21世紀深夜アニメバトルロワイアル@ウィキ

女の子は世界に一人。だから彼女は神様だ。

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集

女の子は世界に一人。だから彼女は神様だ。◆2u7VFI8mcw




女の子は世界に一人。だから彼女は神様だ。

   ◆

「…………………」

雲間に月や星の光はあれど薄暗い真夜中の時分。
火曜サスペンスの舞台に打ってつけな崖の上で一人の少女は左手のマグライトの光を頼りに鞄を漁っていた。
それこそ周囲の様子が目に入らないぐらいに。
つまりその少女にとってその探し物はそれほど大事なものということだ。

実際のところ新藤千尋という少女にとって目下の探し物である手帳は「自分の命」と同じくらい大事なものと言っても過言ではなかった。

新藤千尋。
藤色の髪をショートにして左目に眼帯を付けた、どこか儚げな印象を与える少女。
ちなみに新藤景という双子の姉がいるが、性格は正反対。
千尋は大人しい性格で、文系で、少々天然なところがある、そんな少女。

だが千尋はある障害を抱えていた。

『前向性健忘症』――それこそ千尋が幼い頃に左目を失明した時の事故で負った後遺症だった。

これは記憶障害の一種であり、簡単に説明すると13時間しか記憶を保持できない症状である。
つまりよくある『物事を思い出せない』というものとは違い、『物事自体が記憶されない』というものだ。
どんな出来事も13時間以内に思い返さなければ、リセットされてなかった事にされる。
おおまかに説明するとそういうことだ。

だからこそ千尋は現在懸命に探している――千尋を千尋たらしめるメモリである手帳を。

その手帳には千尋が今の状況と自分の身の回りで起きた出来事で書き留めておくべき事を記してあり、これを読み直す事で千尋は生活できているのだ。

「……ッ、あった」

薄暗い空の下、千尋は無事に鞄の中から手帳を探り出す事に成功していた。
この地で気付いたら手元になかったのでどうなる事かと思ったが、どうやら最悪の事態は避けられたようだ。

「殺し合い……そんなの……」

いや今の状況そのものが既に最悪以外の何物でもなかった。
延べ80人が最後の一人になるまで殺し合わされるという悪夢としか言いようのない現状を最悪と言わずして何と言えよう。
今こうしている間にもこの地のどこかで誰かが誰かを殺そうとしているかもしれない。

(あ――!?)

そこで千尋は今の自分の状況を顧みて重大な事に気付いた。
薄暗い夜の中、ここだけがマグライトの光で周囲から浮き上がっている。
これではみすみす自分の居場所を相手に教えているようなものだ。
もしも近くに殺し合いに積極的な参加者がいたら――。


――ガサッ


「ひぅ!? だ、誰で――」

しかし時すでに遅し。
誘蛾灯のごとく煌々と照らされた光に群がった参加者が一人、千尋の元へ来ていたのだ。
とっさにマグライトを向けた先には鋭い目つきで拳銃を構えた少女がいた。



「…………ッ」

ここにいたら死ぬ。
千尋は無駄かもしれないと思いつつもこの場から逃げようと立ち上がり、そして走ろうとして――。


「え」


――海に落ちた。

当然と言えば当然の結果だ。
現在千尋がいるのは一歩間違えれば海に落ちてしまうかもしれない崖の上。
その事に千尋は気付いていなかった。
しかも立ち上がった際、地面に置いたままの鞄に足を引っかけてしまった。
もう体勢を立て直すのは不可能であった。

不意に現れた少女が必死に伸ばした手の意味も知らぬまま、千尋は深淵の海に吸い込まれていった。

   ◆

「嘘でしょ……」

仲村ゆり、仲間からはゆりっぺと呼ばれている少女は、目の前で起きた事故に呆然としていた。
このような狂った催しを開いた主催者に対して反抗の意志を固め、自分に支給された鞄の中身を確認。
その中にあった剣と拳銃を装備して、ルールブックを読もうとした時、視界に明かりが飛び込んできた。
何か行動を起こすのに人手があるに越した事はないと、念のため銃を構えつつ接触を試みようとした瞬間、あの事故は起きた。

「そ、そんな……」

ゆりに千尋を殺す気など全く無かった。
だが真相はどうあれ、ゆりのせいで千尋が死んだ事に変わりはない。

ゆりは今まで神に反抗するために『死んだ世界戦線』を立ち上げて戦ってきた。
そして皮肉にもその願いは今この瞬間意図せず叶っていた。
もっともそれをゆりが知る事はなく、知ったところで今のゆりは喜びはしないだろうが。

崖の上に唯一残された手帳がゆりを責めるようにバタバタと風に吹かれて、いつまでもページが捲られる音を立てていた。

【一日目 A-7 南部の崖 深夜】

【仲村ゆり@Angel Beats!】
[状態]:健康、呆然
[装備]:コルト・コンバットコマンダー(7/7)@現実、南海覇王@真・恋姫†無双
[道具]:基本支給品
[思考]
基本:この殺し合いを開いた者への反抗。
1:そんな……。

※A-7南部崖の上に千尋の手帳@ef - a tale of memories./melodies.が放置されています。







   ◆

暗い。
冷たい。
苦しい。

最初はそんな思考で混乱していた頭も今はひどく静かだ。
――というよりもうほとんど何も考えられなかった。

(蓮治君……)

最期の瞬間。
深い海の底で一つの命の炎が消えた瞬間。
最期に千尋の頭をよぎったものは恋人として自分を受け止めてくれた少年――麻生 蓮治のことだった。

【新藤千尋@ef - a tale of memories./melodies. 死亡】
※新藤千尋の死体と鞄がA-8付近に沈みました。

   ◆

最後ニ
 カミサマハ

世界ニヒトツ
 残ッタゴミヲ―

崖カラ
 捨テタ―




007:黄昏 投下順に読む 009:ゴリラ・ゴリラ・ゴリラ
006:誰が為にその命 時系列順に読む
000:胎動 仲村ゆり 031:フラスコの中の小人
新藤千尋 死亡

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
ウィキ募集バナー