ラノロワ・オルタレイション @ ウィキ

intermezzo――(間奏)

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intermezzo――(間奏) ◆EchanS1zhg



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“もしまだ僕を待っていてくれているのなら、あの樫の木に黄色いリボンを結んでおいてくれ”


 ◆ Close to you ◆


地平の彼方に姿の半分ほどを隠した夕陽が影を遠くへ遠くへとのばす。
建物の影はその建物よりも大きくなり、木の影はその木よりも高く、人の影はその人よりもその輪郭を確かに浮かび上がらせる。
小さな所作も、僅かな震えも、隠そうとしている感情も、影は拡大しはっきりとそこに浮かび上がらせる。

静かな風の中、なびく黒髪を片手で押さえ遠い空を、その遠い空の彼方にあるかもしれない何かを見つめている少女がいた。

「よかったのかな」

少女はぽつりと呟く。誰ともなしに、言葉の意味すら確かでなく、問う意思すら曖昧に、ぽつりと呟いた。

「それを決めることができるのは恐らく本人達だけなのだろう」

少女の胸元にかけられたペンダントが答えを返した。威厳のある声色で、しかし何もかもを震わすことのできる声を今は静かに。

「そうね。きっと私達には決められない」

少女は踵を返す。陽の光を背にして表情が全て影の中に隠れた。そして少女は影の中から一緒にいる仲間達を見やる。
誰も悲しんではいない。人が一人この世界から失われてしまったのに。一人の少年がひとつのエピソードを失ったというのに。
それはどうしてか? 語ることはできるだろう。しかし少女と少女の中の神は語らない。
なぜならば。それは確かな形を持ったものではないから。形にしてしまうとそれは正しい姿を失ってしまうから。

本当のことは今見ているこの光景だけ。この赤色の光と藍色の影の中。そこに浮かび上がる彼らの姿と表情。
言葉ではとらえることのできない今という時だけが本当のことなのだ。
素朴で普遍の真実。ともすればうっかりと忘れてしまいそうなそれこそが、今この夕陽の光景の中にあった。

シャナ。島田さんのリボンはそっちにあった? というか、探してないの?」

愛しい人から声をかけられる。今はその行為だけがとてもかけがえなく思え、ただ嬉しいと感じることができる。

「探してるわよっ!」

探すそぶりなどまったくせず、誰にも見られることのない影の中でいたずらな笑みを浮かべながら少女は言葉を返した。






 ◆ Waltzes, Op.69 (Chopin, Frederic) ◆


縁側から見る夕陽は格別だった。
赤い光は全身を刺して、そして身体を通り抜け全て溶かしてくれるんじゃないかと、そんな気持ちにさせてくれるから。
このまま自分をこの世界から消し去ってあたたかい別の何かに作り変えてくれるんじゃないかと思えるから。

勿論、そんなことはない。それは願望からくる空想。ただそうだったらいいなと思う本当のことではないことでしかない。
身体を透かす赤色は心を剥き出しにしていつもよりか弱くする。だから、そんな空想もしたのだ。
感傷的に。センチメンタルに。憂鬱げに。太陽光線の中にある赤色に含まれる効用は、実際はこちらのほうが正しい。

「――日本語上手なんですね」
「え? あぁ、そうだね」

外人さんと話す時の挨拶のようなもの。
正直な話。外人さんが苦手なんてことはない。近くには米軍の基地があったし、街の中で見かけるのも当たり前だったから。

「あの、インデックスって子も上手だったし」
「彼女と話したんだ?」
「ええ、……あの、はい」
「まぁ、彼女も僕も魔術の世界に足を踏み入れているからね」

全然話が通じない。やっぱり普通人と普通でない人とでは使用する言葉は同じでも使い方が異なるのだろうか。
ならば、普通と普通でないの中間に位置する私より年上だけど小さな彼女に助っ人を頼むことにしよう。
さっき社務所に戻ってきた時はなんだか気があっているように見えたから。

「ねぇ、大河さ…………」

大河さん、泣いてる?

