「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - ハーメルンの笛吹き-126

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匿名ユーザー

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【上田明也の探偵倶楽部after.act29~なおも旅行中~】

「あー、良い湯だった。」
「温泉なんて始めて入りましたよ。」
「そうか、そういえばそうだったね。」

 思い起こせば茜さんは都市伝説である。
 俺に襲いかかる前の彼女は何をしていたのか俺は全く知らないが、
 その時点では自我がとてつもなく希薄だったところから推測すると、
 彼女は生まれてから……遅くとも十人目くらいに俺を襲っている筈だ。
 赤い部屋の特性上、人を襲うのはとても楽な作業である。
 巣に引きずり込んで咀嚼するだけの獲物に反撃を喰らう事なんて殆ど無いからだ。
 つまり結構ハイペースで人を襲っていた公算が高い。
 このスベスベ肌が血に濡れていた訳か……。

「さて、ということは……。」
「どうしたんです?私の顔をジロジロ見て……。」
「茜さん何歳かなあと思って。」
「エーテルさんは戸籍に16才で登録したって言っていましたよ。」
「いや、実際の所さ。
 実際の所まだ茜さんって一、二才くらいじゃないかあと……。」
「……ふふふ、年を聞くのは失礼ですよ。」
「あっはっはっは……、ですよねー。」
「――――――このろりこん。」

 もしかして違うのかなと思っていたけど俺ってやっぱりロリコンなんですね。
 読者の皆様、ていうかシャドーマンの人、安心してください。 
 上田明也はしっかりロリコンでした。





「さて、温泉に入り終わったしどこかに観光行く?」
「私水族館行きたいですね、学校町には無かったですし。」
「オッケー、それじゃあそこに行こうか。」

 もう一度着替えて宿を出るとタクシーに乗って水族館に向かう。
 いかんせん茜さんの外見は高校生位なので運転手さんに滅茶苦茶怪しまれる。
 とりあえず口先八丁でごまかすまでもなく
 『若く見られるんですよねあはははは』で許してくれたのが幸いだった。

「いやーん、もうちょっと老けないかしら。」
「それあれだよ、全国の女性から何されるか解らない発言だよ。」

 タクシーを降りると茜さんがぽつりと呟く。
 冗談めかして返したが、それはなんだか寂しい言葉だった。

「それじゃあ行きますか、水族館。」
「ええ。」

 イルカの看板がでかでかと掲げられた水族館。
 少し懐かしい。
 ショーがあと二十分で始まるということだった。




「……ウナギか。」
「ウナギ……ヘンな形してますね。」
「茜さん前くってたじゃん。」
「――――!?」
「俺作ったじゃん、あっさりしてて精の付くもの食べたいからって。
 ウナギの肝吸いとか、白焼きとか。」
「――――――!?」

 水槽の辺りを軽く見て回りつつショーのあるプールへ向かう。
 チケットと共に手に入れた案内で見たのだがここは最近テレビで紹介されたのだそうだ。
 そのためだろうか、やたら混み合っている。
 俺は偶然、男性とぶつかった。
 こんな昼間から一体何をやっているのだろう。

「おっと、失礼。」
「いえ、こちらこそよそ見していました。」

 互いに一礼して別れる。
 感じの良い男性だ。

「明也さん。」
「なに?」
「ポケットに何か入れられてますよ。」
「んー……なんだこれ、メモか?」

 まったく気付かなかった。
 どうも感知能力が鈍化しているな、俺も何時までも強いままではいられないのか。
 ふと、ある女性に同じ事を言われたことを思い出す。





「うっかりしてたな。」
「うっかりするんですね、貴方ともあろう人が。」
「一歩間違えていたら死んでたな俺。」
「…………。」
「瞬発的な戦闘力だけならば、今でも上がり続けて居る。」
「…………。」
「だけれども継続した戦闘や、戦闘に向けての意識の作り方が駄目だ。
 契約を始めた頃から加速度的に弱くなっている。
 そもそも肉体的には俺は一般人なんだ。
 こんな人外魔境でまともにやっていくには命削るしかねえ。」
「…………。」
「鍛え直すか……。キャラが崩れて来ちまった。」
「でも、今の貴方も好きですよ。」
「そっか。」
「あら、もうイルカショーの時間。」
「それじゃあ行く?」
「ええ。」

 俺はポケットの中から出てきたメモに目を通しつつ茜さんの手を引く。
 メモの中にはとんでもないことが書かれていた。

「この水族館に……人間のテロリストが入ってきている?」

 何故わざわざこんなことを俺に教えたのか。
 何故他の人々に避難を促さずに俺たちにだけそれを教えたのか。
 事情は考えればきりがなかった。
【上田明也の探偵倶楽部after.act29~なおも旅行中~fin】

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