――テレビの中で煌めいていた、皆の「夢」の素敵な貴方。
叶うならば、私も貴方のようになりたかった。
叶うならば、私も貴方のようになりたかった。
◆
北条加蓮の重ねた年月は、ただ空虚なだけのものだった。
性質の悪い病なんかに付き纏われたせいで床に伏してばかりの、人並みの青春を送れない毎日。
他の大多数の少女達ならば当たり前に積み重ねていく、友情や恋心に満たされた思い出。それを持たない代わりに加蓮の心に刻まれていくのは、変わり映えのしない真っ白な室内が齎す閉塞感。
貴重な時間を無為に過ごすストレスだけを、ふつふつと募らせるだけだった。
だからだったのだろう。加蓮がアイドルという職業に憧れを抱いたのは。
歌声と舞踊で人々を魅了する彼女達の姿は、加蓮が夢見る充実感に満ち溢れた日常。
笑顔を届け、笑顔を受け取り、世界が笑顔で満たされる。
ああなれたらいいのにと、加蓮は実らぬ想いと知りながら抱いていた。
性質の悪い病なんかに付き纏われたせいで床に伏してばかりの、人並みの青春を送れない毎日。
他の大多数の少女達ならば当たり前に積み重ねていく、友情や恋心に満たされた思い出。それを持たない代わりに加蓮の心に刻まれていくのは、変わり映えのしない真っ白な室内が齎す閉塞感。
貴重な時間を無為に過ごすストレスだけを、ふつふつと募らせるだけだった。
だからだったのだろう。加蓮がアイドルという職業に憧れを抱いたのは。
歌声と舞踊で人々を魅了する彼女達の姿は、加蓮が夢見る充実感に満ち溢れた日常。
笑顔を届け、笑顔を受け取り、世界が笑顔で満たされる。
ああなれたらいいのにと、加蓮は実らぬ想いと知りながら抱いていた。
プロデューサーと名乗る男が加蓮の前に現れたのは、ようやく病の治療を終えて人並みの生活を送り始めた頃だった。
彼が加蓮に示したのは、念願のアイドルになるチャンス。
まさしく千載一遇のチャンス。二つ返事で受け入れようかという気持ちはすぐに生まれた。
しかし実際に口から出たのは、努力は趣味じゃないなんて気怠げな言い草。それはきっと、成果を出せないかもしれない自分自身を庇うための予防線だったのだろう。
そんな加蓮の態度に苦笑しながらもプロデューサーは加蓮を受け入れ、北条加蓮の新たな日々は始まりを告げた。
私を見つけてくれてありがとう。そんな感謝を彼に伝える勇気は、まだ無かった。
彼が加蓮に示したのは、念願のアイドルになるチャンス。
まさしく千載一遇のチャンス。二つ返事で受け入れようかという気持ちはすぐに生まれた。
しかし実際に口から出たのは、努力は趣味じゃないなんて気怠げな言い草。それはきっと、成果を出せないかもしれない自分自身を庇うための予防線だったのだろう。
そんな加蓮の態度に苦笑しながらもプロデューサーは加蓮を受け入れ、北条加蓮の新たな日々は始まりを告げた。
私を見つけてくれてありがとう。そんな感謝を彼に伝える勇気は、まだ無かった。
アイドルの卵としての毎日は、ひたすらに苦悩の日々だった。
最初に漏らした言葉に反し、加蓮としては出来る限りの努力をした。それどころか、多少の無理すらしているつもりだった。
なのに、身体がまるでついてこない。すぐに息を上げ、簡単に調子を崩し、払った苦労に見合うだけの対価を加蓮に与えない。
病床に伏した期間の長さ、人並みの体力すら持たない虚弱さ、自分自身の肉体が障害となる。加蓮の夢にとっての枷は、他ならぬ加蓮自身だった。
先輩や同僚の少女達がアイドルとして芽吹く転機を掴むのを横目に、成果の出てくれない練習を積むだけ。
加蓮を閉じ込める空間が、病室からレッスンルームに変わっただけじゃないか。
ただ、焦燥だけが加蓮を蝕みつつあった。
少しずつ実力は上がっていると褒めてくれるプロデューサーの前で、結局目に見えた結果を出せない申し訳なさも焦燥の中には含まれていた。
彼を喜ばせたい、たったそれだけのことがあまりに難しかった。
最初に漏らした言葉に反し、加蓮としては出来る限りの努力をした。それどころか、多少の無理すらしているつもりだった。
なのに、身体がまるでついてこない。すぐに息を上げ、簡単に調子を崩し、払った苦労に見合うだけの対価を加蓮に与えない。
病床に伏した期間の長さ、人並みの体力すら持たない虚弱さ、自分自身の肉体が障害となる。加蓮の夢にとっての枷は、他ならぬ加蓮自身だった。
先輩や同僚の少女達がアイドルとして芽吹く転機を掴むのを横目に、成果の出てくれない練習を積むだけ。
加蓮を閉じ込める空間が、病室からレッスンルームに変わっただけじゃないか。
ただ、焦燥だけが加蓮を蝕みつつあった。
少しずつ実力は上がっていると褒めてくれるプロデューサーの前で、結局目に見えた結果を出せない申し訳なさも焦燥の中には含まれていた。
彼を喜ばせたい、たったそれだけのことがあまりに難しかった。
そんな加蓮にも転機は訪れた。
とある先輩アイドルを主役として開催するライブに、バッグダンサーとして参加するチャンスが与えられたのだ。
レッスンの合間に垣間見たプロデューサーのせわしない働きぶりを見るに、加蓮にこの席を用意するために相当の苦労をしたのだろう。
嬉しかった。そして同じくらい、怖かった。
いざ舞台を与えられてみれば、自分に出来るのかなんて怖気づいてしまうのが現実。元が病人、成長の実感も無い。もしも失敗すれば、彼の顔に泥を塗る羽目になる。否定の理由だけは十分なほどに挙げられた。
それでも引き受けようと思ったのは、プロデューサーが後押ししてくれ、仲間達も応援してくれたから。
彼等の声があるおかげで自分だって出来る人間なんだと、信じられる気がしたから。
いや、本当はただ信じたいだけだったのかもしれない。加蓮が、そして加蓮以外の誰もが。
とある先輩アイドルを主役として開催するライブに、バッグダンサーとして参加するチャンスが与えられたのだ。