「ん? どうしたの晶穂?」

泣いてなかった。こっちを向いた大河の顔はいつもどおりで、じゃあなんで泣いてるって思っちゃったんだろう。
これも、夕陽のせいなのだろうか。光の反射とか角度とか、私の思い込みを含めてこみこみの効果で。

「いや、一瞬泣いてるのかなって」
「はぁ~? まぁ、色々ムかついてはいるけどね」

大河は縁側から立ち上がると、裸足のままなのに土の上に立って、ロボットみたいになった拳を夕陽に向かって突き出した。

「晶穂は夕陽を見てなにか思い出す?」
「え? そんな急に言われても別に……」
「私は思い出す。例えば放課後に竜児の買い物につきあって、スーパーから出たら夕陽が出てた時のこととかね」
「それがムかつくの?」
「そう! だって、昨日までは夕陽を見てもそんなことこれっぽっちも思い出さなかった」
「……………………」
「おにぎり食べてても思い出すし、晶穂に着替えを手伝ってもらってても思い出すし、何かする度に思い出す。
 あいつはどれだけ自己主張が激しいのよってことよ。
 死んだからって、まるで強制的に私の心の中で永遠に生きてるってみたいで、
 まぁ少しぐらいなら……私の心は海のように広いから間借りさせてもいいけど、だからってずうずうしいのよっ!」

なんとなく、大河が泣いてるように見えた理由がわかった気がした。

「あいつは私の犬なんだからさ、与えられるべきスペースは犬小屋が当然でしょっ!」
「し、室内犬とかいるし……」
「あいつはそんな柄じゃないっての。……それに、あいつだけじゃない、し」
「…………大河さん?」
「悲しみを背負っていくヒロインはつらいって話よ。
 それにしても室内犬ね。あいつは今頃どうしてるんだろ。ビビって泣いて、どっかで引篭もりにでもなってるのかな」

小さいのに、夕陽を浴びる大河の姿はとても大きく見えた。
自称悲しみを背負うヒロインは、まるで本当に物語の中から抜け出してきたヒロインのようだった。

「それで、あんたはどうして泣いてるのよ、バカ晶穂」

え? 私泣いてた? いつからなんだろう。というか恥ずかしい。みんなの中で私だけ子供みたいで。

「もしかして私に同情? それだったらぶっとばす」
「ち、ち……違う違う。自分でもよくわかんない」

本当にわからない。なんで私は泣いているんだろう? 夕陽を見続けていたから? それとも大河の姿に感動したとか。
でも、今のこの気持ちを例えるとするなら……、

「えーと、久しぶりに卒業アルバムを開いてみたら昔の友人の顔を見て泣いてるんだけど、でもその子とどんな遊びしたとか
 どうして悲しいんだとか全然思い出せないって感じ……?」
「何それ? 全然わかんないわよ」

だよね。うん、私も全然わからない。ただ、なんだろう。ぽっかりと心に穴の空いたような。なにかわからないけど、なんだろう。
意味がわからないけど、

どうしてか鉄人定食が食べたくなった。お腹はすいてないのに。



もう一度夕陽を見る。けど、やっぱり私には何かを思い出せるようなことはなかった。






 ◆ Tie A Yellow Ribbon Round The Ole Oak Tree ◆


赤みの強い風景の中、そこから熱を取り払い夜を呼ぼうとする冷たい風を受け黄色いリボンが静かに揺れている。
少女はそれを拾い上げると、土を払いまた頭にくくりなおした。

いつものポニーテール。
髪の毛はぐしゃぐしゃになったし、ブラシも持っていなかったので完璧とはいえないけれども、だいたいいつもどおり。
ならばそうしなくてもいいんじゃないかと聞かれるかもしれない。そしたら少女は答えるだろう「いつもしている」からだと。

彼が自分の姿を見失わないように、彼が自分だとすぐに気づいてくれるように、彼が自分のことを気づかないなんてないように。

これから先、少女がいつまでこうしているかはわからない。
大人になればポニーテールは恥ずかしいと思うようになるかもしれないし、数日後にはショートカットの気分になるかもしれない。
だけど、それはわからない話で、今の少女はポニーテールであろうとしているのだ。

夕陽の風景の中で少女のポニーテールがゆれる。すこしだけ汚れた黄色いリボンがゆれている。



まるで、私はここにいるんだぞと自己主張するように――。






 ◆


少女達には愛するカレがいる。






【C-2/神社/一日目・夕方】

逢坂大河@とらドラ!】
[状態]:疲労(小)、精神疲労(小)、右腕義手装着!
[装備]:無桐伊織の義手(右)@戯言シリーズ、逢坂大河の木刀@とらドラ!
[道具]:デイパック、支給品一式
     大河のデジタルカメラ@とらドラ!、フラッシュグレネード@現実、無桐伊織の義手(左)@戯言シリーズ
[思考・状況]
 基本:馬鹿なことを考えるやつらをぶっとばす!
 1:ステイルのことはちょっと応援
[備考]
 伊里野加奈に関する記憶を失いました。


