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死が二人を別つまで

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死が二人を別つまで◆x/rO98BbgY


早坂秋水は、慎重に遺跡の内部へと足を踏み入れる。
先の女からの情報によれば、中には殺し合いに乗った者がいるという。

――危険だ。

先のような、戦闘の意思がない少女であれば、百歩譲って見逃してもよい。
その手に持つ、武装錬金さえなければ事実、秋水は名も知らぬ少女を殺したりはしなかっただろう。
殺し合いの意思なく、力も持たないのであれば、あの賢い姉に何の危害も与えられるはずもないだろうから。

だが、殺し合いの意思を持ち、己の身体を炎とするような異質の力を持つというのであれば――自分の命に代えても、その敵はここで討ち滅ぼさねばならない。


彼にあるのは、この世に只一人の姉への献身のみ。
その歪んだ情念に突き動かされるように――秋水は自ら危地へと向かう。

遺跡内は、重く、カビ臭い匂いに満ちている。
マグライトの明かりを点けて、進む。
この暗さでは、どの道相手も明かりを点けざるを得ないであろうから。

見敵必殺。

敵の姿を視認した瞬間、秋水は手にしたソードサムライを持って敵を貫く覚悟であった。

進む。
石造りの遺跡は、まるでピラミッドのようであった。
周囲を圧殺せんばかりの闇は、まるで呼吸すら封じ込めるよう。
息苦しさを覚えながらも、秋水はそれを否定する。

(このオレが緊張していると言うのか……)

彼が得た情報は、敵が火を使うというものである。
火とは燃焼によって解放されたエネルギーから発せられる現象である。
自己の武装錬金。ソードサムライが持つ、エネルギーを吸収するという特性を持ってすれば、決して相性は悪くない相手と言えるだろう。
だというのに、こうも息苦しさを覚えるとは。意識せぬうちに、この場の持つ雰囲気に呑みこまれているというのだろうか……。

(修行が足りんぞ、早坂秋水ッ!)

自己を叱咤しながらも、秋水は歩みを止めない。
この先に待ち受ける運命の中に、自己の死が確かに含まれると覚悟を決めながら――
玄室に足を踏み入れた。

そこにあったのは、黒の制服と学帽にきっちりと身を包んだ少年の死体だった。
いや、死体と断定は出来ないだろう。
その身に、一切の傷はないのだから。

秋水はその遺体に慎重に近付き――ソードサムライを少年の心臓へと突き入れた。
少年に、確実な死をもたらす為に。

健康な心臓が、血飛沫をあげるのを器用に避けて、秋水は少年が手に持つナパームの武装錬金「ブレイズオブグローリー」を拾い上げる。
緊張しきっていた心身が弛緩し、秋水は大きな溜息をついた。
その武装錬金の性能を知らぬ秋水には想像も付かぬことであったが、この惨劇の真相はこういう事であった。

火炎爆破によって半径250m・瞬間最大火力5100℃の炎を発するナパームの武装錬金「ブレイズオブグローリー」。
その力をこのような密室で解放した結果――部屋からは酸素が失われ、使い手である直井文人も昏睡したのである。

酸素欠乏症。
ただでさえ酸素濃度の低い、遺跡内での炎の解放が、この惨劇を惹き起こしたのである。
酸素濃度の低い中での呼吸は、酸素を得るのではなく、酸素を奪われるという事。
一瞬にして人間から意識を奪うその事例は――この場へと足を踏み入れた早坂秋水とて例外ではない。

急激に、秋水の脚から力が失われる。
天地がひっくり返るようなめまいを覚えた。
自らが作った少年の血溜まり。
その池の中に、沈むように秋水の長身が倒れ込んだ。

最後に脳裏をかすめるのは、生涯を共に生きた姉の横顔。
愛おしい女性の姿を思い浮かべながら――まるで眠る様に早坂秋水はその人生の幕を閉じた。
それは奇しくも、同じ時に生まれた姉と、時を同じくした死であった。


【直井文人@Angel Beats! 死亡】
【早坂秋水@武装錬金 死亡】

【残り55人】

【一日目 B-1 遺跡 深夜】

※直井文人と早坂秋水の荷物が遺跡内に放置されています。


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早坂秋水 GAME OVER

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