い都市伝説になるために随分自分の身体を弄ったみたいだしね。』
「すいませんね、目の色まで変わって……濁ってしまった。
貴方が好きだと言ってくれていたのに。」
『構わないさ。』
『私のために存分に汚れてくれ、罪にまみれてくれ。』
『私にはなんのお返しも出来ないけど、傍に居てあげるくらいはできる。』
「それで充分十二分です。」
「話が早くて有りがたいですね。」
『しかし私との相性は大丈夫なのかい?』
『蘇ってすぐに飲み込まれるとかギャグにもならないよ。』
『まあ、大丈夫か。』
『君ったら私と相性の良い都市伝説になるために随分自分の身体を弄ったみたいだしね。』
「すいませんね、目の色まで変わって……濁ってしまった。
貴方が好きだと言ってくれていたのに。」
『構わないさ。』
『私のために存分に汚れてくれ、罪にまみれてくれ。』
『私にはなんのお返しも出来ないけど、傍に居てあげるくらいはできる。』
「それで充分十二分です。」
フェリシアは契約書に現代の物とは違う文字で名前を書く。
彼女が自らの名前を書き終わった瞬間に契約書は黄金色に輝いた。
彼女が自らの名前を書き終わった瞬間に契約書は黄金色に輝いた。
「―――――――――契約完了。」
『これで良いのかい?』
「ええ。」
『これで良いのかい?』
「ええ。」
何時の間にか持っていた剣を振り下ろすサンジェルマン。
すると空間が歪んで大きな穴が生まれる。
すると空間が歪んで大きな穴が生まれる。
「それでは見ていてください。
貴方と私の思い出、世界中に散った超古代文明の遺産達!
我が都市伝説【オーパーツ】の全力を!」
貴方と私の思い出、世界中に散った超古代文明の遺産達!
我が都市伝説【オーパーツ】の全力を!」
巨大な穴の中から次々に出てくる武器武装兵器銃器火器。
それは槍であり戟であり矛であり剣であり刀であり刃でありスティレットでありハルバードであり
金剛杵でありナイフであり鎖であり鎖鎌であり直刀であり曲刀であり多節鞭であり
流星錘でありミサイルでありロケットであり暗器であり弓であり矢であり
後には救国の聖剣として称えられ
後には亡国の魔剣として恐れられ
後には帝王の愛刀として名を刻み
後には聖人の処刑道具として忌み嫌われ
しかしながら悉く同じ出自を持つ武器達防具達
そう、それは全て人ならざる手によって創られたとされるもの
そう、それはなべて古代より伝わる伝説の品と謳われた物
それは槍であり戟であり矛であり剣であり刀であり刃でありスティレットでありハルバードであり
金剛杵でありナイフであり鎖であり鎖鎌であり直刀であり曲刀であり多節鞭であり
流星錘でありミサイルでありロケットであり暗器であり弓であり矢であり
後には救国の聖剣として称えられ
後には亡国の魔剣として恐れられ
後には帝王の愛刀として名を刻み
後には聖人の処刑道具として忌み嫌われ
しかしながら悉く同じ出自を持つ武器達防具達
そう、それは全て人ならざる手によって創られたとされるもの
そう、それはなべて古代より伝わる伝説の品と謳われた物
『うわー、こりゃあすごいやー。私でも美術館とかでしか見たことがないよ。』
「貴方が言うとなんか残念なので止めてください。」
『酷い事言うね。』
「だって本当なんですもの。」
「貴方が言うとなんか残念なので止めてください。」
『酷い事言うね。』
「だって本当なんですもの。」
今の人々はそれを【オーパーツ】と呼ぶ。
サンジェルマンの生み出した亜空間から射出されたそれは一瞬で空亡を塵に変えた。
サンジェルマンの生み出した亜空間から射出されたそれは一瞬で空亡を塵に変えた。
「ふむ、契約によって力が跳ね上がってますね。
身体に負担はありませんでしたか?」
『いや、まったく、けろりんぱ』
