「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - ハーメルンの笛吹き-111

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匿名ユーザー

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【上田明也の探偵倶楽部after.act16~死の足音、時の色~】

時間軸は再びCOA内部の話に戻る。
俺は葉さんと二人でダチョウのようなモンスターの背中に乗っていた。
この世界では俺の能力は魔物使い寄りになっているおかげか、
出会ったばかりのモンスターもすぐに買収できる。
それで捕まえた鳥形モンスターだったが、思った以上に使える奴で良かった。
何より美女と二人乗りというのは悪くない状況だ。

「葉さん、捕まってな、少し飛ばすぜ?」
「はいはーい。」
「行けっ!アンク!」
「くぇっ!くぇっ!」

ダンジョン内を気持ちよく駆け抜けるアンク。
しかし何でこんな所にこんなモンスターがいるんだろう。
攻略wikiによればこのタイプのモンスターはダンジョン内では中々でないはずなのだが。

「あっ、ストップストップ、向こうに誰か居るよ。」
「んー?アンク、少しスピードをゆるめてくれ。
 人を見つけたら停まってくれよ。」
「うぃうぃ。」
「うぃ?」
「細かいことを聞いちゃ駄目だよ、葉さん。」

確かになんか人の気配がする。
俺たち警戒しながらながら曲がり角を曲がった。





「げっ、上田!それに葉さんが何でこんな所に!」

おおぅ、これはこれは、俺の唯一無二の親友にして幾多の戦場をくぐり抜けた戦友、エーテルじゃないか。
思えば奴とは湾岸戦争の時からの付き合いになるのか……。
お互い年を取ったモノだ……。

いや、嘘なんだけどさ。

気を取り直してえーちゃんとストロベリートークを開始するとしよう。

「それこっちのセリフだ!なんでエーちゃんがこんな所に?
 しかも担いでるのはさがしてたクソガキじゃねぇか!」
「あ!エーテルだ。探してたんだよ」
「葉さん、その格好はちょっと……目のやり場に困るぞ……」
「あらあら葉さんじゃないですか~」
「其処の少女、今度お茶でもどうだ?」
「お断りさせて頂きますわ~」
「おやおや残念。」
「頭痛い胃も痛い……何で上田と葉さんがとか裂邪やローゼが何故此処にとか……
 葉さんに俺にローゼに……ゼロナンバーの密度高すぎだろ此処……
 俺の経験上ゼロナンバーが二人以上集まるってことは
 十中八九洒落にならん事態が進行中だってことだ……もうこれ以上増えないよな!?」
「サンジェルル使う?」
「後で、コレイジョウフエタラシャレニナラナイヨナホント」

エーテルよ、それフラグだ。
とりあえず年上の人間相手に馬(?)上から話かけるのもあれなのでそそくさと下馬(?)しておく。
まあこいつも馬みたいなものだ。




「ぶっ!」

チョコボから下りた途端、俺は二人の人間の下敷きになった。

「到着しました」

それはひんやりとして良くしまった形の良いお尻の持ち主である人形のように美しい女性と

「落下地点に誰かいたみたい。ごめんねー」

小振りながらも柔らかでまるで天使のそれが如きお尻の持ち主である女性だった。

「その機械アナウンスのような声と口調は……まさかオール!?」
「おおっとテレポーターといったところだねー」

何やらエーテルが酷く深刻そうな顔で何か悩んでいる。
あの表情と、オールという呼称から推理するにおそらくA-No.0だ。
成る程……、あれが組織のトップか。
お尻揉みしだきたいぜ。
だがそれ以上に面白いのはあのふんわりとしたお尻の少女だ。
あのお尻に顔面を埋めたい、……じゃなくて。

