高貴な心を忘れてはいけないよ◆HoYWWMFJdI


たったったと、お堂に向かって走ってくる小さな少女―――雷。
扉をばーんと開けようとしても、扉はびくともしない。

「いたた……あ、そっか。えーと合言葉ね合言葉。こほん。

『高貴な心を忘れてはいけないよ』

……っと、これでよし。」

改めて扉を押すとすんなり開き、再び勢いよくお堂の中へと入る。

「しれーい!設置してきたわよ!」
「……ああ、御苦労さま。雷」

労うように笑顔を見せる司令官―――トロン。
雷がお堂を出る前より疲労しているように見える。

「ま、私にかかればちょちょいのちょいよ!」
ふふーんと誇らしげに胸をそらす雷。

雷が設置してきたのは、トロンの支給品に入っていたもの。
『ルームガードセット』である。


―――彼らが居る場所、『柳洞寺』はかなり防衛向きな立地になっている。

山岳地帯の中でも更に小高い山に柳洞寺は設置されており。
一直線の長い石段の先に山門があり、そこが柳洞寺への唯一の入り口となっている。
山門を越えると広い境内があり、その先には柳洞寺の荘厳なお堂が佇んでいる。

雷はその石段にレーダーとX線探知機を仕掛けてきたのである。
また、お堂の扉にはパスワード識別ロックと電撃銃とを設置し、
物理的にお堂の中へ入るためには、必ず合言葉を言わなければならないようにしている。


「まあ、ここが『禁止エリア』となれば全くの無意味となるんだけどね。
 だけど最低でも朝まで、上手く行けば初日の間は拠点とすることができるだろう」
「ここが私達の臨時の鎮守府になる、ってわけね。
 あの娘達が来れば、すぐに分かるわね」
「……雷。さっきも言ったけど、電や響と出会っても油断しないように。
 敵に操られている可能性は十分あるわけだからね」
「はーい、分かってるわよ、司令官」

ぷくーっとほっぺたを膨らませる雷。

先程スマートフォンのルールを確認しつつ、
紅茶を飲みながら話した中で、トロンは釘を刺したのだ。
もし雷の姉妹である電や響に再会できても、すぐには信用しないように、と。

「で、司令官も何かやってたみたいだけど……疲れてるみたい、大丈夫?」
「ああ、ありがとう。問題ないよ。……これを作っていたんだよ」

トロンの指し示す先。
仏像が見下ろす広い床に、大きな赤い印が描かれている。

「……これで拠点から離れて調査を行った際、
 何か不測の事態が発生しても、ここへ直ぐに帰ってこれるようになる」
「へー?なんだか分からないけど、さっすが私の司令官ね!」

ふふんと満足げに頷く雷。

―――と、お堂の中に警報が鳴り始める。

モニターには、頭に大きなリボンをした少女と、その肩に乗った猫が映っている。
X線探知機によると、刃物や銃火器の類の反応はない。

「おやおや……早速お客様のようだね。
 雷、手筈通りに」
「はーい司令官!行っきますよー!」


■■■


アンチョビを沈めた後、柳洞寺に向かっているツインテールの少女。
碧銀の髪が月に照らされる中、
アインハルトは肩に乗ったティオと共に真っ直ぐに進んでいる。

「ここが、柳洞寺……」

寺がある山全体から発せられる『気』……そして、『魔力』の流れを感じる。
辺りを探ってみたが、入口はこの長い石段しか無いようだ。

「ティオ、いつでも衝撃緩和できるよう、準備をお願いします」
「にゃあ!」
ひと声鳴くティオに頷き。

用心しつつ、一人と一匹が石段を上っていくと―――

「すとーーっぷ!!それ以上先には進めないわよ。
 ここを通りたいのなら、この雷様を倒して進むことね!」

石段の先。
頂上の山門に、腕組みして仁王立ちをしている小柄な少女がいる。

「……私はアインハルト・ストラトス。殺し合いには乗っていません。
 お話を、させてもらえないでしょうか」
「…むむ。この山門は司令官から絶対阻止の任務を貰っているの。
 悪いけど、回れ右してもらえないかしら」