「そりゃあ良かった。ならば遠慮無く力を使って良いようですね。」
『ねえねえ、契約したんだから私も君の力使えるんだよね?』
「ええ、そうですけど……。」
『なら私に何が出来るのか教えてくれよ。』
「貴方は変化系……、だから貴方に出来ることはシンプルでしてね。」
『なんだいなんだい?』
「……黄金錬成。私の能力の中でも一番シンプルですね。」
『ああ、私達の故郷を一瞬で壊滅させたあれかい。』
「今では制御できますからね。」
『おおー、そいつはえらい。』
「ここで私からのお願いなんですがあなたの黄金錬成でやって欲しいことがあります。」
『なぁに?』
「この先に上田明也という男が居ます。
彼がこの世界を嫌うのを止めるように説得して欲しい。」
『あはは、お話が全く見えないや。』
身体に負担はありませんでしたか?」
『いや、まったく、けろりんぱ』
「そりゃあ良かった。ならば遠慮無く力を使って良いようですね。」
『ねえねえ、契約したんだから私も君の力使えるんだよね?』
「ええ、そうですけど……。」
『なら私に何が出来るのか教えてくれよ。』
「貴方は変化系……、だから貴方に出来ることはシンプルでしてね。」
『なんだいなんだい?』
「……黄金錬成。私の能力の中でも一番シンプルですね。」
『ああ、私達の故郷を一瞬で壊滅させたあれかい。』
「今では制御できますからね。」
『おおー、そいつはえらい。』
「ここで私からのお願いなんですがあなたの黄金錬成でやって欲しいことがあります。」
『なぁに?』
「この先に上田明也という男が居ます。
彼がこの世界を嫌うのを止めるように説得して欲しい。」
『あはは、お話が全く見えないや。』
サンジェルマンは頭をかく。
彼が脳裏に浮かべるのは今までの失敗に終わった聖杯探求の記憶。
彼が脳裏に浮かべるのは今までの失敗に終わった聖杯探求の記憶。
「そもそも、聖杯は聖杯を求めない人間を選ぶ傾向があります。
聖杯を求めない人間は基本的にこれといった自らの願いを持ちません。
だから聖杯が暴走して聖杯を手に入れた人間の願いを無理矢理叶えようとするんですよ。
たとえば僅かでも厭世的な傾向があれば世界を破壊するとか。
他にも僅かでも健康な生活を好むだけで欲しくもない不老不死を与えるとか。
で、願いの邪魔をしようとする外部の人間を排除しようとして聖杯は都市伝説を内部に生み出します。」
『ほうほう』
「どうも今回の願いは世界の破滅らしい。
そして現れた都市伝説はお誂え向きの『空亡』。
今回聖杯を手に入れた彼の名前には太陽と月を意味する文字が入っていましてね。
その人の影響を受けたのかも知れません。」
『で?』
「まあ何度か暴走した聖杯を止めた経験があるんですけどその時は仲間がいましてね。
今回はどうにも私一人で暴走を止めなくては行けない。
しかし一人でまともに空亡と闘い続ければ私の方が限界を迎えます。
そこで貴方にはこの先に居る上田明也を説得して欲しいのです。」
『ぶっ殺せば良いじゃん。その上田明也とかいうの。』
「昔一度今回のことと似たようなことがあってやりましたが聖杯は止まりませんでした。」
『私が説得するしかないのね。この世界に生まれて良かった!とか言わせればいいのね。』
「ええ。彼はもう近くに居るはずです。貴方の黄金錬成で道を造っていってください。」
『解ったよ、じゃあ行くしかないね。』
「あと、上田明也を説得する際の切り札を教えておきます。
どうにもならなさそうだったら使ってください。」
聖杯を求めない人間は基本的にこれといった自らの願いを持ちません。
だから聖杯が暴走して聖杯を手に入れた人間の願いを無理矢理叶えようとするんですよ。
たとえば僅かでも厭世的な傾向があれば世界を破壊するとか。
他にも僅かでも健康な生活を好むだけで欲しくもない不老不死を与えるとか。