レッスンの合間に垣間見たプロデューサーのせわしない働きぶりを見るに、加蓮にこの席を用意するために相当の苦労をしたのだろう。
嬉しかった。そして同じくらい、怖かった。
いざ舞台を与えられてみれば、自分に出来るのかなんて怖気づいてしまうのが現実。元が病人、成長の実感も無い。もしも失敗すれば、彼の顔に泥を塗る羽目になる。否定の理由だけは十分なほどに挙げられた。
それでも引き受けようと思ったのは、プロデューサーが後押ししてくれ、仲間達も応援してくれたから。
彼等の声があるおかげで自分だって出来る人間なんだと、信じられる気がしたから。
いや、本当はただ信じたいだけだったのかもしれない。加蓮が、そして加蓮以外の誰もが。
結論だけ言えば、失敗だった。
何百人もの観客の歓喜の眼差しが注がれるそのステージの上で、ライブの盛り上がりが最高潮に達しようかと言う局面に至って、加蓮の身体は突然に貧血を起こして失神し、ばたりと倒れ込んだ。
その後のライブがどうなったのか、加蓮は正確には知らない。プロデューサーは大丈夫だから気に病むなとしか告げなかったし、先輩のアイドルもあのくらいどうってことないと笑っていたから。
しかしプロデューサーが方々に謝り倒している姿を見れば、自分の犯した失態が決して軽くないことは容易に理解出来た。その後ろ姿の小ささを見て、気に病むなという方が無理な話だ。
先輩のアイドルが見せた笑顔から僅かに感じ取れた疲労も、その本心を加蓮に勘ぐらせるには十分だった。本当の気持ちなんて本人以外に分かりようが無いから、加蓮の中で築き上げられた憶測が全てとなる。
その後のライブがどうなったのか、加蓮は正確には知らない。プロデューサーは大丈夫だから気に病むなとしか告げなかったし、先輩のアイドルもあのくらいどうってことないと笑っていたから。
しかしプロデューサーが方々に謝り倒している姿を見れば、自分の犯した失態が決して軽くないことは容易に理解出来た。その後ろ姿の小ささを見て、気に病むなという方が無理な話だ。
先輩のアイドルが見せた笑顔から僅かに感じ取れた疲労も、その本心を加蓮に勘ぐらせるには十分だった。本当の気持ちなんて本人以外に分かりようが無いから、加蓮の中で築き上げられた憶測が全てとなる。
加蓮に親しい者達は皆、手痛い非難を直接浴びせることはしなかった。しかし、そんな事実は加蓮の心を救いはしない。
ようやく手にした初めての仕事で、目も当てられない失敗。よりにもよって、他人を思い切り巻き込む形で。こんな経験の後で、元気など簡単に出せたものではない。
これからアイドルとしてやっていけるのか。また同じような機会を与えられても、いつどのタイミングで同じような失敗を犯すか分かったものではないのに。今は笑って許してくれる周囲の人間に、これから何度の迷惑を掛ければ済むのだろうか。
ある時ふと耳にしたのは、やっぱり駄目だったじゃん、病み上がりだもんね、なんて嗤い合う誰かの声。その声色はいつかきっと、加蓮の聴覚を埋め尽くすのではないか。
ようやく手にした初めての仕事で、目も当てられない失敗。よりにもよって、他人を思い切り巻き込む形で。こんな経験の後で、元気など簡単に出せたものではない。
これからアイドルとしてやっていけるのか。また同じような機会を与えられても、いつどのタイミングで同じような失敗を犯すか分かったものではないのに。今は笑って許してくれる周囲の人間に、これから何度の迷惑を掛ければ済むのだろうか。
ある時ふと耳にしたのは、やっぱり駄目だったじゃん、病み上がりだもんね、なんて嗤い合う誰かの声。その声色はいつかきっと、加蓮の聴覚を埋め尽くすのではないか。
今までの人生で積み重ねた経験の乏しさは、到底埋められそうにない。
北条加蓮は、結局、周囲の期待に応えられない人間。
失望だけが、加蓮の全てを呑み込んでいた。
北条加蓮は、結局、周囲の期待に応えられない人間。
失望だけが、加蓮の全てを呑み込んでいた。
加蓮がアイドル事務所を立ち去ったのは、ライブから五日ほど経った頃のことだった。
呼び止めるプロデューサーや仲間達の声に、耳を傾けたくなかった。一瞬だけ視界の端に映った彼等の今にも泣き出しそうな顔からも、すぐに目を背けた。
こうして、北条加蓮のシンデレラストーリーには呆気なく幕が下ろされたのである。
ありがとうは、結局一度も言えなかった。
ごめんなさいは、何度だって吐き出せたのに。
呼び止めるプロデューサーや仲間達の声に、耳を傾けたくなかった。一瞬だけ視界の端に映った彼等の今にも泣き出しそうな顔からも、すぐに目を背けた。
こうして、北条加蓮のシンデレラストーリーには呆気なく幕が下ろされたのである。
ありがとうは、結局一度も言えなかった。
ごめんなさいは、何度だって吐き出せたのに。
アイドルという「夢」を手放す代わりに手に入れた、ただの平凡な女子高生としての毎日。熱中出来る代わりの何かを見つけられない、鬱屈とした時間。
あの後の彼等がどのような未来を歩んだのか、加蓮は知る由も無い。顔や声を聞く度に傷を抉られるような息苦しさがあって、それが嫌で彼等の情報を取り入れないように努めたから。
当然、いつしか彼等からの連絡もぴたりと来なくなった。
日々の刺激を漫然と受け流す代わりに、ひたすら繰り返すのは過ぎ去った時間を悔いるという作業。
どこから間違えていたのだろう。
ライブ前の体調管理が及ばなかったことか。バックダンサーの仕事を引き受けたことか。日々の体力作りが不完全だったことか。アイドルとなる前に、病を抱えて生まれてしまったことか。
不必要に入り組んだ迷路。時間をかけて辿り着くゴールはいつも、達成感の得られない空っぽの空間。その度に生み出されるのは「とにかくやり直せたらいいのに」なんて漠然とした願望。
結局、傷を抉られるような息苦しさのせいで加蓮はいつも思考を打ち切る。
