「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - ハーメルンの笛吹き-92

最終更新:

Bot(ページ名リンク)

- view
だれでも歓迎! 編集
【上田明也の探偵倶楽部after.act1~再突入~】

笛吹探偵事務所での寿司祭りの翌日。

「と言う訳で、母さんを捜して欲しいんだよね。」
「愛美さんか?別にそれくらい良いけど……。」
「いや、笛吹さん以外に彼女を捜している人は居るんだけどさ。
 一応各方面に保険をかけておいて損はないかと思ったのさ。」

COAから帰ってきた俺の元に一件の依頼が舞い込んできた。
依頼人は俺の友人である新島友美。
依頼内容はCOA世界で失踪した彼女の母の捜索だ。

「成る程な、まあ保険をかけることは良いことだ。
 だがどれが本命かハッキリさせておかないと時々大変なことになるぜ。」
「なになに?笛吹さん保険扱いされてちょっとムッとしてる?」
「俺は優秀だからな、保険扱いだったとしても本命以上に働くのだ。」
「ムッとしてるんじゃないか。」

俺は真っ赤なパソコンを開いて友美の前に置く。
そこには某掲示板のCOA関係のスレが表示されていた。

「ここのところ不眠不休で暴れ続けているPKが居るらしい。
 ……お前の母親じゃないかと思うんだよ。」
「おお……、確かに怪しいと思ってたんだ。」
「このPKの存在が報告された場所の一番新しい情報はここに書いてある。
 俺は今から赤い部屋の能力でそこに行ってくるとするよ。」

友が満足げな顔をする。
俺がこういう反応を示すと解っていてこういう話の進め方をしたに違いない。



そう、友にだって彼女の居場所はつかめている筈なのだ。
しかし俺にこの話を持ってきたということは即ち“愛美さんと直接であって戦うのが大変だ”ということ。
ならば彼女と戦闘した経験もあり、そこそこに強い俺が彼女を消耗させてから、本命の人間達が愛美に接触する方が安全である。
彼女は元気だと誰彼構わず勝負を仕掛けるところがあるように思えるから酷い推理だとは言わないで欲しい。

いや、そこまで意味は無くて単に急いで探してるだけかもしれないんだけど。

「あと報酬のことなんだけど……。」
「ああ、それならさ。新島家に余ってるベビー用品で頼む。」
「はぁ?」
「いや、俺子供できたんだよねー。」
「なん……、だと?
 それは最近【肛虐の監禁病棟~産婦人科編~】で腹ボテファックがマイブームの私に!
 この私に言ってしまうなんて!
 誘っているのかい!?
 私を誘っているのかい!?」
「うーん、あと二ヶ月くらい待ってからだったら考えてやるよ。」
「しかも良いの!?」
「茜さんは都市伝説だから丈夫だと思うし、本人が嫌がらなきゃ……。」
「ありがとう笛吹さん!それでこそだね!」
「ハッハッハ、褒めよ!称えよ!」

謎のハイテンション。
それはさておきさっさと依頼を完遂してしまわなくてはならない。




「所長、お茶淹れましたよ。」
「おう彼方、ちょっくら依頼を達成してくるからその間お客様を丁重にもてなしておけ。」
「え?解りました。」
「良いよ笛吹さん、今日は一旦帰ろうと思ってたから。」
「多分あと一時間くらいで愛美さん連れてくる予定だったんだけど……。」
「甘いね笛吹さん。」
「まあな、邪魔も入るか。んまあ翌朝までにはなんとかしよう。」
「それじゃあそういうことで。」
「おう、ベビー用品探しておけよ。」

友は任せておけと胸を張って帰って行った。
俺は赤い部屋の能力でCOA世界に再び転移する。
転移先は決まっている。
彼女とCOAで始めて出会った場所、そして彼女が現在居るらしい場所。
砂漠だ。
パソコンの画面に俺の身体が吸い込まれる。
視界が一瞬で赤く染まったかと思うと何時の間にか俺は再びCOAの砂漠の世界に着いていた。