で、願いの邪魔をしようとする外部の人間を排除しようとして聖杯は都市伝説を内部に生み出します。」
『ほうほう』
「どうも今回の願いは世界の破滅らしい。
そして現れた都市伝説はお誂え向きの『空亡』。
今回聖杯を手に入れた彼の名前には太陽と月を意味する文字が入っていましてね。
その人の影響を受けたのかも知れません。」
『で?』
「まあ何度か暴走した聖杯を止めた経験があるんですけどその時は仲間がいましてね。
今回はどうにも私一人で暴走を止めなくては行けない。
しかし一人でまともに空亡と闘い続ければ私の方が限界を迎えます。
そこで貴方にはこの先に居る上田明也を説得して欲しいのです。」
『ぶっ殺せば良いじゃん。その上田明也とかいうの。』
「昔一度今回のことと似たようなことがあってやりましたが聖杯は止まりませんでした。」
『私が説得するしかないのね。この世界に生まれて良かった!とか言わせればいいのね。』
「ええ。彼はもう近くに居るはずです。貴方の黄金錬成で道を造っていってください。」
『解ったよ、じゃあ行くしかないね。』
「あと、上田明也を説得する際の切り札を教えておきます。
どうにもならなさそうだったら使ってください。」
サンジェルマンはフェリシアに耳打ちする。
それを聞いたフェリシアは少し驚いてから嬉しそうに笑った。
それを聞いたフェリシアは少し驚いてから嬉しそうに笑った。
『そいつはおめでたいね!』
「でしょう?多分この話聞いたら彼も世界を嫌うとか青臭いこと言わなくなりますよ。」
『あひゃひゃひゃ、その表情が楽しみだ!』
『いやー、そんな彼をぶっ殺すなんて言っちゃ駄目だったね。』
『反省するよ。』
「そう言う訳でお願いします。」
『俺に構うな先に行け、ってか。』
「そんなところです。」
『くー、男前!愛してるぜ!』
「……俺もだよ。」
『…………こんな時だけ昔の口調に戻りやがって、死ぬなよ。』
「でしょう?多分この話聞いたら彼も世界を嫌うとか青臭いこと言わなくなりますよ。」
『あひゃひゃひゃ、その表情が楽しみだ!』
『いやー、そんな彼をぶっ殺すなんて言っちゃ駄目だったね。』
『反省するよ。』
「そう言う訳でお願いします。」
『俺に構うな先に行け、ってか。』
「そんなところです。」
『くー、男前!愛してるぜ!』
「……俺もだよ。」
『…………こんな時だけ昔の口調に戻りやがって、死ぬなよ。』
サンジェルマンは静かに彼女にキスをする。
「この思い出さえ胸に抱いていれば……、もう後悔は無い。」
『おいおい、死ぬなよ?』
「曲がりなりにも医者たる俺が死者蘇生を成功させてしまったんだぜ?
どの面下げて生きていろって言うんだよ。」
『何を言っているんだ、やめろよ……。』
「――――――嘘だよ、始めて騙されたな。」
『ったく、随分嘘を吐くのが上手くなったね。』
「早く行ってください、この先を、壁を貫いてまっすぐ行けばすぐだ。」
『おいおい、死ぬなよ?』
「曲がりなりにも医者たる俺が死者蘇生を成功させてしまったんだぜ?
どの面下げて生きていろって言うんだよ。」
『何を言っているんだ、やめろよ……。』
「――――――嘘だよ、始めて騙されたな。」
『ったく、随分嘘を吐くのが上手くなったね。』
「早く行ってください、この先を、壁を貫いてまっすぐ行けばすぐだ。」
フェリシアは都市伝説の力で聖杯の中心部と今居る廊下の間に黄金の橋を架けた。
彼女は振り返らずにその橋を真っ直ぐに駆けていく。
彼女は振り返らずにその橋を真っ直ぐに駆けていく。
「さて、俺も腹くくるとしますか。」
緋色のローブを脱ぎ捨てる。
サンジェルマンは白鳥の翼の如く彼の長い腕を伸ばした。
彼は上半身裸だった。
傷一つ無い美しい身体。
科学技術の粋をこらして作りあげられた完璧な肉体。
