The Trojan Horse
暖かく白い霧が少女を包み込む。
静寂の中、無機質な水音だけが響いている。
水は長い髪を伝い、緩やかな傾斜へと流れ落ちていった。
静寂の中、無機質な水音だけが響いている。
水は長い髪を伝い、緩やかな傾斜へと流れ落ちていった。
水流が穢れを清め、流し去る。
けれど、清らかな水も心の臓にまでは届かない。
この疵までも癒すことが出来たならどれだけよかっただろう。
けれど、清らかな水も心の臓にまでは届かない。
この疵までも癒すことが出来たならどれだけよかっただろう。
シャワーを浴び終え、濡れた体を拭いていく。
汚れの落ちた美しい肢体が姿を現す。
汚れの落ちた美しい肢体が姿を現す。
「お金払わずに持ってっちゃいますけど……いつか必ず返しますからね」
髪を乾かし、水着を身に纏う。
水浸しの下着を穿くのは忍びないので、売店から拝借したのだ。
水浸しの下着を穿くのは忍びないので、売店から拝借したのだ。
このまま外に出るわけにもいかず、やや汚れてはいるが上から制服を着ることにした。
少々いかがわしい格好な気がして恥ずかしいが、そんな思考は頭から追いやる。
少々いかがわしい格好な気がして恥ずかしいが、そんな思考は頭から追いやる。
そして、忘れてはいけない最後の仕上げ。
透き通るような長髪を束ね、二対の尾を作り上げる。
身につけるのは、大切な人の忘れ形見。
透き通るような長髪を束ね、二対の尾を作り上げる。
身につけるのは、大切な人の忘れ形見。
アンテナ、異常なし。
松田亜利沙の出来上がり。
松田亜利沙の出来上がり。
「それでは……行ってきます」
外は先程の曇天が嘘のような快晴だった。
少し長居をしすぎたか。
少し長居をしすぎたか。
皆は今どうしているのだろう。
市民プールならばもしやと思い探してみたものの、人が来た様子はない。
春香以外どこにいるのかすら定かではないのが現状だ。
市民プールならばもしやと思い探してみたものの、人が来た様子はない。
春香以外どこにいるのかすら定かではないのが現状だ。
これ以上の犠牲は許さない。
早く誰かと合流しなければ……。
焦りは募るばかり。
早く誰かと合流しなければ……。
焦りは募るばかり。
とにかくまずは探索を続けよう。
きっと彼女もそうするはず。
立ち止まってなどいられない。
きっと彼女もそうするはず。
立ち止まってなどいられない。
「ねえ、あれって亜利沙ちゃんじゃない?」
「マジ?あ、ほんとだ!おーい、亜利沙ー!あーりーさー!」
「マジ?あ、ほんとだ!おーい、亜利沙ー!あーりーさー!」
声が聞こえた。
待ち望んでいた声が。何よりも聞きたかった声が。
待ち望んでいた声が。何よりも聞きたかった声が。
視界に入ったのは四人の少女。
皆が皆、思い思いに呼びかけてくる。
皆が皆、思い思いに呼びかけてくる。
足が勝手に動いていた。
落ち着けと自分に言い聞かせても体が止まらない。
もっと声を聞きたい。彼女たちに触れたい。
落ち着けと自分に言い聞かせても体が止まらない。
もっと声を聞きたい。彼女たちに触れたい。
「み、皆さん、無事ですか!?怪我とかありませんか!?」
「大丈夫!みんな元気だよっ!」
「じゃ、じゃあ、誰かに怪我させちゃったりとかは……」
「へへっ、アタシらがそんなことするように見える?」
「大丈夫!みんな元気だよっ!」
「じゃ、じゃあ、誰かに怪我させちゃったりとかは……」
「へへっ、アタシらがそんなことするように見える?」
こんな状況でも皆笑顔を絶やしていない。
いつも見ていた『アイドルちゃん』がいた。
いつも見ていた『アイドルちゃん』がいた。
「よかった……よかったぁ……」
「おーよしよし、泣くな泣くな。もう大丈夫だから」
「ふふっ、所さんだってさっき泣いていたじゃない」
「なっ!?なんで言うんだよぉ!」
「おーよしよし、泣くな泣くな。もう大丈夫だから」
「ふふっ、所さんだってさっき泣いていたじゃない」
「なっ!?なんで言うんだよぉ!」
仲間が生きている。
少し前なら当たり前だったことがたまらなく嬉しい。
少し前なら当たり前だったことがたまらなく嬉しい。
彼女たちはまだ諦めてなどいない。
皆で力を合わせれば、どんな困難も必ず乗り越えられるはずだ。
この笑顔だけは必ず守り抜いてやる。
皆で力を合わせれば、どんな困難も必ず乗り越えられるはずだ。
この笑顔だけは必ず守り抜いてやる。
(春香さん、見てくれていますか?ありさ、まだまだ頑張れそうです……!)
