黒い森 ◆2kaleidoSM
\アッカリ~ン/
「は~い、ロリショタバトルロワイヤル2014、はっじまるよー!」
「それにしてもロリって…、あかりってそんなに幼いのかなぁ…、やっぱり身長なのかなぁ…?
そうだ、こんな時はこの歌を歌おう!
はやくおっきくなりたいnカチッ
◇
「ヴィクトリカちゃーん!どこー?!」
暗い森の中。
少女が一人でいるにはその環境はあまりにも暗く恐ろしいものだ。
早くこんな森を出て行ってしまいたいという思いもあったが、同行者、ヴィクトリカを森においてきてしまったのではないか、という思いが森から抜け出すことを遅らせていた。
もし一人でおいてきてしまったのだったら、大きな不安に押しつぶされているのではないか、と。
「わわわ…、どうしたら…」
探し出すにも森はあまりにも暗い。
せめて大声を出して返事を待つしか、あかりにはできなかった。
そして静かな森でそんな大声を上げていれば、当然声は響き渡る。
その声が聞こえる対象は、探している者とは限らない。
ガサガサガサ
「ひっ…、ヴィ、ヴィクトリカちゃん…?」
背後から聞こえてきた物音に肩を震わせる。
思い出すのはあそこから逃げ出す直前、ヴィクトリカが言っていた謎の殺人者の存在。
もしかしたら―――――
ガザガサッ
次の瞬間、森に大きな声が響き渡った。
◇
「ねえサトシくん、この子なんていう名前なの?」
「こいつはピカチュウ、俺の相棒さ」
「へぇ…、こんな生き物いるんだ…。初めて見た…」
「ピカー?」
「え、そんなことないだろ。こいつはポケモンだぜ?」
京子とサトシは共に移動している間にそんな会話を交わしていた。
その中でふと、小さな齟齬が二人の間に現れた。
「もしかして、ポケモンを知らないのか?」
「えっと、分かんない…」
「ピカピカ?」
サトシの常識としてはポケモンの存在自体を知らないということはありえない。
仮にピカチュウを知らないというなら、小さな京子が住んでいた地域にピカチュウが生息していなかったということで考えられただろう。
「ポケモンを知らないって…、どういうことなんだ?」
「……!ピカピ!」
そう首を傾げたサトシに、ピカチュウが耳をピクピクさせた後呼びかけるようにそう鳴き声をあげた。
「どうしたピカチュウ?」
「ピカ、ピカピカ」
京子には何て言っているのかは分からなかったが、サトシはピカチュウがそう声を出しながら指を指しているのを見た。
まるで、その方向に何かがあると言っているように。
「もしかして、向こうに誰かいるのか?」
そう問いかけたところで頷き、ピカチュウは走り出した。
「あ、おい、待てよ!」
「あっ…」
こちらに背を向けて走り去るピカチュウを、サトシは追いかける。
全力で追いかけたいところであったが、今は一人でいるわけではない。
京子の手を握り、速く、しかし女の子でもついていけるだろうくらいの速さまで落として走る。
ピカチュウの走り去った方へと追いかけていく。
そして。そこには一人の少女がいた。
「えっと、高町ヴィヴィオです」
「俺はマサラタウンのサトシ。よろしく」
「歳納、京子です」
「ワイはケルベロスや」
「この子はケルベロスのケロちゃんだよ」
「だからその蛙みたいなあだ名は止めいって」
「ぬ、ぬいぐるみが喋ったー!」
出会ったのは金髪の、おそらく京子と同年代くらいの少女。
最初は若干の警戒心こそあったものの、ピカチュウを見てそれも薄れた様子で話し始めていた。
一方京子はぬいぐるみ、ケルベロスが喋っているということに驚いている。
「ピカピ?」
「なんやこのけったいなネズミは?若干マスコットとしてキャラ被ってへんか?」
「ピカ」ビリビリ
「うわあああああ!すまんすまん悪かった!一言余計やった!」
ともあれ、暗い森の中だが賑やかになったことで京子の恐怖も薄れつつあった。
「まあ何や。あんさんも大変やったなぁ。でもワイがおる間は大丈夫やで」
「あ、ありがと…」
しかし、恐怖は薄れても不安は尽きなかった。
ここまでは皆仲良くなれそうな子達ばっかりだったけど、もしかしたら次に会うのは自分達に襲い掛かってくるような人かもしれないのだ。
それに、ここには自分と同じく連れてこられた友人、あかりがいる。
自分よりは活発な子だとはいえ、人を殺せる子だとはとても思えない。
果たしてそんな彼女が、こんなところで生き残れるだろうか?
(あかりちゃん…、今頃どうしてるかな…)
―――……ヴ……ト…ゃーん!
「あれ?」
「今、何か聞こえなかったか?」
静寂の森の中に、ふと風のような、しかし人が叫んでいるような音が混じった。
耳をすませる一同。
―――ヴィクトリカちゃーん!どこー?!