『組織』の膨大な実験データに基づいた完璧な投薬によってその身体は作られていた。
万を超える屍の上に築き上げられた、“完成された肉体”
それが都市伝説だけではない彼の真の武器でもあった。
さらに万を越える年月の間に鍛錬し続けた彼の武技も決して侮れはしない。
才能が無くても、努力だけで至れる限界まで練り上げられている。
サンジェルマンは白鳥の翼の如く彼の長い腕を伸ばした。
彼は上半身裸だった。
傷一つ無い美しい身体。
科学技術の粋をこらして作りあげられた完璧な肉体。
『組織』の膨大な実験データに基づいた完璧な投薬によってその身体は作られていた。
万を超える屍の上に築き上げられた、“完成された肉体”
それが都市伝説だけではない彼の真の武器でもあった。
さらに万を越える年月の間に鍛錬し続けた彼の武技も決して侮れはしない。
才能が無くても、努力だけで至れる限界まで練り上げられている。
「たとえどんなに罪深いことをしたとしても、この手でまた彼女を抱けた。
そうだ、この胸に残る記憶さえ有れば……、また人として生きていける。」
そうだ、この胸に残る記憶さえ有れば……、また人として生きていける。」
背中から光の粒子があふれ出して蝶の羽のような形を作る。
それが開くと同時にサンジェルマンはステンドグラスを割って聖杯空間と現実空間の間の空間に飛翔した。
下を見下ろすと聖杯空間のドームの天辺には黒い太陽のような物が鎮座している。
そこから何体もの小さな空亡が今正に現実の空に昇らんとしていた。
それが開くと同時にサンジェルマンはステンドグラスを割って聖杯空間と現実空間の間の空間に飛翔した。
下を見下ろすと聖杯空間のドームの天辺には黒い太陽のような物が鎮座している。
そこから何体もの小さな空亡が今正に現実の空に昇らんとしていた。
「人外と成り果て、人外を研究し、人外の研鑽の果てに極めた人間の限界、見せてやる。」
「テンプル騎士団創設者、サンジェルマン伯爵、不死の賢者、フェリックス・フランクリン!
誰のためでもなく俺自身と愛する女性の為に!
ただ一人を愛するが故に世界を壊し、世界を繋ごう!」
誰のためでもなく俺自身と愛する女性の為に!
ただ一人を愛するが故に世界を壊し、世界を繋ごう!」
サンジェルマンの浮かぶ空間が歪んで弓矢が出てくる。
小型の空亡を二三体射落とすと、沢山居た空亡がすべてサンジェルマンの方に向かってきた。
サンジェルマン、否、人間“フェリックス・フランクリン”は不敵に微笑むとその中に突っ込む。
小型の空亡を二三体射落とすと、沢山居た空亡がすべてサンジェルマンの方に向かってきた。
サンジェルマン、否、人間“フェリックス・フランクリン”は不敵に微笑むとその中に突っ込む。
「黄金錬成! 出てこい、黄金スペースシャトル!」
フェリックスの掌から大量の黄金スペースシャトルが発生する。
契約によって能力が凶暴化しているそれはフェリックスの周囲を衛星のように飛び回る。
そしてそれらはまるで意志があるかのような動きで空亡に突撃し、その度に空亡を撃墜していった。
勿論、空亡の力でシャトルは破壊されているがそれを上回るスピードでフェリックスは黄金を錬成していた。
それによってサンジェルマンに向かってくる空亡がすべて射落とされる。
空亡が出てくる元になっている黒い太陽からまた何体もの空亡我出てきた。
フェリックスは地面に降りたって複数の黄金シャトルを連結させる。
それはあっという間に大砲のような姿をとって空亡達に方向を向ける。
契約によって能力が凶暴化しているそれはフェリックスの周囲を衛星のように飛び回る。
そしてそれらはまるで意志があるかのような動きで空亡に突撃し、その度に空亡を撃墜していった。