あの後の彼等がどのような未来を歩んだのか、加蓮は知る由も無い。顔や声を聞く度に傷を抉られるような息苦しさがあって、それが嫌で彼等の情報を取り入れないように努めたから。
当然、いつしか彼等からの連絡もぴたりと来なくなった。
日々の刺激を漫然と受け流す代わりに、ひたすら繰り返すのは過ぎ去った時間を悔いるという作業。
どこから間違えていたのだろう。
ライブ前の体調管理が及ばなかったことか。バックダンサーの仕事を引き受けたことか。日々の体力作りが不完全だったことか。アイドルとなる前に、病を抱えて生まれてしまったことか。
不必要に入り組んだ迷路。時間をかけて辿り着くゴールはいつも、達成感の得られない空っぽの空間。その度に生み出されるのは「とにかくやり直せたらいいのに」なんて漠然とした願望。
結局、傷を抉られるような息苦しさのせいで加蓮はいつも思考を打ち切る。
望み通りの過去を手に入れられるなら、何だって捧げられる気がした。どんな酷い真似だって出来る気がした。
理想郷へと連れて行ってくれる人さえ傍にいたなら、たとえ道程が修羅でも構わない。かつてのプロデューサーのように、今の自分を見つけてくれる人がいたなら。
なんて、荒唐無稽な虚仮威しに過ぎない思考が渦巻く程度には、未来へと進む加蓮の時は無味乾燥としていた。
理想郷へと連れて行ってくれる人さえ傍にいたなら、たとえ道程が修羅でも構わない。かつてのプロデューサーのように、今の自分を見つけてくれる人がいたなら。
なんて、荒唐無稽な虚仮威しに過ぎない思考が渦巻く程度には、未来へと進む加蓮の時は無味乾燥としていた。
「夢」を「夢」で終わらせたバッドエンド。そんな彼女のエピローグは、ただの空虚だった。
◆
私は、「夢」を見ていた。
それはある英霊の、とある一人のヒーローの軌跡。
それはある英霊の、とある一人のヒーローの軌跡。
――衰え始めた人間なんて要らないんだよ。
必要なだけの力を出せない自分自身が、彼にとっての現実。
衰えた彼自身の肉体こそが、彼の前に聳え立つ高い壁。
かつての輝きを鈍らせてしまった彼を不要とする人間が現れるのも、当たり前のことだった。
衰えた彼自身の肉体こそが、彼の前に聳え立つ高い壁。
かつての輝きを鈍らせてしまった彼を不要とする人間が現れるのも、当たり前のことだった。
――これ以上、足手纏いにはなりたくねえんだよ。
――その程度だったんですか? 貴方のヒーローに対する思いは。
――そろそろ別の道を進むのも、悪くねえんじゃねえのか?
――その程度だったんですか? 貴方のヒーローに対する思いは。
――そろそろ別の道を進むのも、悪くねえんじゃねえのか?
本当は、彼だって諦めたくなかったはずだ。
しかし現実の厳しさを突き付けられ、彼は栄光の座を下りるしかなかった。
衰えた事実それ自体よりも、自分の存在が相棒にとっての枷になることをきっと彼は恐れたのだ。
しかし現実の厳しさを突き付けられ、彼は栄光の座を下りるしかなかった。
衰えた事実それ自体よりも、自分の存在が相棒にとっての枷になることをきっと彼は恐れたのだ。
――最後に皆さんへの一言が、「ByeBye」だそうです。
こうして、彼の姿は表舞台から消えていく。
色褪せた偶像の末路として、これは必然だったのだろう。
色褪せた偶像の末路として、これは必然だったのだろう。
――全然分かってない。今まであいつの何を見てたの? バーナビーはちゃんと理想を追ってるよ!
――難しいことわかんないけどさ、ヒーローやりたいならやればいいじゃん! それが一番お父さんらしいと思うよ、私は。
――難しいことわかんないけどさ、ヒーローやりたいならやればいいじゃん! それが一番お父さんらしいと思うよ、私は。
なのに、彼の物語はバッドエンドで締め括られない。
彼の周りには、腑抜けた彼に発破をかける人達がいた。
言い訳をして胸の奥に押し込んだ彼の本心を引きずり出してくれる人達がいた。
彼の周りには、腑抜けた彼に発破をかける人達がいた。
言い訳をして胸の奥に押し込んだ彼の本心を引きずり出してくれる人達がいた。
――もしもしタイガー、司法局のGOが出たわ! 一日限定で二部ヒーロー復活よ!
――ここは俺達に任せてください!
――おー、いたいた! 早く乗れタイガー!
――ここは俺達に任せてください!
――おー、いたいた! 早く乗れタイガー!
彼が日陰者になった後でも、復活の機会を作るために手を尽くす人達がいてくれた。
そう、彼の積み重ねた努力と活躍の日々は、逆境に立たされた彼を見捨てない。
彼の秘めた輝きを知る沢山の人々が、彼を後押ししてくれる。
そして皆の存在を知ることが出来たなら、彼の取るべき道は決まっている。
そう、彼の積み重ねた努力と活躍の日々は、逆境に立たされた彼を見捨てない。
彼の秘めた輝きを知る沢山の人々が、彼を後押ししてくれる。
そして皆の存在を知ることが出来たなら、彼の取るべき道は決まっている。
――俺は誰かに必要とされたくてヒーローやってんじゃねぇんだ……
――ヒーローなどと気取りながら、悪を裁かぬ貴様に何が出来る!?
――俺はただ、助けを求めている人がいたら手を差し伸べる……それだけだ!!
――ヒーローなどと気取りながら、悪を裁かぬ貴様に何が出来る!?
――俺はただ、助けを求めている人がいたら手を差し伸べる……それだけだ!!
精一杯のエールを受け取った彼は、遂に自らの最高の輝きを取り戻した。
他の誰かにそうあれと命じられるのではない、彼自身の口でこうあるのだと宣言する。
あるがままの自分を受け入れて、肯定する。
最後に彼をヒーローたらしめたのは、他でもない彼自身だったのだ。
他の誰かにそうあれと命じられるのではない、彼自身の口でこうあるのだと宣言する。
あるがままの自分を受け入れて、肯定する。
最後に彼をヒーローたらしめたのは、他でもない彼自身だったのだ。
――いいか! これはライアン様からのアドバイスだ。こいつの相方は、お前しかいねえ!
