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  • 自分用SSまとめ
  • 朋也「軽音部? うんたん?」 4/10 土

自分用SSまとめ

朋也「軽音部? うんたん?」 4/10 土

最終更新:2011年05月09日 16:31

meteor089

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管理者のみ編集可

朋也「軽音部? うんたん?」

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189:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 14:50:35.32:cUBlBpOS0


4/10 土

朝。用を足し、自分の部屋に戻ってくる。
モヤがかかった意識で、時計を見た。
これも、もう目覚ましとして機能しなくなって久しい。
今朝はその唯一の役割を立派に果たしてくれた。
今から準備して学校に向かえば、四時間目には間に合うだろう時間であることがわかったのだから。

朋也(今日、土曜だよな…)

朋也(行っても、一時間だけか…)

朋也(たるい…サボるか…)

布団にもぐりなおし、目を閉じる。
………。

朋也(ああっ、くそっ…)

頭はぼんやりとしているが、体が落ちつかず、眠れない。

朋也(運動不足かな…)

………。

朋也(学校…いくか)

そう決めて、布団から這い出た。

―――――――――――――――――――――


190:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 14:52:41.79:1qYNd8dxO


支度を終え、居間に下りてくる。
親父の姿はなかった。
もう、出かけた後なのだろう。

―――――――――――――――――――――

戸締りをし、家を出る。

―――――――――――――――――――――

ちょうど角を曲がったところ。
見覚えのある顔をみつけた。
壁に背を預け、空を見上げているその少女。
手には、その形から察するに、大きなギターケースなんかを持っている。

「あっ」

こっちに気づく。

唯「おはよう、岡崎くん」

平沢だった。

朋也「おまえ…なにしてんだよ」

唯「ん? 岡崎くんを待ってたんだよ?」

朋也「そういうことじゃなくてさ…」

なにから言っていいのやら…。


191:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 14:53:05.26:cUBlBpOS0


朋也「もう、とっくに学校始まってんだぞ。むしろ、もう終わるだろ、今日は」

唯「そうだね」

朋也「そうだねって…」

ここまで軽く返されるとは思わなかった。

朋也「つーか、きのう迎えはいらないって言っただろ」

唯「だから、迎えてはないよ。待ってただけだからね」

朋也「同じことだろ…」

唯「いいでしょ、待つだけなら、私の自由だし」

それならいっそ、呼び鈴でも鳴らしてしまえばいいのに。
俺に拒否された上でやるならば、ただ待つよりは手っ取り早いはずだ。
言おうとして…やめる。
もしかしたら、とひとつの考えが頭をよぎった。
こいつは、昨夜俺から聞いた話を考慮して、こんな行動に出たのかもしれない。
俺が親父と接触することにならないよう、下手に干渉することを避けて。
………。