「おおー。今日は良い日だねー。私と似たような人は中々いないからあえて嬉しいよー」

あいつは俺と同類だ。
言葉の端々に“異常”が見え隠れする。






それにしてもエーテルの心が乱れている。
まあエーテルもその異常故に心の乱れは俺か精神干渉系の都市伝説の持ち主しか解らないだろうが。
あいつはどんなときでもたった一人で常にバランスを取ろうとする。
そんなことをしたら普通の精神ならば崩壊しそうな物なのだが……。
そうならないのが異常者の異常者たる所以か。

「おやおや、仲間か。会えて嬉しいよ。学校町で探偵をやっている笛吹だ。」

暦の手を握る。

「空野暦だよ。仲良くしてね。」

彼女の表情にも言葉にも緊張はない。
俺に“自律”が欠けているが如く彼女には“恐怖”が欠けているのか。

「んー。でも悲しいね困ったなあー。いいことばかりじゃないみたいー
 ……此処の洞窟のあたりに居る人の中で
 誰かの時間がもうすぐ尽きるみたいー」
「それは誰かが死ぬという事か?この洞窟にいる誰かが?」
「そういう言い方をしても良いねー」
「回避できる方法は?」

有りはしない。
仮に死ぬ人間が俺やエーテル、そして目の前の暦のような異常者、因果律の特異点ならば回避は容易いだろうが……。




「時間と命と予定された出来事の複雑極まりない関連はー
 多分言っても理解できないけどー説明するねー
 一度この冥界では凄く珍しい事が起きてるー。
 人間の命も魂も最初は真っ白いキャンバスだけど
 時間の砂と色が注ぎ込まれる事で最後には誰にも動かせない位重い漆黒の死の色になるー。
 だけどとんでもなく大きな力がそれを捻じ曲げて一人の人間を死の暗黒から呼び戻したみたいー
 一回そういうイレギュラーが起きるとー
 反動で世界の復元力、運命の慣性ってのはとっても強くなるー。
 運命はその人の時間の砂が尽きる事を何が何でも予定通り運ばせるつもりみたいー
 そう、それこそわたしたちには時の砂粒一粒だって動かせさせないつもりー
 それでも定められた出来事を変えようと思ったら
 この世界をぶっ壊すほどの力が必要になるー」
「……上田、潰れてる所悪いが……お前言葉の専門家だろ?
 誰かが死ぬらしいが……この娘の言葉を三行で纏めてくれ。
 俺、こういうふわっとしてゆるっとした観念的で抽象的かつ曖昧な表現は苦手なんだよ……
 その間に俺はやらなきゃいけないことを整理するから……」

その場に居た全員の視線が俺に注がれる。

「はははっ、今の俺は名探偵笛吹丁だぜ、エーテェル?
 しかし時が見えるねえ、ニュータイプかよニュータイプ、俺も人のこと言えないけど。
 その可愛らしい少女の言葉を某特撮風に言うと……
 一つ、誰かに死亡フラグが立った。
 二つ、サンジェルマンが聖杯を使って恋人を蘇らせた。
 三つ、その為に因果律――世界――からの修正が強烈に働いており、そのフラグを折ることがほぼ不可能になっている。」

と言う訳で俺とそっくりな声の持ち主である某特撮のナレーターの真似をしながら説明してみた。



「二つ目について詳しい説明をお願いします。サンジェルマンの独断専行についてもっと情報が欲しい。」
「良いだろうオールさん、俺は美人には優しいんだ。
 サンジェルマンは遙か昔に恋人を亡くした。
 その頃あいつは科学力も魔力も所有してなかったせいで生き返らせられなかった。
 だから聖杯による奇跡で5000年以上前の人間を蘇らせたのさ。
 今まであいつが繰り返してきたグレーゾーンな実験はその為の物。
 そして異常者にまつわる研究はその女性の遺言。」
「サンジェルマン、勝手になんということを…………。」
「死者蘇生は禁忌であると、彼自身が繰り返し言っていたと思いますが……。」
「その禁忌を犯してでも彼女を死から取り戻したかったのだろうな。
 死ねない理外の存在と化して、永遠に自分が苦しんででも彼女をその手でもう一度抱きしめたかった。
 その為に外道に墜ち、魔道を歩み、魔導を極め、そして俺を利用して聖杯を起動させた。
 研究者として真面目だったからこそ、それが許されないことだとは解っていただろうに……。」
「駄目だと解っていたなら彼女を蘇らせるべきでは無いのではないですか?
 サンジェルマンは禁忌を禁忌と認識しながら自らそれを行ったのですか?」
「ああ、幾らこの身を地獄に堕とそうと満たしたい欲望が人間にはある。」