「こ、この声は…、あかりちゃん!」
「あ、おい、キョウコ!」
真っ先に走り出した京子。
その足取りはこれまで森を移動する中でのビクビクしていたものとは違う、はっきりとした足取り。
友達が近くにいるということに、気持ちが先立って駆け抜けてしまった。
「あかりちゃん…!」
草木を掻き分け、その体に小さな傷を作りながらも京子は走り。
―――わわわ…、どうしたら…
駆け抜けた先に見えた視界の中に。
赤い髪が見え。
「あかりちゃん!」
茂みを抜けると同時に駆け寄り。
「えっ…、京子ちゃ――――」
振り向いたあかりを見て。
ほんの数秒ほどの時間の停止。
目を疑っている京子に対し、あかりも呆気に取られたような表情を浮かべ。
「ええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!???????」
あかりの声が、森に響き渡った。
◇
「えっと…あかりちゃん、なんだよね?」
「ど、どうして京子ちゃん小さくなってるの?!」
合流した一同の中、混乱と動揺に包まれているあかりと京子。
京子からみればあかりは大きく成長し。
あかりからみれば京子は数年前の小さな姿だったのだ。
そもそもあかりにしてみれば京子がいること自体が想定外だったのだ。
なのに彼女自体が数年前の、かつての姿をしているというのは驚くどころの話ではなかった。
「どういうことなの…?」
「えっと、二人は知り合いなの…?」
「そのはず、なんだけど…」
「というか京子ちゃんの名前、名簿に載ってなかったよね?!」
「ほら、最初の場所でポーキー・ミンチのやつが言ってただろ。5人ほど名簿外から連れてきたって」
「でも…、どうやって…?」
四人と一体は首を傾げる。内二人はそもそも混乱が収まらずまともに思考が働いていないが。
三人寄れば文殊の知恵と言ったものの、今のこの面子ではむしろそういった考えについては烏合の衆に近かった。
そんな時だった。
――――Excuse me
「えっ?」
突然聞こえた英語。
それは京子の近くから響く。
が、しかし彼女の周囲を見渡しても誰もいない。
だがただ一人、ヴィヴィオだけは驚きつつも声の主を把握しているかのようにある一点を注視していた。
「京子さん!ポケットの中とか何か入ってますか!?」
「え?えっと、小さな宝石が――」
詰め寄るヴィヴィオに慌てつつも京子が取り出したのは赤く小さな、丸い宝石。
「やっぱり…」
『やはりあなたでしたか。ヴィヴィオ』
「な、何や?この宝石喋りよるで」
「ぬいぐるみさんが喋るのもすごいと思うんだけど…」
赤い宝石――レイジングハート。
子供達の中に加わった、ある意味救世主のような存在だった。
『なるほど、そのようなことが…』
「なのはママはいない、と思うんだけど、名簿にない人もいるみたいだから分からなくて…」
『私としてもいないことを願いたいと思いますが…。それで、皆さんの話の内容ですが』
「えっと、京子ちゃんと私――、赤座あかりっていうんだけど、京子ちゃんだけこんな風に若返っちゃって。
本当なら一歳違いのはずなのにどうしてこんなことになっちゃってるのかって…」
「あと、俺も気になったんだけど、みんなポケモンのことを知らないっていうんだ。何か分かるか?」
あかりとサトシが各々の疑問をレイジングハートに問いかける。
『なるほど…、考えられる可能性としてはそのポーキー・ミンチという人物は時空を超えられる力を持っている、ということでしょうか』
「時空…?」
「あっ…」
『ヴィヴィオ、気付かれましたか』
「つまり、俺たちは皆その別々の平行世界、ってのから連れてこられてるってことか?」
『ええ、何かしらのロストロギアかそれに匹敵する力を持っている可能性は高いですね。
そしてあなた達二人のように、時間をも超えることができるというのが一番考えられることです。
無論全ては推測に過ぎませんが』
「じゃあ、この京子ちゃんは若返ったとかじゃなくて、あの頃の京子ちゃん本人だってこと?」
『Ms歳納、今日は何年何月何日ですか?』
「え、えっと…、――――だったと思う…」
「やっぱり、随分前だね…」
『記憶、肉体共にその頃のままだというのであれば、そう考えるしかないでしょう、Msアカザ』
理解はできないようだが、とりあえず目の前にいるのが歳納京子であることはどうにかあかりにも理解できたようだ。
「そっか…、未来のあかりちゃんかぁ…」
「私も不思議な気分だよ…。……ねえ、京子ちゃんから見て大きくなったあかりって、どう?」
「どう?って…………うーん…」
困ったような表情を浮かべつつその小さな瞳であかりの体を見渡し、顔をじっと見つめ。
「何ていうか…、影が薄くなった…?」
「ひ、ひどい!?」
そんな会話を繰り広げている中、ふとあかりは思い立った。
(支給品か…。そういえばあかりも何が入ってるか確かめておかないと…)
あかりは支給品の入ったランドセルに手をつける。
スマートフォンは確認していたが、支給品まではチェックをしていなかった。
今のうちに確認しておくべきだろう。
「えっと…、帽子と……カード?」
石ころのような色合いと模様をした帽子。
髑髏のお面を被った男が描かれたカード。
説明書を見ると、片やかぶると誰にも認識されなくなる帽子であり、片や暗殺者の魂をその身に宿し隠密状態になることができるという。
カードの方には何が書いてあるのかよく理解できなかったが、何となく理解できたことはある。
どちらも透明人間になるとか、気配を消せるようになるとか、そういう類の道具だという。説明書を信じるならば。