朋也「…朝からずっと待ってたのか」

唯「うん。いつ来てもいいようにね」

そんなの、俺の気分次第で変わってしまうのに。
最悪、サボることだってありうる。現に直前まで迷っていた。


193:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 14:56:02.46:1qYNd8dxO


それなのに、こいつは…

朋也「…なんで、そこまで…俺、なんかおまえに気に入られるようなこと、したか」

思い当たる節がない。
むしろ、その逆に当てはまる事例の方が多いような気がする。

唯「う~ん…そう言われると、特別、なにもないような…」

腕を組み、小首をかしげる。

唯「でもさ、人が人を気になるのって、理屈じゃないところもあると思うけどな」

胸を張ってそう言った。

朋也「…おまえ、俺のこと好きなの?」

唯「え?」

朋也「恋愛的な意味で」

唯「へ!? いや…それは…違う…かな?」

流石にそれは自分でも都合がよすぎるとは思ったが。
きっと、こいつはただ、俺のように腐っている奴を放っておけないたちなんだろう。
ストレートにいい人間なんだ。

唯「でも、岡崎くん、かっこいいし、その…いい人が現れると思うよっ」

フォローされてしまった。


194:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 14:56:29.31:cUBlBpOS0


朋也「そっか。ありがとな」

ぽむ、と彼女のあたまに手を乗せる。

唯「わ…」

朋也「いくか」

唯「うんっ」

―――――――――――――――――――――

朋也「これっきりにしとけよ」

唯「なにが?」

朋也「だから、俺の出待ちだよ」

唯「私と一緒に登校するの、嫌?」

朋也「そうじゃなくて、俺を待ってたら遅刻するって話だよ」

いいや奴だと思うからこそ、巻き込みたくはなかった。
こいつはまともでいるべきだ。

唯「じゃあ、岡崎くんが朝ちゃんと起きればいいんだよ」

朋也「おまえがやめればいいんだ」

唯「やだよ。私、待ってるって決めたんだもん」


195:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 14:57:54.64:1qYNd8dxO


唯「だから、私がかわいそうだと思うなら、はやく来てね」

朋也「まったく思わないし、今まで通り起きる」

突き放すつもりで、そう言った。

唯「ひどいよっ、開店前のパチンコ店に並ぶ人くらい早くきてよっ」

また、わかりづらい例えを…。
というか、まったく堪えていない様子だ。
初めて会った時の再現のようだった。

唯「あ、今の通じた?」

朋也「まぁ、一応…」


196:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 14:58:14.79:cUBlBpOS0


唯「よかったぁ、少し自信なかったんだ」

唯「だけど、あえて冒険してみました」

朋也「あ、そ…」

平沢のペースに巻き込まれてしまい、それ以上なにか言う気になれなくなってしまっていた。
こいつのボケをまともに受けてしまうと、こっちの調子が乱される…。
なるべく捌くように心がけよう…。

―――――――――――――――――――――

ふたり、坂を上る。
あたりまえだが、周りには誰もいない。俺たちだけだった。
そんな状況にあるため、なんとなく隣を意識してしまう。


197:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 14:59:31.80:1qYNd8dxO


俺は平沢をそっと盗み見た。
前を向いて、ひたすらに歩いている。
時々風で髪がそよぐ。
桜を背景にして、景色によく映えていた。
こいつのふわふわとした感じが、春という季節にマッチしているのだ。
俺は、いつかの春原の言葉を思い出す。
確か、軽音部はかわいいこばかりだとか言っていた気がする。

朋也(こいつも、かわいい部類には入るよな…)

大きい目、小さい口、通った鼻筋、弾力のありそうな頬、ふんわりとした髪質…

朋也(つーか、余裕で入るな…)

春原の言ったこと…少なくとも、こいつにはあてはまると思う。

唯「? なに?」

朋也「いや、別に」

俺はすぐに視線を前に戻す。
長く見すぎていたようだ。気づかれてしまった。

唯「?」

―――――――――――――――――――――

教室、四時間目までの休み時間に到着する。

律「唯~、どうしたんだよ」


198:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 14:59:49.32:cUBlBpOS0


ふたりとも席に着くと、部長がやってきた。

律「とうとう、憂ちゃんに見捨てられたか?」

唯「そんなんじゃないよ~。今日はちょっと先にいってもらっただけだよ」

律「ふーん、先にねぇ…」

ちらり、と俺に目をやる。

律「こいつと登校するために?」

朋也(げ…)

やっぱり、一緒に教室に入ってきたのはまずかったか…。
そういえば、ちらちらとこっちを見ていた奴らもいたような気がする…。

唯「そうだよ」

朋也(おまえ…んなはっきりと…)

律「お? マジだったか」

嫌な汗が出てくる。
話がそういう方向へ向かっているように見えたた。
実際は、平沢の親切心から出発したことなのに。
昨日あったこと、俺が話したこと…
全部含めて、そう決めたというのも、少なからずあるだろう。
そういういきさつを知らずに結果だけ見れば、おおいに誤解される可能性があった。


200:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 15:01:05.05:1qYNd8dxO


律「岡崎…あんた、やるねぇ。短期間で、あの唯を落とすなんてな」

唯「落とす…?」

思った通り、ばっちりされていた。

律「いやぁ、唯はそういうこと、興味あるようにみえなかったんだけどなぁ」

朋也「違う。勘違いするな」

律「なにいってんだよ。遅刻してまであんたと登校したかったんだろ」

律「思いっきり惚れられてんじゃん」

朋也「だから、それは…」

どう説明したものだろうか…。

唯「ねぇ、りっちゃん。落とすって、なに? 業界用語?」

律「うん? そんなことも知らないのか、おまえは…」

律「落とすっていうのは、口説き落とすってことだよ」

唯「口説く…って、岡崎くんが、私を?」

律「うん。それで、今ラブラブなんだろ」

唯「そ、そんなんじゃないよっ! 第一、岡崎くんには、私じゃ釣り合わないし…」


201:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 15:01:25.13:cUBlBpOS0


律「見た目のこといってんなら、釣り合い取れてると思うぞ」

律「唯は当然かわいいとして、岡崎もなんだかんだいって男前だからな」

唯「そ、そうかな…って、ちがうちがうっ!」

唯「今日一緒にきたのは、なんていうか…私のわがままっていうか…」

唯「とにかく、そういうのじゃないからっ!」

律「ふぅ~ん、でも、なぁんかあやしいなぁ」

唯「もう許してよ、りっちゃん…」

律「いやいや、こういうことは、はっきりさせなきゃだな…」

キーンコーンカーンコーン…

律「っと、タイムアップか。ま、昼にまた詳しく聞くからな。ばいびー」

そそくさと自分の席へ戻っていった。

唯「もう…ごめんね、岡崎くん。りっちゃん、いつもあんなだから…」

朋也「いや、いいけど…」

なんとなく挙動が誰かに似ている気がして、逆に親近感が湧くような…。
そう思うのは気のせいだろうか。

ガラリっ


202:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 15:02:47.11:1qYNd8dxO


乱暴にドアが開かれる。
教師かと思ったが、目に入ってきた金髪で、その予想が裏切られたことを知る。
普通に春原だった。
肩で息をしながら着席し、そのまま机に突っ伏すと、微動だにしなくなった。

