五里霧中
天空橋朋花の動きは俊敏だった。即座に木の影に隠れ、様子を伺うべく視線は気配のする方へと向ける。
先に気づいたのは偏に運だろう。
深緑の森、見通しの悪い条件で天秤が此方へと傾いたのは、本当に幸運だった。
コイントスのような運ゲーで、勝ちを引き寄せた朋花に齎されたのは一人の人間の姿である。
高山紗代子。
スタンス不明のカテゴリーに入れてた人間との遭遇は、朋花の頭を悩ませる。
長柄の武器を手によろよろと歩いてくる血塗れの少女。
一見しただけでは、このゲームに乗り気か、否か。判断が迷う所である。
一人で全てを葬り去ることを決意し返り討ちにあったのか。
それとも、乗り気なアイドルに襲われ、逃げてきたのか。
どちらにせよ、紗代子は朋花の悩みを拗らせる要因となっていた。
先に気づいたのは偏に運だろう。
深緑の森、見通しの悪い条件で天秤が此方へと傾いたのは、本当に幸運だった。
コイントスのような運ゲーで、勝ちを引き寄せた朋花に齎されたのは一人の人間の姿である。
高山紗代子。
スタンス不明のカテゴリーに入れてた人間との遭遇は、朋花の頭を悩ませる。
長柄の武器を手によろよろと歩いてくる血塗れの少女。
一見しただけでは、このゲームに乗り気か、否か。判断が迷う所である。
一人で全てを葬り去ることを決意し返り討ちにあったのか。
それとも、乗り気なアイドルに襲われ、逃げてきたのか。
どちらにせよ、紗代子は朋花の悩みを拗らせる要因となっていた。
(さてさて、どうしたものでしょうか~)
平たく言えば、わからない。
彼女が争うことに肯定しているのか、それとも否定しているのか。
希望的観測から言えば、否定側に立ってくれるとありがたい。
高山紗代子は所属しているアイドルの中でも落ち着きがありながらも、程よく熱血属性が染み付いた存在だ。
味方でいると、厳しめの立場から物事を捉え、万事俯瞰的で心強い。
しかし、もしも敵だったとしたら、どうしたらいいのだろう。
一目見ただけでボロボロの彼女が相手ならば、朋花といえど容易に対処はできる。
なにせ、今の自分は拳銃に比類する武器を持っていないが無傷だ。
しかし、だからといって危険が全く無い訳ではない。
勝負に絶対は存在しない。
運悪く、あの長柄の武器が自分へと突き刺さったら、それで全ては水の泡となる。
彼女が争うことに肯定しているのか、それとも否定しているのか。
希望的観測から言えば、否定側に立ってくれるとありがたい。
高山紗代子は所属しているアイドルの中でも落ち着きがありながらも、程よく熱血属性が染み付いた存在だ。
味方でいると、厳しめの立場から物事を捉え、万事俯瞰的で心強い。
しかし、もしも敵だったとしたら、どうしたらいいのだろう。
一目見ただけでボロボロの彼女が相手ならば、朋花といえど容易に対処はできる。
なにせ、今の自分は拳銃に比類する武器を持っていないが無傷だ。
しかし、だからといって危険が全く無い訳ではない。
勝負に絶対は存在しない。
運悪く、あの長柄の武器が自分へと突き刺さったら、それで全ては水の泡となる。
(ですが、もし乗り気ではないとしたら? ここで見逃すというのは勿体無い)
結局、何かを為すには相応のリスクを払わなければならない。
今、この瞬間。朋花は選択を迫られている。
自分の生命を優先するか。それとも、情報や手数を揃えることを優先するか。
今、この瞬間。朋花は選択を迫られている。
自分の生命を優先するか。それとも、情報や手数を揃えることを優先するか。
(何を、切り捨てるか)
朋花の心の片隅に鎮座する冷静は後者を選ぶべきだと囁いている。
どんな理屈を並べようが、一番大事なのは生命だ。
自分が死んでしまっては何も為せないし、意味もない。
故に、そのことをよくわかっているアイドル達はこの殺し合いに乗り気なのだ。
周りを蹴落としてでも生きたいと願うから。
輝きの向こう側で歓声を浴びることを諦めたくないから。
どんな理屈を並べようが、一番大事なのは生命だ。
自分が死んでしまっては何も為せないし、意味もない。
故に、そのことをよくわかっているアイドル達はこの殺し合いに乗り気なのだ。
周りを蹴落としてでも生きたいと願うから。
輝きの向こう側で歓声を浴びることを諦めたくないから。