そう言うと、雷は大きな盾を構え、その先端をアインハルトへと向ける。
呼応するように構えを取るアインハルト。

「―――そうですか、貴女も……」
「もんどーむようっ!」

大盾から光の砲弾が放たれる。
アインハルトはバックステップで回避を行い、跳ぶ前の地点に砲撃が炸裂する。


――― 一直線の階段。
頂上に陣を張る砲撃型魔導師。
自身の足場は狭い左右と段差のある前後。

合同陸戦訓練では砲戦型のヴィヴィオさんのお母様やティアナさんと戦ったが。
その時とは違い、地の利が相手にありすぎる。
だが、放った直後に間合いを詰めれば―――

雷は大きな盾―――ライディングボードを再び構え。
トントンと、アインハルトは小さくステップを踏み、跳躍のための機を窺う。


膠着状態ながら、お互いの気が満ちていき。
月に雲がかかると同時に、雷が二度目の砲撃を行おうと―――

「そこまでだ!雷!!」

仮面をつけた少年が山門に姿を見せる。

「……なっ!?司令官!?出てきちゃダメじゃない!」
「いいんだよ雷。お勤め御苦労さま」
「んもう!」

アインハルトは気を抜かず、頂上の様子を窺っている。

「非礼を詫びましょう、お嬢さん。
 どんな人間が来るか分からなかったのでね。
 雷にはここを守ってもらうようお願いしていたんだ」
「……」
「お詫びの印に紅茶でも振る舞いましょう。
 さ、雷。用意をしておいで」
「もー。司令官はいーっつも女に弱いんだから。はいはい、分かりました」
「さ、こちらへどうぞ、お嬢さん」

雷が山門から内側に向かって走って行き。
次いで仮面の少年が手招きして山門から姿を消す。

「……ティオ、警戒を解かないでね」
「にゃあ!」

いつでも後方に跳躍できるよう用心しながら、石段を上がっていく。


■■■


「本当に先程は失礼したね。
 僕はトロン。こっちは僕を守ってくれている雷だよ。
 ……さ、雷。こちらのお嬢さんに謝りなさい」
「む~~。フン。悪かったわね」

トロンはお堂ではなく、和室の居間にアインハルトを通し、
紅茶を運んできた雷と共に名乗りはじめる。

「何しろこんな状況だ。野蛮な連中が早速殺しに来るとも限らないしね。
 あらかじめ自衛できる体制を整えておきたかったんだ」

自身の首輪をちょんちょんとつつくトロン。

「ポーキー・ミンチとかいう非礼な輩には、その罪を償って欲しいのだけどね」
「ポーキー・ミンチ……」

警戒を解かず、紅茶にも一切手を付けていないアインハルトだが、
その名を聞くと、青と紺の両目が静かに燃え始める。

(おやおや……フフフ、これは心地の良い『怒り』だ……)

「どうやら、貴女『も』、ポーキー・ミンチ打倒を目指しているようですね」
「…………貴方達も?」
「ええ、もちろん。そうだな、雷」
「あったりまえじゃない!!司令官も私も、その為に戦っているんだもの!」

胸をどん、と叩く雷。


「…………」
(このトロンと言う少年は得体が知れないけれど……
 少なくとも、こちらの雷という少女は、嘘をついている瞳じゃない)
二人を見比べて、考える仕草をするアインハルト。

「どうでしょう。雷は先程お見せしたように砲撃型。
 そして私は『これ』を使って召喚・支援が出来る」

決闘盤とカードをアインハルトに見せるトロン。

「貴女は見たところ格闘型のようだ。
 組んで戦えば、ポーキーの放つ刺客や、殺し合いに乗った者との戦いになった際、
 非常にバランスが取れると思うんだが……」
「……」