「……着いた、が。」

うっかり砂漠装備を忘れていた。
このままでは直射日光で死ぬ気がする。
その時、真後ろでドアが開く音がする。
赤い部屋が出現したらしい。

「明也さん、こっちに来るなら来るでちゃんと言ってください。」
「済まないな茜さん。」
「そんな装備じゃ危ないでしょう?」
「ああ、一番良いのを頼む。」

茜さんがその中から現れて俺に砂漠用の装備を渡す。
マント、帽子、ゴーグル。
どれも最高の装備だ。
さすがネトゲ廃人といった所か。

「それじゃあ行ってくるよ。」
「はい、行ってらっしゃい。」
「夜までには帰ってくる、夕飯は彼方にでも作らせておいてくれ。」
「実は私料理得意なんですよ、契約のおかげで明也さんの料理の知識が伝わってきてて。」
「…………そうだったんだ。じゃあ麻婆豆腐作っておいて。」
「はい!」

茜さんは元気よく返事すると赤い部屋の中に消えていく。




「さて、この辺りなんだがなあ?」
「わー!」
「助けてー!」
「鬼じゃあ!鬼が居る!」
「虎牢関には呂布がいるぞおおおおお!」

遠くで悲鳴が聞こえる。
人が吹き飛ばされているのが見える。
悲鳴が聞こえる方向に俺は歩き始めた。
まず間違いなく彼女は向こう側にいる。
丘を一つ越えると俺の推理通り彼女は其処にいた。

「この霊圧は…………、でかいのが来る!」
「霊圧じゃないですよ愛美さん。王気です。」
「って、なんだお前か探偵。探偵のくせに王気を纏うとは不遜な。」
「私の戦闘力は53万です。」

愛美さんはなんの前触れもなく俺に向けて銃を撃つ。

「っていきなりなにやってんのぉ!?」

当然軌道を先読みして躱す。
まったく、早速死ぬところだったぜ。

「お前銃弾効かないじゃん。
 それよりもこの前はよくも私のキャラから銃を奪い取ってくれたなあ?」
「え?」

…………そういえば身に覚えがある。





「あれ、あの時のプレイヤーって……。」
「私だよ!」

思いっきり撃たれまくる。
正宗の力で弾丸をそらしてそのまま肉弾戦の間合いまで持ち込む。

「ごめんなさい!」

村正を抜いて彼女に斬りかかる。
どう考えても謝る人間の態度ではない。
愛美さんはナイフを抜いてそれを止める。
只のナイフなのに都市伝説を受け止めるって相当だよな。

「悪いと思ってるならもう一回ちゃんと私と戦え!」
「……やっぱりそうなるのね。」

仕方ない。
ここで時間を稼いで誰かが来るのを待つとしよう。




斥力操作で砂粒を巻き上げる。
それを目くらましにして一旦距離をとった後に俺はふわりと宙に浮かび上がった。
愛美さんの真上をとった後で引力を発生させて村正を振り下ろす。
完全によそ見している。
この一撃は確実に当てられると俺は確信した。

「そこぉっ!」

愛美さんは見もしないで俺の斬撃を躱す。
そしてカウンターのようにして膝蹴りを俺の腹に打ち込んだ。
膝と腹の間にとっさに斥力を発生させてダメージを軽減する。

「ん?手応えが軽いな……。さっきの砂粒といい、また何か新しい力を手に入れたのか?」
「今回もお楽しみいただければ幸いです。」
「さしずめ操作系能力のハイエンド、自然界への干渉能力か。
 電磁気力、重力、核……は無いな。核だけはない。」
「核なんて出したら世界がヤバイです。」
「まったくだ。仮に重力操作ってことにしておこうか。」

さくっと当てられた。
正確に言うと引力と斥力なんだけどまあ良いや。
俺文系だからそこら辺解らないし。




「まあそれならそれでだ。」
「なんです?」
「もっと全力を出してこい!」
「……解りました。まだ慣れないから制御できないんですけど……。」

拳から斥力を発生させる。
それで思い切り愛美さんを殴り飛ばした。
威力はたいしたこと無いが奇襲に驚いて彼女が少し蹌踉めく。
次は少し体勢を崩した愛美さんを引力で引きずり寄せる。
……と見せかけて、更に吹き飛ばす。
追い打ちを予想していた彼女はそこで完全にバランスを崩す。
少しだけ身体を浮かせて俺を愛美さんの方に引きずり寄せた。

「制御できてるんじゃないか!」

銃弾が真っ直ぐに飛んでくる。
もう躱しきれない、この際だから左腕は捨てる。
刀を収めてから空いた右手で愛美さんを思い切り殴った。

「まだまだぁ!」
「体術で勝負する気か?」

愛美さんの回し蹴りがまともに足に当たる。
骨に響く鈍い痛み。
俺は地面に尻餅をつく寸前で地面との間に斥力を発生させて地面との激突を避ける。
まあ砂場だから当たっても大丈夫だろうが……、そのあとマウントポジションをとられるのが怖い。




