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Parallel daze――(平衡幻覚)

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Parallel daze――(平衡幻覚) ◆EchanS1zhg



 【0】


謎々みたいに地球儀を解き明かしたら――


 【1】


あなたは神を信じますか?

もしそんな問いを受けたのならばこの不肖戯言使いことぼく(いーちゃん)はこう言い返すことだろう。
そんなことを人に問う人間は信用できない、と。
まぁ、それはさておくとして最初の問いに答えるならばまず神とは何かと定義しなくてはならない。
神。超越者。人智を超えた存在。人間如きじゃあ正しく認知することすらできない巨大な存在。埒外の存在。
そんなもの。解ることすらできないものを何を持って人類は神と認定するかというと、一言で言うなら《奇跡》だ。
《奇跡》を起こせば神。もしくはそれに連なるものと認定。わかり易い。某最大手の宗教団体の基準でもある。

さてしかし、奇跡なんてものは結局は言葉でしかない。そこに言葉を当てはめたにしかすぎない。
そしてそれは何かと言うと結果でしかない。
物事には因果というものがある。原因があって結果が生じる。これは神様にだって破れない不変の法則だ。
奇跡は結果だ……と、思われがちだがしかし実は違う。
この場合、奇跡は原因にかかる。《奇跡》が作用したから、奇跡的な結果が生まれたのだと。

しかし。しかし、だ。
その起こった奇跡的な出来事が奇跡に因ずるとして、さてどうやってそれを証明するというのだろうか?
実験の方法は難しくない。神様とやらにコンタクトして奇跡を起こすと宣言してもらいそしてその後に実行してもればいい。
だがそれは神が神であるが故に不可能だ。神は人が理解できうる範疇を越えている。神を正しく認識できない。
なので仕方なく神を奉ずる人々はなんらかの結果を見て、これは神様の仕業だ。と逆説的に”解釈”しているわけなのだが、
悲しいかなやはり人間は神を理解しきれない故にそこに取り違いがある可能性を排除しきれない。
つまりは、ただの《希少》を《奇跡》と勘違いしているというケース。

そして結局のところ。人間が不完全という大前提のもとに、だからこそ神は姿を現さない。見えないのだから仕方がない。
それをアカシックレコードや運命。物語……なんて言い換えてもそれは同じ。
認知。把握できない以上、あってもなくても同じことなのだ。
なので、その問いに答えを出すとするならば、――神は”信用”できない。これが模範的な解答ではないだろうか?

「なんて、戯言だけどね」

いや、戯言でもなんでもなくあるいは常識。もしくは子供じみた言い逃れかもしれない。
まぁそれはどうでもいいことなのだけれども、どうしてぼくがこんな思索で暇を潰しているかというとそれは先程の、
あの仮面の様な笑みを顔に貼り付けた高校生――古泉一樹くんから持ちかけられた”取引き”に起因する。

”涼宮ハルヒを絶望させる――”

自称、ではなく、他称”神”。
己がそうとも知らず、また周囲から奉り立てられていることにも気付いてないその少女を、絶望、させる。
彼女こと涼宮ハルヒがこの場所、状況を極めて不愉快だと断じ、世界の更新を望めば晴れて何もかもが救われるという。
ピンチにならないと力を発揮しない。それはまるでなんだか”正義の味方”みたいな気もするが、
その正義の味方を呼び出すためにわざわざ悲劇を演出するなんてとんだマッチポンプだ。非道いやらせである。

「絶望。絶望か……絶望した、なんて言っても”あの人”は飛んできてはくれないよな」

あの”赤い人”の仕事は後片付けだ。故に出番はピンチが終わりきった後。最低限の危機は自分で乗り越えないといけない。
それはさておき、問題は”信用”できるか、だ。
先程の彼の話。涼宮ハルヒの話。どのレヴェルまで信じられるかで、これから先のぼくの身の振り方も変わってくる。
あくまで過程の問題でしかないが。ぼくが玖渚友の為に全霊を全力で消費するという結果には断固として変わりは”ありえない”。

