【上田明也の探偵倶楽部47.5~夢の合間~】
『なんでこんな雑談してるのかって言うとサンジェルマンからの私へのお願いでね。』
『明也ちゃんのその青臭い絶望そのものを私が絶望させて空亡だかを元から断つんだって。』
『ほら、世界を滅びろって無意識に思ってるならこの世界は素晴らしいって思えばその願いも終わるでしょ?』
『で、明也ちゃんにそう思わせるには私の「下から目線性悪説」が有効らしいから。』
『さぁ、明也ちゃん。そして茜ちゃんも。』
『その巫山戯た絶望を私の異常で非情にぶち殺してあげる。』
『思いっきりへこんでいってね!』
『明也ちゃんのその青臭い絶望そのものを私が絶望させて空亡だかを元から断つんだって。』
『ほら、世界を滅びろって無意識に思ってるならこの世界は素晴らしいって思えばその願いも終わるでしょ?』
『で、明也ちゃんにそう思わせるには私の「下から目線性悪説」が有効らしいから。』
『さぁ、明也ちゃん。そして茜ちゃんも。』
『その巫山戯た絶望を私の異常で非情にぶち殺してあげる。』
『思いっきりへこんでいってね!』
決めポーズまで決めて朗らかに笑うその女性は死んだ魚を見る死にかけた蛸の中の寄生虫のような
どす黒くて薄暗くてグロテスクなくらいに淀んだ暗い目をしていた。
どす黒くて薄暗くてグロテスクなくらいに淀んだ暗い目をしていた。
「いや、何を勝手な事言っているのかと。」
「そうですよ、サンジェルマンの契約者だか知らないけど信用できませんって。」
「聖杯としては貴方が異物である以上許可が出次第早急に排除したいのですが。」
『うわっ、ひどいや。完全アウェイじゃないか。』
『良いのかな?』
『そんなこと言っていて?』
『このまま貴重な願いを浪費し続けたらそこの女の子が死んじゃうよ。』
「そうですよ、サンジェルマンの契約者だか知らないけど信用できませんって。」
「聖杯としては貴方が異物である以上許可が出次第早急に排除したいのですが。」
『うわっ、ひどいや。完全アウェイじゃないか。』
『良いのかな?』
『そんなこと言っていて?』
『このまま貴重な願いを浪費し続けたらそこの女の子が死んじゃうよ。』
Fを名乗る女は茜さんの方を向いて笑う。
『サンジェルマンに言われていたでしょう?』
『明也ちゃんによる無理な拡大解釈のせいで君の体はボドボド……ボロボロだって。』
「大事なところで噛んだ!?」
『気にしないでよ』
『明也ちゃんによる無理な拡大解釈のせいで君の体はボドボド……ボロボロだって。』
「大事なところで噛んだ!?」
『気にしないでよ』
突っ込むといきなり恥じらい始めた。
ミステリアスなキャラのイメージが台無しだ。
ミステリアスなキャラのイメージが台無しだ。
「本当か茜さん?」
「う、……あんまり心配かけたくなかったんですけど。」
「言ってくれよ……。ネコモドキ、そこらへんなんとかできる?」
「願いを受けた以上、とりあえずそこらへんも直しておくね。」
「あ、ありがとうねネコモドキ。」
「ネコモドキ言うな!偶々保管してた奴の姿をずっと見てたからこうなっただけだ!」
『……ほらね?』
『とりあえず彼と茜ちゃんしか知らない話を知っている時点で』
『私と彼の関係に関しては信じてくれるよね?』
「……まぁ、良いだろう。」
「う、……あんまり心配かけたくなかったんですけど。」
「言ってくれよ……。ネコモドキ、そこらへんなんとかできる?」
「願いを受けた以上、とりあえずそこらへんも直しておくね。」
「あ、ありがとうねネコモドキ。」
「ネコモドキ言うな!偶々保管してた奴の姿をずっと見てたからこうなっただけだ!」
『……ほらね?』
『とりあえず彼と茜ちゃんしか知らない話を知っている時点で』
『私と彼の関係に関しては信じてくれるよね?』
「……まぁ、良いだろう。」
コホン、と咳払いをしてFは話を始める。
『まぁ、まず君は無意識以上積極的以下に世界を滅ぼしたい程度の厭世観に悩んでると。』
「……そうらしいな。」
『別に私はそれでも構わんと思うよ。』
『死に向かいたがるのは人間の性さ。』
「まあエロスとタナトスってところか。」
『私理系だからそういうめんどいの知らん。』
「……何こいつ妙に腹立つ。」
『でも、死にたいって欲望と同時に生きたいって欲望も君にはある筈なんだ。』
「俺にはそれが欠けていると?』
『うん、典型的な厨二病の症状だね。』
「ナニコイツムカツク、おいネコモドキ、こいつを……」
『わわわわわ!?待って!ストップ!最後まで話を聞け!』
「……仕方ないなあ。」
「……そうらしいな。」
『別に私はそれでも構わんと思うよ。』
『死に向かいたがるのは人間の性さ。』
「まあエロスとタナトスってところか。」
『私理系だからそういうめんどいの知らん。』
「……何こいつ妙に腹立つ。」
『でも、死にたいって欲望と同時に生きたいって欲望も君にはある筈なんだ。』
「俺にはそれが欠けていると?』