勿論、空亡の力でシャトルは破壊されているがそれを上回るスピードでフェリックスは黄金を錬成していた。
それによってサンジェルマンに向かってくる空亡がすべて射落とされる。
空亡が出てくる元になっている黒い太陽からまた何体もの空亡我出てきた。
フェリックスは地面に降りたって複数の黄金シャトルを連結させる。
それはあっという間に大砲のような姿をとって空亡達に方向を向ける。
「連結、収束、―――――射出!」
黄金の光の束が黒い太陽をなぎ払う。
フェリックスに向かってきた敵は影も形も無くなった。
フェリックスに向かってきた敵は影も形も無くなった。
だが空亡は真後ろからも回り込んできていた。
それに気付いたフェリックスは両手を合わせて静かに呟く。
それに気付いたフェリックスは両手を合わせて静かに呟く。
「黄金錬成、生命の樹。」
合わせた両手を開いてそのまま地面に叩き付けた。
彼を中心に地面が一瞬で金に変換されていく。
彼を中心に地面が一瞬で金に変換されていく。
「生命の樹、知識、基礎、知恵、理解」
フェリックスを守るように純金の樹が展開される。
「峻厳、王国、王冠、……そして」
純金の壁から大量の棘が生えて近づく空亡を刺し貫く。
そして動かなくなった空亡を貫いたままに高々と掲げる。
そして動かなくなった空亡を貫いたままに高々と掲げる。
「―――――――――勝利、美を。」
ドロドロに溶け始めた空亡が黄金に変化していく。
「死体になれば非生物、俺の能力で黄金に変えられる。」
そして空亡だった液状の黄金から再び黄金の樹が生える。
「ふむ、この程度なら世界を破滅させるとか言う怪異も大したことがないな。」
フェリックスは黄金の樹で出来た森の中心で黄金の玉座に腰掛ける。
錬金術師が夢見る到達点、黄金錬成。
これを極めた最強の錬金術師“サンジェルマン伯爵”が全力以上に力を使ったからこその風景だ。
黒い太陽の中心から唸るような吠えるようなくぐもった声が聞こえる。
錬金術師が夢見る到達点、黄金錬成。
これを極めた最強の錬金術師“サンジェルマン伯爵”が全力以上に力を使ったからこその風景だ。
黒い太陽の中心から唸るような吠えるようなくぐもった声が聞こえる。
「――――ハッ、そうか。そこまで生きたいか。
持ち主の願いを曲解して生まれた泥風情がおこがましい……。
どうせ私を倒してここから出ても、お前らは本当に簡単に押しつぶされるというのに。
世界がお前のような願望器程度の暴走で終わるほど脆弱だとでも思うのか?
現に今、俺のような戦士ですらない男一人にここまで押されているじゃないか。
まったく、出来の悪い芝居だ。だからせめて……」
持ち主の願いを曲解して生まれた泥風情がおこがましい……。
どうせ私を倒してここから出ても、お前らは本当に簡単に押しつぶされるというのに。
世界がお前のような願望器程度の暴走で終わるほど脆弱だとでも思うのか?
現に今、俺のような戦士ですらない男一人にここまで押されているじゃないか。
まったく、出来の悪い芝居だ。だからせめて……」
黄金の玉座からゆっくりと手を挙げる。
「―――――――死に物狂いで、謡え雑念!」
黄金で出来た森が移動を始めた。
それはまるで本物の樹木のように空亡の本体と思しき黒い球体に根を張って浸食する。
それはまるで本物の樹木のように空亡の本体と思しき黒い球体に根を張って浸食する。
「ハハハハハハハハハ!脆い!空亡がゴミのようだ!」
フェリックスがそう叫んだ瞬間、黄金の森が動きを止めた。
「……あれ?」
この感覚は覚えがある。
都市伝説の使いすぎで上手く動かなくなった時のそれだ。
もしかして……調子に乗りすぎたかな?
と、フェリックスは後悔する。
都市伝説の使いすぎで上手く動かなくなった時のそれだ。
もしかして……調子に乗りすぎたかな?
