彼女たちの朝に奏でられるピアノソナタ・サーティーン ◆John.ZZqWo
「す………………ご――――いッ!」
晴れ渡る空、真っ白で大き雲、そして青く透き通りどこまでも続く大海原。
あばら家から出て砂浜まで来た
相葉夕美はその光景に思いっきりの歓声をあげた。
「うわぁ……すごく南の海って感じ。すごいなぁ、実際にこんなに綺麗な海を見るのははじめてかも」
寄せる波音も耳に心地よい。相葉夕美は荷物を置きミュールを脱ぎ捨てると、まだひんやりとした砂浜を海に向かって走った。
きゅっと音の鳴る白い砂の上を駆けぬけ、きらきらと光を反射する水の中に素足を踏み入れ、そして――
「うわ、つめっ……冷たい冷たい!」
悲鳴をあげて取って返した。
この季節、布団を被らずに一晩を過ごしても風邪をひかない程度には暖かいが、日が上ったばかりの海の水はまだまだ冷たい。
「ひゃあ……、さすがに泳ぐってのは無理かもだね。でもこんなに綺麗な海なのにもったいないなぁ」
相葉夕美は未練がましく海を眺めながら荷物を置いた場所へと戻る。
今がオフで観光中というのならばこのまま海を眺めていてもよかったが、しかしそうではないし、彼女にはやることが多かった。
「まずはボートを膨らまそう。そして朝ご飯を食べたらもう一度この島の調査!」
リュックとは別に抱えてきた萎んだゴムボートを相葉夕美は砂浜に広げてゆく。
うんしょうんしょと広げてみれば意外とそれは大きく、意外なおまけもいくつかついていた。
「なんだ、こういうのついてるんだ」
畳まれたゴムボートの中に一緒に入っていたのはまず、小さな空気ポンプ。子供が使うようなものだが、当然と言えば当然の付属品だ。
そして2本のオール。樹脂製で折りたたみ式のものが入っていた。これもついてて当然だろう。なければボートは進まない。
「こっちの小さなバックの中にはなにが入っているのかな」
ファスナーで閉じられたビニールのバックには大きく『救命』と書かれていた。このゴムボートは簡易ながら救命ボートであったらしい。
開くとまず出てきたのが赤い十字印の書かれたプラスチックの救急箱だった。
中には包帯や絆創膏、消毒液、針と糸、ビタミンなどの錠剤、後は胃腸薬や熱さましなどがが少しずつ用意されている。
「サプリはありがたいな。自由な食事ができないと栄養は偏っちゃうもんね。それでこっちは何かな……」
次に出てきたのは簡単な釣具セットだった。先っぽに糸と針がついただけの細い釣竿に、タッパーに入った餌がついている。
餌は扱いやすさが考慮されているのか、つみれ状のなんらかのお肉のようだった。もしかすればいざという時の非常食にもなるかもしれない。
「おー、これで釣りができるねっ!」
そして最後、一番奥に入っていたのはペットボトルに入った水と折りたたまれたライフジャケットだった。
「あ、貴重な真水が増えてラッキー。それと……こっちは海に落ちても溺れないやつだよね。あってよかった」
ペットボトルの水をリュックのほうに移すと、相葉夕美はさっそくオレンジ色のライフジャケットを膨らませて身につけた。
これでなにがどうなったというわけでもないが、なぜかサバイバルに対する自信みたいなものが湧いてくる。
「よし、じゃあ早速ボートを膨らませちゃおう!」
おー! とひとり拳を突き上げると相葉夕美はポンプを萎んだゴムボートに挿してペコペコと踏み始めた。
■
「あ、足が…………」
子供用の小さなポンプをペコペコと踏むこと1時間と少し、平べったかったボートは大きく膨らみその存在感をアピールしていた。
全長はおよそ2メートル半といったところで、中で相葉夕美が寝転がったとしても若干の余裕がある。
チューブ径――空気を入れて膨らんでいる部分は35センチで、この大きさならば海に出てもよっぽどでなければひっくり返らないだろう。
立派なボートだと言える。つまり常識的に考えて、およそ子供用の空気ポンプで膨らませるものではない。
「ぜ、絶対いやがらせだ……。でも、よかった。先に確認しておいて……禁止エリアになってからじゃ間に合わなかったよ」