『うん、典型的な厨二病の症状だね。』
「ナニコイツムカツク、おいネコモドキ、こいつを……」
『わわわわわ!?待って!ストップ!最後まで話を聞け!』
「……仕方ないなあ。」
最初は偉そうだったのに今ではすっかり駄目駄目である。
なんだろう、この生まれつき全ての人間に負けているような駄目人間のオーラ。
なんだろう、この生まれつき全ての人間に負けているような駄目人間のオーラ。
『まあつまりだ。君が厨二病を卒業すれば一発なんだよ、今回の問題は。』
「どうすれば卒業できるのさ?」
『女性の場合は彼氏が出来ると大抵恥ずかしくなって止めるらしいね。』
「そりゃ場合によりけりだ。」
『そっか、まあそれもそうだね。』
『だからまあもっともシンプルな方法で君を攻めることにした。』
「……おい、ていうかお前最初は俺たちを絶望させるとか言ってなかった?」
『あひゃひゃ、そんなの私みたいな生まれながらの敗北者にできるわけないじゃん。』
『嘘だよ、嘘嘘。むしろ私は君に希望を与えるのが仕事さ。』
『君みたいな異常者の心を動かすのも一苦労だよね。』
「あの……、あれってなんですか?」
「どうすれば卒業できるのさ?」
『女性の場合は彼氏が出来ると大抵恥ずかしくなって止めるらしいね。』
「そりゃ場合によりけりだ。」
『そっか、まあそれもそうだね。』
『だからまあもっともシンプルな方法で君を攻めることにした。』
「……おい、ていうかお前最初は俺たちを絶望させるとか言ってなかった?」
『あひゃひゃ、そんなの私みたいな生まれながらの敗北者にできるわけないじゃん。』
『嘘だよ、嘘嘘。むしろ私は君に希望を与えるのが仕事さ。』
『君みたいな異常者の心を動かすのも一苦労だよね。』
「あの……、あれってなんですか?」
突然茜さんがステンドグラスで出来た天井を見上げる。
ステンドグラスの向こう側には黒い球体が蠢いていた。
ステンドグラスの向こう側には黒い球体が蠢いていた。
「あれは空亡、さっきそこのFとかいうお姉さんが言っていた奴だ。
聖杯の持ち主たるこの人の“世界滅ぼして死にたい気分”の現れ。
都市伝説としても最強クラスなんだけど今回呼び出されたのは聖杯の持ち主との相性かな?
どちらもお日様の光と縁があるみたいだし。」
「解説ありがとうネコモドキ。」
「だからネコモドキ言うなネコモドキ!」
『ほら、トロトロしてるとあれがサンジェルマンを倒しちゃうよー。』
『今彼は世界を守る為にアレと戦ってるんだから。』
「え、そうなの?」
『うん、あれは君が世界に絶望してる限り無尽蔵に増えるから勝ち目無いけどね。』
「…………そんな事言われたって困るんだよ!」
聖杯の持ち主たるこの人の“世界滅ぼして死にたい気分”の現れ。
都市伝説としても最強クラスなんだけど今回呼び出されたのは聖杯の持ち主との相性かな?
どちらもお日様の光と縁があるみたいだし。」
「解説ありがとうネコモドキ。」
「だからネコモドキ言うなネコモドキ!」
『ほら、トロトロしてるとあれがサンジェルマンを倒しちゃうよー。』
『今彼は世界を守る為にアレと戦ってるんだから。』
「え、そうなの?」
『うん、あれは君が世界に絶望してる限り無尽蔵に増えるから勝ち目無いけどね。』
「…………そんな事言われたって困るんだよ!」
サンジェルマンを助けたくはあるが自分の気持ちを自分で操れるほど人間というのは便利ではない。
そうだ、サンジェルマンには格好良く死んで貰おう。
……いや、それは流石に駄目か。
そうだ、サンジェルマンには格好良く死んで貰おう。
……いや、それは流石に駄目か。
『サンジェルマンが死んでも良いんじゃね?みたいな顔するなよ』
『流石に怒るぞ』
「ナチュラルに人の心を読むな。
サンジェルマンに死なれたくなかったら俺をさっさと説得しろ!」
『くっそぉ……、じゃあ耳貸せよ。』
「良いぜ、耳の一つや二つ。」
『流石に怒るぞ』
「ナチュラルに人の心を読むな。
サンジェルマンに死なれたくなかったら俺をさっさと説得しろ!」
『くっそぉ……、じゃあ耳貸せよ。』
「良いぜ、耳の一つや二つ。」
俺はFとかいう女の口の側に耳を寄せる。
『実はね……。』
「実は?」
『……君の契約してる都市伝説、赤い部屋の茜ちゃんだったよね。』
「うん。あいつがどうした。」
『どうやらお腹に赤ちゃんが居ます。無論、明也ちゃんの……』
「実は?」
『……君の契約してる都市伝説、赤い部屋の茜ちゃんだったよね。』
「うん。あいつがどうした。」
『どうやらお腹に赤ちゃんが居ます。無論、明也ちゃんの……』
彼女の口元から耳を放す。
よし決めた、俺は世界を救うぞ。
よし決めた、俺は世界を救うぞ。
「あれ、世界を破滅させたいとか言う願いが無くなった?」
「よし、ここから出るぞ。ネコモドキ、最後の願いだ。
少しの間だけで良い、俺にあの空亡とか言うのを倒す力を寄越せ。」
「へ?リョウカイ。」
「あ、明也さんの目が輝いている!?
