【上田明也の探偵倶楽部after.act25~そうだ、京都に行こう~】
「あの……上田さん?」
「なんだ彼方?」
「最近顔色悪いですよ?」
「そうか、最近ちょっとスケジュールがハードだったのかなあ?
仕事は何時も通りのマイペースでやっているつもりだったけど……。」
「なんだ彼方?」
「最近顔色悪いですよ?」
「そうか、最近ちょっとスケジュールがハードだったのかなあ?
仕事は何時も通りのマイペースでやっているつもりだったけど……。」
ことの始まりは、彼方が何気なく言っていた一言だった。
別に体調が悪いとかまったく無かったというのにゾロゾロと皆が集まって来て人の顔を覗き込む。
別に体調が悪いとかまったく無かったというのにゾロゾロと皆が集まって来て人の顔を覗き込む。
「あ、本当だ。ちょっとブルー入ってる。」
「お兄ちゃん大丈夫?」
「あら、心配ですね……。」
「ななな、なんだお前ら急に……?」
「ああこれは大変だ、医者に診せないと。」
「でもこんな時間にお医者さんなんて居ますかね?」
「それなら丁度書類仕事と人体錬成で忙殺されている医者が居たはずだ。
ちょっと電話かけてみる。」
「おにいちゃん私のおかしあげようか?」
「急に心配されると怖いんだけど、何これマジで新手の契約者の攻撃じゃなかろうな。」
「お兄ちゃん大丈夫?」
「あら、心配ですね……。」
「ななな、なんだお前ら急に……?」
「ああこれは大変だ、医者に診せないと。」
「でもこんな時間にお医者さんなんて居ますかね?」
「それなら丁度書類仕事と人体錬成で忙殺されている医者が居たはずだ。
ちょっと電話かけてみる。」
「おにいちゃん私のおかしあげようか?」
「急に心配されると怖いんだけど、何これマジで新手の契約者の攻撃じゃなかろうな。」
ここまでいきなり群がられると恐怖である。
皆の優しい態度が怖い。
皆の優しい態度が怖い。
まあ体調が悪くなった理由に覚えがないかというとそう言うわけでもない。
ここ最近、学校町で時間のループが起きていて、俺はそれに記憶を一部保ったまま巻き込まれたのだ。
どうせ誰かが解決するだろうと思っていたら……そう、二三年くらい続いたのだ。
これだけ異常な事態に巻き込まれれば体調も崩れるだろう。
まあおかげでゆっくりと頭の異常を治せたのだけど……。
ここ最近、学校町で時間のループが起きていて、俺はそれに記憶を一部保ったまま巻き込まれたのだ。
どうせ誰かが解決するだろうと思っていたら……そう、二三年くらい続いたのだ。
これだけ異常な事態に巻き込まれれば体調も崩れるだろう。
まあおかげでゆっくりと頭の異常を治せたのだけど……。
「よし!医者に通じたぞ!今すぐ来るそうだ!」
「さすが橙さんです!」
「お姉ちゃんすごーい!」
「レモンちゃん偉いですよ!」
「さすが橙さんです!」
「お姉ちゃんすごーい!」
「レモンちゃん偉いですよ!」
なんだこの濃厚な茶番臭。
「呼ばれて飛び出て来ました医者です!
おおこれはなんて重病なんでしょう!
すぐにでも温泉かどこかで湯治をする必要があります!
ちなみに私の出番は以上です!」
「あっ、ちょ、待てサ……」
「なんてことだ!偶然だが私は福引きで登別の温泉宿の無料宿泊券を手に入れてしまっていたぞ!
しかしこまったなー!二人分しかないや!
これでは全員行けないな!」
「仕方がありませんね橙さん!ここは上田さんと茜さんに行って頂くしかありません!」
「そうだな!」
「吉静もお兄ちゃんとママの二人に行って欲しいな!」
「吉静ちゃんは茜さんだけママかー、俺はパパとして役不足なのかなー」
おおこれはなんて重病なんでしょう!
すぐにでも温泉かどこかで湯治をする必要があります!
ちなみに私の出番は以上です!」
「あっ、ちょ、待てサ……」
「なんてことだ!偶然だが私は福引きで登別の温泉宿の無料宿泊券を手に入れてしまっていたぞ!
しかしこまったなー!二人分しかないや!