実際に支給した何者かの思惑はさておき、膨らませ終わった相葉夕美はボートの中にごろんと寝転がって息をついた。
床面を通して伝わる砂浜のひんやりとした感覚が気持ちいい。もうこのままお昼まで寝ちゃおうかという誘惑にかられる。
だがその誘惑の手はきゅ~というお腹の音で振り払われた。
「おなかもペコペコだよー……」
相葉夕美はボートから出るとリュックを開いてその中身を砂の上に並べてゆく。
彼女に支給された食料はビニールの袋に入った乾パンと缶詰がみっつ。
それと500ミリリットルの水が入ったペットボルが3本――と、ゴムボートについていた2リットルの水が入ったペットボトルが1本だ。
新しく食料を調達しない限りはこれらだけでこの先の数日をすごさないといけないことになる。
「今は、食べ物を調達できてないから、今朝だけは手をつけちゃおう。でも、どれを食べてどれを残したほうがいいかな」
手に取り食料を詳しく調べてゆく。
まず乾パンだが、嬉しいおまけがついていた。少量だが金平糖が小袋に入って同封されているのだ。サバイバルでは貴重な甘みと糖分である。
「これはルールを決めて食べないといけないね。金平糖は一度の食事で2個だけ食べる。うん決めた」
そして次に缶詰を見る。鈍い銀色の缶に文字だけ書かれた缶詰は大きいものがひとつと小さいものがふたつあった。
大きいほうを手に取って見てみると側面に『とりめし』と書かれている。反対側を見るとお湯で茹でて温めてくださいともあった。
「これは、ご飯だねー。この大きさだったら2食分くらいにはなりそう。それでこっちは……」
小さいほうの缶詰の片方を見ると『コンビーフベジタブル』と書いてある。そのままでもいいが、お湯に溶かすとスープになるらしい。
そしてもう片方を手にとって相葉夕美は怪訝な顔をし、そして『固形燃料』の文字の意味を理解してあっと声をあげた。
「燃料だ! これで火が起こせる!」
最後の缶詰は食料ではなかった。しかしサバイバルにおいてはある意味それ以上に重要な“火”だ。
上蓋を開くと中には平べったい蝋燭のようなものが入っていた。よく料理屋などでお一人様用の鍋を温める時に使うものとよく似ている。
それでこの燃料に火をつけるものは? と探すと、缶の底に油紙に包まれたマッチがくっついてるのが見つかった。
「マッチの数は5本……つまり、5回まではなにかに火をつけられるってことなんだよね」
相葉夕美は想像して考える。もしここで朝ご飯のために固形燃料にマッチを1本使って火をつけたらどうなるか。
缶詰を温め終わると同時に燃料は底をつき、ただマッチだけが4本残されるだろう。
「これ絶対罠だよ。この燃料はそのまま使っちゃいけないんだ。きっと削って少しずつ使うのが正解」
実際にそういう罠だったのかはともかく、相葉夕美はなかなか冴えた発想を見せた。これもサバイバルという極限状態のおかげかもしれない。
「これを火種にするってことはやっぱ燃やすものは自分で調達しないといけないよね。まぁ、予定通りかな」
とりあえず火を起こす際に木で木をこする必要がなくなったと理解すると、相葉夕美は固形燃料の缶に蓋をしてそれをしまう。
そして結局朝ご飯はどうするのか? うんうんとしばらく悩んだ末に彼女は『コンビーフベジタブル』を選んだ。
付属の小さな缶切りを使ってスチール製の缶を開く。けっこう力のいる作業だ。
そしてようやく中身を見てお腹の減っていた相葉夕美は、しかしなんとも微妙な表情をして「あぁ」とため息のような声を漏らした。
「非常食だしね。こんなものこんなもの」
正直、おいしそうな見た目ではない。缶詰一杯の茶色のコンビーフの中にポツポツとグリーンピースやにんじんの欠片が入っているだけだ。
しかもコンビーフの油は白く固まっており、そのままで食べられるとあってもどう考えても温めること前提の一品だった。
燃料を使っちゃおうか。一瞬考えて相葉夕美は首を振る。そんな甘い考えではサバイバルを生き残れない。
決心すると、これも一揃いだけついていた金属製の箸をコンビーフの中に突き刺した。
