【上田明也の探偵倶楽部after.act12~探偵業~】
北風がコートの隙間を抜けるような季節。
俺はいつものファミレスで樹さんと会っていた。
俺はいつものファミレスで樹さんと会っていた。
「っつー訳で、腕利きの情報屋に調べて貰ってきたぜ。
これが貴方の言っていた女の子、マリアちゃんだよな。
マリアちゃんの生死についての情報だ。」
「随分仕事が速いな。日本の事じゃないはずだが?」
「今時の探偵は推理しないで答えだけ見つけるのが主流なんだよ。
その分、調査なども速く済む。」
「そうなのか。まあ良い、情報については信頼が置けると解ってるし。」
「探偵が推理しないなんて寒い時代さ。」
「じゃあ早速読ませて貰うか。」
これが貴方の言っていた女の子、マリアちゃんだよな。
マリアちゃんの生死についての情報だ。」
「随分仕事が速いな。日本の事じゃないはずだが?」
「今時の探偵は推理しないで答えだけ見つけるのが主流なんだよ。
その分、調査なども速く済む。」
「そうなのか。まあ良い、情報については信頼が置けると解ってるし。」
「探偵が推理しないなんて寒い時代さ。」
「じゃあ早速読ませて貰うか。」
そう言って樹はファイルをぱらぱらと眺め回す。
ファイルの中には俺がわざわざ現地まで行って暴いてきた彼女の空っぽの棺の写真や、
彼女が教会に引き取られたらしいという証言のまとめ、
そしてレモンの「ラプラスの魔」による事件のより深い暗部への調査が載っている。
樹はそれを見て顔を少しだけ歪めた後にぽつりと呟いた。
ファイルの中には俺がわざわざ現地まで行って暴いてきた彼女の空っぽの棺の写真や、
彼女が教会に引き取られたらしいという証言のまとめ、
そしてレモンの「ラプラスの魔」による事件のより深い暗部への調査が載っている。
樹はそれを見て顔を少しだけ歪めた後にぽつりと呟いた。
「……これが事実なら。」
「事実なら?」
「事実なら?」
沈黙。
沈黙は苦手だ。
でも、沈黙にも言語的な意味は存在する。
そしてこの沈黙の意味するところは……、言うのも無粋か。
沈黙は苦手だ。
でも、沈黙にも言語的な意味は存在する。
そしてこの沈黙の意味するところは……、言うのも無粋か。
「少し用事が出来た。」
「その用事を足すならファイルの後ろに付いてる袋とじを参考にしてくれ。
妨害が激しかったけどまあそれでもそれらしきものの尻尾は掴んだ。」
「ふむ、そうか。ありがとう。」
「アフターサービスも完璧な笛吹探偵事務所を今後もどうぞご利用ください。」
「その用事を足すならファイルの後ろに付いてる袋とじを参考にしてくれ。
妨害が激しかったけどまあそれでもそれらしきものの尻尾は掴んだ。」
「ふむ、そうか。ありがとう。」
「アフターサービスも完璧な笛吹探偵事務所を今後もどうぞご利用ください。」
そう言って俺は頭を下げてみせる。
それを見た樹さんは少しだけ笑ってみせる。
それを見た樹さんは少しだけ笑ってみせる。
「じゃあ俺はもう行くぜ。」
「ん、じゃあ俺ももう行くよ。どうせここには調査の報告に来ただけだし。
今日もおごらせて貰うぜ、なんてったって師匠に金払わせる弟子は居ない。」
「……お前はもうちょっと此処に居ろ。なんせほら、そこのお嬢さん達の相手をしなきゃいかんだろ。」
「ん、じゃあ俺ももう行くよ。どうせここには調査の報告に来ただけだし。
今日もおごらせて貰うぜ、なんてったって師匠に金払わせる弟子は居ない。」
「……お前はもうちょっと此処に居ろ。なんせほら、そこのお嬢さん達の相手をしなきゃいかんだろ。」
と言って向こう側のテーブルを指さす。
なんと、我が事務所のマスコットキャラクターである向坂ちゃんと純ではないか。
何故この二人が此処にいるのだ。
なんと、我が事務所のマスコットキャラクターである向坂ちゃんと純ではないか。
何故この二人が此処にいるのだ。
「あっ、見つかっちゃったよ純ちゃん。」
「大丈夫だよサキちゃん、どうせもう仕事の話も終わったみたいな雰囲気だし!」
「大丈夫だよサキちゃん、どうせもう仕事の話も終わったみたいな雰囲気だし!」