(これで四人……亜利沙さんはどんな武器を持ってるのかな)
そう、正確には全員がプロデューサーに反旗を翻したわけではない。
高槻やよい。小さな体に大きな野望。
彼女は心中穏やかではなかった。
高槻やよい。小さな体に大きな野望。
彼女は心中穏やかではなかった。
ここの皆は強い武器を持っているだろうか。
悟られずに毒を盛ることが出来るだろうか。
毒を食べた皆はどんな顔で苦しむだろうか。
悟られずに毒を盛ることが出来るだろうか。
毒を食べた皆はどんな顔で苦しむだろうか。
「高槻さん……?」
――まずい。
千早が訝しそうに声をかける。
あまりにも考え込んでいるやよいを見て怪しんだか。
あまりにも考え込んでいるやよいを見て怪しんだか。
「はわっ、な、何ですか、千早さん?」
平静を装うが、ばれてしまったのならゲームオーバーだ。
「大丈夫?合流してからずっと元気がないようだけれど……」
「え?あー、私は大丈夫ですー!」
「え?あー、私は大丈夫ですー!」
どうやらまだ勘付かれてはいないらしい。
けれど、彼女には注意した方がよさそうだ。
やよいは警戒する。
けれど、彼女には注意した方がよさそうだ。
やよいは警戒する。
殺す算段を立てている相手とは露知らず、千早は心配してくれているのだ。
不安そうに見つめる千早の表情を見て、思わず罪悪感に苛まれる。
不安そうに見つめる千早の表情を見て、思わず罪悪感に苛まれる。
――こんなことでは駄目だ。
失敗したら家族は救えない。
やるからにはきっちりやる。
強い意志を持ってやり遂げなければ――
失敗したら家族は救えない。
やるからにはきっちりやる。
強い意志を持ってやり遂げなければ――
【一日目/午前/G-5】
【高槻やよい】
[状態]健康
[装備]なし
[所持品]支給品一式、ランダム支給品(0~1)、青酸カリ
[思考・行動]
基本:最後の一人になる。
1:焦燥。絶対に死ねない。
2:とにかく機会を窺い、慎重に動く。
[状態]健康
[装備]なし
[所持品]支給品一式、ランダム支給品(0~1)、青酸カリ
[思考・行動]
基本:最後の一人になる。
1:焦燥。絶対に死ねない。
2:とにかく機会を窺い、慎重に動く。
【佐竹美奈子】
[状態]健康
[装備]なし
[所持品]支給品一式、ランダム支給品(1~2)
[思考・行動]
基本:仲間と一緒に脱出っ、わっほ~い!
1:不安。誰かと接していないと押し潰されそう。
2:みんなと一緒ならきっと何とかなるよね……?
[状態]健康
[装備]なし
[所持品]支給品一式、ランダム支給品(1~2)
[思考・行動]
基本:仲間と一緒に脱出っ、わっほ~い!
1:不安。誰かと接していないと押し潰されそう。
2:みんなと一緒ならきっと何とかなるよね……?
【如月千早】
[状態]健康
[装備]なし
[所持品]支給品一式、プラスチックのスティック
[思考・行動]
基本:最後まで諦めない。皆で脱出する。
1:仲間と合流するため、恵美と共に行動。
2:高槻さん、大丈夫かしら……?
[状態]健康
[装備]なし
[所持品]支給品一式、プラスチックのスティック
[思考・行動]
基本:最後まで諦めない。皆で脱出する。
1:仲間と合流するため、恵美と共に行動。
2:高槻さん、大丈夫かしら……?
【所恵美】
[状態]健康
[装備]灰皿
[所持品]支給品一式、ランダム支給品(0~1)
[思考・行動]
基本:最後まで諦めない。皆で脱出する。
1:仲間と合流するため、千早と共に行動。
2:自身に疑問と、嫌悪。
3:千早のやつ、言うようになったな~……。ま、元気になったなら嬉しいけどね。
[状態]健康
[装備]灰皿
[所持品]支給品一式、ランダム支給品(0~1)
[思考・行動]
基本:最後まで諦めない。皆で脱出する。
1:仲間と合流するため、千早と共に行動。
2:自身に疑問と、嫌悪。
3:千早のやつ、言うようになったな~……。ま、元気になったなら嬉しいけどね。
| 絶望偶像 | 時系列順に読む | 無邪気の楽園 |
|---|---|---|
| 絶望偶像 | 投下順に読む | 怖い夢なら、目を覚まして |
| ♪遠い日の幻影 | 佐竹美奈子 | すれ違う理想と友情 |
| 高槻やよい | ||
| かわらないもの | 如月千早 | |
| 所恵美 | ||
| ♪町、時の流れ、人 | 松田亜利沙 |