――代理として、私が二人の復帰を認めます!
――ワイルドタイガーはね、ぼくがこまってるのをたすけてくれたんだよ! だからワイルドタイガーはヒーローだよ!
――先輩は俺達の憧れですから!
――タイガー! タイガー!! タイガー!!! タイガー!!!!
――代理として、私が二人の復帰を認めます!
――ワイルドタイガーはね、ぼくがこまってるのをたすけてくれたんだよ! だからワイルドタイガーはヒーローだよ!
――先輩は俺達の憧れですから!
――タイガー! タイガー!! タイガー!!! タイガー!!!!
彼の雄姿は自然と大勢の人々の心を動かし、躍らせ、惹き付けた。
一度失ったはずの彼の居場所もまた、気付けば再び用意されていた。
一度失ったはずの彼の居場所もまた、気付けば再び用意されていた。
――いいのかよ?
――この流れじゃ断れませんよ。まあいいでしょう。貴方がいると、僕が引き立ちますから。
――この流れじゃ断れませんよ。まあいいでしょう。貴方がいると、僕が引き立ちますから。
相棒の声に込められた感情が額面通りの侮蔑じゃないことなんか、誰の耳にも明らかだ。
彼の意思と彼以外の皆の意思の合致。それはつまり、彼の復活という事実を意味していた。
紛れも無いハッピーエンド。
諦めかけた未来まで繋がる道へと舞い戻り、ヒーローの日々はここからまた始まっていく。
こうして、彼の物語は「末永く幸せに暮らしましたとさ」なんてお決まりの文句でフィナーレを迎える。
彼の意思と彼以外の皆の意思の合致。それはつまり、彼の復活という事実を意味していた。
紛れも無いハッピーエンド。
諦めかけた未来まで繋がる道へと舞い戻り、ヒーローの日々はここからまた始まっていく。
こうして、彼の物語は「末永く幸せに暮らしましたとさ」なんてお決まりの文句でフィナーレを迎える。
それは、とある一人のヒーローの軌跡。
それは、自らの限界に至ってなお理想郷へと辿り着いた英霊の復活譚。
それは、聳え立つ壁の高さに挫折した男が、人々に支えられながら壁を乗り越え「夢」を掴み取った物語。
それは、自らの限界に至ってなお理想郷へと辿り着いた英霊の復活譚。
それは、聳え立つ壁の高さに挫折した男が、人々に支えられながら壁を乗り越え「夢」を掴み取った物語。
それは、あの日の私に選べなかった可能性が、いつかの未来で辿り着いたのかもしれない結末。
◆
長椅子に並んでホットドッグを仲良く貪る一組の男女。
その姿は、傍目にはきっと恋人同士になど見えるまい。年齢に二回りほど差のありそうな二人の姿を見れば、友人や兄弟よりは親子と見るのが妥当だろう。片方が制服の女子高生だからと言って不純な関係に見られるのだけは勘弁と、加蓮は口に出さずに願う。
加蓮の目から見てもうだつが上がらないおじさんという印象を受ける風貌の男だが、しかし紛れも無く彼は『ヒーロー』の名を冠した加蓮のサーヴァントである。
アイドルを辞めてから何日か何週間か、もしかしたら何か月か経った頃、ふと気付けば加蓮は冬木の街に立っていた。それから数刻の時を経て出会ったのが、彼であった。
その姿は、傍目にはきっと恋人同士になど見えるまい。年齢に二回りほど差のありそうな二人の姿を見れば、友人や兄弟よりは親子と見るのが妥当だろう。片方が制服の女子高生だからと言って不純な関係に見られるのだけは勘弁と、加蓮は口に出さずに願う。
加蓮の目から見てもうだつが上がらないおじさんという印象を受ける風貌の男だが、しかし紛れも無く彼は『ヒーロー』の名を冠した加蓮のサーヴァントである。
アイドルを辞めてから何日か何週間か、もしかしたら何か月か経った頃、ふと気付けば加蓮は冬木の街に立っていた。それから数刻の時を経て出会ったのが、彼であった。
「戦争。もう始まっちゃうんでしょうね、タイガー」
彼には『ヒーロー』という聖杯戦争のために与えられた座があり、また『鏑木・T・虎徹』という生来の名前がある。
それなのに、加蓮が彼の名をどちらでもない『ワイルドタイガー』、略してタイガーと呼ぶのは、他でもないタイガー自身の望みだ。
『ワイルドタイガー』は、彼が街のヒーローとして活動するための二つ名。自ら選んだ仮初の名を掲げることは、今の自分が守られるべき市民と等しい存在では無く、市民を守る希望の象徴であろうとする意思表明なのだとタイガーは語った。
だから、タイガーは一市民としての自己を示す本名ではなく、また聖杯戦争――願いの名の下の潰し合いの駒としての自己を示す記号でもなく、『ワイルドタイガー』を今も頑なに名乗っている。
それなのに、加蓮が彼の名をどちらでもない『ワイルドタイガー』、略してタイガーと呼ぶのは、他でもないタイガー自身の望みだ。
『ワイルドタイガー』は、彼が街のヒーローとして活動するための二つ名。自ら選んだ仮初の名を掲げることは、今の自分が守られるべき市民と等しい存在では無く、市民を守る希望の象徴であろうとする意思表明なのだとタイガーは語った。
だから、タイガーは一市民としての自己を示す本名ではなく、また聖杯戦争――願いの名の下の潰し合いの駒としての自己を示す記号でもなく、『ワイルドタイガー』を今も頑なに名乗っている。
「……だな。ったく、何をどうすればこんな糞ったれたイベント思いつくんだか。しかもわざわざヒーローの俺を呼び出してよ。嫌味か?」
「呼ばれちゃったものはしょうがないよ。本当、嫌になる気持ちは分かるけどね」
「それに願いを叶える聖杯なんて餌まで吊るしやがって。悪趣味どころじゃねえぞ」
「呼ばれちゃったものはしょうがないよ。本当、嫌になる気持ちは分かるけどね」
「それに願いを叶える聖杯なんて餌まで吊るしやがって。悪趣味どころじゃねえぞ」
そう、ワイルドタイガーは英霊となって尚その信念を揺るがせない。
目の前を行き交う人々が送る日々の尊さ。これがワイルドタイガーを戦わせる理由である。
