ラノロワ・オルタレイション @ ウィキ
第三回放送――(1日目午後6時)
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第三回放送――(1日目午後6時) ◆EchanS1zhg
【0】
人間は毅然として現実の運命に耐えていくべきだ。 そこには一切の真理が潜んでいる。
【1】
その日はまさしく茹だるような暑さという言葉にふさわしい天気だった。
真夏の陽光はまるで影を地面に焼きつけようとするかのように照りつけ、カラカラに乾いた空気の中で肌はジリジリと焼けていた。
また、その白光は風景に強いコントラストを浮かび上がらせ、その現実味を薄れさせてもいる。
加えて、そこらじゅうに配された無数の蝉が奏でる騒音交響曲が空間を埋め尽くし、その圧力で脳を押しつぶそうともしていた。
真夏の陽光はまるで影を地面に焼きつけようとするかのように照りつけ、カラカラに乾いた空気の中で肌はジリジリと焼けていた。
また、その白光は風景に強いコントラストを浮かび上がらせ、その現実味を薄れさせてもいる。
加えて、そこらじゅうに配された無数の蝉が奏でる騒音交響曲が空間を埋め尽くし、その圧力で脳を押しつぶそうともしていた。
そんな中に男はいた。
男は当て所なく歩いていた。何を考えることもなく、ただあるがままになすがままに。運命に流されるがままに。
なので、彼がその何の変哲もない、強いて言えば作りが新しいくらいというとある市立図書館にたどり着いたのも偶然であり必然だった。
いくらかの涼をとろうと男は足をそちらへと向ける。
男は本を読み、本を好んだが、その時その場面での第一の目的はそれで、図書館に入るというのに本のことは全く考えてなかった。
そもそもこのような変哲もない図書館に興味を引くような特別な本があるとも思っていなかった。
もし、偶々にあるのだとすれば、それは偶々発見することになるだろうからそれはどちらでもいいと男は思っていた。
なので、彼がその何の変哲もない、強いて言えば作りが新しいくらいというとある市立図書館にたどり着いたのも偶然であり必然だった。
いくらかの涼をとろうと男は足をそちらへと向ける。
男は本を読み、本を好んだが、その時その場面での第一の目的はそれで、図書館に入るというのに本のことは全く考えてなかった。
そもそもこのような変哲もない図書館に興味を引くような特別な本があるとも思っていなかった。
もし、偶々にあるのだとすれば、それは偶々発見することになるだろうからそれはどちらでもいいと男は思っていた。
自動ドアを潜り、冷風にさらされる。
身体に篭った熱が奪われてゆく快感を味わいながら男は広々としたホールを抜け、カウンターの前を通り過ぎる。
同じように涼をとりに来ている者が多いのだろうか、館内はそれなりに――図書館の中なので静かに――賑わっている。
受験勉強中とおぼしき学生。本を読まずに雑談に興じている年寄り。新聞とにらめっこしている壮年の男性。
人種は多種多様でありながら、実に平凡でどこもおかしくなくどこにでもあるような、退屈で平穏な風景がそこにあった。
身体に篭った熱が奪われてゆく快感を味わいながら男は広々としたホールを抜け、カウンターの前を通り過ぎる。
同じように涼をとりに来ている者が多いのだろうか、館内はそれなりに――図書館の中なので静かに――賑わっている。
受験勉強中とおぼしき学生。本を読まずに雑談に興じている年寄り。新聞とにらめっこしている壮年の男性。
人種は多種多様でありながら、実に平凡でどこもおかしくなくどこにでもあるような、退屈で平穏な風景がそこにあった。
何を期待していたわけでもない。なので落胆もしない。