(何だろう、このそこはかとなく感じる悪意…)
『Msアカザ、そのカードは?』
「えっと、私の支給品なんだけど…」
ふと問いかけてきたレイジングハートにそのカードを見せる。
『………』
「レイジングハート、知ってるの?」
『そうですね、昔、マスターがヴィヴィオより少し上の歳であったくらいの頃でしょうか。
これと同じものを持った者と、ほんの少しの時間共に戦ったことがあります。
確か、彼女の名は―――――』
◇
「ええい、何故私はそんなことを忘れておったのだ!」
「ヴィクトリカさん、今そっちに行っちゃ―――」
「危険なのはおいていかれたあかりの方であろう!」
何故忘れていたのか。
唯一の同行者の少女の存在を。
確かに自分はあの子を赤い幽霊などと揶揄したが、まさか本当に忘れてしまうなどとは不覚だった。
しかし森に急いで戻ろうにも、ヴィクトリカの運動神経では森を抜け出す際の疾走でかなりの疲労を溜めてしまっている。
走ったところでそのスピードはたかが知れていた。
「それにしても、君のその服は何とかならんのかね!色々恥ずかしいぞ!」
「わ、私だって好きでこんな格好してるわけじゃありませんから!」
『我慢してください、今のイリヤさんはさっきの戦いのダメージ残ってるんですから!もし無理するかもしれないというなら急ピッチで治癒しなくちゃいけないんですよ!』
「あ、そういえばルビー、衣装替え無しで転身ってできたよね?!」
『魔法少女が自分の衣装恥ずかしがってどうするんですか!?』
「そういう問題?!」
一方でイリヤであれば、元々彼女自身が走ることを得意としている上に今はカレイドの魔法少女の姿。タツヤを背負っていてもその身体能力は有り余るほどだ。
急げばルビーの探知も含めてあかり救出を早急にすることもできただろう。
しかし解体聖母による内臓のダメージはイリヤの身体能力を下げ、そしてそれの治癒のための魔力負担はルビーの行う魔力運用自体にも支障をきたしていた。
今のイリヤの足はヴィクトリカとどっこいの速さだ。
「ルビー、クラスカードの制限解除はまだ?!」
『もう少しです。しかしそれまでにアサシンに発見されてしまうと、こちらに打つ手はありませんよ』
いくら走ろうと子供の足では元いた場所に辿り着くには遠く。
むしろ二人とも疲労から肩で息をしている有様だ。
「はぁ……、はぁ…、こ、ここまで走るのがきついと感じたのはいつ以来だろうかな」
『こうなったら少し移動速度を落としましょうか。その代わり、思考ゲームをするというのはどうでしょうか』
「思考ゲーム?」
『あの英霊の正体について考えてみるんですよ。もう少しゆっくりしてからでもいいかと思いましたが、こうして戻ってしまっている以上後回しにはできませんし。
黒のアサシンが英霊だというなら、そのクラス名だけでなく英霊としての真名を持っているはずです。そこを暴き出せれば、何かしらの弱点も分かるかもしれないですし』
「なるほど…」
「…?」
「んあ?」
ルビーの言葉に納得するような反応をするイリヤに対し、ヴィクトリカは話している言葉の理解が追いつかず首を傾げている。タツヤに至っては言わずもがなだ。
「じゃあえっと、まずあの子の外見だけど………あれ?」
「どうしたのだ?」
「ねえルビー、私あの子の顔見たよね?」
『はい、私も確認しました』
「思い出せないんだけど……」
「おいおい、その歳で耄碌したか?」
『いいえ、これはそういった類の呪い、おそらくはアサシンの持ったスキルではないかと思われます。
ちょっとお待ちください、今私の記録を出力します』
「のわっ?!」
と、目の前に映画のように出力された光に驚き思わず飛びずさるヴィクトリカ。
そこに映っていたのは薄い色素の髪にアイスブルーの瞳、全身を締め付けるようなボンテージスーツ。
ヴィクトリカの写真と照合してもほぼ一致するが、距離が近い分こちらのほうがはるかに鮮明だった。
「これが、あの”猟犬”の姿か」
『見た目に騙されてはいけませんよ。むしろこのあどけない顔で油断したところを近づいてバッサリっていうのがこの子のやり方みたいですし』
「そういえば、さっきの写真といい霧が濃いみたいだけど、これもあの子の能力なのかな?」
『私があそこで話したことを記録から引き出すに、どうやら宝具に近いものと思考したようですね。タツヤ君の体の不調もこれが原因でしょう』
「そういえば、この皮膚の爛れ方、まるで空気中に紛れた硫酸を浴びたものに近いな…」
タツヤの、処置済みとはいえ若干爛れてしまっている肌を見て呟くヴィクトリカ。
「分かるんですか?」
「まあ以前読んだ本に書いてあったことに近い、というだけだが」
『硫酸霧…ということでしょうか。そう昔の英霊というわけではないようですね。
ヴィクトリカさん、硫酸霧で思いつくことって、何かありませんか?主に歴史上の出来事とか』
「思いつくものといえば、1850年代以降のイギリスのロンドンは産業革命による影響で公害が発生したと聞くな。
まるで霧のようにロンドン中を覆ったと」
「イギリスのロンドンで、1850年代で…えっと、ルビーお願い!」
「そんなことも知らぬのか」
「だって小学校で世界史とか習わないもん!」
話が難しすぎたのか、タツヤはもはやウトウトとしている。
だがタツヤは自分が背負うからいいとしても、イリヤ自身が同じようになるわけにはいかなかった。
『1850年代のロンドンで、なるほど。ヴィクトリカさん、その中で何か思いつくものはありますか?