これでは全員行けないな!」
「仕方がありませんね橙さん!ここは上田さんと茜さんに行って頂くしかありません!」
「そうだな!」
「吉静もお兄ちゃんとママの二人に行って欲しいな!」
「吉静ちゃんは茜さんだけママかー、俺はパパとして役不足なのかなー」
茶番がどうでも良いレベルで泣けてきた。
泣けてきた。
泣けてきた。
「皆さん良いんですか?折角だから彼方さんと橙さんで行って頂いても……」
「いえいえ良いんですよ、お二人ともゆっくりと羽を伸ばしてください!」
「いやでも大人も居ないと……」
「いえいえ良いんですよ、お二人ともゆっくりと羽を伸ばしてください!」
「いやでも大人も居ないと……」
そう言った瞬間、いきなり事務所の扉が開いた。
「事務所の留守番は任せろー!」
「あれ……癸酉兄さんじゃないすか。
なにしてんすか、仕事どうしたんですか。
ついに首にされましたか。」
「ひ、ひどい!僕は単に長期休暇の間くらい学校町に滞在しようと……」
「あれ……癸酉兄さんじゃないすか。
なにしてんすか、仕事どうしたんですか。
ついに首にされましたか。」
「ひ、ひどい!僕は単に長期休暇の間くらい学校町に滞在しようと……」
扉の向こうには親戚のお兄さんが立っていた。
河伯癸酉という製薬会社にコネで勤める愉快なお兄さんである。
俺に様々な悪い、というか女遊びを教えた張本人でもある。
河伯癸酉という製薬会社にコネで勤める愉快なお兄さんである。
俺に様々な悪い、というか女遊びを教えた張本人でもある。
「よく取れましたね長期休暇。忙しいものだとばかり……。」
「ところがどっこい!お見合いが嫌で逃げてきたのさ!」
「…………。」
「まだ独身で居たい。」
「…………。」
「さっさと新婚旅行とやらに行ってこいよー。
つうか式もあんな地味にしちゃってさあ。
勘当喰らってるって言ってももうちょっと派手にして良いだろ。
気になったから調べたけどお前相当溜めてるじゃないか。
これ以上溜めてどうするんだよ、金は天下の回り物だよ?
経済活動の血液だよ?」
「ところがどっこい!お見合いが嫌で逃げてきたのさ!」
「…………。」
「まだ独身で居たい。」
「…………。」
「さっさと新婚旅行とやらに行ってこいよー。
つうか式もあんな地味にしちゃってさあ。
勘当喰らってるって言ってももうちょっと派手にして良いだろ。
気になったから調べたけどお前相当溜めてるじゃないか。
これ以上溜めてどうするんだよ、金は天下の回り物だよ?
経済活動の血液だよ?」
「いやだっていつ何があるか解らないんで……。
せめてこいつらが成人して立派にやっていくまでは……。」
「あらやだいかにも家族居ますからみたいな思考しやがって。
いつからそんな小さい男になった!
お兄さんは大空を飛ぶことを夢見ていたお前が好きだったぞ!」
「うぅ……。」
「でも良いさ。お前は今此処にある幸せを守っている。
それは僕にはできない立派なことだ。
偉いよ、うん。
だからとりあえず新婚旅行だかなんだか行ってこい!」
せめてこいつらが成人して立派にやっていくまでは……。」
「あらやだいかにも家族居ますからみたいな思考しやがって。
いつからそんな小さい男になった!
お兄さんは大空を飛ぶことを夢見ていたお前が好きだったぞ!」
「うぅ……。」
「でも良いさ。お前は今此処にある幸せを守っている。
それは僕にはできない立派なことだ。
偉いよ、うん。
だからとりあえず新婚旅行だかなんだか行ってこい!」
癸酉兄さんがドヤッて顔をしている。
だが彼方とレモンと吉静がうわぁ……って目で奴を見ていた。
茜さんは苦笑いだった。
だが彼方とレモンと吉静がうわぁ……って目で奴を見ていた。
茜さんは苦笑いだった。
「あくまで湯治ってことで送り出す予定だったんだけどなあ……」
「癸酉さん話に聞くより遙かにうっかり屋さんですね……。」
「駄目だよ癸酉さん!」
「え、あ、いや……ごめん。と、とにかく行ってこい!」
「兄さんの命令なら仕方ない、仕事休んで行きますよええ。
そもそも俺だって茜さんと一緒に旅行には行って上げたかったしね。
……というわけで来てくれるか?」
「はい、電車の予約はもう出来ているので駅まで急いでください。」
「えっ」
「癸酉さん話に聞くより遙かにうっかり屋さんですね……。」
「駄目だよ癸酉さん!」
「え、あ、いや……ごめん。と、とにかく行ってこい!」
「兄さんの命令なら仕方ない、仕事休んで行きますよええ。
そもそも俺だって茜さんと一緒に旅行には行って上げたかったしね。
……というわけで来てくれるか?」
「はい、電車の予約はもう出来ているので駅まで急いでください。」
「えっ」
俺抜きで話はそこまで進んでいたのか……。
もうやだこいつらの計画性。あと二十年したら引退しよう。