男は涼んだついでに本でも物色するかと止めていた足を再び働かせはじめる。縁が合えば引き合わされるだろうと、
だがしかし、不意に足が止まる。
ひとりの少女の存在に気がついた。一見、何の変哲もない少女。どこをとっても特別だとは思えない少女に目が留まった。
男は涼んだついでに本でも物色するかと止めていた足を再び働かせはじめる。縁が合えば引き合わされるだろうと、
だがしかし、不意に足が止まる。
ひとりの少女の存在に気がついた。一見、何の変哲もない少女。どこをとっても特別だとは思えない少女に目が留まった。
その少女はテーブル席に座り、ひとりで本を読んでいる。テーブルの上に積まれた本は3冊。どれもハードカバーのものだ。
セーラー服に上にカーディガンを羽織っている。寒がりか、そうでなければここで一日過ごそうと考えているのだと読み取れる。
ここまでは何もおかしいところはない。他にも同様の人間は多数いる。少女だけが特別なわけではない。
五分ほど棒立ちになって男は少女を観察し、そして違和感の正体に気づいた。
セーラー服に上にカーディガンを羽織っている。寒がりか、そうでなければここで一日過ごそうと考えているのだと読み取れる。
ここまでは何もおかしいところはない。他にも同様の人間は多数いる。少女だけが特別なわけではない。
五分ほど棒立ちになって男は少女を観察し、そして違和感の正体に気づいた。
どうやら少女はここで人が現れるのを待っているらしい。
そう。違和感の正体は彼女が陣取っている場所だ。カウンターからホールまでを見渡せる、正面の位置。
ゆっくりと本を読みたい人間はこのような人の行き来が激しい場所は避けるはずである。
また実際にそうでもあった。少女はひとりでいるのではない。逆に少女のまわりには人がいないのだ。ここは人がいるべき場所ではない。
ならば、そこに目的があると考えてしかるべきで、そう思えるのならば、それが一番ありえるはずに違いない。
観察すれば更に憶測は確信へと変じてゆく。
少女は時折、本から顔を上げて視線をカウンターからホールへと走らせている。これは決定的な証拠だった。
そう。違和感の正体は彼女が陣取っている場所だ。カウンターからホールまでを見渡せる、正面の位置。
ゆっくりと本を読みたい人間はこのような人の行き来が激しい場所は避けるはずである。
また実際にそうでもあった。少女はひとりでいるのではない。逆に少女のまわりには人がいないのだ。ここは人がいるべき場所ではない。
ならば、そこに目的があると考えてしかるべきで、そう思えるのならば、それが一番ありえるはずに違いない。
観察すれば更に憶測は確信へと変じてゆく。
少女は時折、本から顔を上げて視線をカウンターからホールへと走らせている。これは決定的な証拠だった。
待ち合わせ――というわけではないだろう。そうであれば場所はここでなくともいいし、そう頻繁に周囲を窺うこともない。
おそらくは、この図書館に通う、またはかつてこの図書館で縁の合ったことのある素性の知れぬ誰かを探しているのだと推察される。
恩人か、また恨みのある相手か。
少女の表情を見るに、そう差し迫ったものも、暗い感情も見えはしない。となると、前者か。
その相手に親切にでもされ御礼がしたいのかもしれない。もし相手が男であったならちょっとしたラブロマンスだった。
少女漫画の世界と言ってもいい。そして男は少女漫画を苦手としているなどということは全くなかった。
おそらくは、この図書館に通う、またはかつてこの図書館で縁の合ったことのある素性の知れぬ誰かを探しているのだと推察される。
恩人か、また恨みのある相手か。
少女の表情を見るに、そう差し迫ったものも、暗い感情も見えはしない。となると、前者か。