(いいえ。何を諦めるか)
殺す。文字にしてみれば簡素だが、その行為は戻れない境界線だ。
護ること、奪うことを同意義に捉え、殺し合いを是とする。
大切なものがあるなら、きっと――――その為だけに戦えるから。
他のいらないものを削ぎ落とし、絶対の意志だけで総てを変える。
世界か、自分か。どちらかが変わらなければならない。
この閉じられた箱庭の世界で、アイドルは選択を常に強いられている。
護ること、奪うことを同意義に捉え、殺し合いを是とする。
大切なものがあるなら、きっと――――その為だけに戦えるから。
他のいらないものを削ぎ落とし、絶対の意志だけで総てを変える。
世界か、自分か。どちらかが変わらなければならない。
この閉じられた箱庭の世界で、アイドルは選択を常に強いられている。
(そんな弱音は必要ありませんね。総てを手にしてこそ、君臨する者の努め。
諦めなど、何処かへと蹴飛ばしてしまえばいい)
諦めなど、何処かへと蹴飛ばしてしまえばいい)
その選択は、正しいか。それとも、間違っているか。
天空橋朋花は神様ではない。
自分達の選択を見ているであろう『彼』だけがその賽の目を知ることができる。
選択は結果へと繋がり、無限の可能性は湧いて尽きることがない。
何も、変わらない。アイドル活動をしていた時と一緒だ。
ただ、『彼』がいないだけ。共に歩くはずだった人が裏切って、自分に相対しているという事実が、其処にある。
息を呑む。微かに震えた指にそっと温かみを注ぎこむ。
握り締めた掌にぎゅっと力を込めて平常心を保つ。
この力はその証。君臨者の決意はちゃちな尺度なんかじゃ図れない。
天空橋朋花は神様ではない。
自分達の選択を見ているであろう『彼』だけがその賽の目を知ることができる。
選択は結果へと繋がり、無限の可能性は湧いて尽きることがない。
何も、変わらない。アイドル活動をしていた時と一緒だ。
ただ、『彼』がいないだけ。共に歩くはずだった人が裏切って、自分に相対しているという事実が、其処にある。
息を呑む。微かに震えた指にそっと温かみを注ぎこむ。
握り締めた掌にぎゅっと力を込めて平常心を保つ。
この力はその証。君臨者の決意はちゃちな尺度なんかじゃ図れない。
(けれど、猪突猛進は程々に。過ぎた蛮勇は身を滅ぼしますし~。まぁ、臨機応変にってことですねぇ)
アイドルの輝きは、自分の成したい世界の在り方を自分に示してみせた。
それは誰かの為であったり、自分の為であったりと様々だ。
けれど、そんなキラキラした世界も今は何処にもありやしない。
夢の中、願ったものは黒に澱む。明るいはずの旋律は原型をとどめていない。
どれだけ、胸に宿る意志を輝かせようとも、現実を遮ることなど出来やしない。
後味として残る重苦しい感触は希望と呼ぶには程遠い。
それは誰かの為であったり、自分の為であったりと様々だ。
けれど、そんなキラキラした世界も今は何処にもありやしない。
夢の中、願ったものは黒に澱む。明るいはずの旋律は原型をとどめていない。
どれだけ、胸に宿る意志を輝かせようとも、現実を遮ることなど出来やしない。
後味として残る重苦しい感触は希望と呼ぶには程遠い。
(私は、決めたはず。変わるのは自分ではなく、世界であると)
だから、天空橋朋花は世界を変えることを選んだ。
バトル・ロワイアルという下衆にも劣る所業を企てた『彼』を罰すべく、動く。
それは誰かの為でもなく、自分が自分で在り続けるが為。
理由など、意義など、朋花自身がわかっていればいい。
自分は陣頭に立つ者だ、誰よりも、何よりも、前へ進まなくてはならない。
バトル・ロワイアルという下衆にも劣る所業を企てた『彼』を罰すべく、動く。
それは誰かの為でもなく、自分が自分で在り続けるが為。
理由など、意義など、朋花自身がわかっていればいい。
自分は陣頭に立つ者だ、誰よりも、何よりも、前へ進まなくてはならない。
(なら、怯える隙間なんて埋めちゃいませんとねぇ)
天空橋朋花は迷わない。否、迷ってはいけない。
既に死んだ二階堂千鶴ではないが、品格ある行動を取ってこそ、朋花たらしめる。
いつのまにかに、強張っていた掌は解れ、柔らかくなっている。
それが、答えだった。