と、フェリックスは後悔する。
「動け!動け!……目をつぶって三秒数えると、はい動いた!」
動く訳がない、巨大な森は沈黙している。
契約によるつながりで契約者が無事だとは解るのだが……。
攻撃の手段が無くなってしまった。
よりによって相手の目の前で。
契約によるつながりで契約者が無事だとは解るのだが……。
攻撃の手段が無くなってしまった。
よりによって相手の目の前で。
「うわあああああああああああああ!!!」
フェリックスは叫んでみた、だがどうしようもない。
元々戦士ではない彼の精神は戦闘中のちょっとしたトラブルで脆くもバランスを崩すのだ。
そんな彼の隙を突いて空亡の触手が彼を襲う。
とっさに身をひねって躱したがそれでも触手は彼の肩を貫通した。
肩の傷から黒く熱い泥のような物が注ぎ込まれる。
元々戦士ではない彼の精神は戦闘中のちょっとしたトラブルで脆くもバランスを崩すのだ。
そんな彼の隙を突いて空亡の触手が彼を襲う。
とっさに身をひねって躱したがそれでも触手は彼の肩を貫通した。
肩の傷から黒く熱い泥のような物が注ぎ込まれる。
「ちっ!」
薬で調整しているために痛みはない。
居たいと言うことは認識できるがそれ以上の意味は無い。
サンジェルマン伯爵として彼は自らの身体にも投薬と改造手術を繰り返しているのだからこの程度は当然。
問題は痛みの広がっている速度。
全身が空亡によって浸食、破壊されようとしている。
『オーパーツ』の発動も上手くできない。
だがフィリックスは自分の死を半ば受け入れていた。
死者蘇生という許されざる事をした自分はこういう目に遭うのが相応しいと思っていた。
居たいと言うことは認識できるがそれ以上の意味は無い。
サンジェルマン伯爵として彼は自らの身体にも投薬と改造手術を繰り返しているのだからこの程度は当然。
問題は痛みの広がっている速度。
全身が空亡によって浸食、破壊されようとしている。
『オーパーツ』の発動も上手くできない。
だがフィリックスは自分の死を半ば受け入れていた。
死者蘇生という許されざる事をした自分はこういう目に遭うのが相応しいと思っていた。
「だがまあ良い……、お前は連れて行くぞ。」
そう言ってフィリックスは自らのベルトに組み込んでいた自爆装置に手をかける。
それは単なる爆弾ではなく空間に作用する機械なので空間ごと確実に空亡を消し去ることが出来るのだ。
人間“フィリックス”はこれが罰だとあっさり自らの命に見切りを付けようとしていた。
だが次の瞬間、彼の視界に白と黒の光を帯びた影が走る。
それは単なる爆弾ではなく空間に作用する機械なので空間ごと確実に空亡を消し去ることが出来るのだ。
人間“フィリックス”はこれが罰だとあっさり自らの命に見切りを付けようとしていた。
だが次の瞬間、彼の視界に白と黒の光を帯びた影が走る。
「うぉおおおおおおお!」
極彩色の光の中でそこだけが明らかに異質だった。
サンジェルマンを貫いた触手を切り裂くモノクロの閃光。
彼の耳に聞こえたのは確かにこの聖杯を手にした男の声だった。
空亡に風穴を開けたその男は脇に二人の女性を抱えていた。
サンジェルマンを貫いた触手を切り裂くモノクロの閃光。
彼の耳に聞こえたのは確かにこの聖杯を手にした男の声だった。
空亡に風穴を開けたその男は脇に二人の女性を抱えていた。
「おい、大丈夫……じゃなさそうだな。」
「ええそうですね、来るのが少し遅い。そしてなんですかその両手に花。」
「両手に花は気にするな、手遅れじゃなかったんだから良いだろうが。」
「ええそうですね、来るのが少し遅い。そしてなんですかその両手に花。」
「両手に花は気にするな、手遅れじゃなかったんだから良いだろうが。」
彼を中心に円の軌道で飛び回る一対の日本刀。
そこから発せられる引力と斥力で無重力状態を作り出しているらしい。
先ほどまで空亡の本体が鎮座していた建物の中からこの男は飛び出てきたのだ。
そこから発せられる引力と斥力で無重力状態を作り出しているらしい。
先ほどまで空亡の本体が鎮座していた建物の中からこの男は飛び出てきたのだ。
「とまあそう言う訳で、お前の彼女は任せるぜ。」
上田明也はフェリシアと茜をサンジェルマンの所に降ろす。
そして再び空亡に向けて突撃していった、
そして再び空亡に向けて突撃していった、
『只今フェリックス!』
「なんでそんなノリノリなんですか、人が死にかけてたのに。」
『細かいことは気にするなよ~』
「……成功したんですね。」
『うん、今の彼は聖杯の補助も受けて最高に漲ってるよ。』
『二度と世界なんて滅びちまえとか思わないだろうね。』
「ああ、良かった。」
「なんでそんなノリノリなんですか、人が死にかけてたのに。」
