ん、あれ、お客さん?
待って──今お茶──後テーブルとソファ出すから──あ、カステラ食べる?アレルギーがあるなら琥珀糖用意するよ~。
……はてさて。はは、すごいなぁ君は。こんなとこに来れたなんて……だってこの「空間」は僕のコートの左ポケットの中なんだよ──まあわかってるだろうけど、僕が今まで出してきたホワイトボードやらココアシガレ○トやらメロンパンは全部右ポケットからのものなんだよね。某国民的アニメの青だぬきで例えれば四次元ポ○ットみたいな感じ。
……うん、話を戻そうか。コートの左ポケットは言わば僕たちが今いる場所、「避難所」への入り口。
なんにもない、上下左右の感覚を失いそうになる程にただただ真っ白な空間。
求めるものが全て叶うって事に気づくのにはかなり時間がかかったよ。僕は如何せん欲しているものが絶え間なく変わり続けるからさ…二年前かな?すっっっごい強く念じてやっととあるものを具現化出来たんだけど、すぐに消えちゃったんだ。不思議な事もあるよね。
物心がついた頃にはずっとこんなだったというか……両親が居ない時は僕ず~っと避難所にいたからさ。
幼くしてそこら辺の大人よりも知識に富んでいた僕は真っ白な空間に居続けると感覚遮断ってのが起こって精神が狂う、とかいう話を試してみたかったから。
別に狂いはしなかった。いや……もうずっと狂ってるのかも。
僕はこの享楽主義を、快楽主義を、刹那主義をここでただ一人育んできたというか。
それでさ、僕は気づいてしまったんだよね……十二年前の僕と今の僕はこれっぽっちも変わってないって事に。十二年前の僕に哲学的な質問をかければ今の僕の回答と全く同じ答えを返してくれると思う。
え?問題児?そんなこと言わないでよ……お茶もう一杯いる?ああいや僕は京都人じゃないから帰らないで──!
……僕のこの「空間魔法」という無限の可能性を秘めた魔法、早五歳にして僕はその力を自覚した。そしてその瞬間に悟った。
「使いどころによれば世界を征服することが出来る。」
まあこんな野望を抱く人には絶対にこの力を宿せないんだろうな~ってのが持論なんだけど。
喉から手が出るほど欲しいと乞い願う悪人には一生与えられない魔法。僕が良くも悪くも「僕」だったから授かった素晴らしい力。
ただ僕がやりたいことを可能にして、知りたいことを知る為だけのものなんだ。
自分でさえ三秒後の自分が何考えてるかを予測できないくらい、そういう人間の雑念だとか、「特別になりたい」「一番になりたい」って欲から脱却した僕にしか扱えない力なのかもね~。
そうだ!面白いことを教えてあげるよ。実は僕四年前にコカ・コ○ラのレシピを知る為に本社の地下にポータルを作って金庫からメモを拝借したことがあるんだ。最初の材料は──うっ……頭が……ッ
──そういえば、君は "Once in a blue moon" という慣用句をご存じかな?直訳すると「青い月に一度」みたいな意のたった五音節で構成された英文、前述した通り慣用句。
訳すと「ごく稀に」とか「めったにない」とかそういう意味。まあ何が言いたいかというと、僕はとあるロク番目にこう揶揄されたことがあったんだよね。
うん。それだけ。
うん。それだけ。
……
………
え?なんか喋り方違うんじゃないかって?うーん……この空間は僕が僕であれる数少ない場所だからかな~……。