「体術で勝てると……うわっ、と!」
「まだ躱すのかよ!」

鞘に収めていた刀を指と都市伝説の力で弾き飛ばした。
だが彼女はそれも躱す。
その隙に俺は彼女の鳩尾に肘打ちを決める。
防がない、ということは解っているらしい。
彼女の後ろからブーメランのように飛んできた正宗と村正を彼女はキャッチして見せた。

「もーらったと。」
「まだまだ、それで吹き飛べ!」

愛美さんの手の中の正宗が白く発光する。
それに対応するように村正も黒紫色の光を灯す。
突然、彼女の手の中で二つの刀が呼応して力を発動し始める。
力の奔流が俺と愛美さんを吹き飛ばした。
愛美さんは空中で器用に回転して受け身をとる。
―――――速い!
着地した彼女はあっという間に俺の目の前まで近寄って刀をキャッチした俺を蹴り倒す。
この一瞬の隙を突いてくるとは思わなかった。
そのまま俺はマウントポジションを取られる。




「おお、このアングル……エロイ。」
「…………。」
「ゴフッ!」

殴られた。
酷い。

「愛美さんのような美人に馬乗りになられたら誰だって……アウ!」

また殴られた。
刀ごと両腕を踏まれているのが痛い。
これでは抵抗が出来ない。
あと引力や斥力を発生させるほど集中する前に殴られるのも不味い。
まだある程度集中しないと能力を発動できないのだ。

「これで終わりか笛吹!」
「うへへへへ……」

なんかちょっと幸せになってきた。

「うわっ気持ち悪ッ!」

トドメと思しき一撃が俺の顔に振り下ろされる。
――――――――かかったな。





ゴスッ、と愛美さんの拳が灰色の板に直撃する。

「ところで愛美さん、赤い部屋ってご存じですか?」
「……おいおい、お前何をした。」
「最初俺が彼女と契約した時は転移にも一々パソコンのマウスでYESをクリックしなきゃいけなかったんです。」

彼女の拳はその灰色の板のYESと書かれた部分を殴りつけていた。

「でも何時の間にか念じるだけでパソコンさえ有れば転移できるようになりました。
 そして同意さえあれば他人もワープさせられたりね。」
「おい、何をしたと聞いているんだ探偵。」
「やっぱり、“同意”って大切ですよねえ。うん。」
「何をしたと聞いているんだ!答えろ探偵!」
「貴方も同意したんですよ、赤い部屋にね。
 赤い部屋の裏技、ポップアップバリアとでも名付けようか。」

赤い部屋は本来【赤い部屋は好きですか】と書かれたポップアップから生まれた都市伝説。
ならばその契約者たる俺は電脳世界内部でならそのポップアップを出せてもおかしくない。

「さて、赤い部屋相手にYESと答えたんだ。
 今回は俺の……」

空間が歪んで辺りから大量の赤い手が出てくる。
それは愛美さんを捕まえようと彼女へと襲いかかる。

「一度発動してしまえば条件発動型の都市伝説の威力はでかい、俺の勝ちだ!」
「くそっ!」

俺が勝利を確信したその時だった。





「……何やっているんですか。」
「あ゛」
「う゛」
「愛美さん、と……ハーメルンの笛吹きじゃない!」
「よう、宝石男+はないちもんめの少女。」
「二人ともやっと来たか。」

どうやらこの勝負はお終いらしい。
赤い部屋の力で召喚された手の動きを止める。
目の前には見覚えの有る二人。
宝石男とはないちもんめの少女、望だったかだ。

「私は貴方たちに何をやっているのかと聞いているんです。」
「いやあ、デートの最中に盛り上がっちゃって……。」

俺の額に銃口が突きつけられる。

「ゴメンナサイウソデスチョウシニノッテスイマ……」

撃たれた。
赤い部屋の能力で体内に転移用の空間を作り銃弾をその異空間に送り込む。

「スイマセンデシタ」
「解ればよろしい。」
「なんで愛美さんだけじゃなくてあんたまで居るのよ!」
「それには深い訳があってだな……ゆっくり説明するとしようか。」

俺はポケットから電子煙草(ストロベリー)を取り出すと友美からの依頼やら今までの経緯についての説明を始めた。

【上田明也の探偵倶楽部after.act1~再突入~to be continued】

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
記事メニュー
ウィキ募集バナー