『細かいことは気にするなよ~』
「……成功したんですね。」
『うん、今の彼は聖杯の補助も受けて最高に漲ってるよ。』
『二度と世界なんて滅びちまえとか思わないだろうね。』
「ああ、良かった。」
どうやら自分は死ななくて済むらしいとサンジェルマンは胸をなで下ろした。
上田が縦横無尽に空中を駆け回り空亡と戦っている。
彼は聖杯の支援のせいか普段の彼からは感じられないほどの強い力を発揮していた。
彼は聖杯の支援のせいか普段の彼からは感じられないほどの強い力を発揮していた。
「いやぁ……それにしても強いですね、今の彼。聖杯の支援だけじゃないでしょう。」
『ああ、貴方から教えて貰った「切り札」使ったからね。気合いも入るさ。』
「あの、お二人とも……。」
『ん?どうしたんだい茜ちゃん。』
「一体全体どうして明也さんがあそこまでやる気に?」
「ああ~、それについては此処を出てから説明しましょう。」
『願いを受けていない以上、あの空亡にもう力は残っていないからね。』
『さっさと倒してここから出て、ゆっくり説明を受けた方が良いと思うよ?』
『君にとっても大きなニュースだ。』
『ああ、貴方から教えて貰った「切り札」使ったからね。気合いも入るさ。』
「あの、お二人とも……。」
『ん?どうしたんだい茜ちゃん。』
「一体全体どうして明也さんがあそこまでやる気に?」
「ああ~、それについては此処を出てから説明しましょう。」
『願いを受けていない以上、あの空亡にもう力は残っていないからね。』
『さっさと倒してここから出て、ゆっくり説明を受けた方が良いと思うよ?』
『君にとっても大きなニュースだ。』
遠くから大量のスカイフィッシュが殺到してくる。
圧倒的な量。
上田の契約する全てのスカイフィッシュがここに集っていた。
圧倒的な量。
上田の契約する全てのスカイフィッシュがここに集っていた。
「サンジェルマン!手伝え!これだけじゃあまだ倒しきれない!」
「解りましたよ!」
「お前が決めろ、俺が合わせる!」
「解りましたよ!」
「お前が決めろ、俺が合わせる!」
サンジェルマンが抜き放つのは上田明久が彼に貸した聖剣。
名前は無い。
強いて名指せば十束剣。
日本の神話に於いて神々の扱った聖剣達の総称。
スカイフィッシュに気をとられて空亡は動きが鈍っている。
その隙を突いて彼の身にすら余る極大の剣をサンジェルマンは真っ直ぐに振り下ろす。
次の瞬間、剣から溢れる白い光が空亡を包み込んだ。
名前は無い。
強いて名指せば十束剣。
日本の神話に於いて神々の扱った聖剣達の総称。
スカイフィッシュに気をとられて空亡は動きが鈍っている。
その隙を突いて彼の身にすら余る極大の剣をサンジェルマンは真っ直ぐに振り下ろす。
次の瞬間、剣から溢れる白い光が空亡を包み込んだ。
地面に降り立った上田がサンジェルマンの持ってる刀を見て驚いた表情をする。
「おや、その剣見覚え有るな。
……まさかあの馬鹿親父、息子に対してこんな物使う気だったのか。」
「テンションあがると後先考えませんからね、あの人。」
「茜さん、お前の選択は正しかったんだ。あの時馬鹿親父を殺す勢いで攻撃してくれてありがとう。」
「えっ!?いやお礼を言われるってなんかこう……。」
……まさかあの馬鹿親父、息子に対してこんな物使う気だったのか。」
「テンションあがると後先考えませんからね、あの人。」
「茜さん、お前の選択は正しかったんだ。あの時馬鹿親父を殺す勢いで攻撃してくれてありがとう。」
「えっ!?いやお礼を言われるってなんかこう……。」
空亡の姿は跡形もなく消え去っていた。
そして役目を終えた聖杯世界が崩壊を始める。
そして役目を終えた聖杯世界が崩壊を始める。
『なーなー皆、そろそろ帰らないとやばくない?』
「それには同意ですね。皆さん、帰りますよ。」
『れっつごーだね!』
「じゃあ……。」
「それには同意ですね。皆さん、帰りますよ。」
『れっつごーだね!』
「じゃあ……。」
サンジェルマンはコホンと咳払いをする。
「目的達成を以て今回の第五百二十二次聖杯探求を終了とします。
明也さん、貴方のお父上にも貴方にも大変お世話になりました。
この恩はかならずお返しします。」
「良いから帰ろうぜ。」
「……そうですね。」
明也さん、貴方のお父上にも貴方にも大変お世話になりました。
この恩はかならずお返しします。」
「良いから帰ろうぜ。」
「……そうですね。」
サンジェルマンが指を弾くと風景が一瞬で変わる。
そこはもう上田明也にとって見慣れた探偵事務所の前の風景だった。
そこはもう上田明也にとって見慣れた探偵事務所の前の風景だった。
「ところで明也さん、私事務所の中に行って良いんですか?