あと二十年と言ったら俺は四十代だろ……、多分あの人の言うとおり、俺は戦えなくなってるだろうし。
もうやだこいつらの計画性。あと二十年したら引退しよう。
あと二十年と言ったら俺は四十代だろ……、多分あの人の言うとおり、俺は戦えなくなってるだろうし。
「ほら行きますよ明也さん。」
「え、あ、はーい。」
「え、あ、はーい。」
素直に手を引かれて事務所を出る。
「じゃあ行ってくるからな。お土産買ってくるからそこそこ楽しみにしていろ。」
「はーい」
「はーい」
「はーい」
「はーい!」
「なんで兄さんが一番ハイテンションなんですか。」
「家帰りたくないからお前ら長めに逗留してくれよ!マジあの不細工ありえないんだけど!」
「兄さん、貴方みたいな残念な人に縁談が持ち上がることが奇跡なんですから自覚してください。」
「うわあああああああ!残念っていうなあ!」
「はーい」
「はーい」
「はーい」
「はーい!」
「なんで兄さんが一番ハイテンションなんですか。」
「家帰りたくないからお前ら長めに逗留してくれよ!マジあの不細工ありえないんだけど!」
「兄さん、貴方みたいな残念な人に縁談が持ち上がることが奇跡なんですから自覚してください。」
「うわあああああああ!残念っていうなあ!」
さて、兄さんが死にたそうな顔し始めたところでさっさと駅まで行くか。
地下鉄に乗って駅まで直行する。
新婚旅行とか言われるとなんていうかこう、妙に緊張するなあ。
そもそも何気ない旅行は茜さんが前から言っていたから行くつもりだったが
新婚旅行と言うのが気になる。
これはあれだろうか、改めて二人の関係を見直すべきなのだろうか。
思えば今まで迷惑かけっぱなしだったな……。
自分のことばかり考えて二人で、というかあいつらも含めた家族で過ごすことを考えてなかったな。
思い出せば思い出すほどに申し訳がない気持ちが湧いてくる。
そう、俺は昔から自分のことしか興味無い人間だった。
やっぱりこういうのは良くないな、せめてこれからは家族に迷惑かけないで生きていこう。
色々生き方を省みた結果、下らないと思っていた所謂「倫理的な物の考え方」に落ち着くなんて。
我ながら馬鹿げている。だがしかしそれが一番正しいことだったのか……。
地下鉄に乗って駅まで直行する。
新婚旅行とか言われるとなんていうかこう、妙に緊張するなあ。
そもそも何気ない旅行は茜さんが前から言っていたから行くつもりだったが
新婚旅行と言うのが気になる。
これはあれだろうか、改めて二人の関係を見直すべきなのだろうか。
思えば今まで迷惑かけっぱなしだったな……。
自分のことばかり考えて二人で、というかあいつらも含めた家族で過ごすことを考えてなかったな。
思い出せば思い出すほどに申し訳がない気持ちが湧いてくる。
そう、俺は昔から自分のことしか興味無い人間だった。
やっぱりこういうのは良くないな、せめてこれからは家族に迷惑かけないで生きていこう。
色々生き方を省みた結果、下らないと思っていた所謂「倫理的な物の考え方」に落ち着くなんて。
我ながら馬鹿げている。だがしかしそれが一番正しいことだったのか……。
「明也さん。」
「え?」
「何を難しい顔しているんですか。」
「いや、これからはもっと皆のことを考えて生きていこうかなと考えてたり……」
「もう……だから湯治とか温泉旅行って名目にしたかったのに……。」
「いや、やっぱり家族のことを見直す機会かなあと……」
「良いんですよ、貴方はそのままで。私がそれを支えますから。
何のために私は貴方の命を助けたと思っているのですか。」
「え、あ、はぁ……ごめんなさい。」
「解ればよろしい。それじゃあこれから長い電車の旅です。
一週間か二週間か知らないけどとにかく楽しみますよ!」
「え?」
「何を難しい顔しているんですか。」
「いや、これからはもっと皆のことを考えて生きていこうかなと考えてたり……」
「もう……だから湯治とか温泉旅行って名目にしたかったのに……。」
「いや、やっぱり家族のことを見直す機会かなあと……」
「良いんですよ、貴方はそのままで。私がそれを支えますから。
何のために私は貴方の命を助けたと思っているのですか。」
「え、あ、はぁ……ごめんなさい。」
「解ればよろしい。それじゃあこれから長い電車の旅です。
一週間か二週間か知らないけどとにかく楽しみますよ!」
まるで子供みたいに無邪気に笑う茜さん。
そうだな、面倒なことは考えないで少しゆっくりするとしようか。
地下鉄が学校町の駅につく。
地下鉄の車両から降りて駅へと続く階段に脚をかけた時、突然後ろから悲鳴が上がった。
そうだな、面倒なことは考えないで少しゆっくりするとしようか。
地下鉄が学校町の駅につく。
地下鉄の車両から降りて駅へと続く階段に脚をかけた時、突然後ろから悲鳴が上がった。
「……あれ?」
足下がふらつく。
何かが刺さっている?