朋也(あ、死んだ…)

かのように見えたが、呼吸のためか、上体が上下しはじめた。

朋也(寝たのか…なにしにきたんだ、あいつは…)

―――――――――――――――――――――

生徒「気をつけ、礼」

声「ありがとうございました」

授業が終わり、弛緩した空気になる。
そこかしこから、昼は何にするだとか、そんな声が聞えてきた。

唯「いこ、岡崎くん」

朋也「ああ」

いつものように平沢と職員室に向かう。
土曜日は、4時間目が終わると、清掃なしで即SHRが行われ、放課となる。
昼を摂れるのはそれからだった。

―――――――――――――――――――――


203:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 15:03:04.66:cUBlBpOS0


声「平沢さん」

唯「はい?」

職員室でボックスの中を漁っていると、後ろから声をかけられた。

さわ子「今日、なんで遅刻したの? 欠席かと思って、お家に電話したのよ」

俺が主な原因だっただけに、どうもばつが悪い。

さわ子「でも、誰も出ないし…携帯もつながらなかったし…」

さわ子「だから、なにかあったんじゃないかって心配してたんだから」

俺や春原なんかは常習犯だったし、この人は大体の事情も知っているから、いつものことで済まされる。
だが、これが普通の生徒に対する、一般的な反応だった。

唯「ごめん、さわちゃん。ただの寝坊だよ。携帯は電源切ってたんだ」

部長の時とは違い、ごまかして伝えていた。
仲がいいとはいえ、教師なので、俺の名前を出すことをしなかったのかもしれない。
それを思うと、罪悪感を感じてしまう。

さわ子「寝坊って…岡崎くんや春原くんじゃあるまいし…」

さわ子「まぁ、いいわ。それで、いつきたの」

唯「三時間目の終わりだよ」

さわ子「それ、寝すぎじゃない? 夜更かしでもしてたの?」


204:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 15:04:18.96:1qYNd8dxO


唯「えへへ、まぁね。ギー太がなかなか寝かせてくれなくて…」

さわ子「よくわからないけど、夜中にギターを弾くのは近所迷惑でもあるから、やめなさい」

唯「は~い」

さわ子「夜はしっかり寝て、ちゃんと学校に来なさいね」

唯「はぁ~いぃ」

さわ子「過剰に間延びした返事はやめなさい」

唯「へいっ」

さわ子「ほんとにもう…。あ、それと、岡崎くん」

朋也「…なんすか」

少し落ちた気分を引きずったままこたえる。

さわ子「中庭、がんばってくれたみたいね。用務員のおじさんも喜んでたわ」

朋也「はぁ…」

さわ子「今日は特にやること決めてないから、帰ってもいいわよ」

朋也「そっすか」

さわ子「春原くん…は今日来てる?」


205:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 15:04:37.58:cUBlBpOS0


朋也「ああ。来てるよ」

さわ子「じゃ、あの子にも言っておいてね」

そう言い残し、職員室の奥へ去っていった。

唯「私達も、いこっか」

朋也「ああ」

―――――――――――――――――――――

唯「ねぇ、今日なにもないんだったらさ、部室に遊びにこない?」

配布物を運ぶ途中、平沢が口を開いた。
前にもこんな調子で誘われた覚えがある。

朋也「遊びって…いいのかよ」

唯「うん、もちろん。一緒にお茶飲んだり、お話したりしようよ」

普段はそうしていると聞いていたが、真剣な平沢たちも見てしまっている。
それもあって、やはり、俺がその中に割って入るのは野暮ったく感じる。

唯「ね? 春原くんも誘ってさ」

黙っていると、そうつけ加えてきた。

朋也「俺は遠慮しとく。あいつはどうか知らないけどさ」


206:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 15:05:54.45:1qYNd8dxO


仮に春原がその気になったとして、俺は止めることはしない。
あの連中の中に入っていくことをどう思うかなんて、あいつの勝手だ。

唯「ぶぅ、つまんないなぁ。くればいいのに」

朋也「おまえがよくても、他の奴らがよく思わないかもしれないだろ」

唯「そんなことないよ。みんな、ふたりがいた時はいつもより賑やかでよかったって言ってたし」

朋也「部長もか」

唯「うん。いないと、なんとなく寂しいって言ってたよ」

朋也「そっか」

少し意外だった。あんなにも春原と仲が悪かったのに。

唯「だから、ね? 遠慮しないでいいんだよ?」

朋也「いや…それでもやっぱ、いいよ」

むこうが歓迎ムード寄りだったとしても、どうしてもおれ自身が気兼ねしてしまう。

唯「ちぇ~…」

―――――――――――――――――――――

SHRも終わり、やっと昼食の時間を迎えた。

唯「岡崎くん、お昼どうするの? 学食?」


207:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 15:06:14.38:cUBlBpOS0


朋也「ん、ああ…決めてないな」

