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連載 - ハーメルンの笛吹き-121

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【上田明也の奇想曲36~焼き肉に行きました~】

「焼き肉!焼き肉!焼き肉焼き肉ぅ!」
「彼方隊員、翻訳しろ。」
「はい、どうも最近この町にできた焼肉番頭って店に行きたがってるみたいです。」
「ご苦労、下がって良い。」
「はい。」
「橙隊員、焼き肉屋に行った場合想定されるリスクを述べたまえ。」
「まあその焼肉番頭とやらが子供料金……じゃないや、子供料金で肉を根こそぎにされる。
 そのことによって店に莫大な赤字が生まれ、私達が入店禁止になる。」
「ふむ。そういえばまだオープンセールをやっているらしいじゃないか。
 茜隊員、チラシに付いていたクーポンは保管してあるか?」
「ドリンクが無料になるらしいです。あと小学校入学前の子供は料金無料だそうです。」
「惜しいな、あと一年早くできていれば良かったものを……。」

 日曜日、お昼前、笛吹探偵事務所。
 穀雨隊員が突如意味不明の単語を叫びながら暴れ始める。
 彼方小隊長に通訳させたところ、どうやら焼き肉を所望しているとのこと。
 かくして我々は焼肉番頭とかいう焼き肉バイキングの店に行くことになったのだ。




「それじゃあ私お肉取ってくるね!」
「私待ってますよ。」
「茜さんが待っているなら俺も待っていようか。」
「じゃあ私達で肉は取ってこよう。」
「頼んだぞ子供組。」

 焼肉店に無事入店した我々は彼方小隊長を責任者に任命し、
 第一次肉確保部隊を編成、直ちに肉への攻撃をしかけた。

「彼方、吉静にはできるだけ肉以外を食わせて急いでお腹を満たさせろ。
 そうだな……野菜と米だ、あれは腹の中で結構残る。」
「了解しました。」
「所長、指示は良いがあの子はもう……。」

 吉静隊員が単騎で敵陣(お肉コーナー)に突撃を仕掛ける。
 戦利品多数、見ているだけで腹がふくれる。
 肉を取りに行く必要がなくなり、彼女が取ってきた肉を皆で分け合う。

「茜さん、焦げるぞ。」
「待ってください、まだです。」
「やはりポン酢だな……。」
「橙さん、さりげなく僕が育てた肉を持っていかないでくださいよ~。」

 吉静隊員の台詞が無くなる。
 彼女はとにかく食べている。
 茜隊員と肉の焼き加減について揉めている間に肉が消滅する。
 吉静隊員の肉を少し奪ったところ睨まれた。
 怖かった。




「あなた、肉はちゃんと焼かないと美味しくないと思いませんか?」
「おまえそれを言ったら焼きすぎは美味しくないってばさ。」
「あなたはカルビばっかりだから良いですけど私はホルモンメインなんですよ。
 ホルモーヌなんですよ、解りますか?」
「こういう場合は内臓よりも普通の肉食った方が良いと思うの。」
「彼方……、この店のピリ辛たれ……美味いぞ。」
「まさかー、僕辛いのは……うわ美味しい。」
「カロリー過多です。内臓で健康に済ませるのがブームなんです。
 そもそもあなただって肉焼かないでそんな赤い状態で食べて肉の味解ってるんですか?
 それともあれですか?
 原価が気になるんですか?
 出した金取り戻さないと気が済まない質ですか?」
「だって勿体ないだろう。それに焦げた物には発がん性物質が……」
「生焼けの物はお腹壊しますよ。」
「橙さん、ごま油に岩塩も美味しいです。」
「ほんとだ、というわけでポン酢あげるから肉をくれ。」
「えー……?」
「それにしたってちょっと焦げすぎてるじゃないか。」
「だからそれが良いって言ってるでしょうが。」
「勿体ないから食うね。」
「駄目!」
「いやこれはもう無理だっ……」

 ポタリ
 吉静の持ってきたスジ肉から油がしたたる。
 それが炭火に掛かり、引火。
 網の上で炎が舞う。







「……おぉう。」

 俺のカルビはもう無理だ。
 向かい側の彼方を見る。
 おお、根こそぎ檸檬に肉を持って行かれていたから被害0か。
 檸檬は?
 ああ……、前もって予測済みか。能力の無駄遣いですね解ります。
 茜さん……駄目だ、むしろ肉が良い感じに焼けると思って喜んでやがる。
 その時、トングが二回、宙を舞った。
 その様は正しく空を行く二羽の燕が如し。
 果たしてその秘剣の使い手は……やはりというべきか穀雨吉静だった。
 俺のカルビは彼女の双燕返し(只今命名)によって守られた。

「お兄ちゃん、自分のお肉は自分で守らないと駄目だよ!」
「え、ああ……ごめんなさい。」
「あとお兄ちゃんも茜お母さんも二人とも聞いて。」
「はい。」
「なんでしょうか。」
「うぇるだん、れあ、そんなのひとのかって。
 ほんとうにおにくがすきならばじぶんのすきなやきかたでさてぃすふぁくしょんすべき。
 とりあえずふたりとも私のミディアム食べておちついて。」
「……ごめんなさい。うわおいしい。」
「……いえこっちこそちょっとムキになってました。なにこれ肉汁が溢れてきます。」
「ヨーグルト美味しいぞ彼方。」
「橙さん、もうデザートですか?僕は寿司取ってきますね。」
「今は駄目だ、三十秒待ってからいけ。」
「はーい。」

 笛吹探偵事務所の面々は今日も平和で幸せだった。
【上田明也の奇想曲36~焼き肉に行きました~fin】

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