願いのためと言って争いを起こせば、必ず誰かが傷付くし死人だって出る。マスターには一切の怪我をさせないなんて都合の良い話が実現するとは限らず、それでなくとも戦争とは即ち暴力と被虐の肯定だ。
ヒーローは、ワイルドタイガーはそんな所業を許さない。ゆえに彼の取るスタンスは、聖杯戦争という儀式そのものへの反逆以外に無い。
目の前を行き交う人々が送る日々の尊さ。これがワイルドタイガーを戦わせる理由である。
願いのためと言って争いを起こせば、必ず誰かが傷付くし死人だって出る。マスターには一切の怪我をさせないなんて都合の良い話が実現するとは限らず、それでなくとも戦争とは即ち暴力と被虐の肯定だ。
ヒーローは、ワイルドタイガーはそんな所業を許さない。ゆえに彼の取るスタンスは、聖杯戦争という儀式そのものへの反逆以外に無い。
「だから戦うんでしょ? ヒーローはいつの時代も正しい皆の希望。でしょ? 期待してるんだから」
「……おう。そう言って貰えると助かるぜ」
「……おう。そう言って貰えると助かるぜ」
タイガーにとって唯一の懸念は、マスターがタイガーに独善的な戦いを強いたりしないかであった。
しかし、タイガーを召喚した加蓮が出会った翌日にはタイガーの信念にぴったり適合する意思を示したことで、その懸念はほぼ解消された。
北条加蓮とワイルドタイガーは二人で、あるいは仲間となる者達皆で力を合わせ、悪を食い止め聖杯戦争を止めさせる。その上で加蓮も含めた罪の無い全ての人々を、本来いるべき居場所へと還す。
これが、タイガー達の下した決定である。
しかし、タイガーを召喚した加蓮が出会った翌日にはタイガーの信念にぴったり適合する意思を示したことで、その懸念はほぼ解消された。
北条加蓮とワイルドタイガーは二人で、あるいは仲間となる者達皆で力を合わせ、悪を食い止め聖杯戦争を止めさせる。その上で加蓮も含めた罪の無い全ての人々を、本来いるべき居場所へと還す。
これが、タイガー達の下した決定である。
「頑張らなきゃね。お互いに」
加蓮はタイガーの意向に沿うことに納得している。そこには何の問題も無い。
だから、誰も何も憂慮するポイントなど無い。
今回の話は、これで終わりなのだ。
なのに何故、タイガーは今妙な沈黙を決め込んでいるのだろう。
加蓮の微笑み――自分でも少し白々しいと思う表情を、何故見つめているのだろう。
だから、誰も何も憂慮するポイントなど無い。
今回の話は、これで終わりなのだ。
なのに何故、タイガーは今妙な沈黙を決め込んでいるのだろう。
加蓮の微笑み――自分でも少し白々しいと思う表情を、何故見つめているのだろう。
「なあマスター。本当に、望みとか無いのか?」
恐る恐る、といった調子でタイガーは口を開いて加蓮に問うた。
とっくに結論など出したはずの、今更な話を。
とっくに結論など出したはずの、今更な話を。
「やだ、どうしたの急に。こんな所から皆で帰れたらいいって、何回も言ったじゃん」
「いや、俺って一応サーヴァントとしてここに呼ばれただろ? こういう時は、何かどうしても叶えたいこととか、やり直したい事がある奴がいたからって話なんだが……本当に、マスターは家に帰りたいってだけか?」
「……だから、そんなの勘違い。私みたいに、特に願いが無くてもマスターになっちゃう人もいるんだって。物事には例外ってのが付き物なの」
「いや、俺って一応サーヴァントとしてここに呼ばれただろ? こういう時は、何かどうしても叶えたいこととか、やり直したい事がある奴がいたからって話なんだが……本当に、マスターは家に帰りたいってだけか?」
「……だから、そんなの勘違い。私みたいに、特に願いが無くてもマスターになっちゃう人もいるんだって。物事には例外ってのが付き物なの」
最初は何も気にしてないというような気楽な笑顔で。なお食い下がってきたタイガーに対しての二度目は、ほんの少し曇ってしまった笑顔で。
加蓮は加蓮なりにタイガーに応える。笑顔はたくさん練習したから、そこに綻びは殆ど無い。
これでいいでしょ納得してよ。そんな苛立ちも、笑顔を上手に取り繕ったせいで伝わらない。
だからタイガーは、軽い調子で会話を続けてしまう。そのまま視線を前に向けたから、僅かに変貌を始めた加蓮の表情には気付けない。
加蓮は加蓮なりにタイガーに応える。笑顔はたくさん練習したから、そこに綻びは殆ど無い。
これでいいでしょ納得してよ。そんな苛立ちも、笑顔を上手に取り繕ったせいで伝わらない。
だからタイガーは、軽い調子で会話を続けてしまう。そのまま視線を前に向けたから、僅かに変貌を始めた加蓮の表情には気付けない。
「やっぱ、そういうもんか? ほら、年頃の娘だったら何かあるかなーって思ってよ。会えなくなった人に会いたいとか、夢を叶えたいとかさ」
「……違うって」
「……違うって」
そう言ってタイガーは、高く設置された大画面のモニターを指差す。
画面の中で放映されるのは幼い少女が二人と長身の少女が一人、愛らしい衣装に身を包んで歌い踊る姿だった。
かつて何度も見慣れ憧れた、アイドルの楽曲のコマーシャル。
加蓮の顔が強張ったのもタイガーはやはり見落とした。ゆえに、地雷は見事に踏み抜かれた。
画面の中で放映されるのは幼い少女が二人と長身の少女が一人、愛らしい衣装に身を包んで歌い踊る姿だった。
かつて何度も見慣れ憧れた、アイドルの楽曲のコマーシャル。
加蓮の顔が強張ったのもタイガーはやはり見落とした。ゆえに、地雷は見事に踏み抜かれた。
「例えば女の子だと、あんな感じにアイドルになりたいなー、とか」
「――だからさっきから無いって言ってんじゃんっ!!」
「――だからさっきから無いって言ってんじゃんっ!!」
気付けば、加蓮は立ち上がり叫んでいた。笑顔なんか、とっくに消し飛んでいた。
怒号に呼応するように周囲が一瞬しんと静まり返り、場違いなまでに元気な歌声だけがその場に虚しく響く。
一身に注がれる奇異の目と、ばつの悪そうなタイガーの顔が気まずくて、加蓮はすとんと座る。