唯「じゃあさ、また私たちと一緒に…」

春原「おい、岡崎。さわちゃんなにも言わずに出てっちゃったんだけど、なんか聞いてる?」

平沢がなにごとか言いかけた時、春原が現れた。

朋也「今日はもう帰っていいってよ」

春原「マジ? ラッキー」

唯「ていうか春原くんって、さわちゃんって呼んでるんだね」

春原「ああ、もう長い付き合いだからね」

唯「私とりっちゃんもそう呼んでるんだよ。まる被りだね」

春原「ま、最初にそう呼び始めたのは僕だろうけどね」

なぜか対抗心を燃やし始めていた。

唯「む、そんなことないよっ。私たちなんて、会った瞬間からそう呼んでたんだから」

春原「甘いな。僕なんて、物心ついた頃から雰囲気でそう呼んでたんだぞ」

朋也「時系列的にもありえないからな…」

唯「だよね」


209:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 15:08:49.41:1qYNd8dxO


春原「岡崎、余計なこというなよっ。あとちょっとで勝てたのによっ」

なににだ。

春原「ま、いいや。んなことより昼、食いにいこうぜ」

朋也「ああ、そうだな」

言って、立ち上がる。

唯「どこいくの?」

春原「ラーメン屋…でいいよな?」

確認を取るように、俺を見る。

朋也「いいけど」

唯「あ~、外かぁ。じゃ、しょうがないか…」

春原「あんだよ、なんかあんのか」

唯「いや、学食だったら、一緒にどうかなと思ったんだけどね」

春原「そんなにどうしても僕たちと一緒がいいなら、ラーメン屋ついてくりゃいいじゃん」

そこまで熱望していない。

唯「お弁当持ってきてるからね。学食なら一緒のテーブルにつけたでしょ」


210:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 15:09:07.11:cUBlBpOS0


春原「あそ。じゃだめだな」

春原「もういこうぜ、岡崎」

言うが早いか、ぶっきらぼうに歩き出した。
俺もそれに続く。

唯「あ、春原くんっ、ご飯食べ終わったら、部室に遊びにこない?」

春原「あん? 遊び?」

振り返り、そう聞き返した。

唯「うん。みんなでお菓子食べたり、お話したりするんだよ」

春原「………」

しばし逡巡する。
こいつのことだ、食べ物に釣られて快諾するかもしれない。

春原「それ、僕だけ? こいつは?」

唯「岡崎くんは、こないんだって」

春原「ま、そうだよねぇ、こいつは」

俺を見て、納得したような顔をする。

春原「僕も行かねぇよ」


212:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 15:10:25.75:1qYNd8dxO


唯「春原くんもかぁ…残念…」

春原「ま、僕たち、部活なんか大嫌いだからね。わざわざそんなとこ、寄りつかないよ」

どうしてそこまで話してしまうのか。
ただ、行かないとだけ言っていればいいのに。
俺は春原を恨めしく思った。
それほど触れられたくないことだった。

唯「え? どうして…」

春原「別にいいだろ、なんでも。とにかく嫌いなんだよ」

曖昧に答える。
こいつも、詳しく話す気はないようだ。

唯「…もしかして、楽しくなかったかな、私たちといて…」

どうやら平沢は、断る口実として言ったものだと受け取っているようだった。
…よかった。内心かなりほっとする。

春原「ばぁか。んなもん、僕とこいつの友情にくらべれば屁みたいなもんだよ」

春原「だよな? 岡崎っ」

朋也「ああ、その通り。屁の化身みたいな奴だよ、おまえは」

春原「なにを肯定してるんだよっ!? 一言もそんなこといってないだろっ!」

唯「あははっ、確かに、仲いいよね、ふたりとも」


213:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 15:10:47.05:cUBlBpOS0


春原「ふふん、まぁね」

ぴと ぴと

春原「あん? なに背中つついてんの、おまえ」

朋也「いや、俺の服、ちょっとほつれてたからさ、その糸くずだよ」

ぴと ぴと

春原「いや、もうやめろよっ! 地味に嫌だよっ!」

背に手を伸ばし、はたきだす。

朋也「動くなよ、もう少しでバカって文字が完成するんだから」

春原「あんた、めちゃくちゃほつれ多いっすね!」

唯「あははっ」

―――――――――――――――――――――

朋也「おまえは行くと思ってたんだけどな」

春原「なにが」

朋也「軽音部」

春原「はっ…行かねぇよ。おまえと同じ理由でな」


214:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 15:12:08.51:1qYNd8dxO


朋也「そうか…」

秤にかけるまでもなかったということか。

朋也「でも、昼飯は一緒でもいいんだな。ラーメン屋ついてきてもよかったんだろ」

春原「ああ、それくらいならね」

こいつの中では譲れるラインらしい。
普通ならもう関わることさえしなくなっているだろうに。
やっぱり、こいつもどこか軽音部の連中のことを気に入っていたのかもしれない。