まず、全然に信用しないとした場合はどうなるだろうか。古泉くんの発言を全て妄言、虚言と断じてしまう場合。
ぼくは自由の身となる。だがしかし、その嘘にいかなる理由があったかは想像しなくてはならないだろう。
考えられるパターンは2つ。涼宮ハルヒを生き残らせる為。もしくは古泉くん自身が生き残る為。

先のパターンは所謂ロマンティックなヒロイズムに起因する。
この世界の果ては割りと広い。60人で使うにはあまりにも、ぎりぎりなほどに広い。
その中で彼は彼女を探そうと一度は思うだろう。誰だってそうするぼくだって玖渚友をどうすれば発見できるのかを考えた。
答えは――ない。当てがないのだ。当て所ないのだ。この世界は密室だがヒントはない。ミステリーは成立しえない。
となると、方法として浮かび上がってくるのが出会った人間に対象となる人物を殺させないよう吹き込むことだろう。
歩いていれば誰かに会うとして、当たりを引く可能性は1/59。
もし、自分以外の誰か(今の場合はぼくだが)を作り出せれば、それぞれを分母から引き、1/58+1/58=1/29。
古泉くんの口ぶりからすれば他にもSOS団の仲間とやらはいるようだし、
それぞれが2連鎖か3連鎖もすれば涼宮ハルヒの生存はかなり保障されることになる。
もっともこれは相手が話しの通じる相手で、しかも信用を得るというのが大前提ではあるが、その理想が叶うならば策としては悪くない。
古泉くんは殺し合いも推奨していたことだし、策通りに事が運べば涼宮ハルヒだけが残って他が全滅なんて結果も夢幻じゃあないだろう。

後のパターンはロマンティックよりかは遥かに真逆のリアリズムに起因する。
神の話は方便で、ようは”その気”になっている人間を増やすというのがその策の目的。
この生き残り。そう、生き残りである故に途中経過は一切意味をなさない。
だったら、最後の二人になるまではそっちにがんばってもらおう。自分は楽をしよう。そんな現実主義者の発想。
どちらかと言えば、こっちの方が自分に正直な分、良い考えだと思える。嫌悪の対象ではあるが。

では、古泉くんの話は本当だった。でも、涼宮ハルヒは神なんかじゃないというパターンを想像しよう。
これは……最悪である。男と女がいて、男だけがその気になってるなんてはたから見たら残酷そのものだ。
彼が憐れというだけでなく、それに巻き込まれる者達までもが最悪。これはよく知ってる。思い知らされているというべきか。
とにかく。この場合、妄言に付き合って全員が等しく損をする。止める術もなく皆一緒に奈落落ちだ。本当の絶望。
うーん……これは、こうでないことを期待するしかないだろうか。しかしこれが一番ありそうなのがぼくの人生なのだよな。

……気を取り直して、全てが真実だとした場合。ぼくは、ぼくはさてどう動くのが最適解なのだろうか?
言われた通りに古泉くんの策の為の道具と殉じればいいのか。それとも別の解答を独自に模索するべきなのか……。

「そもそもが、策と言うには杜撰すぎるんだよな……」

あの髪の毛が綺麗な策士ならばこんな不確実で不正確で不誠実な策は選びはしなかったろう。
想像したどのパターンにおいても成功率は高いとは言えず、何よりフォローが効かなさ過ぎる。
彼はぼくの言葉から玖渚友を人質にすると宣言した。しかし、それが”どうだって言うんだ?”
ばくが涼宮ハルヒに会える確率が1/59なら、彼が玖渚友に会える確率も等しく1/59なのである。
何があっても、みたいな言い方をしていたがそれはあまりに無為無意味な労力の消費だ。割りに合わないなんてものじゃない。