あんまり事務所の皆さんと面識有りませんし……迷惑かも。」
「良いんだよ、これからは茜さんともっとずっといっしょに居なくちゃいけないからな。」
「うー、でも……。」
「言ったじゃねえかよ、結婚しようって。」
「でもあれ冗談じゃ?」
「馬鹿だなあ、俺みたいな正直な男が嘘なんて吐く訳無いだろ?」
『わー、フェリックスー、大嘘つきがここに居るよ!』
「それは貴方のことですか?それとも彼?」
『あひゃひゃひゃ、そんなの知らないね。』
「あ!茜お姉ちゃんだ!お寿司いっしょに食べよう!」
「あ、穀雨ちゃん……。」
あんまり事務所の皆さんと面識有りませんし……迷惑かも。」
「良いんだよ、これからは茜さんともっとずっといっしょに居なくちゃいけないからな。」
「うー、でも……。」
「言ったじゃねえかよ、結婚しようって。」
「でもあれ冗談じゃ?」
「馬鹿だなあ、俺みたいな正直な男が嘘なんて吐く訳無いだろ?」
『わー、フェリックスー、大嘘つきがここに居るよ!』
「それは貴方のことですか?それとも彼?」
『あひゃひゃひゃ、そんなの知らないね。』
「あ!茜お姉ちゃんだ!お寿司いっしょに食べよう!」
「あ、穀雨ちゃん……。」
外が騒がしくなったのに気付いて穀雨が扉から出てくる。
上田は寿司という言葉に反応を示す。
上田は寿司という言葉に反応を示す。
「お兄ちゃんも帰ってきたの?今お寿司が有るから食べてたんだよ!」
「はっはっは、それは楽しみだなあ!
そうだ、そういえば穀雨ちゃんもお姉ちゃんにな……
――――――おい、寿司って……なんだ。しかももう食べてたって……。」
「はっはっは、それは楽しみだなあ!
そうだ、そういえば穀雨ちゃんもお姉ちゃんにな……
――――――おい、寿司って……なんだ。しかももう食べてたって……。」
上田はゆっくりとサンジェルマンの方を振り返る。
頬が引きつっていた。
後から出てきた彼方とレモンがしまった、という表情を浮かべている。
頬が引きつっていた。
後から出てきた彼方とレモンがしまった、という表情を浮かべている。
「おう、笛吹さん。帰ってきたか!」
「所長、……そこの女の人誰ですか。」
「……気にするな!
そして友じゃねえか、どうしたんだよ。」
「依頼があってきたんだよ、COA関係でねえ。」
「所長、……そこの女の人誰ですか。」
「……気にするな!
そして友じゃねえか、どうしたんだよ。」
「依頼があってきたんだよ、COA関係でねえ。」
メルと友も後から続いて出てきた。
メルは茜さんの姿を確認した瞬間、苦々しい表情をする。
メルは茜さんの姿を確認した瞬間、苦々しい表情をする。
「オッケー、じゃあ俺が居ない間に何故か注文されていた寿司を食ってからにしようじゃないか。
とりあえずお前らがどこから金を出したのかゆっくり聞いてからだけどな!」
とりあえずお前らがどこから金を出したのかゆっくり聞いてからだけどな!」
そう言って、おどけるように笑って、茜さんの肩を抱き、
上田明也は堂々と笛吹探偵事務所の中に入る。
上田明也は堂々と笛吹探偵事務所の中に入る。
「それよりも何か言い忘れてないですか明也さん。」
『そうだね、彼の言うとおりだよ明也ちゃん。』
「おっと、そうだな。家に帰ってきたらまずこれだ。」
『そうだね、彼の言うとおりだよ明也ちゃん。』
「おっと、そうだな。家に帰ってきたらまずこれだ。」
上田は少し恥ずかしそうにしながらその言葉を発する。
「ただいま。」
【上田明也の探偵倶楽部48~夢~fin】
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