春原「ま、ムギちゃんがいるってのがデカイんだけどね」

朋也「ふぅん。つーか、おまえマジなの」

春原「ムギちゃん?」

朋也「ああ」

春原「彼女にできれば、将来明るそうじゃん? お嬢様だぜ?」

朋也「そんな理由かよ」

春原「まぁ、それだけじゃないよ。かわいいし、いいこだしね」

春原「僕の彼女になれる条件を満たしてるってことだよ」

こいつは琴吹の『いつか殺りたい人間』リストの最上段に載れる条件を全て満たしているはずだ。


215:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 15:12:29.51:cUBlBpOS0


―――――――――――――――――――――

春原「はぁ、うまかった」

ラーメン屋で昼を済ませ、外に出てくる。

春原「学食のもいいけどさ、たまにはがっつり、ニンニク入ったラーメンも食いたくなるよね」

朋也「そうだな」

これはかなり共感できた。
チーズバーガーが無性に食べたくなる衝動と同じ原理だ。多分。

春原「あ、コンビニ寄ってかない?」

朋也「いいけど」

―――――――――――――――――――――

近くのコンビニに入る。
同じ学校の制服もちらほら見かけた。

春原「今週は載ってるかな…」

小さくつぶやき、雑誌コーナーへ向かう。
俺もそれに倣った。

―――――――――――――――――――――

春原「うぉ…ははっ」


216:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 15:17:22.63:cUBlBpOS0


手に取った雑誌を読みふけり、興奮を織り交ぜながら笑いをこぼしていた。

朋也(口に出すなよ…うるせぇな…)

朋也「春原、もうちょい奥にいってくれ。立ち読み客がつかえてる」

春原「ん、おお」

雑誌から目を離さずに移動する。

朋也「まだ足りないって」

春原「ん…」

端までたどりつく。
そう、そこはまさに、警告標識で仕切られた、いかがわしい雑誌コーナーの目の前。

春原「うっお…へへっ」

そんな場所で不気味なうめき声を上げるこの男。
ただの変態だった。

女生徒1「あれって…」

女生徒2「えぇ…やばいよ…」

女生徒1「大丈夫だって…」

うちの学校の生徒にも目撃されていた。
その女生徒たちは、なにやら携帯を取り出すと、カメラのレンズを春原に合わせているように見えた。


219:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 15:20:07.41:1qYNd8dxO


そして、ちゃらりん、と音がすると、ダッシュで店を出ていった。

朋也「………」

あの春原の姿が全校生徒のデータフォルダに保存される日は近いかもしれない…。

―――――――――――――――――――――

春原「岡崎、なんか思いついた?」

朋也「いや、なにも」

俺たちはなんの目的もなく、ただ駅前に出てきていたのだが…
そんなことだから、当然のように間が持たなくなっていた。
今は適当なベンチに腰掛けて、遊びのアイデアをひねり出していたのだ。
だが、どれも不毛なものばかりで、一向に納得できる案が浮かんでこない状態が続いていた。
つまりは…いつもの通り、暇だった。
これが俺たちの日常だったから、もういい加減慣れてしまっていたが。

春原「じゃあさ、白線踏み外さずに、どこまでいけるかやろうぜ」

朋也「おまえ、ほんとガキな」

春原「いいじゃん、この際ガキでもさ。あそこのからな出発なっ」

指をさし、その地点へ駆けていく。

朋也(しょうがねぇな…)

俺も仕方なくついていった。


220:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 15:20:25.92:cUBlBpOS0


―――――――――――――――――――――

春原「おい、おまえもやれよ」

俺は春原の横につき、白線の外にいた。

朋也「俺は監視だよ。おまえがちゃんとルールに則ってプレイしてるかチェックしてやる」

朋也「確か、踏み外すと、その足が粉砕骨折するってことでよかったよな」

春原「んな過酷なルールに設定するわけないだろっ! どんなシチュエーションだよっ!」

朋也「じゃあ、落ちてる犬の糞を踏んだら残機がひとつ増えるってのは守れよ」

春原「なんでそんなもんで1UPすんだよっ!? むしろダメージ受けるだろっ!」

朋也「いや、そういう世界観のゲームなのかなと思って。おまえが主人公だし」

春原「めちゃくちゃ汚いファンタジーワールドっすね!」

朋也「いいから、早くいけよ、主人公」

春原「おまえがいろいろ言うから開幕が遅れたんだろ…」

ぶつぶつと愚痴りながらも白線に沿って進み始めた。

―――――――――――――――――――――

春原「あー、もういいや、つまんね…」


221:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 15:21:43.32:1qYNd8dxO


商店街を出て、しばらく来たところで春原が白線から出た。

朋也「なに言ってんだよ、十分楽しんでたじゃん」

朋也「その辺に生えてるキノコ食って巨大化とか言ってみたりさ」

春原「どうみてもそのキノコのせいで幻覚みてますよねぇっ!」

朋也「で、これからどうすんだよ」

春原「帰るよ、普通に…ん?」

春原の視線の先。
電柱のそばに、作業員風の男がヘルメットを腰に提げて立っていた。
時々電柱を見上げ、手にもつボードになにかを書き込んでいる。
点検でもしていたんだろうか。