「となれば、やっぱり楽をしたいだけの現実主義なのかな」

それが一番ありえる……いや、無難だと”ぼく”が安心できるパターンか。
やっぱりこの状況。友の命がかかっているだけあってぼくは冷静じゃあいられないようだ。
自然とそうであったらいいなという方向へと思考が傾いてしまっている。希望に縋るのは絶望を掴むのと同義だと知っているのに。

「やれやれ、事ここにいたって戯言しかでてこないなんて。
 そりゃあぼくは戯言使いだけれども、どうにか危機感ってものが足りないように思える」

解っているのか? ぼくは。友がこんなことに、こんな形で、人類最悪の企みに組み込まれていることに。
いや、解っているのか。”そうではないことに”。これが人類最悪――あの狐面の男の悪巧みではないことに。

「巻き込まれたっていうなら、後付けなのはぼく達のほうか?
 全く、あの人類最悪。なんだってあんなポジションにいるんだ。また《失敗》したってことなのか?
 そのツケをぼく達をまるまる巻き込んで清算しようっていうならとんだ傍迷惑だ」

もっとも、あの人類最悪は「そんなのはどちらでも同じことだ」なんてそれで諦めてしまうのだろうが。
なんでもすぐに諦めてしまう人生失敗の権化とも言うべき存在のくせに、でも性懲りもなく諦めきらないのが全く最悪だ。
最悪するぎる。なんであの時殺さなかったのか。あの時ならば、銃弾も一発でお安くすんだのに。

「ロマンティックもヒロイズムも博愛主義も幸福主義も世界主義もぼくには相応しくなかった……ってことなのか」

あれで、《物語》が終わらないなんて、エピローグに続かないなんて、それはなんて最悪。


 【2】


ぼくは歩く。
当て所なく――なんてハードボイルドは似合わないので明確な目的を持って、その場所を目指してぼくは歩く。
今は先程いた学校を離れ、北に。城の中を突っ切って北へとただただ邁進している。
城といってもあくまで城の敷地内。
最早戦国時代のそれではなく、一つの観光。あるいは憩いの場として整えられた城の敷地内を、だ。
歩道の脇に敷き詰められた玉砂利や遠くに見える天守閣。石垣。それっぽいものを除けば大きめの公園といった風情。
天上には満月。だから歩く分には月明かりも十分でぼくは懐中電灯をつけずに歩道に沿って道なりに北へと向かう。

「か、懐中電灯を使わないのは忠告されたからじゃなくて、ただ必要ないからなんだからねっ!」

あまりの寒さに気温が氷点下まで下がった。ツンデレの真似がツンドラを呼ぶなんて、いやこれも寒い。凍死しそうだ。
実際には気温は下がってないが、しかしひらけた場所は随分と風通しがいいので上着の襟をよせる。
そして、その中に仕舞ってある一丁の拳銃を意識した。

「ぼくっていくじなしだよな。本当に。掛け値なしの真実に。絶望できないくらいに嘘偽りでなく」

あの時。古泉くんが超能力者だとかそうでないとか関係なく、ぼくは撃つべきだった。覚悟に殉じるならそうするべきだったのだ。
それで殺せなかったとしても、殺すという意思を世界に、物語に刻むべきだった。なのにこの体たらくである。
殺人はぼくにとって禁忌だ。最悪以下の最悪だ。それでもあえて、なのに、……うん。格好がつかないなぁ、全く。

「出夢(いずむ)くんにも言われたっけ。ぼくは――人を、殺せない」

溜息が漏れる。
溜息は幸せを逃すというが、このぼくからまだ逃れえるだけの幸せがあるというのだろうか。
だとするならば一つ実験してみようか。溜息。溜息。溜息。溜息。溜息。溜息。さぁ、ぼくはどれくらい――


「止まりなさい! 動くと容赦なく撃つわよっ!」


――不幸になるのでしょう、か? ねぇ、神様?