キーワードは、そうですね。殺人者、素性不明、あとはナイフ、ですかね』
「私の知恵の泉をそのような検索に使うな!」
「殺人者って、どうしてなの?」
『いえ、もし近代におけるロンドンの有名人というならば、英雄よりはそういう存在なのではないか、と思いまして。
それに私のメモリー内にあるあの人体を知り尽くしたようなナイフ捌き、名を馳せた英雄のものではありません』
謎の棒に検索に使われるというよく分からない屈辱を押さえ、知識の中から思案する。
何しろイリヤにとっては100年以上昔のことでもヴィクトリカにとってはそう昔の話ではないのだ。
「確か娼婦の連続殺人事件が起こった頃だな。
未だに犯人の発見されておらぬ、未解決の殺人事件。
世間では切り裂きジャック(ジャック・ザ・リッパー)などと呼ばれておるが」
「ジャック・ザ・リッパー…?」
『ヴィクトリカさん、その話、もう少し詳しくお願いします』
◇
レイジングハートが語った二人の名前。
それに見覚えがあったような気がした一同は名簿を確かめ、その二人がここに参加させられているということを確認した。
「魔法少女、かぁ。やっぱりミラクルンみたいで可愛いのかなぁ」
「ミラクルン?」
魔法少女という言葉にふと反応を示したあかりが呟く。
が、今隣にいる京子はまだミラクルンというアニメを知らない。
「えっとね、京子ちゃんが今の私と同じくらいの年齢になるころに京子ちゃんがすっごく嵌ってるアニメなんだよ。
こう、魔法を使って悪い奴をシュパーンって懲らしめていくようなアニメでね」
「へー…。面白そう…」
「そうそう、それで結衣ちゃんとちなつちゃ……その、ミラクルンにそっくりな女の子と一緒に娯楽部っていう部活を作るんだ」
「娯楽部って…。字面だけやと何やる部活なんか全然見えへんなぁ」
「結衣も、一緒なの?」
「うん、結衣ちゃんも一緒だよ!だからね、こんなところから帰ってみんなで娯楽部を作るんだよ!」
「あかりちゃん…。分かった!私、頑張って帰るよ!」
「ここにいるみんなも、一緒に……あ!」
と、あかりが何かを思い出したかのように声を上げる。
若干顔から血の気も引きつつあった。
「どうしたんだ?」
「ヴィクトリカちゃん!ヴィクトリカちゃんを探してたんだよ!
急がなきゃ…!」
『落ち着いてください。付近には生体反応はありません。それより何をそれほどに慌てられているのですか?』
「ヴィクトリカちゃんが、危ない女の子がいるのを見たって言ってて、それで私達逃げてたんだよ!だけど先に行ったヴィクトリカちゃんとはぐれちゃって…」
「先に行ったんならもう森抜けとるんちゃうん?」
「あ…」
『私もその危険人物とヴィクトリカなる人物を探索しておきます。霧も出てきたようですし迷うと危険です。早く移動しましょう』
どうやらヴィクトリカとはぐれたということに冷静さを失いすぎていたようだった。
というか京子を見ての動揺でヴィクトリカのことを完全に失念してしまう辺り少しは気をつけなければいけないだろう。
立ち上がる一同の最後尾、ふとあかりは思った。
(そういえば、さっきの石ころ帽子って)
レイジングハートの説明を受けたところだと、カードの方は専用の道具が必要だということらしい。
正直絵柄も怖かったからあのアサシンというカードは京子が渡したレイジングハートと共にヴィヴィオに預けた。
では、この石ころ帽子という道具はどうなのだろうか。
(本当に見えなくなるのかな?)
透明人間のようになってしまうというのはあかりにとっては恐ろしいことであるのは間違いない。
しかしそれでも不思議な道具を見ると好奇心が勝ってしまう。
本当に効果があるのかという、強い興味。
(すぐに脱げば問題ないよね?)
「あかりちゃん?」
京子の呼ぶ声が聞こえる中。
じっと帽子を見つめ。
「えいっ」
思い切って帽子をかぶった。
\アッカリ~ン/
―――ズサァァァァァァァァァァ
あかりの姿が見えなくなったことに一同が驚く暇すら与えられなかった。
あかりの消失と同時に。
突如、小さな少女が地面を滑って現れたのだから。
頭から地面に激突しながら地を滑って現れた少女に一瞬呆気にとられる一同。
「………痛い」
しかし顔を押さえて起き上がった少女の手にあるものを見て皆の顔が強張った。
その手にあったのは、真っ赤に染まった大きなナイフ。
暗い闇の中でキラリと光ったその刃についている液体。
それが意味するものは―――
『皆さん、走って!』
「ピカチュウ!エレキボール!」
レイジングハートの言葉で皆は走り出し。
サトシは咄嗟にピカチュウに攻撃を指示した。
ピカチュウの尾から黄色い電気の球が、少女に向けて放たれると同時、三人は背を向けて走り出した。
◇
「と、まあこれが世間一般に伝わっている切り裂きジャックの情報だな。
流石にその正体まで推理するにはまだ欠片が足りぬが」
『イリヤさん、確証まではいけませんが、確率はかなり高いですよ』
「でも、ジャックっていうからには男じゃないとおかしいんじゃ…」
「君ねえ、少しは頭を使いたまえ。正体不明の殺人鬼の性別に確証などあるはずもないだろう。
ジャックというのはあくまで通説にすぎない。一応女性版として切り裂きジルという名称もまた存在するのだよ」
ヴィクトリカとイリヤの間で広げられた切り裂きジャックという殺人鬼についての情報。
それはこじつけでこそあるものの、あの黒のアサシンの能力にも合致させることができるのではないか、というのがルビーの談だった。
記憶から情報を失わせるのは、そのあまりに隠匿され未だ解決されていないその秘匿性。