春原「んん!? うわっ…マジかよ…やべぇよ…」

その男を見つめたまま、春原がうわごとのようにつぶやく。

朋也「どうした。禁断症状でもあらわれたか」

春原「もうキノコネタはいいんだよっ。それより、おまえ、気づかないのかよっ」

朋也「なにが」

春原「ほら、あの人だよっ」

男を指さす。


222:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 15:21:59.52:cUBlBpOS0


朋也「作業員だな」

春原「そうじゃなくて、あの人、芳野祐介だよっ! おまえも名前ぐらい聞いたことあるだろ」

朋也「芳野祐介…?」

確かに、どこかで聞いたことがあるような…。

春原「ほら、昔いたミュージシャンの」

朋也「ふぅん、ミュージシャンなのか。名前はなんとなく聞いたことあるような気はするけど」

春原「メディア露出がほとんどなかったからな…顔は知らなくても無理ないか…」

春原「でも、それでもかなり売れてたんだぜ? おまえもラジオとかで聞いてるって、絶対」

朋也「そうかもな、名前知ってるってことは」

春原「はぁ…でも、この町にいたなんてな…しかも電気工なんかやってるし…それも驚きだよ…」

朋也「ただのそっくりさんかもしれないじゃん」

春原「いや、絶対本人だって」

朋也「なんでそう言い切れるんだよ」

春原「あの人が出てる数少ない雑誌も全部読んでるからね」

朋也「おまえ、んなコアなファンだったの」


223:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 15:23:20.54:1qYNd8dxO


春原「いや、妹がファンでさ、そういうの集めてたんだよ」

春原「それで、僕も影響されて好きになったんだけどね」

朋也「おまえ、妹なんかいたのか!?」

春原「ああ。言ってなかったっけ?」

朋也「初耳だぞ。紹介しろよ、こらぁ」

春原「実家にいるから無理だっての」

…それもそうか。確か、こいつの実家は東北の方だったはずだ。
というか…春原の妹なんていったら、きっとゲテモノに違いない。
それを思うと、すぐに萎えた。

春原「それよか、サインもらいにいこうぜ」

朋也「俺はいいよ。ひとりでいけ」

春原「もったいねぇの。あとで後悔しても遅いんだからな」

朋也「しねぇよ」

春原「じゃ、いいよ。僕だけもらってくるから」

言って、芳野祐介(春原談)に振り返る。

春原「あ…」


224:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 15:23:42.95:cUBlBpOS0


その先へ向かおうとしたところで、ぴたっと動きを止めた。

春原「………」

朋也「どうしたんだよ」

春原「いや…ちょっと思い出したんだよ」

朋也「なにを」

春原「いや、芳野祐介ってさ、もう引退してるんだけど、その最後がすげぇ荒んでたって聞いたんだよね…」

春原「当時のファンだったら絶対声かけないってくらいにさ…」

朋也「もう時効なんじゃねぇの。いけよ」

春原「おまえ、ほんと誰にでも鬼っすね…」

朋也「あ、おい、もう行こうとしてないか」

芳野祐介(春原談)は、軽トラの荷台に仕事道具を積み始めていた。

春原「やべっ…」

春原「岡崎、おまえも協力してくれっ」

朋也「なにをだよ」

春原「それとなくサインもらえるようにだよっ」


225:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 15:24:58.67:1qYNd8dxO


朋也「ああ? どうやって」

春原「そうだな…」

あごに手を当て、考える。

春原「僕が合図したら、おまえは、うんたん♪うんたん♪ いいながらエアカスタネットしてくれ」

朋也「はぁ? 意味がわからん」

春原「いいから、頼むよっ」

朋也「いやだ」

春原「今度カツ丼おごるからっ」

朋也「よし、乗った」

―――――――――――――――――――――

春原「あのぉ、すみません…」

積み作業を続ける芳野祐介(春原談)の手前までやってくる。

作業員「あん?」

一時中断し、俺達に振り向いた。

春原「僕たち、大道芸のようなものをたしなんでるんですけど…」


226:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 15:25:23.10:cUBlBpOS0


春原「もしよかったら、今、みていただけませんかね?」

作業員「大道芸なら、繁華街のほうでやればいいんじゃないか」

春原「いや、まだそれはハードルが高いっていうか…」

春原「まずは少人数でならしていこうと思いまして…」

作業員「ふぅん…そうなのか」

腕時計を見て、なにか考えるような顔つきで押し黙る。

作業員「…まぁ、少しなら付き合ってやれる」

春原「ほんとですか!? あざすっ!」

春原「それじゃ…」

春原が俺に目配せする。
合図だった。

朋也「うんたん♪ うんたん♪」

春原「ボンバヘッ! ボンバヘッ!」

いつかみたヘッドバンギング。
その隣で謎のリズムを刻む俺。
………。
俺たちは一体なにをしているんだろう…。
というより、なにがしたいんだ…。


227:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 15:26:47.22:1qYNd8dxO


やっている自分でさえわからない。

作業員「………」

芳野祐介(春原談)も明らかに怪訝な顔で見ていた。

春原「…ふぅ」

作業員「…もう終わりか?」

春原「え? えっと…まだありますっ」

多分、今ので終わる予定だったんだろう。

朋也(まさか、いいリアクションがくるまでやるつもりじゃないだろうな…)

と、また目配せされた。

朋也「うんたん♪ うんたん♪」

春原「ヴォンヴァヘッ! ヴォンヴァヘッ!」

今度は横に揺れていた。
くだらなさ過ぎるマイナーチェンジだった。

―――――――――――――――――――――

春原「ぜぇぜぇ…こ、これで終わりっす…」

結局一度もいい反応を得ることなく、春原の体力が底を尽いていた。


228:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 15:27:05.44:cUBlBpOS0


作業員「…ひとつ訊いていいか」

春原「はい? なんですか…」

作業員「一体、なにがしたかったんだ?」

それは俺も知りたい。

春原「え? やだなぁ、エアバンドじゃないっすか」

そうだったのか。
というか、おまえがやったのはどっちかというとエア観客じゃないのか。

作業員「そうか…よくわからんが、まぁ、がんばれよ」

励ましの言葉をくれると、車のドアを開け、そこに乗り込もうとする。

春原「あ、ちょっといいっすか?」

作業員「なんだ、まだなにかあるのか」

春原「あの…このシャツにサインしてくれませんか」

強引過ぎる…。
話がまったくつながっていなかった。
エアバンドの前フリは一体なんだったのか…。

作業員「俺がか?」

春原「はい。最初のお客さんってことで、記念にお願いします」


229:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 15:28:33.53:1qYNd8dxO


作業員「…まぁ、あんたがいいなら、やるが」

春原「あ、本名でお願いしますよ。あと、春原くんへってのもお願いします」

ますます話が破綻していた。
普通は役者がファンにするものだろうに。

春原「春原は、季節の春に、はらっぱの原です」

作業員「ああ、わかった」

書き始める。
これで名前が芳野祐介じゃなかったら爆笑してやる。

作業員「これでいいか」

春原「っ…ばっちりっす! あざした!」

朋也(おお…)

そこに書かれていたのは、芳野祐介という名前。
同姓同名の他人…なんてことはやっぱりなくて、本物なのか…。

芳野「…はぁ」

また腕時計で時間を確認する。

芳野「あんたら、時間あるか」

春原「え? はい、有り余ってますっ」


230:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 15:28:50.50:cUBlBpOS0


芳野「なら、バイトしないか」

春原「バイトっすか」

芳野「ああ。作業を手伝って欲しいんだ」

春原「もちろんやりますよっ」

芳野「助かる。なら、車に乗ってくれ」

春原「はいっ」

元気よく答えて、助手席に向かう。

春原「岡崎、なにつっ立ってんだよ。早くこいって」

朋也「俺もかよ…」

春原「ったりまえじゃん」

朋也(なにが当たり前だ…)

しかし、バイトだと言っていたのだから、当然バイト代も出るのだろう。
どうせ、暇だったのだ。
金がもらえるなら、それも悪くないかもしれない。

―――――――――――――――――――――

春原「うぇ…しんど…」


233:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 15:30:18.93:cUBlBpOS0


朋也「俺も、脚パンパンだ…」

梯子や街灯を支えていたのだが、これが大層な力作業だった。
不安定なものを固定するというのが、ここまで神経を使い、なおかつ筋力も酷使するものだったとは…。

芳野「助かったよ。ご苦労だったな」

ちっとも疲労感を感じさせない、余裕のある佇まい。
俺達よりよっぽど過酷な作業をこなしていたというのに…。

春原「きついっすね…いつもこんなことしてんすか…」

芳野「ああ、まぁな。今日はこれでも軽い方だ」

春原「はは…これでっすか…」

これが社会人と、俺たちのような怠惰な学生の違いなのだろうか。
こんなにも疲弊しきっている俺たちを尻目に、この人は涼しい顔で軽い方だと言ってのける。
午前中にも、ずっと同じような作業をしてきたかもしれないのに…。
小さな悩みとか、そういうことをうじうじ考えているのが馬鹿馬鹿しくなるほどに、しんどい。
社会に出るというのは、そんな日々に身を投じるということなのだ。
想像はしていたけど…想像以上だった。
今までどれだけ働くということを甘く考えていたか、いやというほど思い知らされた気分だ。
でも、芳野祐介だって、俺たちとさほど変わらない歳の若い男だ。
その男からいとも簡単に『軽い方だ』などと言われれば、ショックもでかかった。
俺は歴然とした差を感じ、いいようのない焦燥感に襲われていた。