 【3】


「ゆっくりよ。ゆっくり振り向きなさい……怪しい真似したら怪我をするわよ」

突如後ろからかけられた女の子の声。
相手が男だったら、なんて仮定はさておきぼくはそのはっきりとした声に従い、ゆっくりと、スロゥリィに振り向いた。
すると、えらい美人がそこにいた。

「これからいくつか命令するわ。大人しく従った方があんたの身の為だってこと覚えておきなさい」

肩の辺りで切り揃えられた黒髪にそれを押さえつけるリボンつきのカチューシャ。
鼻筋は通っていて顎も細く可愛い系よりも美人系に属し、そしてそのまま美人だと言えるその顔。
何よりも印象的なのはその眼だ。大きくはっきりとしているのに鋭い。一文字で表すなら”凛”とした眼差し。

「……ちゃんと聞いてるんでしょうね?」
「ああ。聞こえているともさ」

全く危ないところだ。うっかりと一目惚れしそうになってしまった。
だがしかし、ぼくの中に年下趣味は全くの皆無。どれだけ見た目が大人っぽい人でも設定年齢がぼく以下なのはNG。
逆に言えばどれだけ見た目がロリィであっても設定年齢が以下省略なのだけれども。
露悪趣味はないので性癖に関しては置くとして、目の前の彼女はセーラー服を着ていた。おそらくは高校。つまりは年下。

「念を押しておくけれども、”これ”はオモチャなんかじゃないからね」

言って、彼女は両手にかまえたクロスボウをこちらへと照準する。
かなり大型。しかもなんだか高そうだ。当たり前だが矢が番えられている。もし刺されば生易しいことにはならないだろう。
それで彼女はぼくを威嚇する。距離は5メートルといったところ……か。ふむ。

「鞄と、武器を捨てなさい」

ぼくは言われたままに肩から提げていたデイパックを地面へと落とした。
でもって、懐からオートマチックの拳銃を取り出し、それも地面へと落とす。
そしてもう一つ。上着のポケットから折りたたんだバタフライナイフを取り出し、その刃を開き、彼女に向かい、構えた。

「ちょっと、あんたわかってないのっ!? 変なことしたら撃つってのは嘘じゃないわよ!」
「ぼくはわかっているよ。わかっていないというのなら、むしろ君の方だぜ。美少女ちゃん」

クロスボウは確かにぼくを正確に狙っている。このまま彼女がトリガーを引けばぼくは致命的な傷を負うだろう。
しかし彼女がそれをできないであろうことはその動揺すらも余すことなく表す眼を見ればよく解る。
姿勢や体つきを見れば運動神経があり格闘なんかも不得意でないことは容易に察することができる。が、
”殺し合い”――致命傷を狙うことに関しては相当にビクついていることもよぉくわかる。彼女にはそういう”経験”がない。
もしも、支給された武器がバットやなんかだったならば、彼女はぼくごときが振るうナイフなんてものにはビビらなかっただろう。
すぐにでもぼくは打ち据えられ、さんざ痛めつけられたあげくに地面へと転がされていたはずだ。
しかし、実際にはクロスボウ。相手を殺しかねない武器。その強すぎる威力が彼女を闘わせない。殺傷力がありすぎる故に。

「そもそも忠告しておくと、クロスボウってのはこのレンジで使う武器じゃない。
 本来は離れた場所。少なくとも30メートル以上。できれば壁の上とか一方的に攻撃できる場所からが本来だ」
「……だから、なんだって言うのよ」
「確かに近づけば命中率はあがるさ。けど、外したらそれはもうただの錘だろう?
 熟練していても次の矢を番えるのに数秒のロスがある。素人なら1分はかかるかな。
 まぁ、仮に君がクロスボウの名人だとしてもこの距離。たった1秒の距離じゃあ二の矢はないよね」

彼女はジリと後退る。そしてぼくはその分距離を詰める。
例えこれだけの近距離だとしても、所詮矢は点の攻撃にすぎない故にその機さえ察すれば回避は可能だ。
そしてそれに成功すれば立場は容易に逆転する。
いわばこの時点で王手に近い。後はいかに投了を宣言させるかだけだ。なので、ぼくはナイフを地面に捨てた。