イリヤの内臓へのダメージは、彼女自身が解体したその娼婦達の臓腑の象徴。
「いや少し待て。話の流れがよく分からないから思わず付き合ってしまったが、君達、まさかこの写真の少女がその切り裂きジャックだとでも言うのかね?」
『まだ可能性の段階ですが、その確率はかなり高いですよ』
「待て、君達。さすがにそれは有り得んだろう。あの少女はどう見積もっても10代に届くかどうかくらいの歳だ。
あれが起きたのは今から数十年ほど昔のことだ、あの娘が生まれているはずはないだろう」
「えっ、1890年って百年くらい前じゃないの?」
「何を言っておる。1924年の100年前は1824年だろう」
『あー、やっぱりそういうことでしたか』
得心が言ったかのようにルビーは呟く。両側の羽のような物体を相槌を打つかのようにあわせる仕草は、ヴィクトリカには気持ち悪くも見えた。
『私達はあなたより100年ほど未来から来てるんですよ。どうやらポーキー・ミンチは時間を超える術を持っているみたいです』
「時間を、超える…か。なるほどな」
『おや、さほど驚かれないのですね』
「書物やこのスマートフォンなる道具を見ればあるいは、と考えることくらいはできた。実際に信じられるものなどではないがな。
では切り裂きジャックというのは、模倣犯や愉快犯などではなく―――」
『ええ、もし推測が正しいなら、本物か、あるいは本物に限りなく近い存在であることになります』
「ふん、時間を超えるといい切り裂きジャックの存在といい、このカオスの欠片は予想以上に深いらしい」
ヴィクトリカとしても自身の常識で測れぬことを受け入れたくはなかった。
しかし実際自分の常識では測れぬ自体が起きている。
であれば普通ではない可能性というのも視野に入れて考えていかねばならないだろう。
そして、そんな場所に赤座あかりを放置していったという事実も。
◇
黒のアサシンの中にあったのは困惑だった。
小狼と真帆を食うことで魔力補給を行い、その支給品に混じっていたミザエルのデッキを確認したアサシン。
彼女はその大量のカードを見て、好奇心のままにカードを並べてその絵柄と文字を見ていた。
半月竜ラディウス。
防覇龍ヘリオスフィア。
限界竜シュヴァルツシルト。
星間竜パーセク
RUM-七皇の剣。
No.107 銀河眼の時空竜。
CNo.107 超銀河眼の時空龍。
「かっこいい」
じっと眺めているだけで彼女にも何となく楽しめるようなものであったのは他の森にいた者達にとっては救いだったかもしれない。
あるいはそれで各カードの効果もそれなりに認識してしまったのは不幸となるだろうか。
ルールこそ認識できていないものの、それぞれのカードの効果自体は一通り覚えたアサシン。
彼女はバッグにそれらカードを仕舞い、移動を開始した。
近くには大きな湖があったものの、西に向かったところで陸地は少ない。それよりも遠回りになっても東に向かったほうがいいだろう。
そう思って、湖を遠回りして東に向けて移動することにしたのだ。
そんな中で見つけた、四人の人間と数体ほどの魔道具、魔物のような生き物達。
魔道具と魔物は周囲に気を配っていたみたいだが、アサシンの気配遮断の前ではそんなものは無意味。
静かに、彼らも気付かないうちにその周囲に暗黒霧都を張り巡らせたアサシン。ここが森であったこともあり地理的に霧が出てもおかしくなかったことが割と幸いだったかもしれない。
そしてあの時の白い少女のような戦いができそうな子達は一見しただけだといないようだ。
先手を取れるのは最初の一人。だがこの面子であれば狩りつくすのは容易い。
移動を始めようとした彼らの中で最初にアサシンがターゲットにしたのは、赤髪を団子状にまとめた少女。
彼らの中でまず最初に彼女を一突きにしようと、霧夜の殺人をいかして飛び出したその瞬間だった。
その少女の姿を認識できなくなってしまったのは。
狙いを失った刃はその目的を喪失し、勢いを殺し切ることができずに地面に思いきり転んでしまった。
挙句すんででかわしたとはいえ電気の球を放られ、他の三人にも逃走されてしまうなど。
別に殺人鬼であることを誇りには思っていないものの初めてのことに割と困惑してはいた。
暗黒霧都は範囲が狭まっているとはいえ、面積にしてエリアの半分くらいを覆うほどはある。
それによる探索だと、どうやらまだ範囲内には四人の子供がいる。
最初に狙った少女など、知覚範囲内にいるはず。
なのにそれが見えないというのは、一体どういうことなのだろうか。
「あわわわわわわわ…」
その少女、赤座あかりはアサシンのすぐ後ろで腰を抜かしていた。
まさか遊び半分でかぶった帽子のおかげで命を救われるなどとは誰が思うだろうか。
「あ、あかりも逃げなきゃ…」
地面を這うように、腰を抜かしたまま動こうとするあかり。
が、腰を抜かしたままという不安定な状態で動いたことで物音を立ててしまう。
それに反応したアサシンが咄嗟に放った1本のナイフ。
おそらく腰を抜かしていなければ心臓付近を抉っただろう位置を正確に通り過ぎた結果、あかりの頭上をギリギリで掠め。
あかりのかぶっていた石ころ帽子を切り裂いてしまった。
「見つけた」
「うわあああああああ!!」
逃げ出そうと踏み出すも、後ろにいたはずのアサシンはいつの間にか目の前に移動していた。
首筋を狙った一撃が振り下ろされるも、目の前にいたアサシンに驚いた拍子に飛びのいたことで皮一枚で済んだ。
斬られた箇所からぬるり、と生暖かい液体が流れ出すのを感じた。
(血…血が…!)
