414 アルト×シェリル 2008/09/22(月) 21:34:11 ID:CYNY7moO
素直に甘えることはシェリルにとって、ワンテイクでレコーディングを成功させることくらい、
もしかしたらそれ以上かもしれないくらい難しい。
もしかしたらそれ以上かもしれないくらい難しい。
もとより甘える相手もなくひどい扱いを受けてきた孤児で、甘え方など誰も教えてはくれなかったから。
唯一素直に甘えられたのは、皮肉にも自分を裏切ったグレイスだけだった。
唯一素直に甘えられたのは、皮肉にも自分を裏切ったグレイスだけだった。
「ゆっくり寝ろよ?それじゃあおやすみ」
こういう時どう言えばこの寂しさを伝えられるのかが、シェリルにはよくわからない。
政府から与えられたシェリルの部屋を出て行こうとするアルトの背中に、胸が痛む。
政府から与えられたシェリルの部屋を出て行こうとするアルトの背中に、胸が痛む。
愛する人…アルトを想って歌詞を紡いでいる時のように、伝えたいものが溢れて渦巻いているのに、
口に出して言葉にすることが出来ないのだ。
口に出して言葉にすることが出来ないのだ。
「―」
息を吸って、吐き出した。アルトの閉じたドアに向かって、デタラメな歌詞の歌と、寂しさと共に。
「あのなー…休めって言ったの聞いてなかったかのか?
もう夜遅いんだし、そんな大声で歌ったら近所メーワク。喉も休めてやれ」
もう夜遅いんだし、そんな大声で歌ったら近所メーワク。喉も休めてやれ」
一旦閉じたドアが開いて、アルトが呆れた顔を覗かせた。
喉だけじゃなく、病にむしばまれた体を心配しての言葉だろうが、その言い方が癪に触る。
喉だけじゃなく、病にむしばまれた体を心配しての言葉だろうが、その言い方が癪に触る。
「うるさいわね、馬鹿アルト。あんたも、明日早いんならさっさと帰んなさいよ」
ふてくされたシェリルは、素直ではない言葉を叩きつけてそっぽを向いた。
少ししてからガチャリとドアが閉まる音がして、帰れと言ったくせに落胆してしまうが…
少ししてからガチャリとドアが閉まる音がして、帰れと言ったくせに落胆してしまうが…
「あんな歌聞いて帰れるかよ」
「え…」
「え…」
彼はドアのこちら側にいた。
困ったような笑いを浮かべながら、ソファーにすわるシェリルに歩み寄ってくる。
困ったような笑いを浮かべながら、ソファーにすわるシェリルに歩み寄ってくる。
「寂しいって、歌が言ってた」
普段はどうしようもない鈍感男で、シェリルの気持ちなんて分かってくれない。
だが、流石は舞台に立つ人間と言ったところか、歌声が含んだ気持ちには気付いてくれたようだ。
だが、流石は舞台に立つ人間と言ったところか、歌声が含んだ気持ちには気付いてくれたようだ。
「自意識過剰よ」
「何とでも言え」
「何とでも言え」
抱きしめられて、暖かさに溺れる。
家族のないシェリルにとって、こんなに幸せな抱擁はアルトに出会うまで知らなかった。
人を愛しいと思う気持ちも。
家族のないシェリルにとって、こんなに幸せな抱擁はアルトに出会うまで知らなかった。
人を愛しいと思う気持ちも。
「私の歌をきいてなさい。ずっと」
ずっとなんて言ったって、そんなに長くないはずだから、この体から音が途絶えるまで、私の音楽
を聞いて効いていて欲しい。
を聞いて効いていて欲しい。
「私の…声、タダでずっと…聞いてられるなんて、こんな」
「こんなサービス、滅多にしないんだろ?」
「こんなサービス、滅多にしないんだろ?」
しゃくりあげる背中をポンポンと叩いてあやしながら、シェリルお得意の台詞を奪ったアルトが、
次は唇を奪った。
次は唇を奪った。
「聞いててやるから、ずっと」
その後には、ずっと歌っていてくれとほんの小さな声で付け足される。
そうして、二人の音が夜の中を刻んでいた。
そうして、二人の音が夜の中を刻んでいた。
end
すみません、エロにもつれ込むつもりが度胸なくて豚切れになってしまいました
※続きは3-436