これじゃあまるで最後の戦いを目の前にして全ての悩みを振り切った主人公みたいじゃないですか!
愛とか希望とか勇気とか平気で言い放つような目をしてますよ!?」
「当たり前だ、俺は世界を救う男だぞ。」
「よし、ここから出るぞ。ネコモドキ、最後の願いだ。
少しの間だけで良い、俺にあの空亡とか言うのを倒す力を寄越せ。」
「へ?リョウカイ。」
「あ、明也さんの目が輝いている!?
これじゃあまるで最後の戦いを目の前にして全ての悩みを振り切った主人公みたいじゃないですか!
愛とか希望とか勇気とか平気で言い放つような目をしてますよ!?」
「当たり前だ、俺は世界を救う男だぞ。」
奇跡が起きた、俺の身体の中に今までにないほどの力が漲ってくる。
そして頭の中には新しい正宗と村正の力の使い方が流れ込んできたのだ。
俺はそれに従って二本の刀を抜き放つ。
それは衛星のように俺の身体の周りを巡って引力と斥力を操り擬似的な無重力状態を作り出す。
そして頭の中には新しい正宗と村正の力の使い方が流れ込んできたのだ。
俺はそれに従って二本の刀を抜き放つ。
それは衛星のように俺の身体の周りを巡って引力と斥力を操り擬似的な無重力状態を作り出す。
「二人とも、俺の手を取れ。」
『ヒュー、両手に花だねー。』
「明也さん、一体何が……?」
『ヒュー、両手に花だねー。』
「明也さん、一体何が……?」
ふわり、と地面から足が離れる。
スカイフィッシュで空を飛ぶ時のような抵抗はない。
制御は難しいがスカイフィッシュの時と違ってより少ない反動で空を飛べるらしい。
スカイフィッシュで空を飛ぶ時のような抵抗はない。
制御は難しいがスカイフィッシュの時と違ってより少ない反動で空を飛べるらしい。
「ここで教えるのもちょっとあれだからなあ……。
あとで教えてあげよう、絶対喜ぶぞ。
じゃあなネコモドキ、聖杯の力には感謝するぜ。」
「おう、もう二度と来るな。」
「おっけー。」
あとで教えてあげよう、絶対喜ぶぞ。
じゃあなネコモドキ、聖杯の力には感謝するぜ。」
「おう、もう二度と来るな。」
「おっけー。」
ふわふわと中に登っていく俺と女性二名。
正直まだるっこしい。
二人を脇に抱えると俺は村正と正宗の出力をあげた。
ステンドグラスを蹴破って破片ごと宙に浮かぶとサンジェルマンが触手に肩を貫かれている。
刀だけを遠隔操作して触手を叩き斬ると俺はサンジェルマンの前に降り立った。
正直まだるっこしい。
二人を脇に抱えると俺は村正と正宗の出力をあげた。
ステンドグラスを蹴破って破片ごと宙に浮かぶとサンジェルマンが触手に肩を貫かれている。
刀だけを遠隔操作して触手を叩き斬ると俺はサンジェルマンの前に降り立った。
「おい、大丈夫……じゃなさそうだな。」
「ええそうですね、来るのが少し遅い。そしてなんですかその両手に花。」
「両手に花は気にするな、手遅れじゃなかったんだから良いだろうが。」
「ええそうですね、来るのが少し遅い。そしてなんですかその両手に花。」
「両手に花は気にするな、手遅れじゃなかったんだから良いだろうが。」
あれが俺の戦う敵か。
他ならぬ俺自身のために、俺の絶望と戦うなんて最高に格好良いじゃないか。
俺の絶望程度、俺の希望ですぐに打ち砕いてやる。
女性二名をサンジェルマンの所に置いていくと俺は空亡に向けて真っ直ぐに突っ込んでいった。
【上田明也の探偵倶楽部47.5~夢の合間~fin】
他ならぬ俺自身のために、俺の絶望と戦うなんて最高に格好良いじゃないか。
俺の絶望程度、俺の希望ですぐに打ち砕いてやる。
女性二名をサンジェルマンの所に置いていくと俺は空亡に向けて真っ直ぐに突っ込んでいった。
【上田明也の探偵倶楽部47.5~夢の合間~fin】