【上田明也の探偵倶楽部after.act17~日常業務~】
「最近、ストーカーに悩まされていまして……。
この事務所だとそういうことも手広くやってらっしゃるみたいですし、
できれば捕まえて頂きたくて……」
「ふむふむ、それは大変ですね。今までの話を聞いている限りつきまとい以外のストーカー行為はまだ無いのですね?
証拠もないようですし警察はすぐに動けません。
まずはそのシーンを録画して警察に届けるところから始めようと思いますが……良いですか?」
「はい、ありがとうございます。」
「いえいえ仕事ですから。これ、携帯の番号とメアドなんで、何か有ったら連絡ください。」
「ありがとうございます、じゃあ私のメールアドレスもお教えしますね。」
この事務所だとそういうことも手広くやってらっしゃるみたいですし、
できれば捕まえて頂きたくて……」
「ふむふむ、それは大変ですね。今までの話を聞いている限りつきまとい以外のストーカー行為はまだ無いのですね?
証拠もないようですし警察はすぐに動けません。
まずはそのシーンを録画して警察に届けるところから始めようと思いますが……良いですか?」
「はい、ありがとうございます。」
「いえいえ仕事ですから。これ、携帯の番号とメアドなんで、何か有ったら連絡ください。」
「ありがとうございます、じゃあ私のメールアドレスもお教えしますね。」
女性は上田に頭を深く下げて帰って行った。
忘れられがちだが笛吹丁は探偵だ。
彼は今日も事務所の面々を喰わせていくために地道に働くのである。
まあ彼としては大変でも誰かに使われるよりは数倍マシな人生だと思っている。
忘れられがちだが笛吹丁は探偵だ。
彼は今日も事務所の面々を喰わせていくために地道に働くのである。
まあ彼としては大変でも誰かに使われるよりは数倍マシな人生だと思っている。
「所長、あの女の依頼を受けたのか?」
女性が帰った後、資料室の中から出てくる少女。
橙と呼ばれる彼女は『ラプラスの魔』の能力でこの世のあらゆる事が解る。
橙と呼ばれる彼女は『ラプラスの魔』の能力でこの世のあらゆる事が解る。
「悪いか?」
「あの女、そうとう悪いぞ。今時珍しい本物の魔女だ。」
「ほうほう、組織や教会に駆逐されたと思っていたが……。
ならば尚更助けて恩を売るべきだろう。可愛いし。」
「あの女、そうとう悪いぞ。今時珍しい本物の魔女だ。」
「ほうほう、組織や教会に駆逐されたと思っていたが……。
ならば尚更助けて恩を売るべきだろう。可愛いし。」
橙は上田の暢気な台詞を聞いてため息を吐く。
「お前はなあ……。本当にもう一度骨折られれば良いんだ。」
「F-No.は魔女に関しては保護推進派だろうが。
お前が文句を言う筋合いはない。」
「……はぁ。」
「嘘を吐かない依頼人は良い依頼人。
探偵は依頼人第一主義の商売だからな。
魔女であれ悪魔であれ助けるよ。
あの人は嘘を吐かなかったんだ、それだけで依頼を受ける価値はある。」
「まったく、お前がそう言うのなら文句はないよ。」
「F-No.は魔女に関しては保護推進派だろうが。
お前が文句を言う筋合いはない。」
「……はぁ。」
「嘘を吐かない依頼人は良い依頼人。
探偵は依頼人第一主義の商売だからな。
魔女であれ悪魔であれ助けるよ。
あの人は嘘を吐かなかったんだ、それだけで依頼を受ける価値はある。」
「まったく、お前がそう言うのなら文句はないよ。」
橙はやれやれとため息を吐いて彼方の淹れたコーヒーを飲む。
彼女は自分の部屋に有る装置で組織のF-No.の図書館にワープした。
彼女は自分の部屋に有る装置で組織のF-No.の図書館にワープした。
「やっと来たか橙!今日はお前に報告しなきゃいけないことがあってな。」
「笹木さん、今日は随分ご機嫌じゃないですか。」
「笹木さん、今日は随分ご機嫌じゃないですか。」
F-No.の上位メンバーである彼女には個室が与えられている。
彼女は図書館の中にあるその部屋にいつも籠もっているのだが、
今日は何故か彼女の上司である鵲崎笹木が部屋にいた。不法侵入だ。
彼女は図書館の中にあるその部屋にいつも籠もっているのだが、
今日は何故か彼女の上司である鵲崎笹木が部屋にいた。不法侵入だ。
「うん、まあな。実は……ついに来たんだぜ家にも!」
「何が?光ですか?機械音痴だから配線できないんじゃないですか?」
「失礼な奴だな、確かに俺の家にはネット無いけどさ。」
「あの孤児院ネット無かったんだ。」
「おう、なんせ山奥だ。アナログだぜ。
サンジェルマンが実験データ送るためにネット繋げろってうるさくて困る。
あーでも電波拾える能力持った子供が居るからそいつはインターネット使ってるな。」
「で、何が来たんですか?」
「タイガーマスクだよ!俺の家みたいな山奥にまで来ちゃうんだぜタイガーマスク!」
「でもランドセルって国の金で支給されるんじゃないの?」