芳野「あんたら、予想以上によく動いてくれたよ。体力あるほうだ」

春原「はは…」


235:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 15:31:42.81:1qYNd8dxO


朋也「そっすか…」

なんの救いにもならない。

芳野「今から事務所の方に行ってくるから、少し待っててくれ」

春原「はい…つーか、動きたくないっす…」

ふ、と笑い、俺と春原の肩を軽く叩き、労いの意を示してくれた。

―――――――――――――――――――――

芳野「待たせたな。ほら、バイト代」

灰色の封筒を差し出した。
下の方に何やら会社名が書いてあった。

春原「あざす」

朋也「ども」

芳野「悪いな、半分しか出なかった」

芳野「一日働いてないのに、丸々出せるかって言われてな」

俺は痛みの残る腕で封筒を開けた。ひのふのみの…

朋也「これ、間違いじゃないんすか?」

春原「はは…」


237:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 15:32:09.78:cUBlBpOS0


春原もその額になにか思うところがあるようだ。

芳野「ん? そんなことないと思うが」

俺は芳野祐介に封筒を渡し、見てもらった。

芳野「違わない。そんなに少なかったか?」

いや、逆だ。どうみても、多いと思った。
話では、これでも半分の額だという。
もし満額もらっていたのなら。
この額ならば、自分の力だけで食っていける…。
けど、それはやっぱり甘い考えなんだろう。
俺のように冷めやすい性格の人間に勤まるような仕事じゃなかった。
きっとすぐに嫌気が差して、投げ出してしまうに違いなかった。
じゃあ、俺はどんな場所に収まれるというんだろう…。
俺はかぶりを振る。
そんなことを今から考えていたくなかった。

春原「いや、めちゃ満足っす。こわいくらいに…」

芳野「そうか。なら、よかった」

芳野「また暇な時にでもバイトしにきてくれ。ウチはいつだって人手不足だからな」

芳野「ほら、名刺」

春原「いいんすか? もらっちゃって」

芳野「名刺くらい、別にいい」


238:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 15:33:41.17:cUBlBpOS0


春原「っしゃ! ざぁすっ!」

俺も名刺を受け取る。そこには電設会社の名前と、芳野祐介という文字が記されていた。

芳野「じゃあ、急ぐんでな」

芳野祐介は荷物を持つと、向かいに止めてあった軽トラへと歩いていく。
中に乗り込み、最後にこちらを見て片手を上げると、低いエンジン音と共に去っていった。

―――――――――――――――――――――

春原「いやぁ、今日は大収穫があったね」

ベッドに寝転び、もらった名刺を眺めながらごろごろと二転、三転している。

春原「臨時収入はあったし、あの芳野祐介の名刺まで手に入るなんてさ」

春原「やっぱ、日ごろの行いがいいと、こういう幸運に恵まれるんだね」

朋也「確かに、この雑誌の後ろの方にある占いによると、おまえの星座、今日運気いいってあるぞ」

春原「マジで?」

朋也「ああ。でも、今日までらしいぞ。明日以降は確実に死ぬでしょう、だってよ」

春原「どんな雑誌だよっ! 死期まで占わなくていいよっ!」

朋也「ラッキーアイテムは位牌です、ってかわいいキャラクターが満面の笑みで言ってるぞ」

春原「諦めて死ねっていいたいんすかねぇっ!?」


239:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 15:35:04.53:1qYNd8dxO


―――――――――――――――――――――

朋也「そういやさ…」

春原「あん?」

朋也「おまえ、芳野祐介のCD持ってんの」

春原「テープならあるけど。聞く?」

朋也「ああ、頼む」

春原「じゃ、ちょっと待ってて」

立ち上がり、ダンボールを漁りだす。

朋也「つーか、今時テープって、古すぎだろ。音質とかやばいだろ」

春原「文句言うなよ。ほらっ」


240:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 15:35:25.38:cUBlBpOS0


テープの入ったラジカセをよこしてくる。
電源をいれ、再生してみる。
ハードなロック調のメロディが流れてきた。
歌詞もよく聴いてみると、音は激しいのに、心にじぃんとくるものがあった。

春原「どうよ?」

朋也「…いいわ、かなり」

春原「だろ?」

今日入った金もあることだし…。
今度、中古ショップでも回ってCDを探してみよう。そう決めた。

―――――――――――――――――――――


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