意識が遠くなりかけたが、ここで意識を落としてしまったらどうなるかは火を見るより明らかだ。
あかりにとっては運よく、アサシンにとっては運悪く避けられたことに若干の苛立ちを覚えつつあるアサシン。
「いやああああああああ!」
涙目になりながらも逃げようと、あかりは黒のアサシンに背を向けて走り出した。
◇
「―――ねえみんな、あかりちゃんは…!?」
逃げ出した三人があかりの不在に気付いたのは京子がふとそう呟いたときだった。
「えっ…、さっき透明人間みたいになったような気がしたけど、近くにいるんじゃ…」
『近くに生体反応はありません、まさかあの場に――』
「あかりちゃん!」
「アカン、今戻ったら殺されるで!あいつの持っとったナイフ見たやろ!もう誰か殺しとるんや!」
「でも…」
あかりを探しに戻ろうとする京子、それを止める他の皆。
だが、冷静さを失っていたのは京子だけではない。
突然現れた、血の臭いを漂わせた存在に動揺していたのはサトシ、ヴィヴィオとて同じだ。
だからこそあかりのことを失念していたが、もし気付いていたとしても今の皆には逃げることしかできなかっただろう。
しかしずっと走り続けていたはずなのに、一向に森の出口は見えてこない。
「サトシさん、ここさっき通りませんでした…?」
「え、ここ真っ直ぐに進んでたはずなのに」
「さ、サトシ君…、何か気分が悪くなってきた…」
「おい京子!しっかりしろ!くそ、何がどうなってんだ…」
『…!皆さん、この霧はただの霧ではありません!強い魔力を感じます!』
レイジングハートが叫ぶ。
そう、サトシ達は暗黒霧都の中に囚われていた。
このバトルロワイヤルの中での制限下とはいえ、霧の中に囚われた者は方向感覚を失い、少しずつダメージを受け続けることとなる。
故に、この霧の中ではどこまで逃げようともアサシンの手の内なのだ。
「霧…、これをどうにかすればこの森から抜け出せるんだな?」
『おそらくは。しかしこの霧はかなりの範囲を覆っているようです。人の手でどうにかするには…』
「よし、出てこいヤヤコマ!」
「ヤーココ!」
サトシが呼び出したのはヤヤコマ。
自身に支給されたポケモンの一体、赤い体を持った鳥ポケモンだ。
「かまいたちで霧を吹き飛ばせ!」
「ヤーココッココココ!」
サトシの指示と同時、ヤヤコマはその翼を羽ばたかせて風を巻き起こす。
乱れた空気は霧のない澄んだ空気を空間にもたらした。
一気にそこを駆け抜けるサトシ達。
しかし。
「ピカ!」
「アカンで!また霧がかかってきよった!」
如何せん範囲が広すぎた。
一時的に霧が晴れようともすぐに周りから霧が周囲を覆っていく。
「ヤヤコマ、連続してかまいたちだ!」
サトシはそう指示を出し、それにヤヤコマも従って連続してかまいたちを放ち。
それによって霧の晴れた空間をサトシ達は走り続けた。
◇
「はぁ…はぁ…」
「………」
アサシンと向かい合ってからもう数分ほど経っただろうか。
獲物以上の立場がなかったはずのあかりは未だに生きていた。
どうにか逃げ続ける中でアサシンの刃が通り抜けたところで石に躓いたり。
目に砂埃が入って顔を背けた瞬間、その横をナイフの投擲が通り過ぎたり。
ギリギリのところで運よく生き延び続けた。
しかし大きな傷こそ負っていなかったものの、あかりの体は全身に細かい傷が増え、その服もあちこちが破れているというひどい有様だった。
それはあかり自身の幸運という要素もあっただろう。だがそれだけではない。
アサシンは怯え、逃げるあかりを見て遊んでいたのだ。
殺人鬼たる彼女の最も好む感情は恐怖。相手が死の恐怖に狂う姿を無意識の内に望んでいたのだ。
もしあかりを殺すつもりで攻撃したのであれば、その運を持ってしてもあかりは腕や足の1本は失っていただろう。
だがアサシン自身もそろそろ決めるつもりだった。時間をかけすぎたことでイレギュラーが発生しないとも限らない。
「ね、ねえ、あなたはどうしてこんなことをするの…?」
「…?」
ふとあかりの発した言葉にアサシンは首を傾げる。
「こんなことって?」
「何って、人を殺すことだよ!そんなに小さいのに、お母さんきっと悲しんでるよ!」
「だってそうしないと、私もおかあさんの元に帰れないもん」
「あなたのお母さんは、こんなことして欲しいって思うの!?自分がされて嫌なことはしちゃいけないって、教えてくれなかったの?!」
月並みなことしか言えてないような気はした。
それでもあかりも必死だった。
逃げ場もなく追い詰められた、さながら噛むこともできない鼠のようなものだった。
だからせめて、目の前の少女に人殺しを思いとどまって欲しかった。
それで傷付くのは、この子自身じゃないのかと思ったから。
「だからお願い!こんなことは――――」
サクッ
(あれ?)
それはあまりに自然な動作だった。
ぼーっとしていたら見逃してしまいそうなくらいに自然に。
しかし素早く的確に。
そのナイフはあかりの胸に突き立っていた。
「うるさい」
そういってアサシンは、倒れたあかりの体にナイフを突き立て続けた。
殺気も悪意もなく、ただ包丁で肉を調理する料理人のように。
料理人が包丁を振るうのが当たり前なように。
彼女達にとって人を殺すことはあまりに自然なことだった。
人を殺してはいけないという倫理観も、善悪の区別も、それどころか物心つく以前から、右も左も分からない状態で堕胎され、殺され続けてきた。他でもない母親たちに。
だから、”彼女達”にはそんなことは分からない。
それを知るために、そのために正しく親から生まれ育ててもらうために、黒のアサシン――反英霊ジャック・ザ・リッパーとして呼び出しに応じたのだから。
ナイフを引き抜く。血が吹き出る。
しかしまだその体にナイフを突き立てる。また引き抜く。
ザクリ ザクリ ザクリ ザクリ
倒れたあかりの体から吹き出る血の量は少しずつ減っていく。
小さな穴のあいた風船から漏れる空気のように、少しずつ。
体が少しずつ人としての形を失っていく中。
もはや体を動かすこともままならず、視界も自身の血で真っ赤に染めたあかりは。
(―――みんな、ちゃんと逃げてくれたかな…?)
最後に思ったのは、この森の中で別れてしまった少年少女達の安否だった。
◇
『イリヤさん、見えてきました。あれ、さっきの霧っぽいです!』
「ルビー、カードはいける!?」
『ちょうど今いけるようになりました、がイリヤさんの体の方がまだ完治していません!