表情から推測するにオールはあまり解ってくれないようだ。
つまらない。

「サンジェルマンは元はと言えば人間でしたね。私はもっと人間を学ばねばなりません。」

……駄目だな、こいつとは相性が悪いらしい。

「まあとりあえず歩きながら話しようぜ。
 俺はこのハードボイルドボーイを仲間の所に届ける義務がある。」




「裂邪、っつーんだっけかこいつ。結構ハードボイルドだな、見直したよ。」
「そうですわ。……ハードボイルドって、どういうことです?」
「ん、お前の顔、裂邪の様子を見ればこいつが強敵と戦っていたことは解る。
 素直に助けを呼ばなかった、いや呼べなかっただけかも知れないがね。
 呼ばなかったのはこいつの仲間、つーかもしかしたら俺さえも守ろうとしたからだろうな。
 と思ったのよ。」
「……まるで心が読めているみたいなことを言いますわね。」
「心は読めるよ、其処にあるもの。」

そう言ってオールの方を見る。
彼女の心は酷く幼くて、不完全だ。
誰かが育ててくればいいが……。


「ところで俺、結婚したんだよね。」

全員が何を言っているのだこいつはという目で俺を見る。

「いやー、出来婚でさー。やっぱり男としてそういうのって責任取らなきゃ駄目じゃん?
 皆さ、俺のことを人でなしみたいに言うが俺だってそこらへん最低限の情が有るんだよ。
 子供の名前はとりあえず彼方に考えさせてるけどアイディア募集中な。
 俺も今までは人に迷惑をかけながら生きてきたけど、これからはもうちょっと人に優しく生きていくよ。
 正直、今まで俺は人を犠牲にしすぎていた。
 言葉で言って済む問題じゃないが、すまなかった。」

全員が悟った。
あれ?これ死亡フラグじゃね?と。
その通り、見事に死亡フラグである。





「笛吹さん、貴方がが何を言っても時間の色は変わらないよ。」
「ああ、無駄?」
「無駄無駄ァ、言葉一つで変わる時間なんて無いよ。
 そういえば貴方の時間は不思議なことになってるねー
 聖杯だかに触れたんだっけ?その色が混ざって人間の色じゃなくなってるー
 赤を煮詰めたような黒なんだけどそこに不思議な輝きが混ざってるー
 本来赤はポジティブな色なのに……」
「おっと、その話はそこまで。……あ、聖杯で思い出した。
 エーテルー?聞いてるかー?」
「……むっ、なんだ?」

俺に呼ばれて考え事をしていたらしいエーテルが顔を上げる。

「サンジェルマンからの伝言だ。
 聖杯城だかにユティが閉じ込められているそうだ。
 俺も会ったけど可愛いな彼女、あの“心”はなかなか好きだったぜ。」
「え゛っ……。」
「どういうことですか?ユービクィティ・ウルティマは行方不明だとばかり……。」
「俺も偶然発見したんだよ。誰かに嵌められて捕まってたっぽいな。」
「それが本当なら助けに行く必要がありますね……。」

俺の話を聞いたエーテルがさらに胃の辺りをさすり始めていた。
可哀想になったので俺は手持ちのサンジェルル(水無し一錠胃痛用)を分けてあげた。
【上田明也の探偵倶楽部after.act16~死の足音、時の色~fin】

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