その相手に親切にでもされ御礼がしたいのかもしれない。もし相手が男であったならちょっとしたラブロマンスだった。
少女漫画の世界と言ってもいい。そして男は少女漫画を苦手としているなどということは全くなかった。
男は少女に話しかけてみることにした。
別にお節介を焼きたいと思ったわけではない。ただ単純に、少女そのものに少しばかり興味がわいただけだ。
縁が合うような取っ掛かりをこちらから勝手に見つけ出したというだけのこと。その先のことなどこの時は何も考えていなかった。
これが運命ならどう思い行動しようと結果は同じはず。ならば、今はただ流れに身を委ねればよい。
別にお節介を焼きたいと思ったわけではない。ただ単純に、少女そのものに少しばかり興味がわいただけだ。
縁が合うような取っ掛かりをこちらから勝手に見つけ出したというだけのこと。その先のことなどこの時は何も考えていなかった。
これが運命ならどう思い行動しようと結果は同じはず。ならば、今はただ流れに身を委ねればよい。
声をかける。
「嬢ちゃん。あんたいい眼鏡をしているな」
これが、世界の歯車が狂った瞬間。終りの始まりの、その始まりの瞬間だった――……
【2】
「ふん。『夢か』。なるほど、少なくとも夢を見れるほどには眠れていたわけだ」
真っ暗な、温かみの欠片もない空間で狐面の男――《人類最悪》は目を覚ましそう呟いた。
固い床の上から身体を起こし、目の前に並んだモニタの明かりを頼りに腕時計を確認する。時間はそろそろ次の放送の頃合だった。
どうやら寝過ごすなどという格好のつかないことにはならなかったようだと息をつき、そして億劫さに欠伸を噛む。
固い床の上から身体を起こし、目の前に並んだモニタの明かりを頼りに腕時計を確認する。時間はそろそろ次の放送の頃合だった。
どうやら寝過ごすなどという格好のつかないことにはならなかったようだと息をつき、そして億劫さに欠伸を噛む。
「休めとは言ったが、どうやら連中は素直に休んでいたらしいな。案外聞き分けのいいやつらだ」
壁となって並ぶモニタの列に視線を走らせ、人類最悪は感心したような呆れたような言葉を吐く。
モニタの明かりを確認するに、先の放送の後から今この瞬間までに減った参加者の数はたったの“3つ”。
無論。当人やその関係者が聞けばいい気はしないだろうが、これまでのペースを考えればその“3つ”という数は少なかった。
モニタの明かりを確認するに、先の放送の後から今この瞬間までに減った参加者の数はたったの“3つ”。
無論。当人やその関係者が聞けばいい気はしないだろうが、これまでのペースを考えればその“3つ”という数は少なかった。
「元々“59名”いた登場人物がこれで“35名”になり、おおよそ6割強といったところか。
この流れでいけば一日が終わる頃は、現状維持か6割を切るくらい……少なくとも5割を切ることはあるまい。
となれば、半数ちょいで残り2日。進むほどに物語の濃度が増してゆくことを考えればよい塩梅か」
この流れでいけば一日が終わる頃は、現状維持か6割を切るくらい……少なくとも5割を切ることはあるまい。
となれば、半数ちょいで残り2日。進むほどに物語の濃度が増してゆくことを考えればよい塩梅か」
人類最悪はひとり納得すると、午後6時ちょうどに合わせて己の役割である放送を開始した――。
【3】
『――よぉ、3度目の放送の時間だぜ。
もう聞き飽きたなんて奴もいるかもしれんが、もしそうなら聞き流してくれればいい。俺も勝手に喋るだけだ。
例によって内容を繰り返したりはしない。寝過ごしたなんて言ってもそれは自己責任だから俺のせいにはするなよ?
例によって内容を繰り返したりはしない。寝過ごしたなんて言ってもそれは自己責任だから俺のせいにはするなよ?