決して無理はなさりませんように!』
「ヴィクトリカさん、タツヤ君をお願いします!あとあの霧には絶対入らないで!」
背負っていたタツヤをヴィクトリカに預ける。
小柄な体なりにヴィクトリカはどうにかタツヤを受け止める。
「む、ま、待て。行くのは危険というが、お前も危ないのではないのか?」
「大丈夫、私は、魔法少女だから」
「答えになっていないぞ!」
「あかりって子も、絶対に探してきますから!」
そう言って、イリヤはカードを取り出して霧の中へと入って行った。
ヴィクトリカには止める間もなかった。
「自分の失敗の尻拭いをまさかあのような幼子にさせることになるとはな…」
あまりにも無様。
九条には見せられないような姿だ。
赤座あかりの無事は信じるしかできない。
彼女が戻ってくるまでの間、自分がしなければいけないのは。
「この幼児がおとなしくしてくれているように願うしかない…か」
「ぅ…ん、ねえ…ちゃ」
◇
「夢幻召喚(インストール)!」
桃色の服は白と白銀のドレスへと形を変え。
星型のステッキは黄金の聖剣へとその姿を変える。
『イリヤさん!もし無理だと感じたなら、何があってもこの霧を吹き飛ばすなり全力で逃げるなりして、決して無理はしないでください!』
「分かってる!」
『それと、もしあのアサシンがジャック・ザ・リッパーだとしたら女子であるイリヤさんでは相性が悪い可能性があります!注意してください!』
「どうして?!」
『切り裂きジャックの犠牲者が女性ばかりだからですよ!』
魔力の霧の中を、イリヤは走った。
あの小さな暗殺者の犠牲者を一人でも減らすために。
彼女の凶行を止めるために。
(お願い、間に合って――――)
◇
「やっぱり、あんまりおいしくない」
アサシンはあかりの魂を食うことで魔力回復を図った。
一般人でしかない少女のそれ程度ではそう多く回復できるわけでもないが、これで三人目。流石にある程度の魔力は回復しつつあった。
また、彼女の好む魂は彼女の属性と同じ、所謂悪人の魂。
これまで魔力温存のために食べてきた人間は悪徳金融だったり暴力団の人間だったり。そうでなければ魔術師だったり。
何かしらの悪事、血生臭い出来事に身を染めた人間ばかりだった。
完全に一般人の、それも善人の魂というのはあまりおいしくはなかった。
無論魔力補給が重要であって、味についてそこまでどうこう言うつもりもなかったが。
ともあれ、逃げたのは人間が三人と魔導具のようなものがいくつかに魔物が数匹。
手こずるような相手でもなさそうだが、どうやら霧の中を抜けつつあるようだった。
抜け出されたところで殺せない相手ではないが、そうなった場合面倒ではある。
「うーん、少しくらいならいいかな?」
なら、その足を緩めさせれば追いつくこともできるだろう。
霧の中ならばどこであろうと射程範囲内。
さあ、鬼ごっこの始まりだ。
◇
「ヤ…ヤコ…」
「ヤヤコマ、もう少しだ…、頑張ってくれ!」
「ヤコ…!」
かまいたちの連続で疲労を溜めつつあったヤヤコマ。
しかしどこまで霧が出ているのか分からない以上、皆を救うためにある程度の無茶も通すしかないのが現状だ。
ヤヤコマもどうにか答えてくれているが、霧のダメージはヤヤコマにも響いていたのだ。
そんな時だった。
「ゴホッ…!」
『ヴィヴィオ?!』
走っていたヴィヴィオが、突如血を吐いて倒れたのは。
「えっ…、えっ?」
「お、おい、何があったんだ!」
『強烈な魔力攻撃に近いものを受けたようで、内臓へのダメージが甚大です。一刻も早く処置を行わねば、命に関わります!』
意識を失ったヴィヴィオの顔色は青白く、口の端からは血が垂れている。
だが、処置をするにもここでそれを行う暇はない。
治療器具も時間も、何もないのだ。
「あわわわ…、どうしたら…」
「くそっ、迷ってる場合じゃない…。よっこいせ、っと!」
サトシも霧の影響で体にダメージを受けているだろうに、そんなことに意も介さずにヴィヴィオを背負い上げた。
「急いでこの森を抜けるぞ!ヤヤコマ、お願いだ、もう少しだけ頑張ってくれ!」
「ヤ…、ヤコー!」
サトシの言葉に体を奮い立たせるヤヤコマ。
走る速度自体は落ちてしまうが、見捨てていくわけにはいかない。
ヴィヴィオの治療のために、一刻も早く森を抜けるために一同は再度走り始めた。
それが黒のアサシンの狙いであることにも気付かずに。
霧のかかったトキワの森の一角。
殺人鬼は一人。
失われた命は一つ。
逃げるのは三人と数匹。
加えて、そこに突入していく、騎士王の力を身に纏った少女。
未だ霧も夜も明ける気配はない。
【赤座あかり@ゆるゆり 死亡】
【F-3/森/黎明】
【イリヤスフィール・フォン・アインツベルン@Fate/kaleid liner PRISMA ILLYA プリズマ☆イリヤ】
[状態]:疲労(中)、内臓にダメージ(小(回復中))、セイバーインストール中
[装備]:マジカルルビー@Fate/kaleid liner PRISMA ILLYA プリズマ☆イリヤ
[道具]:基本支給品一式、クラスカード・セイバー(夢幻召還中)@Fate/kaleid liner PRISMA ILLYA プリズマ☆イリヤ、ランダム支給品0~2(武器はない)
[思考・行動]
基本方針:殺し合いには絶対に乗らない
1:あの娘(黒のアサシン)は止めないと……
2:タツヤを姉(
鹿目まどか?)に会わせる
3:美遊、クロを探す
※ドライ開始直前からの参戦です
※黒のアサシンがジャック・ザ・リッパーである可能性を考えています
【F-3/山岳地帯/黎明】
【鹿目タツヤ@魔法少女まどか☆マギカシリーズ】
[状態]:目、喉、肌に痛み 、睡眠中
[装備]:防塵ゴーグル@ポケットモンスター
[道具]:無し
[思考・行動]
基本方針:帰りたい