俺の身体に、何かが刺さっている。
何かが刺さっている?
俺の身体に、何かが刺さっている。
「おっかしいなあ、生きてるよ。急所を貫いた筈なのに。
あ、どうもこんにちわ。俺、桐咲筑紫って言います。何処にでも居る普通の刺客です。」
あ、どうもこんにちわ。俺、桐咲筑紫って言います。何処にでも居る普通の刺客です。」
俺の背中を、“シャーペン”で少年が刺している。
「知らないのか少年、俺こと笛吹丁は不死身だ。」
茜さんが目にも止まらぬ早さで少年を殴り飛ばした。
ネコのように空中をクルクルと回転しながら壁に着地した少年はにやあと笑う。
ネコのように空中をクルクルと回転しながら壁に着地した少年はにやあと笑う。
「すげえ、話に聞いた以上だ。腕折れちまったかも!」
「打撃の勢いが殺された?明也さん、あの人妙なテク使ってます。
これ以上やると人目につきますし一旦逃げ……」
「打撃の勢いが殺された?明也さん、あの人妙なテク使ってます。
これ以上やると人目につきますし一旦逃げ……」
と、俺の方を向いた茜さんがポカーンと口を開ける。
目の前の桐咲とか言う少年も俺の様子を見て唖然としていた。
何を驚くことがあるだろうか。
例え此処がどこであろうが“敵に向けて散弾銃をぶち込む”ぐらい当然だ。
俺は服の袖に隠していた銃器を地下鉄のホームで敵に向けて撃ち込んだだけだ。
大量の弾丸を一度に撃ち込まれれば勢いを殺すなんて出来ない筈だ。
流れ弾?
まあ壁を背にしてくれてるし、壁は貫通できないでしょ。
大丈夫大丈夫。
目の前の桐咲とか言う少年も俺の様子を見て唖然としていた。
何を驚くことがあるだろうか。
例え此処がどこであろうが“敵に向けて散弾銃をぶち込む”ぐらい当然だ。
俺は服の袖に隠していた銃器を地下鉄のホームで敵に向けて撃ち込んだだけだ。
大量の弾丸を一度に撃ち込まれれば勢いを殺すなんて出来ない筈だ。
流れ弾?
まあ壁を背にしてくれてるし、壁は貫通できないでしょ。
大丈夫大丈夫。
「そして、だ。俺は不死身だが……、お前は死ぬよな?」
引き金を引いた。少年は動かない。
「じゃ、行くか。」
「傷は大丈夫なんですか?」
「唾付けときゃ治る、今晩は宿でゆっくりペロペロしてもらおうかな。」
「傷は大丈夫なんですか?」
「唾付けときゃ治る、今晩は宿でゆっくりペロペロしてもらおうかな。」
「ま、待て……!」
「まだ生きていたのか。」
「明也さん何する気ですか?」
「とりあえずこうした後に……。」
「まだ生きていたのか。」
「明也さん何する気ですか?」
「とりあえずこうした後に……。」
サンジェルマンからガメていた記憶消去装置を起動させる。
これでとりあえず契約者以外の周囲の人間の記憶は消せたはずだ。
これでとりあえず契約者以外の周囲の人間の記憶は消せたはずだ。
「お前、赤い部屋は好きか?」
首筋に手刀を決める。
よし、気絶した。
よし、気絶した。
「成る程、返事がない。じゃあ大丈夫だな。」
意識のなくなっている襲撃者を赤い部屋に無理矢理拉致すると
俺は茜さんの手を引いて電車に向けて走り出した。
俺は茜さんの手を引いて電車に向けて走り出した。
【上田明也の探偵倶楽部after.act25~そうだ、京都に行こう~】