半年前。崩壊し降り注ぐスタジアムの屋根を切り抜けて、ボクを救い上げてくれたあの日のことを思い出す。巨大な箒を駆るあの時の横顔は、片時も脳裏から離れない。きっと、一生焼き付いているだろう。
言葉にするなら、感謝と尊敬。ボクが先生に向けているこの感情は、4年前にこの世を去った師匠にも向いていた。
……でも、それだけじゃない。ボクが見ていたいのは、先生の横顔だけじゃない。その笑顔を正面から見たい。笑いかけてほしい、笑顔で返したい。
きっと、これは恋なんだ。生まれてから16年、ボクとは無縁だった感情。そうでなければ、先生の存在が師匠よりも大きくなるワケがない。これ以上の「らしい」説明なんて、ボクにはできやしない。
でもほうき星は、決して大地に触れることがない。いつか先生がいる場所に届くとしても、先生は遥か遠くまで進んでいる。決して変わることのない時間の流れが、ボクの願いを阻んでいる。
もしできることなら、ボクは夜空の星でありたい。先生に寄り添えるように、触れられるように。酔いつぶれた赤い顔の先生を眺めながら、そんなことを考えていた12月。目の前のほうき星には、きっと届かない。