「しょっぱぁ~い…………」
一口食べて相葉夕美はうぇ~と舌を伸ばす。味の感想はただ「しょっぱい」だけだった。
お湯に溶かすとスープにできますというのも間違いだった。これは元々お湯に溶かしてスープにして食べるものに違いない。
つまり今、相葉夕美はそのスープの素を固まりで食べていることになる。
「でもサバイバルだもんね。我慢するしかないよね。貴重なエネルギー源だし」
相葉夕美としては、元々ある食料はいわゆる自分へのご褒美として存在するものだと思っていた。
自然から調達する食事はきっとおいしくない。だからこそ温存しておくべき食料は逆説的においしいものだと、そんなイメージだった。
しかし現実は非常だ。彼女に支給されたサバイバル用糧食においては栄養が第一、味は第二か第三くらいだった。
相葉夕美はコンビーフを箸でつついて崩しながら少しずつ食べる。味はともかく貴重な塩分と脂分の摂取にはなっている。
そして半分ほど食べたところで彼女は気づき、ペットボトルをひとつ開けて缶の中に水を少し注いだ。
「あ、これなら食べられるや」
あったかくはないので油は溶けず見た目はより悪くなったが、塩辛さは大分抑えられようやく料理らしい味の範疇におさまる。
それがただの気のせいであることに理性が気づく前にと彼女は素早く箸を動かし、そして一日目の朝ご飯を完食した。
「ごちそうさまでした」
■
砂浜で朝食をとった後、島の再調査に出るはずであった相葉夕美はしかしまだその砂浜におり、なにか作業をしていた。
「うんしょ、うんしょ…………」
口の中でふた粒の金平糖を転がしながら彼女は缶きりで『コンビーフベジタブル』が入っていた缶の側面を切っている。
斜めに切り口を入れて少しずつ力をこめて切り裂く。缶がスチールなのもあってかなり苦労するが、なんとかそれは完成した。
「さ~ば~い~ば~る、な~い~ふ~♪」
どこかで聞いたような物まねをしながら彼女が手にかまえたのは缶を切り裂いて作った簡易のナイフ……のようなものだった。
作り方は簡単。缶を切り裂いて短冊状にしたら一辺を数回折って背にし、手を切らないように持ち手の部分も折る……だけである。
サバイバルに必要な刃物を作り出す。相葉夕美が最初の食事に缶詰を選んだのはそんな理由もあったのだ。
「切れ味はどうかな……」
近くに落ちていた細い枯れ枝を拾い、できあがったばかりのナイフの刃をあてがう。
缶切りで切り取ったので断面はギザギザだが、むしろノコギリみたいでよく切れそうな印象があった。
「ん……っ! ん……っ! んん~……?」
だがそれは印象だけだった。所詮素人の、しかもありあわせで作った刃物……らしきもの。刃は枯れ枝の表面をただこするばかり。
しかしそれでも格闘すること数分、力をいれるコツを掴むと彼女の小指よりも細い枯れ枝も遂にはポキリと折れ――切れた。
「……ふう。切れ味はカッターナイフくらいかな。ないよりかはましだよね」
なにも切るものは硬いものとは限らない。例えば釣った魚や果実の皮なんかにはこの刃物っぽいものでも十分だろう。
そう納得すると相葉夕美はナイフをリュックにしまい、そのリュックを背負って再調査へと出発した。
本当はこのナイフもどきをブッシュナイフの代わりにして探険家気分を味わうつもりだったがそれはもう永遠の秘密である。
砂浜を出発した相葉夕美が最初に向かったのは、やはりあの睡蓮の花が浮かぶ池だった。
上ってきた太陽が眩しいのか、昨晩あれほど咲き誇っていた花はもうその花びらをほとんど閉じようとしている。
「んー……」
相葉夕美は顎に手を当てて考える。
昨晩は雨水が溜まっているだけの場合もありえると考えたが、水位の上下に敏感な睡蓮が咲いている以上水源がある可能性も高い。
単純にこの池の底から地下水が湧いているだけかもしれないが、それでもと相葉夕美は池の周りを回ってみることにした。
そして半周、ちょうど最初にいた場所の対岸にたどり着いたところで彼女は足元がかなりぬかるんでいることに気づく。
「これはもしかすると……」