さて、期待している奴もいるだろうからまずはその期待に答えよう。解説の時間というやつだ。
何分、俺の口から出る言葉なんでな。いい加減信用もならないという奴もいるだろうが、まぁそれはそれだ。
これでもこちらもいくらか考えているんだ。信用できようができまいが喋らせてもらうぜ。
もっとも、俺の本心としては、信用してもしなくても同じ――と、お前らが考えてくれるというのが一番ありがたいんだがな。
何分、俺の口から出る言葉なんでな。いい加減信用もならないという奴もいるだろうが、まぁそれはそれだ。
これでもこちらもいくらか考えているんだ。信用できようができまいが喋らせてもらうぜ。
もっとも、俺の本心としては、信用してもしなくても同じ――と、お前らが考えてくれるというのが一番ありがたいんだがな。
今回は俺のことについてだ。
と言っても自己紹介をはじめるわけじゃあねぇ。そんなものは話したくもないし、聞かせる意味もない。
俺のこととは、『俺を探している人間にとっての俺という存在』のことという意味だ。
と言っても自己紹介をはじめるわけじゃあねぇ。そんなものは話したくもないし、聞かせる意味もない。
俺のこととは、『俺を探している人間にとっての俺という存在』のことという意味だ。
どうやらお前たちの中には俺を探し出し、捕まえてしまえば一件落着。
またはそうはいかないまでも、それなりに状況を改善する足掛かりにはなると考えている人間がいるみたいだな。
それは二重の意味で無意味だとここで忠告しておいてやろう。
またはそうはいかないまでも、それなりに状況を改善する足掛かりにはなると考えている人間がいるみたいだな。
それは二重の意味で無意味だとここで忠告しておいてやろう。
まず、最初に言ったように俺はただの俺でしかない。舞台装置であり、舞台装置以下のここで喋るだけの俺だ。
仮に俺を見つけだしたとしても、俺にはお前らをここから出す力もなければ、この物語の進行を止める術も持ち合わせてはいない。
俺個人の力を借りたいってだけなら話は別だが、俺を見つければ物語が解決すると思うなんてのは見当違いも甚だしい。
仮に俺を見つけだしたとしても、俺にはお前らをここから出す力もなければ、この物語の進行を止める術も持ち合わせてはいない。
俺個人の力を借りたいってだけなら話は別だが、俺を見つければ物語が解決すると思うなんてのは見当違いも甚だしい。
次に、お前たちは俺を見つけだすことはできない。
お前たちはこう考えているんだろう。
一番最初に俺と同じ場所にいたのだから、つまりその舞台と俺がいる所とに何らかの経路が存在するのだと。
もしくは、外が《空白(ブランク)》で囲まれている以上、俺もこの中にいるのが必然だと。
言っておくが、それらは全くの見当違いだ。見当違いなんてもんじゃない。
盲目の人間だってまだいくらかはましだと言えるぜ。なんせお前らは見えないものを見ようとしているんだからな。
お前たちはこう考えているんだろう。
一番最初に俺と同じ場所にいたのだから、つまりその舞台と俺がいる所とに何らかの経路が存在するのだと。
もしくは、外が《空白(ブランク)》で囲まれている以上、俺もこの中にいるのが必然だと。
言っておくが、それらは全くの見当違いだ。見当違いなんてもんじゃない。
盲目の人間だってまだいくらかはましだと言えるぜ。なんせお前らは見えないものを見ようとしているんだからな。
冷静に考えてみな。お前たちは、あの箱の中からガラス越しに俺を見た。だから俺と同じ場所にいた。これは正しいか?
そのガラスが俺を映しているだけのモニタだったかもしれないとはお前たちは想像することができなかったのか?
これは真相がこうだったのだと言ってるわけじゃねぇ。お前たちの思考力の問題の話だ。
そう想像することは、こんな発想を思いつくことは何も難しい話じゃあない。
思いつくことができなかったとしたら、それはお前たちの心のどこかにこの状況を楽観している所があるってことだ。
どこかで、この最後の一人を決めるという運命から“逃れられる方法があって当然”だと考えている。
そのガラスが俺を映しているだけのモニタだったかもしれないとはお前たちは想像することができなかったのか?
これは真相がこうだったのだと言ってるわけじゃねぇ。お前たちの思考力の問題の話だ。
そう想像することは、こんな発想を思いつくことは何も難しい話じゃあない。
思いつくことができなかったとしたら、それはお前たちの心のどこかにこの状況を楽観している所があるってことだ。
どこかで、この最後の一人を決めるという運命から“逃れられる方法があって当然”だと考えている。
そういう“逃げ”は見ていて興ざめだ。なので断言しよう。そんなものは一切『ない』と。
いいか、もう少しシリアスに考えるんだ。この放送にしたって舞台の中にいなければできないってのは絶対じゃないだろ?