「うるせー、細かいことは良いんだよ。」
「何が?光ですか?機械音痴だから配線できないんじゃないですか?」
「失礼な奴だな、確かに俺の家にはネット無いけどさ。」
「あの孤児院ネット無かったんだ。」
「おう、なんせ山奥だ。アナログだぜ。
サンジェルマンが実験データ送るためにネット繋げろってうるさくて困る。
あーでも電波拾える能力持った子供が居るからそいつはインターネット使ってるな。」
「で、何が来たんですか?」
「タイガーマスクだよ!俺の家みたいな山奥にまで来ちゃうんだぜタイガーマスク!」
「でもランドセルって国の金で支給されるんじゃないの?」
「うるせー、細かいことは良いんだよ。」
F-No.5『鵲崎笹木』はサンジェルマンが組織の売店で薬を売った収益等を丸ごと奪って孤児院を経営している。
そこでは都市伝説との親和性が高く親と居られなくなった子供を育てていた。
そこでは都市伝説との親和性が高く親と居られなくなった子供を育てていた。
「でまあどうでも良い話なんだけど、『月窓計画』が終了するらしいな。」
「ああ、人造都市伝説の実験ですか。笹木さんの孤児院でも使ってるんじゃないんですか?」
「“人為的に”作られた存在だからな、制御が容易いし契約したところで子供達への害も無い。
拡大解釈の幅も広いから護身用には最高だよ。」
「ああ、人造都市伝説の実験ですか。笹木さんの孤児院でも使ってるんじゃないんですか?」
「“人為的に”作られた存在だからな、制御が容易いし契約したところで子供達への害も無い。
拡大解釈の幅も広いから護身用には最高だよ。」
「じゃあなんで終わらせるんですか?」
「もう研究のネタがないから研究を終わらせるだけさ、結果の利用は継続するよ。月窓も死んじまってるしな。」
「江戸時代の人間ですからね。」
「煙煙羅も狂骨も、月窓がサンジェルマンにそそのかされて作った物だしな。」
「組織の設立前から続けられている実験ですか……。」
「ああ、“契約する人間によって最適な形に変化する理想の都市伝説”を作る計画だったらしいが……。」
「そこまで完璧な物にはなりませんでしたね。」
「仕方あるまいよ、製作自体は月窓の想像力に任せるしかなかったんだ。」
「もう研究のネタがないから研究を終わらせるだけさ、結果の利用は継続するよ。月窓も死んじまってるしな。」
「江戸時代の人間ですからね。」
「煙煙羅も狂骨も、月窓がサンジェルマンにそそのかされて作った物だしな。」
「組織の設立前から続けられている実験ですか……。」
「ああ、“契約する人間によって最適な形に変化する理想の都市伝説”を作る計画だったらしいが……。」
「そこまで完璧な物にはなりませんでしたね。」
「仕方あるまいよ、製作自体は月窓の想像力に任せるしかなかったんだ。」
笹木はどこからともなく黒革のケースを取り出して橙の前で開く。
その中には大量のUSBメモリのような物が入っていた。
その中には大量のUSBメモリのような物が入っていた。
「他のNo.はおろか俺たちF-No.の間でも一部しか知らない物だ。
この新型契約書の中には月窓計画の“原典”が入っている。
“原典”は拡大解釈の幅がとてつもなく広いのは知っているな?
無論、普段は機密のキの字も気にしないサンジェルマンが本気で情報漏洩を防止しにかかっているんだ。
この秘密は保たれていると思ってくれ。
F-No内部って警備緩いからいかんせん保存に困っていてな。」
「……私に預かれと?」
「お前じゃない、笛吹探偵事務所に預けるんだ。
あの女の息子を使うのは癪に障るがあの人の息子だ、実力も含めて信頼は出来る。」
「発見されても私たちは知りません、って?」
「そう都合良くはいくまいよ、単に安全性の問題だ。新型の契約書形式で26本入っている。
適合者と勝手に引き合う特性があるから厳重に保管しておけよ。」
「解りました。しかし月窓計画においてあと30本分は契約書が開発されていたぞ?
残りは何処へやったんですか。」
この新型契約書の中には月窓計画の“原典”が入っている。
“原典”は拡大解釈の幅がとてつもなく広いのは知っているな?
無論、普段は機密のキの字も気にしないサンジェルマンが本気で情報漏洩を防止しにかかっているんだ。
この秘密は保たれていると思ってくれ。
F-No内部って警備緩いからいかんせん保存に困っていてな。」
「……私に預かれと?」
「お前じゃない、笛吹探偵事務所に預けるんだ。
あの女の息子を使うのは癪に障るがあの人の息子だ、実力も含めて信頼は出来る。」
「発見されても私たちは知りません、って?」
「そう都合良くはいくまいよ、単に安全性の問題だ。新型の契約書形式で26本入っている。
適合者と勝手に引き合う特性があるから厳重に保管しておけよ。」
「解りました。しかし月窓計画においてあと30本分は契約書が開発されていたぞ?