「……なっ!?」
「どうして驚くのかな? 武器を捨てろって言ったのは君だよ。
 ぼくは言われた通りに従った。そこに不満があるとしたら君はずいぶんと不条理な性格をしているんだね」
「そうじゃなくて、だって……」
「うん。さっきの状況ではぼくが勝っていた。それを君が納得してくれていればいいんだ。
 投了するのはぼく。試合に負けて、勝負に勝った……なんてね。
 ぼくとしても無益な争いは避けたいところだし、君も”それ”を警戒させる道具止まりにしてたってことは交渉の余地はあるんだろう?」

いくらか逡巡。しかしその時間は決して長くはなかった。彼女は構えていたクロスボウを下ろし、あらためてぼくと相対した。
互いに交渉……というほど材料があるわけでもないので情報を持ち合いってところか、それをこれから始めるという姿勢だ。
そして彼女は名乗った。


「涼宮ハルヒよ。あんたの名前も教えて」


 【4】


「いーちゃんね。どうあっても本名は名乗らないってわけ?」
「名簿にそう載っている限り、それがぼくのここでの名前。あの狐面の男風に言うなら役名ってことでいいじゃないか。
 それにぼくは生まれてこのかた自分の名前を3人にしか名乗ってないことが――」
「そういうキザっぽいの、あんたには似合ってないわよ」
「……………………」

目の前の少女――涼宮ハルヒは物怖じしない子でもあった。さすがは”神”ってことなのかな?
まぁ、僕の風貌はおせじにも大人っぽいとは言えないし、そもそも19歳でしかないわけで彼女がぼくのことを
同学年か年下だって勘違いしている線が濃厚ではあったけど。そしてそれを是正しないぼく。
もうMだってことは自覚していますから。

まぁ、とりあえずは互いに知っていること、持っている情報というものを曝しあった。
具体的には名簿の中で自分が知っている名前についてということになる。
僕から出たのが玖渚友で、彼女から出てきたのは、キョン長門有希朝比奈みくる、古泉一樹、朝倉涼子の5人。
最後の一人を除いてSOS団団員であるとも。これで一応、古泉くんの話が全くのデタラメではないと判明したわけだ。
ちなみに僕は人類最悪のことも、古泉くんとの取引きのことも話してはいない。
どちらの情報も場をいたずらに乱すだけで、今のところ一切のメリットはない。デメリットはあったが些細なので無視だ。

「まぁ、事態が掴めないってのはお互い様よね。じゃあ、ちょっと聞いてくれる?」
「なにかな?」
「”ここ”――日本のどこだか、あんたわかる?」

といってハルヒちゃんは辺りを見回した。
つられてぼくもそうするがしかし知らない土地だ。元々物覚えもよくないしせいぜい見覚えがないくらいの感想しかない。

「私。ここに来てからすぐにそこらじゅうの標識とか地図とかを確認したわ」
「それで、ここはどこなの? 城があるってことは有名なところなのかな」
「全然。ここは日本のどこでもない。私の知っている日本地図にはこんな場所ない……」

まるで怪談話のオチのような、もしくはアウターワルドかトワイライトゾーンか、そんな風にハルヒちゃんは言う。
そもそもぼくとしてはここがどこか、なんてことには意識がいっていなかったわけだけれども、これもまた一つの問題だ。

「つまり、ここは用意された場所ってことになるのかな。映画村みたく丸々セットという意味で」
「多分そうなる……わね。それしちゃあ随分と生活感があるってのがちょっと気にかかるけれども……」
「なんか、歯切れが悪いね。もしかして心当たりがあるのかい?」
「突拍子もないってことは私自身もわかってる……けど」
「けど?」
「ここは、日本どころか、”別の世界”なのかもしれない」