すぐに人々は普段の様子を取り戻し、しかし二人の間から消えた和やかな雰囲気は取り戻せない。
怒号に呼応するように周囲が一瞬しんと静まり返り、場違いなまでに元気な歌声だけがその場に虚しく響く。
一身に注がれる奇異の目と、ばつの悪そうなタイガーの顔が気まずくて、加蓮はすとんと座る。
すぐに人々は普段の様子を取り戻し、しかし二人の間から消えた和やかな雰囲気は取り戻せない。
「…………ごめん」
「いや、なんか俺も悪かったよ。しょーもない詮索して」
「いや、なんか俺も悪かったよ。しょーもない詮索して」
お互いに謝ることは出来た。でも、ただそれだけ。
次の言葉を見つけられず、二人別々にあらぬ方向に視線を飛ばす。
居心地の悪い静けさだけが二人を包んでいた。
次の言葉を見つけられず、二人別々にあらぬ方向に視線を飛ばす。
居心地の悪い静けさだけが二人を包んでいた。
「……帰る」
「あ、おい待てって!」
「あ、おい待てって!」
無理矢理にでも空気を入れ替えられそうな選択として、加蓮はこの場を立ち去ることにした。
勿論タイガーはこうして追従するから、気まずさから解放されるわけではない。
ただ、黙って座るよりは歩きながら周りの風景に目を向ける方が、幾らか気が紛れそうだと思っただけだ。
全然関係の無い適当な話題を振るタイミングなんて、黙っていればそのうちやって来る。改めて言葉を重ねれば、加蓮の起こした癇癪なんてすぐに過去のものになり、互いにどうでも良くなるはずだ。
でも今はただ、頭を冷やすために時間を使いたかった。
勿論タイガーはこうして追従するから、気まずさから解放されるわけではない。
ただ、黙って座るよりは歩きながら周りの風景に目を向ける方が、幾らか気が紛れそうだと思っただけだ。
全然関係の無い適当な話題を振るタイミングなんて、黙っていればそのうちやって来る。改めて言葉を重ねれば、加蓮の起こした癇癪なんてすぐに過去のものになり、互いにどうでも良くなるはずだ。
でも今はただ、頭を冷やすために時間を使いたかった。
どうして、この人だったの。
その呟きが誰の耳にも拾われなかったのは、きっと幸いだったのだろう。
その呟きが誰の耳にも拾われなかったのは、きっと幸いだったのだろう。
◆
ワイルドタイガーは、私の「夢」とも言える存在。
だから私は、怖くなった。
本当に誰かを傷付けてしまうのが嫌だった。死なせた責任を負うことに怖気づいた。
でも何よりも怖かったのは、「貴方」を血で汚すことだった。
本当に誰かを傷付けてしまうのが嫌だった。死なせた責任を負うことに怖気づいた。
でも何よりも怖かったのは、「貴方」を血で汚すことだった。
弱虫の私には遂に実現出来なかった、ハンデを背負った人間のサクセスストーリー。
齎された機会を物にして成功者となったワイルドタイガーを、失敗者の私がもし主従の立場を盾に従わせたなら。
その瞬間に彼は私一人のためだけに独善家となり、彼の信念は見るも無残に捻じ曲げられるのだろう。
聖杯を手にする過程で憧れのヒーローはヒーローではなくなり、ワイルドタイガーの栄光の歴史には泥が塗られる。
それでいて、きっと理想の結果は得られない。悪に染まったヒーローに勝ち目なんてある訳が無くて、どうせ塵屑みたいに消えるだけ。
でも、私の過去を綺麗に塗り変えるためには、タイガーには消えてもらわなくてはならない。
最適のパートナーと一緒に勝ち残ることが、聖杯戦争のルールだから。
私が優勝するためには、絶対に優勝出来ないサーヴァントが不本意な最期を迎える必要がある。
シンデレラの成り損ないがシンデレラになるために、かつてのシンデレラが階段の下へと蹴落とされる。
齎された機会を物にして成功者となったワイルドタイガーを、失敗者の私がもし主従の立場を盾に従わせたなら。
その瞬間に彼は私一人のためだけに独善家となり、彼の信念は見るも無残に捻じ曲げられるのだろう。
聖杯を手にする過程で憧れのヒーローはヒーローではなくなり、ワイルドタイガーの栄光の歴史には泥が塗られる。
それでいて、きっと理想の結果は得られない。悪に染まったヒーローに勝ち目なんてある訳が無くて、どうせ塵屑みたいに消えるだけ。
でも、私の過去を綺麗に塗り変えるためには、タイガーには消えてもらわなくてはならない。
最適のパートナーと一緒に勝ち残ることが、聖杯戦争のルールだから。
私が優勝するためには、絶対に優勝出来ないサーヴァントが不本意な最期を迎える必要がある。
シンデレラの成り損ないがシンデレラになるために、かつてのシンデレラが階段の下へと蹴落とされる。
果たしてその時、私は私でいられるのか。
私の「IF」とも言うべき、けれど決して私ではない他人が嘆き苦しみ泣き叫ぶ様を見た時、私の浮かべる表情はどんな有様なのか。
私の「IF」とも言うべき、けれど決して私ではない他人が嘆き苦しみ泣き叫ぶ様を見た時、私の浮かべる表情はどんな有様なのか。
怖かった。知りたくなかった。だから、そんな可能性の詰まった箱に蓋をした。
足手纏いがいなければ、きっと皆でハッピーエンドへと走って行ける。呆れるくらいに簡単な話だった。
タイガーは誰もが望むヒーローで在り続け、ヒーローに庇護された人達の未来が守られる。
その後、約束通り私は彼の手で日常へと返される。あの、空っぽの日常へ。
きっとこれが、誰にとっても最良の結末。
足手纏いがいなければ、きっと皆でハッピーエンドへと走って行ける。呆れるくらいに簡単な話だった。
タイガーは誰もが望むヒーローで在り続け、ヒーローに庇護された人達の未来が守られる。
その後、約束通り私は彼の手で日常へと返される。あの、空っぽの日常へ。
きっとこれが、誰にとっても最良の結末。
その結末を迎えるためにも、私は私に出来ることをする。
私の願いを、胸の奥に仕舞い込む。
初めて出会った時にワイルドタイガーが私に向けた、明朗な綺麗な……何にも知らないあの笑顔。