トロンを見た後、雷の方に目を向けるアインハルト。

「ふ、ふん。私の砲撃を避けるなんて、アナタもなかなかやるじゃない。
 いいわ。
 司令官の足手纏いにはならないようだし、アナタが来るのなら拒まないわよ」
「と言うことです。どうでしょう、ポーキー打倒に力を貸してくれませんか」

「………………。
 わかりました。私はアインハルト・ストラトスと言います。
 これから、よろしくお願いします」


―――こうして、戦闘のバランスは良いながらも、
向いている方向の違う三人が組むことになったのである。


【G-6 柳洞寺/一日目 黎明】

【トロン@遊戯王ZEXAL】
[状態]:疲労(中)
[装備]:決闘盤(トロン)@遊戯王ZEXAL
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0~1
[思考・行動]
基本方針:生還する。手段は選ばない。
1:雷・アインハルトと共に情報収集。
2:九十九遊馬の排除。神代凌牙は保護するが、最悪の場合は切り捨てる。
3:ポーキーの言葉を真実と確信できた場合は優勝を目指す。
4:この会場で怒りの感情を集めておく。
5:雷は駒。役目を終えたら切り捨てる。
6:『ポーキー打倒』を名目にアインハルトを誘導・操縦する。
※WBC本選開幕前からの参戦。
※"紋章"の行使には体力を消費します。
※「No.69 紋章神コート・オブ・アームズ」は現在使用できません。
 使用には他者から一定量の怒りの感情を回収する必要があります。
※柳洞寺に【ルームガードセット@ドラえもん】を設置しました。
※柳洞寺のお堂に紋章を設置しました。
 柳洞寺へワープホールを作成し移動することが可能です。ワープは再使用に6時間かかります。

【雷@艦隊これくしょん】
[状態]:健康、記憶改竄
[装備]:ライディングボード@魔法少女リリカルなのはシリーズ
[道具]:基本支給品一式、マミのティーセット@魔法少女まどか☆マギカ、ランダム支給品0~1
[思考・行動]
基本方針:殺し合いには乗らない。皆で生きて帰る。
1:今は司令官の指示に従う。
2:他の姉妹達と合流したい。ただ、姉妹達が操られている可能性を持っておく。
3:司令官は大切な人。何としてでも守り抜く。
4:いきなりライバル(アインハルト)登場!?
※記憶操作によりトロンを"司令官"だと認識しています。

【アインハルト・ストラトス@魔法少女リリカルなのはシリーズ】
[状態]:疲労(小)、強い決意
[装備]:アスティオン@魔法少女リリカルなのはシリーズ
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1~2
[思考・行動]
基本方針:殺し合いを打破し、ポーキー・ミンチに罪を償わせる
1:トロン・雷と共に情報収集。
2:ヴィヴィオさんを捜したい。
3:トロンへの警戒は緩めない。
※無限書庫編開始直後からの参戦です

【ルームガードセット@ドラえもん】
トロンに支給。
自室を侵入者から守るための道具。セット内容は以下のとおり。
  • レーダー:通路に仕掛ける。誰かが近づくと室内のモニターに警報が鳴り、様子が画面に映し出される。
  • X線探知機:通路に仕掛ける。接近者が銃火器や刃物などを所持していないかをチェックする。
  • パスワード識別ロック:扉に仕掛ける。前もって登録した合言葉を言わなければ、扉が開かないようになる。
 また、このロックを仕掛けた扉以外(窓など)からも部屋に入ることができなくなる。
  • 電撃銃:扉の近くに仕掛ける。扉を開けようとした者が1分以内に合言葉を言わない場合、電撃で狙撃する。

【ライディングボード@魔法少女リリカルなのはシリーズ】
雷に支給。
「魔法少女リリカルなのはStrikerS」に登場する、戦闘機人ナンバーズの11・ウェンディの砲撃武器。
頑丈で巨大な盾。その先端には砲門がついている。
なお、飛行はウェンディの能力なので、ライディングボード単体には飛行能力はない。


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の登場SSを読む
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最終更新:2014年03月12日 12:24