好奇心旺盛で夢見る少女。古泉くんが言ったキャッチフレーズが頭をよぎる。
なるほど。本人も確かに”それ”っぽくはあるわけなんだ。
とは言え、その発想。ぼくからしても一蹴することは容易ではなかった。
理不尽な瞬間移動(としか思えないもの)を体験してしまっている身としては、
今回。理解を超える何かがあってもおかしくないと思ってはいる。

「違うって言えば違うんだけど、以前にもこんなことがあった……のよ。その時は夢だったって思ったんだけれども」

それが古泉くんの言っていた”世界が終わりかけた”っていう事件のことだろうか。
ふぅん。もし事実だとするならばこれがあの人類最悪の新しいアプローチ……いや、今回はあいつも巻き込まれたんだっけ?
まさかぼくや友も因果から追放されて、そのせいでこんな目にあっているとか、そんなんじゃあないよな。

「まぁ、ともかくとして歩かない? じっとしてるってのも気が滅入るし考えも澱む」
「いいけど、どっか当てはあるの?」
「うん。ちょっと世界の端ってのに興味があってね」
「世界の……端?」

そもそも北へと、正確に言うとA-2とA-3のエリアの境界線へと向かってぼくはただひたすらに北上していたのだった。
この場所へと放り込まれてからすでに2時間ほど。すでにA-1エリアは”消失”しているはずだ。言われた通りならば。
その消失した状態ってのをまず確認したかった。ここが”密室”だとするならなその密室性を確認するのが第一。
いずれここから脱出するにしても、それを諦めるためにしてもその確認だけは怠れない。

「ふーん……、あんた見た目がへちょいわりには頭が回るのね」
「君は少し言葉が余分だけどね。
 できれば、そのエリアが消失する瞬間ってのも見たいし、元々の端がどうなっているかも確認したい。
 だからA-3エリアの北西の角が観測地点としては最適かな。ちょっと時間的には厳しいんでA-4で妥協してもいいけど」
「だったら善は急げよ。少し走りましょ!」

どこに敵がいるともしれない場所で不用意な体力の消耗は……と、忠告する間もなくハルヒちゃんは駆け出した。
やれやら、なんだかこの強引さは妙に心地よい。
それはぼくがMってことを差し引いてもそうで、つまりは彼女は少しあの赤い人っぽいっていうかそんな印象。

「あの人の家系っていうなら、”神”ってのも納得しちゃうんだけども……まぁ、それこそ――」


――戯言だよね。





【D-3/路上/1日目・黎明】

【いーちゃん@戯言シリーズ】
[状態]:健康
[装備]:森の人(10/10発)@キノの旅、バタフライナイフ@現実
[道具]:デイパック、基本支給品、22LR弾x20発
[思考・状況]
 基本:玖渚友の生存を最優先。いざとなれば……?
 1:世界の端を確認しに行く。
 2:涼宮ハルヒを観察。
[備考]
 登場時期は「ネコソギラジカル(下) 第二十三幕――物語の終わり」より後。


【涼宮ハルヒ@涼宮ハルヒの憂鬱】
[状態]:健康
[装備]:クロスボウ@現実、クロスボウの矢x20本、不明支給品x0-1
[道具]:デイパック、基本支給品
[思考・状況]
 基本:この世界よりの生還。
 1:世界の端を確認しに行く。
 2:SOS団のみんなを探す。
[備考]
 登場時期は未定。

【バタフライナイフ@現実】
二つに開くグリップの中に刃を収納できる折りたたみ式のナイフ。
刃渡りは10センチ足らずで、強度も武器としてはそれほどでもない。

【クロスボウ@現実】
一般的にはボウガンと呼ばれるもの。
グリップと一体化した台に弓矢をつけたもので、矢を番えたあと銃のようにトリガーを引くことで発射できる。

【森の人@キノの旅】
(補足)
モデルとなっているのはコルト社の”ウッズマン”という自動拳銃。
全長:231mm 重量:1034g 口径:22LR弾 装弾数:10+1発
元々競技用であり、また使用する弾が軽い22LR弾であることから取り扱いやすく命中精度も高い。








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