1:イリヤおねえちゃんといっしょにいく
2:おねえちゃん(まどか)にあいたい
3:このおねえちゃん(ヴィクトリカ)こえがおねえちゃんみたい。おばあちゃんっぽいけど
※参戦時期は不明ですが、まどかのことを覚えています
※タツヤのランドセル(基本支給品一式、ランダム支給品0~2)がE-3のトキワの森内に落ちています
【ヴィクトリカ・ド・ブロワ@GOSICK】
[状態]:疲労(中)、右膝にばんそうこう
[装備]:パイプ@GOSICK
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1~2
[思考・行動]
基本方針:殺し合いという〈混沌(カオス)〉を解決して、聖マルグリッド学園に帰る。
1:霧の中に近づかないように注意しつつ、イリヤが戻ってくるのを待つ
2:〈混沌(カオス)の欠片〉を集める
3:黒のアサシンを警戒
4:赤座あかりを忘れてきたことへの罪悪感
※参戦時期は、『仮面舞踏会の夜』編(1924年、秋)以降です。
※スマホの扱いをマスターしました
※スマホ内に黒のアサシンが小狼、真帆を殺害した現場の写真が収められています
※イリヤ、ヴィクトリカは大まかな情報交換を行いました。
【F-3/森(暗黒霧都内)/黎明】
【サトシ@ポケットモンスター】
[状態]:健康
[装備]:モンスターボール【ピカチュウ(召喚中)、ケロマツ、ヤヤコマ(召喚中・疲労(大))】
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~2
[思考・行動]
基本方針:元の世界に帰る
1:霧を抜け出しヴィヴィオを手当てする
※参戦時期はXY6話、ハクダンジム再挑戦前です
※京子の名前が名簿にないことに気づいていません
【歳納京子@ゆるゆり】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~3
[思考・行動]
基本方針:結衣のところへ帰る
1:森の中から逃げる
2:あかりちゃん…、大丈夫だよね…?
※参戦時期は原作第30話「こどもの時間にあいこでしょ!!」orアニメ1期11話の過去回想時代です
※少なくとも京子の視点では元の世界から何の説明もなしにいきなり殺し合いの会場に飛ばされたことになっています
※参加者名簿を見ましたが、知り合いを探すのに夢中で自分の名前がないことに気づいていません
【高町ヴィヴィオ@魔法少女リリカルなのはシリーズ】
[状態]:内臓にダメージ(大)、意識無し
[装備]:レイジングハート・エクセリオン@魔法少女リリカルなのはシリーズ
[道具]:基本支給品一式、さくらカード『闘』@カードキャプターさくら(アニメ)、さくらカード『撃』@カードキャプターさくら(アニメ)、クラスカード・アサシン@Fate/kaleid liner PRISMA ILLYA プリズマ☆イリヤ
[思考・行動]
基本方針:???
1:意識無し
※参戦時期は、StrikerS終了後です。
※ケルベロスの知り合いの名前を、きちんと教えてもらってはいません。
※ランダム支給品の説明書は、ランドセルの中です。
※レイジングハートにはイリヤ、美遊とプリズマイリヤZwei2巻での共闘の記憶があります
【ケルベロス@カードキャプターさくら(アニメ)】
[状態]:魔力消費(大)、仮の姿
[装備]:無し
[道具]:無し[思考・行動]
基本方針:ポーキー・ミンチを懲らしめて、二度とこんな事をさせない
1:食事
2:ヴィヴィオを守る
3:さくらと小僧を探す
4:首輪を外す方法を探す
※参戦時期は、最終回後です。
※ヴィヴィオから、OPの出来事を聞きました。
※今の魔力では、元の姿に戻れません。
※その他の制限は、後の書き手の方にお任せします。
※あかり、サトシ、ヴィヴィオ、京子は大まかな情報交換を行いました。
【黒のアサシン@Fate/Apocrypha】
[状態]:ダメージ(小)、疲労(小)、魔力消耗(中)
[装備]:解体聖母×4@Fate/Apocrypha、決闘盤(ミザエル)@遊戯王ZEXAL
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0~2、
李小狼のランドセルの中身(基本支給品一式、ランダム支給品0~2)、三沢真帆のランドセルの中身(基本支給品一式、ランダム支給品1~3)
[思考・行動]
基本方針:皆殺しておかーさんのところに帰る
1:おなかすいたから何か(人間の魂を)食べたい
2:白い子(イリヤ)はいつか殺す
3:まず三人を追いかける
※解体聖母について
本ロワでは条件が揃っていても即死は不可能であり、最大効果で内臓ダメージ(大)を与えるものとします。
また、使用には大きく魔力を消耗し、消耗ゼロから使用しても回復無しで使用可能な回数は4回が限度であるとします。
※“CNo.107 超銀河眼の時空竜”の存在を確認、ミザエルのデッキのカードの効果を大まかに把握しました。しかし遊戯王のルールを知らないと思われるため使いこなせるかどうかは分かりません。
※F-3の森林地帯を暗黒霧都が覆っています
【レイジングハート・エクセリオン@魔法少女リリカルなのはシリーズ】
歳納京子に支給。
高町なのはの使用するインテリジェントデバイス。
【クラスカード・アサシン@Fate/kaleid liner PRISMA ILLYA プリズマ☆イリヤ】
赤座あかりに支給。
限定展開することで妄想幻像による身代わりを出現させることができる。
夢幻召喚した際にはハサン・サッバーハの能力をその身に宿し、妄想幻像による分身も複数作ることができる。
また、クラスカード共通のルールとして一度使うと2時間の間使用できなくなる。
最終更新:2014年03月19日 17:51