(投稿者:A4R1)
Gの卵の産出を繰り返し、襲撃の波を乗り越えるごとに、超巨大Gが船との距離を縮めている気がする…。
気のせいじゃないよ…ね…?
「散々ロケット弾ぶち込んでるっつーのに、一向に落ちる気配が無いなあのGは…!!」
『しかし、小回りが利かないのはお互い様といったところか…!!』
「みんなー!!ふねのかじがなおったってー!!」
智代ちゃんが船内と甲板を隔てるドア越しに叫ぶ。
「機関部のMAID達は順調なようだな。」
それとほぼ同時に、Gの巨体が上空で左へと逸れていく。
『Gの巨体もろとも海中に沈められるリスクは消えたか…。』
「しかし、着水で巻き起こる津波にも注意を払うべきでしょう。」
『貴女の仰るとおりです。無闇に撃墜すると私達も大海原に投げ出される。』
『何とかしてこの船から遠ざけてから撃墜するのが最良だが…。』
「さっきよりも船の進む速度が落ちてないか?」
『ジェリーフィッシュの襲撃の余波かもしれない…。』
『かといって、狭い船内で多人数で抗戦するのは危険だ!!』
「船足は船内の方々に任せて、ボク達は上空のGに集中しましょう!!」
「でも、あんなにおっきいのを追い払う方法はあるの!?」
『見当も付かないな…。…ん?』
コウスケさんが太陽の方向に指をさす。
『あれは飛行機…?』
『アルトメリア行きの旅客機ですか。形状とモーター音で判ります。』
形状は確かに飛行機だけど、逆光のせいではっきりとした姿ではないし、
飛行機のモーター音がGの羽音に完全に負けている…。
「ボクには判りませんが…。」
「ミミもわかんない…。」
「私達はそれに関する知識に秀でていませんから…。」
『そんな事が出来るのは極少数だから気にするな。』
『飛行機の搭乗口から銃撃している。』
『極寒の中でライフルとガトリングを扱っているとは…只者じゃないな、あの二人…。』
フラッシュマズルは何とか見えるけど、
「Gに攻撃してるけど、ビクともしてないね…。」
『機関銃を撃っている奴はMAIDじゃないようだな。
しかし、普通銃架に固定して扱うやつを固定無しで連射しているあの男…ただ者じゃないな…。』
『人間の筋力の限界で耐えうるまでに銃を改造したか、使用者が人間の筋力の限界の上限を引き上げたか。』
「そんなに凄いんですか…。」
『少なくとも常人ではないな…。』
コウスケさんとほぼ同時に固唾をのみ込んだ…。
「きゃあっ!?」
上空から爆音が炸裂してきた!!
「Gの羽の片方がもぎ取れた!?」
Gが羽ばたこうとする程に体液が巻き散る…。
『案の定バランスが崩れている。こちらにぶつかるな。』
「飛行機の奴ら何の考えも無しに!?」
『いや!あの飛行機が位置している個所とは逆の羽が爆破されたんだ!!』
「どうしよう!!ぶつかる―!!!」
「避難勧告を…!!」
『あぁ、大至ky『おい!!飛行機から誰かがGに飛び掛ったぞ!!』
その一言に偽り無く、誰かが一人Gめがけ飛行機から飛び出した。
「えっ!?」
その右手に輝く何かが握られている。
「あれは…刀…!!」
「ぶった切るつもりか!?」
イイの心配げな言葉に続いて、堅い物同士がぶつかり合う音が響いて波音と一緒に消えていった。
『今の音は…Gから離れて!!』
マルトさんの号令で全員が右舷に退避すると、Gの巨体が瞬く間に細切れへと変貌した!!
「相当なロケット弾を射ち込まれてもビクともしなかったGが…。」
「な、何者なんだ!?」
「おあああぁぁぁぁぁぁ…。」
その人はそのままGの残骸ごと海面に叩き付けられた…。
『救助は海戦MAIDに任せよう。』
「せめて浮き輪でも渡しておこうぜ。」
「それもそうだね。」
『結構な距離があるが…届くか?』
「まぁまぁ、やってみないとね!!」
『そうですか。』
「そんじゃいくぞ。受 け 取 り や が れ えぇぇぇぇッ!!!」
ボクの相槌を聞くと迷う事無く全力投球を見舞った!!
放物線じゃない!!直線で飛んでいった!!
『前頭葉に直接命中したぞ!?』
「あったりー!!」
「おっしゃー!!」
『抜群のコントロールですね。』
湧き上がる数人に、リリさんが青ざめた顔を向ける。
「あの方気絶したんじゃ…?」
「「ヱ?」」
『完全にぐったりしてるな。』
「到達すればいいってもんじゃないよ!!」
「「…。」」
頭を抱え、両手で頬を挟み愕然とする二人に
『救命胴衣を着用しているみたいなので、すぐに水没する恐れはありませんよ。
MAIDの救助も間に合ったみたいですし。』
マルトさんが冷静なフォローをしてくれた。
「結果オーライかもしれませんが…手加減は覚えてよ…。」
「あ、あぁ…。」
(多分今後も仕出かすかもしれませんね…。)
「何か言いましたか?」
「いいえ。何も。」
一瞬悪寒を感じたような気がしたけど…。
『上空で飛行機がドンパチしてるな…。まだ多数の
フライがいるか…。』
「援護しようぜ!!」
『対空銃架か…。奴らの攻撃で四門の内一門が破損したか…。一門は…。』
「Gの体液がべっとり…。」
『使いますか?』
「気が引けますね…。」
「何ならオレのロケット砲でドカンと「「「『『『それは一番まずい。』』』」」です。」
…。」
『ん?船内から通信か?』
コウスケさんが何か機械を手に取り、自分の右の頬に持っていった。
「無線機ですか。」
「一台欲しいな。」
『船の備品です。』
「ちっ…。」
「露骨に残念がらないで…。」
『こちら甲板ブロック…前方…?』
「どうされましたか?」
『前方から生体反応が近づいているらしい。』
「前方?」
「…霞でよく見えねぇな…。」
「一人と一匹が来ています!!」
「リリさん解るの!?」
「解るも何も、テカテカがくっきりと人型とフライの形になってますし…。」
『陰っている環境下で、なぜあんなにも輪郭が浮き立っているんだ!?』
「人間とMAIDども!この俺が教えてやるよ!!」
結構な距離があるにもかかわらず、はっきりとした声が聞こえた。
そう認識した瞬間、その輪郭の持ち主が高速で飛来してきた。
それは、フライに乗った一人の男性だった。
即刻撃ち落とそうとしたイイを止め、その姿をまず観察することに…。
右目は眼帯で隠され、頭髪は栗の毬の様な刺々しさがある。
くすんだ褐色気味の肌に赤黒い瞳。
痩せ気味の頬に傷が三本刻まれている。
年齢は二十代中盤と捉えたけど、断定できるとは言えない。
「なんだお前は!?」
「俺はサーナイン・ニーガ!!お前らには
スポーンだとでも言っておくか!!」
スポーン…!!