残りは何処へやったんですか。」
笹木が苦り切った顔をする。
「煙煙羅はずっと昔に穂村に盗まれた。」
「孤児院の第一世代か。No.1と同い年でしたね。」
「ああ、あの子達仲良かったんだよなあ……。
あと絹狸は死亡フラグの黒服に支給された。」
「ああ、唯の元担当か。
現在は死んだことになっていて隠密任務に就いてるんでしたっけ?」
「そうそう、サンジェルマンの直属だよ。」
「成る程ねえ……。」
「孤児院の第一世代か。No.1と同い年でしたね。」
「ああ、あの子達仲良かったんだよなあ……。
あと絹狸は死亡フラグの黒服に支給された。」
「ああ、唯の元担当か。
現在は死んだことになっていて隠密任務に就いてるんでしたっけ?」
「そうそう、サンジェルマンの直属だよ。」
「成る程ねえ……。」
橙はケースを閉じるとそれを持って立ち上がる。
「じゃあ私は上田に依頼に行ってきます。」
「自分も所属している事務所に依頼って妙だよな。」
「奴はそこらへんきちっとさせないのが嫌なんですよ。」
「うむ、それは良いことだな。何事もなぁなぁは良くない。」
「そういえば今度あそこにまた遊びに行って良いか?」
「チビ共に料理作るの手伝うなら良いぞ。
あとピアノを弾いて子供達と歌を歌う私を見て大爆笑しないなら許してやる。」
「謝るから許せ。ごめんなさい。」
「良いだろう、許す。」
「それじゃ。」
「あとサンジェルマンからの伝言、これ全部お前が好きに使って良いですよ、だって。」
「自分も所属している事務所に依頼って妙だよな。」
「奴はそこらへんきちっとさせないのが嫌なんですよ。」
「うむ、それは良いことだな。何事もなぁなぁは良くない。」
「そういえば今度あそこにまた遊びに行って良いか?」
「チビ共に料理作るの手伝うなら良いぞ。
あとピアノを弾いて子供達と歌を歌う私を見て大爆笑しないなら許してやる。」
「謝るから許せ。ごめんなさい。」
「良いだろう、許す。」
「それじゃ。」
「あとサンジェルマンからの伝言、これ全部お前が好きに使って良いですよ、だって。」
橙は言葉の真意を測りかねて首をかしげる。
何故最高機密扱いの物をそんな簡単に使えというのだろうか。
彼女は自分の部屋だというのにまるで他人の家から退出する時のように一礼してから笛吹探偵事務所に戻った。
何故最高機密扱いの物をそんな簡単に使えというのだろうか。
彼女は自分の部屋だというのにまるで他人の家から退出する時のように一礼してから笛吹探偵事務所に戻った。
「帰ったぞ所長ー。」
「あ、橙さん。所長ならもうストーカー撃退し(ついでに美人ひっかけ)て来るぜー。
って意気揚々と出かけていきましたよ。」
「…………。」
「流石に依頼人に手は出さないから信頼して欲しいものだ。
とも言ってました。」
「……なあ彼方。」
「なんです?」
「信じたのか?」
「いえまったく、と言っておけと言われました。」
「ならば良し。あとあれだぞ彼方。」
「橙さんなんて言わないで橙って男らしく行こうぜ彼方く~ん。
と上田さんに言われました。
けどなんていうか慣れないというか……。」
「……全部会話を読まれていただと?」
「まあ特技ですから、あの人の。
ところで依頼人が魔女って本当ですか?」
「ああ、あのレベルの魔女ならストーカーくらい簡単に倒せるだろうに……。」
「あ、橙さん。所長ならもうストーカー撃退し(ついでに美人ひっかけ)て来るぜー。
って意気揚々と出かけていきましたよ。」
「…………。」
「流石に依頼人に手は出さないから信頼して欲しいものだ。
とも言ってました。」
「……なあ彼方。」
「なんです?」
「信じたのか?」
「いえまったく、と言っておけと言われました。」
「ならば良し。あとあれだぞ彼方。」
「橙さんなんて言わないで橙って男らしく行こうぜ彼方く~ん。
と上田さんに言われました。
けどなんていうか慣れないというか……。」
「……全部会話を読まれていただと?」
「まあ特技ですから、あの人の。
ところで依頼人が魔女って本当ですか?」
「ああ、あのレベルの魔女ならストーカーくらい簡単に倒せるだろうに……。」
なんだかなあ、と呟いて橙は彼方の隣に座った。
【上田明也の探偵倶楽部after.act17~日常業務~】
【上田明也の探偵倶楽部after.act17~日常業務~】