池から水があふれているということではない。だとするとこのぬかるみはとても浅い川なのかもしれない。
相葉夕美は地面のぬかるみを頼りにその水源の根元に向かって歩き出した。
「ここまでか」
残念ながら彼女が期待していたような、直接水を取れるような水源はそこになかった。
そこにあったのは、辛うじてそこが水源だとわかる程度の洗面器ほどの大きさの水の溜まったくぼみだけだ。
指を差し込むとあっという間に底の泥が浮かんできてしまう。これではとても飲み水を採取できそうにはなかった。
「これだったらあの池で水を汲んだほうが早いかなぁ。でも蒸留するなら海の水でも同じだし……塩が取れる分お得かも……?」
少し悩んで相葉夕美はリュックから紙の地図を取り出すと、水の湧いている場所に「水:△」と書き込んだ。
そして来た道を戻る。やることは多い。今度は食べられる植物の調査と焚き木になる枯れ木拾いだ。
1時間後、相葉夕美の姿はまたあの砂浜にあった。そしてその両手は空――収穫はゼロである。
「この島、狭すぎるんだよ」
一周しても1キロメートルもない狭い島である。まず調査の対象となる植物の数が少ない。
その中に食べられると判断できるものはなかった。「おいしく」という条件を外しても結局見つからなかった。
もしあばら家の傍に生えていたバレリーナツリーが実をつけていたのならよかったが、しかしそんな時期でもない。
花が咲き乱れる季節とは、つまりまだ実がつく前の季節だということでもある。
そして島の小ささゆえに高い木というのもそうなく、その上で地面のほとんどが湿気を帯びているので枯れ枝も見つからなかった。
むしろそれは砂浜でのほうが見つかるだろう。
とはいえ波で流れ着いて長い時間をかけてできたものだろうから、その数はほんのわずかだろうが。
「気をとりなおして……次の島に行ってみようーっ!」
ないものはしかたがない。これも想定のうちだし、まだお昼までにやっておかないといけないことはある。
できることなら2食続けて支給品の食料に手をつけることはしたくなかった。
相葉夕美は忘れ物がないことを確認すると、リュックをボートの中にのせ、ロープを引っ張ってざぶざぶと海の中へと進んで行った。
■
「うぅ……腕がぁ…………」
大海原の上でオールと格闘することおよそ1時間。島の間を渡るという500メートルほどの冒険はようやく終わった。
たかが500メートル。歩けばせいぜい10分から15分だが、ボートを漕ぐとなるとそれは全然違った。
しかもプールや流れに沿うだけの川ならばともかく波の立つ海である。
本日は太陽の眩しい快晴で、風も無風に近く波も比較的穏やかなほうではあったが、それでも小娘一人を翻弄するには十分だった。
「うっく……、ハァハァ…………ちょっと、休憩…………」
なんとかボートを波の届かないところまで引き上げると相葉夕美はそのまま前のめりに砂浜に倒れこむ。
服や髪の毛が砂だらけになってしまうがそんなことにかまう余裕も今はない。
「ライブでもこんなにきつかったことないよ……ハァ」
砂はほどよくあったまっていて心地いい。だけどやっぱりここで寝てしまうわけにもいかないので相葉夕美は身体を起こした。
ぺたりと座り込み、懐から情報端末を取り出す。時間はもう少しで11時だった。どおりで太陽の位置も高いはずである。
「あぁ、放送までに一回りしなくちゃ……」
放送が流れればまた新しい禁止エリアが発表される。
自分が禁止エリアで追いたてられる可能性は少ないと考えたが、ただの思い込みで偶然の可能性もゼロじゃない。
それに一応は最初の島から隣のエリアへと移動はしたのだ。
運営は相葉夕美が実際にボートで移動できるかどうかを確認するまで待っていた――なんて可能性もまた、なくはなかった。
なんにせよ次の放送までには一区切りつけておきたい。
およそ1時間。島中を探索するのは無理なのでせめて外周は回ろうと相葉夕美は重たい身体を引きずって砂浜を歩き出す。
相葉夕美がボートを乗りつけたのは「G-7」にある大きな島の北東の端だったのだが、島の北側は一辺全てが砂浜だった。