『プロトファスマだという可能性もありますね。』
サーナインと名乗る男が電球がたくさんちりばめられたマントを翻して言うには、
「インパクトをすりこもうと思って技師のスポーンに作ってもらったぜ!!見ろ!この電飾マント!!」
「見ましたよ。」
『で、我々は感想を述べればよろしいのかな。』
「クリスマスはまだ早いのに…。」
『そもそも人相と合ってないな。』
僕等の返答に満足出来なかったのか、サーナインが顔をしかめる。
「な、なんだそのリアクション…。」
「インパクトはあるけど…。」
結局のところ、目立ちたかっただけ?
「マブいだろ!!」
「ダセぇよ!!」
「ゆるさねぇ!!」
うわ、沸点低い。
「そんなお前らは海のもずくになっちまいな!!」
マントの中に潜めていた爆弾を蹴り飛ばして来た!!
コウスケ>
『時限式爆弾か!!』
容積は一斗缶程の茶色の円柱の中央に時計がはめ込まれている…!!
『あのサイズの爆弾が炸裂したら、内容物によっては、この船の三分の一が吹き飛ぶ。』
「その通り!!さぁ、早速だが沈んでもらいぜ!!」
『解除しなければ!!』
「させるかよ!!」
駈け出そうとした時、奴のマントの下で何かが鈍く輝いた。
それに手を掛けた事を視認した瞬間、誰一人として物陰に飛び込まなかった者はいなかった。
もしそうしていなかったら、無機質な粒に無数の風穴を開けられていただろう…。
「くっ…マシンガンか!!」
絶え間無く銃架の楯を弾丸が叩く。
かなり広範囲に着弾していることから、命中させる事は意識していないのか…?
『弾幕を張られている。口径は―』
「あの爆弾を何とかしないと…!!」
「キキ!!」
キキと呼ばれた青毛のMAIDがマルトの分析を聞かずに、半自動大型拳銃で応戦しつつ爆弾目掛け駈け出す。
『弾丸を全部避けてんのか!?』
「いいえ…避けきれない物のみ受け止めています。」
弾丸がいくつか甲板に突き刺さらずに落ちていく。
しかししっかりと着弾した痕跡はあるため、着弾はしているようだ…。
まさか本当に自らの体で弾丸を受け止めているとでも?
強化衣類で保護されていない箇所にも着弾する事は免れないのは、
この如雨露から流れ出るような弾丸のばら撒き方を見れば、想像に難くなりようが無い。
『俺達が無闇に飛び込めば、それこそ一瞬で蜂の巣になっちまう…。』
『この状態である内ではあるけれど。』
銃架の楯の防弾窓から見えたのは、まさにキキ君が閃光でサーナインの右手を撃ち抜いた瞬間だった。
『状態が変わるのを待つばかりでは不確実。変えるきっかけを探すのが打開の基本だと。』
『解っていたのか?』
『彼女が素手でベンを
プライマーの弾丸からかばった瞬間を見たので。
まさかここまで防弾力を持っているとは予想以上ではあったけど。』
「にがさねぇぞ!!」
鋭い悲鳴を発しマシンガンを落して飛び去って行くサーナイトを赤毛のMAIDのロケット弾が追う。
「イイさん!深追いより爆弾を!!」
「くっ…キキ!!」
キキ>
行く手を阻むGは一匹もいなくなった。
Gの大群の襲撃前に、なぜかボコボコになっていた甲板に投下された爆弾は、
その損壊個所の内の一つに突き刺さっていた。
手にした時、時限確認用の秒針が…。
「後…五秒!?」
どよめきと絶叫の中から、
『海に投げ捨てろォー!!』
もうそれ以外に対処方法が…。
善はいそg…
「…っ…えっ!?」
糸状の何かが船体と爆弾を繋ぎ留めている…!?
力を込めて引いても千切れない。
弾力があり過ぎて手で切る事も出来ない…!!
「どうした!!」
「引き離せないみたいです!!」
「もう間に合わない!!」
でも、これを放って逃げるのはこの船に乗り込んでいる人全ての命が危うい!!
未知のGの襲撃や機銃の弾丸の雨霰を受け止められたなら、
この爆弾の爆発だって…!!
爆弾を強く抱きしめて他の皆に背を向けた。
『伏せろおぉぉぉぉぉ!!!』
爆発のエネルギーが船に垂直に伝わらないようにして、
その時を迎える。
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最終更新:2009年02月15日 22:22