【須藤晶穂@イリヤの空、UFOの夏】
[状態]:健康、意気消沈
[装備]:園山中指定のヘルメット@イリヤの空、UFOの夏
[道具]:デイパック、支給品一式
[思考・状況]
 基本;生き残る為にみんなに協力する。
 0:なんで泣いてるんだろう?
 1:部長が浅羽を連れて帰ってくるのを待つ。
 2:鉄人定食が食べたい……?
[備考]
 伊里野加奈に関する記憶を失いました。


ステイル=マグヌス@とある魔術の禁書目録】
[状態]:“トーチ”状態。ある程度は力が残されており、それなりに考えて動くことはできる。
[装備]:筆記具少々、煙草
[道具]:紙袋、大量のルーン、大量の煙草
[思考・状況]
 基本:インデックスを生き残らせるよう動く。
 1:今は連絡待ち。
 2:とりあえずある程度はヴィルヘルミナの意見も聞く。
[備考]
 既に「本来のステイル=マグヌス」はフリアグネに喰われて消滅しており、ここにいるのはその残り滓のトーチです。
 紅世に関わる者が見れば、それがフリアグネの手によるトーチであることは推測可能です。
 フリアグネたちと戦った前後の記憶(自分がトーチになった前後の記憶)が曖昧です。
 いくらかの力を注がれしばらくは存在が持つようになりました



【B-4/市街地/一日目・夕方】

【シャナ@灼眼のシャナ】
[状態]:疲労(小)
[装備]:メリヒムのサーベル@灼眼のシャナ
[道具]:デイパック、支給品一式、不明支給品x1-2、コンビニで入手したお菓子やメロンパン、
[思考・状況]
 基本:悠二やヴィルヘルミナと協力してこの事件を解決する。
 1:悠二も水前寺も見つかったので、浅羽直之待ち。
 2:百貨店にいると思われる“狩人”フリアグネの発見及び討滅。そしてその為に、一度水前寺と美波を神社に帰す。
 3:トーチを発見したらとりあえず保護するようにする。
 4:古泉一樹にはいつか復讐する。
[備考]
 紅世の王・フリアグネが作ったトーチを見て、彼が《都喰らい》を画策しているのではないかと思っています。


坂井悠二@灼眼のシャナ】
[状態]:健康
[装備]:メケスト@灼眼のシャナ、アズュール@灼眼のシャナ
[道具]:デイパック、支給品一式、リシャッフル@灼眼のシャナ、ママチャリ@現地調達、贄殿遮那@灼眼のシャナ
[思考・状況]
 基本:この事態を解決する。
 1:シャナに贄殿遮那を渡し、一度神社に戻ってもらいそれからフリアグネを共に討伐する。
 2:事態を打開する為の情報を探す。
 ├「朝倉涼子」「人類最悪」の二人を探す。
 ├街中などに何か仕掛けがないか気をつける。
 ├”少佐”の真意について考える。
 └”死線の寝室”について情報を集める。またその為に《死線の蒼》と《欠陥製品》を探す。
 3:もし途中で探し人を見つけたら保護、あるいは神社に誘導。
 4:記録されていた危険人物(キノ)のことを神社に伝える。
[備考]
 清秋祭~クリスマスの間の何処かからの登場です(11巻~14巻の間)。
 会場全域に“紅世の王”にも似た強大な“存在の力”の気配を感じています。


島田美波@バカとテストと召喚獣】
[状態]:健康だがフルボッコ、鼻に擦り傷(絆創膏)
[装備]:第四上級学校のジャージ@リリアとトレイズ、ヴィルヘルミナのリボン@現地調達
[道具]:デイパック、支給品一式、
     フラッシュグレネード@現実、文月学園の制服@バカとテストと召喚獣(消火剤で汚れている)
[思考・状況]
 基本:みんなと協力して生き残る。
 1:シャナに同行し、姫路瑞希を探す。
 2:川嶋亜美を探し、高須竜児の最期の様子を伝え、感謝と謝罪をする。
 3:竜児の言葉を信じ、全員を救えるかもしれない涼宮ハルヒを探す。
[備考]
 シャナからトーチについての説明を受けて、「忘れる」ということに不安を持っています。
 伊里野加奈に関連する全てからの忘却を免れました。「ほんとうのこと」を理解した結果です。




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