彼に守られる私は、代わりに彼の笑顔を守るつもりだった。
こんなの思い上がりも甚だしい考え方だと分かっているけど、それでも、せめて。
……こうでも考えなければ、濁った何かが私の中から噴き出してしまうような気がした。
そんな本音も、胸の奥に仕舞い込む。
私の願いを、胸の奥に仕舞い込む。
初めて出会った時にワイルドタイガーが私に向けた、明朗な綺麗な……何にも知らないあの笑顔。
彼に守られる私は、代わりに彼の笑顔を守るつもりだった。
こんなの思い上がりも甚だしい考え方だと分かっているけど、それでも、せめて。
……こうでも考えなければ、濁った何かが私の中から噴き出してしまうような気がした。
そんな本音も、胸の奥に仕舞い込む。
私の「夢」を叶えるために、私の「夢」を汚してしまうのが怖かった。
だから私は、私の「夢」を諦める。私の「夢」を、守るために。
うん。きっと、これでいいんだと思う。
だから私は、私の「夢」を諦める。私の「夢」を、守るために。
うん。きっと、これでいいんだと思う。
――「夢」は、やっぱり永遠に「夢」のまま。
だって、貴方が私を見つけてしまったから。
だって、貴方が私を見つけてしまったから。
【マスター】
北条加蓮@アイドルマスターシンデレラガールズ
北条加蓮@アイドルマスターシンデレラガールズ
【マスターとしての願い】
アイドルになれなかった私を変えたかった。
アイドルになれなかった私を変えたかった。
【weapon】
特に無し。
特に無し。
【能力・技能】
アイドルとしての練習を積んだため、歌やダンスの腕前は常人より上。
しかし元病人ということもあって体力は平均レベル、あるいはそれ以下。
アイドルとしての練習を積んだため、歌やダンスの腕前は常人より上。
しかし元病人ということもあって体力は平均レベル、あるいはそれ以下。
【人物背景】
長い入院生活を余儀なくされていた元・病弱な女子高生。
テレビ画面の中のアイドルに憧れ、プロデューサーとの出会いをきっかけに自らアイドルデビューした。
当初は斜に構えた気怠げな態度を取るも、経験を積むうちに本来の真面目な素顔が前面に表れ、煌めく乙女へと変わっていく。
……というのは本来の歴史の話。
今ここにいる彼女が背負うのは、「夢を叶えられなかった北条加蓮」というIFの物語。
長い入院生活を余儀なくされていた元・病弱な女子高生。
テレビ画面の中のアイドルに憧れ、プロデューサーとの出会いをきっかけに自らアイドルデビューした。
当初は斜に構えた気怠げな態度を取るも、経験を積むうちに本来の真面目な素顔が前面に表れ、煌めく乙女へと変わっていく。
……というのは本来の歴史の話。
今ここにいる彼女が背負うのは、「夢を叶えられなかった北条加蓮」というIFの物語。
【方針】
ワイルドタイガーと一緒に、皆のために頑張る……?
ワイルドタイガーと一緒に、皆のために頑張る……?
【クラス】
ヒーロー
ヒーロー
【真名】
鏑木・T・虎徹(ワイルドタイガー)@劇場版TIGER&BUNNY -The Rising-
鏑木・T・虎徹(ワイルドタイガー)@劇場版TIGER&BUNNY -The Rising-
【パラメーター】
筋力:C 耐久:C 敏捷:D 魔力:D 幸運:B 宝具:C
筋力:C 耐久:C 敏捷:D 魔力:D 幸運:B 宝具:C
【属性】
秩序・善
秩序・善
【クラススキル】
- 正義の味方:A+
正義の名の下に平和を守り続けてきたヒーローのアイデンティティとも言うべきスキル。
効果は人命救助や悪人退治などの善行を行う際のパワーアップ……ではない。ヒーローにとって人助けは当然の行為であり、これにわざわざプラスの効果は生じない。
このスキルは、ヒーローが自らのアイデンティティを喪失しかねない場面において発動するマイナススキルである。
悪人に服従する、非道な行為に加担する等といった悪行を強いられ、自らの信念を捻じ曲げられる状況に陥った時、ヒーローは大幅なパワーダウンを引き起こす。
そして、例えばマスターから「聖杯戦争での勝利が最終目的である」と明言されている行動を命じられた場合にも、ヒーローが納得していない限りこのスキルは発動する。
ヒーローを聖杯戦争に投じるとどうなるのか、その答えを示したスキルであると言える。
効果は人命救助や悪人退治などの善行を行う際のパワーアップ……ではない。ヒーローにとって人助けは当然の行為であり、これにわざわざプラスの効果は生じない。
このスキルは、ヒーローが自らのアイデンティティを喪失しかねない場面において発動するマイナススキルである。
悪人に服従する、非道な行為に加担する等といった悪行を強いられ、自らの信念を捻じ曲げられる状況に陥った時、ヒーローは大幅なパワーダウンを引き起こす。
そして、例えばマスターから「聖杯戦争での勝利が最終目的である」と明言されている行動を命じられた場合にも、ヒーローが納得していない限りこのスキルは発動する。
ヒーローを聖杯戦争に投じるとどうなるのか、その答えを示したスキルであると言える。
【保有スキル】
- NEXT能力:D
正確にはスキルではなく、NEXTが持つ固有の超能力を便宜的にスキルとして扱ったもの。そのため自らの意思で発動させる。
ワイルドタイガーのNEXT能力は「ハンドレッドパワー」。主な効果は一定時間の筋力・耐久・敏捷の向上であり、発動終了後から一時間は再発動不可能となる。
ある時期からNEXT能力の減退が進んだ結果、発動状態の継続時間が一分間まで短縮されている。これに伴いランクも本来の値から下落した。
なお、このスキルは発動の際に少量の魔力消費を伴う。
ワイルドタイガーのNEXT能力は「ハンドレッドパワー」。主な効果は一定時間の筋力・耐久・敏捷の向上であり、発動終了後から一時間は再発動不可能となる。
ある時期からNEXT能力の減退が進んだ結果、発動状態の継続時間が一分間まで短縮されている。これに伴いランクも本来の値から下落した。