見つかったことに気付いたらしく二人でヒソヒソと会話している。
仕事中だというのに、本当に困った奴らだ。
仕事中だというのに、本当に困った奴らだ。
「すいません、懐かれてて……。」
「親子二代でロリコンか……、なんかいっそ清々しいぞ。」
「えっ。」
「親子二代でロリコンか……、なんかいっそ清々しいぞ。」
「えっ。」
何それ聞いてない。
俺、聞いてない。
俺、聞いてない。
「いや、戦場で会った時はこんくらいのチマイのを懸命に口説いてたなあ。
あんだけでかい身体だと色々と危ないんじゃないかと心配だったよ。」
あんだけでかい身体だと色々と危ないんじゃないかと心配だったよ。」
何それ聞きたくない。
信じたくない。
信じたくない。
「まあその話についてはまた今度だ。それじゃあな。」
「え、ええ。」
「え、ええ。」
行ってしまった。
樹さんが席を立ったのを見て向坂と純が近づいてきた。
二人は当然の如く俺を挟み込むように座る。
樹さんが席を立ったのを見て向坂と純が近づいてきた。
二人は当然の如く俺を挟み込むように座る。
「さて、お前らは何故此処にいるんだ。」
「そりゃあもうあれですよ。有能な助手ですから。」
「お前らも高校生なんだからもっと友達と遊ぶとか有るでしょうに。」
「そうも行かないんですよ。事件ですよ上田さん。」
「え?」
「今度は純ちゃんのお兄ちゃんが行方不明です。」
「私の私のお父さんが電話で言っていたの、授業に出てきていないって。」
「そりゃあもうあれですよ。有能な助手ですから。」
「お前らも高校生なんだからもっと友達と遊ぶとか有るでしょうに。」
「そうも行かないんですよ。事件ですよ上田さん。」
「え?」
「今度は純ちゃんのお兄ちゃんが行方不明です。」
「私の私のお父さんが電話で言っていたの、授業に出てきていないって。」
ああ、そういえば拝戸父は大学の先生やってるのか。
「ふむ、それは気になるな。」
「サンジェルマンに聞いても解らないとしか言わないの。」
「気になりますよね笛吹さん!私は今度こそハーメルンの笛吹きなんじゃないかと……。」
「まあ事件か事故かは知らないけど、」
「サンジェルマンに聞いても解らないとしか言わないの。」
「気になりますよね笛吹さん!私は今度こそハーメルンの笛吹きなんじゃないかと……。」
「まあ事件か事故かは知らないけど、」
拝戸直のことならば十中十は事件なのだが。
「とにかく調べない訳にはいかないな。報酬は……」
「私たちから取るの!?」
「従業員割引とか無いの?」
「有るよ。報酬は……そうだな、俺ってばクリスマス暇だからお前らデートしろ。」
「割引すると?」
「高級ホテルでお食事、俺のおごりがつきます。」
「私たちから取るの!?」
「従業員割引とか無いの?」
「有るよ。報酬は……そうだな、俺ってばクリスマス暇だからお前らデートしろ。」
「割引すると?」
「高級ホテルでお食事、俺のおごりがつきます。」
純と向坂が視線を合わせる。
二人で同時に頷いた。
二人で同時に頷いた。
「それよりもフェアリー・モートでのデザート食べ放題をおごってください。」
「私も私も同意見だよ。ホテルはどう見てもアウトだよね!」
「……なん、だと?まあ良かろう。」
「「やったー!」」
「ったく、……おまえらなんか喰うか?
俺の財布への配慮が感じられるメニューならば喰わせてやる。」
「流石笛吹さん!ふとっぱら!」
「お兄ちゃん愛してる!」
「私も私も同意見だよ。ホテルはどう見てもアウトだよね!」
「……なん、だと?まあ良かろう。」
「「やったー!」」
「ったく、……おまえらなんか喰うか?
俺の財布への配慮が感じられるメニューならば喰わせてやる。」
「流石笛吹さん!ふとっぱら!」
「お兄ちゃん愛してる!」
妻子持ちなのに女子高生とファミレスでイチャイチャしてるとかもうアウトだよね。
絶対俺はろくな死に方をしないに違いない。
【上田明也の探偵倶楽部after.act12~探偵業~fin】
絶対俺はろくな死に方をしないに違いない。
【上田明也の探偵倶楽部after.act12~探偵業~fin】