逆に考えてみろ。お前たちが俺と同じ立場にあると仮定して、その手の届く範囲に俺が置かれていると思えるか?
どうだ。それが、それこそがお前たちの見ている逃走経路だ。現実よりの逃走。つまり、現実逃避。
逆に考えてみろ。お前たちが俺と同じ立場にあると仮定して、その手の届く範囲に俺が置かれていると思えるか?
どうだ。それが、それこそがお前たちの見ている逃走経路だ。現実よりの逃走。つまり、現実逃避。
俺を失望させるな。お前たちはもっと面白いはずだろう?
つまらない逃げで物語の可能性を収束させるな。もう一度目を開けば、お前たちの目の前にはもっと選べる物語の形があるはずだ。
運命の流れがある故に、話の筋は変わらないまでにしても、“物語を面白くすることはできる”はず。
いいか、これはお願いだぜ。見ている俺が退屈だと思うような陳腐な芝居は見せないでくれ。俺は期待してるんだからな。
つまらない逃げで物語の可能性を収束させるな。もう一度目を開けば、お前たちの目の前にはもっと選べる物語の形があるはずだ。
運命の流れがある故に、話の筋は変わらないまでにしても、“物語を面白くすることはできる”はず。
いいか、これはお願いだぜ。見ている俺が退屈だと思うような陳腐な芝居は見せないでくれ。俺は期待してるんだからな。
……とまぁ、ここまで言っても俺の言葉なぞ信じないという輩もいるだろう。そのこと自体は決してよくも悪くもない。
だが少なくとも今の俺の言葉は覚えておけよ。
たとえ無意味への挑戦だとしても、それが妄信ではなく、あえての邁進であるのならば面白さは大きく変わるものだ。
では最後に、そんな奴がいるのならばという前提でひとつヒントをやろう。
だが少なくとも今の俺の言葉は覚えておけよ。
たとえ無意味への挑戦だとしても、それが妄信ではなく、あえての邁進であるのならば面白さは大きく変わるものだ。
では最後に、そんな奴がいるのならばという前提でひとつヒントをやろう。
“俺はお前たちの上にはいない。あらゆる意味において俺はお前たちより下の存在だよ”
しかし、俺を見つけても意味がないというのは一切の偽りない真実だぞ。
忠告したのだからその点に関しては後で恨み言を言うのは勘弁してくれよ。俺は決して謂れのない責任は取らないからな。
忠告したのだからその点に関しては後で恨み言を言うのは勘弁してくれよ。俺は決して謂れのない責任は取らないからな。
さてと、少し長くなったが本題である脱落者の発表だ。
この3名が脱落者だ。今回は名簿に載っていない者の脱落はない。
次の放送はまた6時間後。今日の終りであり、明日の始まりである0時。ひとつの節目だな。
となると半端なところでは終わりたくないだろう。せいぜい生きあがくことだ。なんならその時まで休み続けるのもいい。
次の放送はまた6時間後。今日の終りであり、明日の始まりである0時。ひとつの節目だな。
となると半端なところでは終わりたくないだろう。せいぜい生きあがくことだ。なんならその時まで休み続けるのもいい。
では、縁があったらまた会おう――』
【4】
放送を終えると人類最悪は枕にしていた座布団をしきなおしてその上に腰を下ろした。
そして狐面の下で、滑稽なのか悲しいのか心底愉快なのかなんとも言えない笑い声を小さく漏らした。
そして狐面の下で、滑稽なのか悲しいのか心底愉快なのかなんとも言えない笑い声を小さく漏らした。
「『夢か』。ククク……夢ねぇ。一体全体、夢を見ているのは誰なんだろうなぁ。俺か、あいつらか、それとも――……」
狐面の男は笑う。その意味はわからない。
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