なお、このスキルは発動の際に少量の魔力消費を伴う。
- 正義の壊し屋:B
救助活動のためなら器物損壊や建造物等損壊も辞さない姿勢を指した(不名誉な)称号がスキルとなった。別名・賠償金野郎。
施設や機動兵器や要塞など、モノへの攻撃で与えるダメージにプラスの補正がかかる。
施設や機動兵器や要塞など、モノへの攻撃で与えるダメージにプラスの補正がかかる。
- 勇猛:C
威圧、混乱、幻惑といった精神干渉を無効化する。また、格闘ダメージを向上させる。
- カリスマ:C
軍団の指揮能力、カリスマ性の高さを示す能力。
ワイルドタイガーには集団を指揮する能力などほぼ皆無に等しい。しかし彼の奮闘する姿は自然と人々の心を惹き付け、高揚させる。
ここではあくまで人々を奮い立たせることに特化したスキルと捉えるべきである。
ワイルドタイガーには集団を指揮する能力などほぼ皆無に等しい。しかし彼の奮闘する姿は自然と人々の心を惹き付け、高揚させる。
ここではあくまで人々を奮い立たせることに特化したスキルと捉えるべきである。
【宝具】
- 『LEGEND OF THE HEROES』
ランク:D~A+ 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足人数:12人
この宝具は、シュテルンビルトの街に刻まれたヒーロー達の栄光の歴史そのもの。
彼等の成し遂げた活躍を再現するかのように、『ヒーロー』の座に相応しい英霊を冬木の地に召喚する。
ただしあくまで宝具によって具現化した概念存在であり、座にいる英霊を直接召喚する訳ではない。
元々は『ヒーロー』のサーヴァント共通の宝具であり、シュテルンビルトにおける過去から未来まで全ての時間軸のヒーローを呼び出すことも可能な代物であった。
しかし今回サーヴァントとして参戦したワイルドタイガーが召喚出来る対象は「NC1980年前後においてワイルドタイガーと共に闘ったヒーロー」に限定されている。
即ちバーナビー・ブルックスJr.を始めとする一部リーグのヒーロー七名、二部リーグの後輩ヒーロー四名、一度ながら共闘した元一部リーグ所属のゴールデンライアン、以上の総勢十二名が対象となる。
ヒーローのパラメーターの総合値は、一部リーグ組がワイルドタイガーとほぼ同水準であり、二部リーグ組がワイルドタイガーより一定以上に低い。
召喚対象および人数はワイルドタイガーの任意で決定可能。人数が増加すればするほど宝具自体のランクは上昇し、要求される魔力消費量も増大していく。
そして召喚したヒーローは全員が二つのスキルを持つ。一つは「NEXT能力」、もう一つは「正義の味方」である。
この宝具は、シュテルンビルトの街に刻まれたヒーロー達の栄光の歴史そのもの。
彼等の成し遂げた活躍を再現するかのように、『ヒーロー』の座に相応しい英霊を冬木の地に召喚する。
ただしあくまで宝具によって具現化した概念存在であり、座にいる英霊を直接召喚する訳ではない。
元々は『ヒーロー』のサーヴァント共通の宝具であり、シュテルンビルトにおける過去から未来まで全ての時間軸のヒーローを呼び出すことも可能な代物であった。
しかし今回サーヴァントとして参戦したワイルドタイガーが召喚出来る対象は「NC1980年前後においてワイルドタイガーと共に闘ったヒーロー」に限定されている。
即ちバーナビー・ブルックスJr.を始めとする一部リーグのヒーロー七名、二部リーグの後輩ヒーロー四名、一度ながら共闘した元一部リーグ所属のゴールデンライアン、以上の総勢十二名が対象となる。
ヒーローのパラメーターの総合値は、一部リーグ組がワイルドタイガーとほぼ同水準であり、二部リーグ組がワイルドタイガーより一定以上に低い。
召喚対象および人数はワイルドタイガーの任意で決定可能。人数が増加すればするほど宝具自体のランクは上昇し、要求される魔力消費量も増大していく。
そして召喚したヒーローは全員が二つのスキルを持つ。一つは「NEXT能力」、もう一つは「正義の味方」である。
【weapon】
- ヒーロースーツ
ワイルドタイガーが活動する際に着用する装甲服。
身体能力を向上させるのに加え、スーツ自体の耐久性も上々。
上述したパラメーターはこのスーツを着用している時の値である。
身体能力を向上させるのに加え、スーツ自体の耐久性も上々。
上述したパラメーターはこのスーツを着用している時の値である。
- ロンリーチェイサー
出動時に使用しているバイク。バーナビー用の車体と接続させるとダブルチェイサーになる。
【人物背景】
超能力を持った新人類NEXTにして、シュテルンビルトで日夜活動したヒーローの一人。
既に衰えた存在と見なされ居場所も奪われ、一度はヒーローとしての自信を見失ってしまう。
しかし支えてくれた者達の言葉を受け止めて自信を取り戻し、街の窮地に駆け付け人々を助け抜く。
そして沸き起こる待望の声に応える形で、彼はヒーローとしての復活を遂げた。
ワイルドタイガーは、再び夢を叶えたのだ。
超能力を持った新人類NEXTにして、シュテルンビルトで日夜活動したヒーローの一人。
既に衰えた存在と見なされ居場所も奪われ、一度はヒーローとしての自信を見失ってしまう。
しかし支えてくれた者達の言葉を受け止めて自信を取り戻し、街の窮地に駆け付け人々を助け抜く。
そして沸き起こる待望の声に応える形で、彼はヒーローとしての復活を遂げた。
ワイルドタイガーは、再び夢を叶えたのだ。
【サーヴァントとしての願い】
マスターも含めた全ての人々を守り、この聖杯戦争とやらを止めてやる。
マスターも含めた全ての人々を守り、この聖杯戦争とやらを止めてやる。
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ヒーロー(鏑木・T・虎徹) |