初のテレビ向けアニメとして、原作初期の6つのエピソードをアニメーション化した単発作品群。
カナダのDIC ENTERTAIMENTとCINARプロダクションの共同制作。*1



げんきなマドレーヌ(1988)


テレビ向けの単発作品として制作された原作第1作のアニメ化作品。
原作のタッチを残しつつアメリカンカートゥーン調にアレンジされたキャラクターデザインやミュージカル調の作風がこの作品で確立されており、原作の筋運びを豊かに膨らませた楽しい作品に仕上がっている。
TVシリーズ版以上にやんちゃな印象の強いマドレーヌの元気なオテンバ振りもさることながら、アニメ化にあたってそれぞれ名前と個性を与えられた11人の女の子たちが、共に笑い、泣き、そして夜おとなしく寝たと見せかけて枕投げ合戦に勤しむ姿は実にかわいらしい。


マドレーヌのクリスマス(1990)


スペシャル版第2弾で、作者の死後に遺作として出版された『マドレーヌのクリスマス』の映像化作品。
大筋は踏襲しているが、原作で登場した魔術師は出てこず、物語の展開と登場キャラクターがアニメ版独自のものにアレンジされている。



マドレーヌといぬ(1991)


原作第2作「マドレーヌといぬ」のアニメ版。
セーヌ川で溺れたマドレーヌを救った勇敢な雌犬ジェネビーブとの出会いと悲しい別れ、そしてハッピーエンドに至るまでの顛末が忠実に映像化されている。原作ではジェネビーブが帰ってきてからハッピーエンドに至るまでの過程に具体的な説明がなかったが、映像化に当たってその点が補完されている。
一方、ジェネビーブを追い出されてしまったマドレーヌがイスの上に登って評議委員長に向かって堂々とタンカを切るシーンのみカットされてしまっている。子供向けのアニメにするには問題とされたためだろうが、マドレーヌが大人の権威にも屈しない反骨精神も秘めていることを描いていたシーンだけに、惜しい所である。


マドレーヌといたずらっこ(1991)


マドレーヌとジプシー(1991)


本作も原作にほぼ忠実であるが、原作の刊行当時から「『ジプシーママが子供たちを家に帰さずそのまま旅に連れて行ってしまう点や、子供を返すまいとしてライオンの毛皮を被せて隠す』というくだりが人さらいを連想させ、ロマ*2に対する偏見を助長する」という批判が当時からあったことを受け、話の流れに変更が加えられている*3

ロンドンのマドレーヌ(1991)

原作第5作の映像化作品。ストーリー展開は原作に忠実。
この作品からマドレーヌたちの外出着の色が青からおなじみの黄色に変わった。

最終更新:2023年06月29日 23:46

*1 第1作はDICのみ単独クレジット、2作目以降はCINAR単独のクレジットとなっているが理由は不明。

*2 今日ではジプシーという呼称は正確な実態に即していない差別的呼称であるという見地からこの呼び方が正しいと定められている。

*3 ジプシーママたちに助けられた後そのまま巡業に連れていかれてしまうという流れは「ジプシーママに家に帰るよう諭されたマドレーヌたちがこっそりついてきてしまう」という展開に、ライオンの毛皮を被せるくだりはサーカスのライオンが体調を崩して演技をできなくなったため、2人に着ぐるみを被せてライオンの振りをさせるという展開に変えられた。加えて駆けつけてきたミス・クラベルがジプシーママに2人の面倒を見てくれていたことに礼を言うなど、最後の別れのシーンも掘り下げられており、批判的イメージの払しょくが図られている。