なのでとりあえず彼女は砂浜にそって西へ――半時計回りに島を巡ってゆく。
ここも白い砂なのは同じで踏むときゅっきゅと音が鳴って心地よかった。そして前の島とは少し違う点もある。
「こっちのほうが本島に近いからなのかな……」
漂流物が多い。多いと言っても前の島に比べればという話でそう色々流れ着いているわけではないが、それでもあるにはある。
例えば海草の塊だったり、乾いた流木など。これらはこの島と本島の間の海流が速いことを意味してるのかもしれない。
そして自然の中では生まれない、人間がどこかで捨てただろうゴミもいくつか発見できた。
錆だらけの空き缶やビニールの破片、かたっぽだけの足ヒレなど、ほとんどはやっぱりただのゴミだったが、お宝もあった。
「これとこれはは使えそうかなっ!」
ひとつは透明なビニール傘だ。フレームはところどころ錆びているがビニールはどこも破れていない。まだ十分に使える。
もうひとつはブリキのバケツである。どこかで誰かが花火でもしたのかもしれない。これも穴も開いておらず使用に耐えそうだ。
「やっぱり移住するならこっちの島かなぁ~♪」
ふふっと笑って相葉夕美は砂浜を歩く。片手にビニール傘、片手にブリキのバケツ。少し滑稽な姿だったが本人は楽しそうだった。
砂浜を辿って西端まで着くとそこから先は岩場になっていた。相葉夕美は足を滑らせないよう注意して歩く。
ふらふらと腕を振るとバケツの中でガラガラと音がする。中には途中で拾った貝がバケツの半分くらいまで入っていた。
砂浜の端らへんは干潟になっていて、そこで見つけた『アカガイ』である。今日の昼食になる予定だ。
彼女の専門は植物だったが、『アカガイ』が毒をもってないことくらいは知っていた。
「後で釣りもしてみようかなっ! こういうところっていかにも釣れそうな気がするし」
岩場から岸壁を叩く白波を見て相葉夕美はそんなことを言う。波と泡に隠れて海の中は覗けないが確かに魚が潜んでいそうではあった。
ついさきほどまでは疲労に顔をしかめっぱなしだったというのに、いくつか収穫があれば見ての通りに上機嫌。
女の子らしく現金なものだ。しかし、そんな彼女の笑顔もあるものを見るとふっとかき消えた。
「…………………………」
対岸の島になにか細くて高い建物が見える。そこには牧場があったはずだからおそらくは牧草を貯蔵するためのサイロだろうか。
初めて直接目にする、自分とは隔絶された向こう側。あそこで、ほんのすぐ向こう側では自分以外のアイドル同士が殺しあいをしている。
FLOWERSのみんなも殺しあいに怯え、逃げ回るか、それとももう誰かを殺してしまったかもしれない。
そして、それでも絶対に希望を諦めないだろう彼女がこの波で隔てられた向こうにいる。
「……仕方ないよ。だってみんなは助からないんだもん」
相葉夕美は“向こう側”から視線を振り切ってまた歩き始める。
バケツの中でガランガランと寂しい音がした。
【G-7 大きい方の島/一日目 昼】
【相葉夕美】
【装備:ライフジャケット】
【所持品:基本支給品一式、双眼鏡、ゴムボート、空気ポンプ、オールx2本
支給品の食料(乾パン一袋、金平糖少量、とりめしの缶詰(大)、缶切り、箸、水のボトル500ml.x3本(少量消費))
固形燃料、マッチ5本、水のボトル2l.x1本、
救命バック(救急箱、包帯、絆創膏、消毒液、針と糸、ビタミンなどサプリメント各種、胃腸薬や熱さましなどの薬)
釣竿、釣り用の餌、自作したナイフっぽいもの、ビニール傘、ブリキのバケツ、アカガイ(たくさん)】
【状態:疲労(大)】
【思考・行動】
基本方針:生き残り、24時間ルールで全員と一緒に死ぬ。万が一最後の一人になって"日常"を手に入れても、"拒否"する。
0:放送までに島を一周。
1:しばらくは今いるあたりを中心に、長期戦を想定した生活環境を整えることに専念。
※金平糖は一度の食事で2個だけ!
※自分が配置されたことには意図が隠されていると考えています。(ただし興味無し)
最終更新:2013年04月29日 00:55