既に死んだ二階堂千鶴ではないが、品格ある行動を取ってこそ、朋花たらしめる。
いつのまにかに、強張っていた掌は解れ、柔らかくなっている。
それが、答えだった。
「――どうも、こんにちは」
だから、一歩を踏み締める。その足に震えはもうなかった。
ニコリと気品よく。朋花は即座に警戒態勢へと移った紗代子に対して、いつも通り。
彼女の視線が此方へ向くのと同時に、ギラリと両目の鋭さが増していく。
一目瞭然だった。高山紗代子は殺し合いを肯定した。
手に持った冷艶鋸の血の痕跡といい、彼女は黒としか思えない。
刹那、紗代子が朋花へと飛び掛かるのを見て、確信した。
殺れると思ったのか、彼女の顔に笑みが浮かぶ。
もっとも、怪我人の緩慢とした攻撃など、朋花からすれば脅威にはならないのだけれど。
朋花は突き出された冷艶鋸をひらりと躱し、背後へと回り込む。
二つの影が一瞬で舞い変わる。
そして、空いていた右の掌を固く握り締め、紗代子の背中へと撃ち込んだ。
紗代子は身体を仰け反らせ、それを回避しようとするも、そんなもので到底無理だ。
結局、朋花の拳をまともに受けた紗代子は冷艶鋸を取り零し、地面へと転がった。
ニコリと気品よく。朋花は即座に警戒態勢へと移った紗代子に対して、いつも通り。
彼女の視線が此方へ向くのと同時に、ギラリと両目の鋭さが増していく。
一目瞭然だった。高山紗代子は殺し合いを肯定した。
手に持った冷艶鋸の血の痕跡といい、彼女は黒としか思えない。
刹那、紗代子が朋花へと飛び掛かるのを見て、確信した。
殺れると思ったのか、彼女の顔に笑みが浮かぶ。
もっとも、怪我人の緩慢とした攻撃など、朋花からすれば脅威にはならないのだけれど。
朋花は突き出された冷艶鋸をひらりと躱し、背後へと回り込む。
二つの影が一瞬で舞い変わる。
そして、空いていた右の掌を固く握り締め、紗代子の背中へと撃ち込んだ。
紗代子は身体を仰け反らせ、それを回避しようとするも、そんなもので到底無理だ。
結局、朋花の拳をまともに受けた紗代子は冷艶鋸を取り零し、地面へと転がった。
「紗代子さん、貴方は」
藻掻き、ふらふらになりながらも冷艶鋸へと手を伸ばす姿はいつもの彼女からは想像もつかないものだった。
追撃――彼女の腹部を強く蹴り飛ばす。
まともに受けた紗代子はそのまま態勢を崩し、苦しげに息を吐く。
両の瞳は殺意に濡れ、朋花をしっかりと見据えているのだろうか。
まるで、何かに怯えるように。
止まることへの焦燥感を原動力に彼女は動いているように見えるのだ。
見慣れた人達が殺し合いを通じて変わっていく。
かつて抱いたモノが何の価値もない塵屑と化すのは、胸が痛む。
追撃――彼女の腹部を強く蹴り飛ばす。
まともに受けた紗代子はそのまま態勢を崩し、苦しげに息を吐く。
両の瞳は殺意に濡れ、朋花をしっかりと見据えているのだろうか。
まるで、何かに怯えるように。
止まることへの焦燥感を原動力に彼女は動いているように見えるのだ。
見慣れた人達が殺し合いを通じて変わっていく。
かつて抱いたモノが何の価値もない塵屑と化すのは、胸が痛む。
「……見ればわかるでしょ。もっとも、この有様だけどね」
蓄積されたダメージが大き過ぎて、もはや、立ち上がる気力さえ湧かないのか。紗代子は頬を軽く釣り上げて、嘲った。
数時間前までは綺麗な身体だったのに、今では全身傷だらけで見ていられない。
特に右足は真っ赤に染まっており、些か血を流しすぎのようにさえ思えてくる。
故になのか、彼女の動きにも、もたつきが多く精細が欠けていたのだろう。
数時間前までは綺麗な身体だったのに、今では全身傷だらけで見ていられない。
特に右足は真っ赤に染まっており、些か血を流しすぎのようにさえ思えてくる。
故になのか、彼女の動きにも、もたつきが多く精細が欠けていたのだろう。
「いつも通り、だね、朋花ちゃんは」
「当たり前です。この惨劇でも、私は天空橋朋花で在り続けると決めているので~」
「当たり前です。この惨劇でも、私は天空橋朋花で在り続けると決めているので~」
再び、紗代子が嗤う。
それは物分りの悪い人を見下すような暗い笑みであり、哀れみだった。
それは物分りの悪い人を見下すような暗い笑みであり、哀れみだった。
「何がおかしいんですか?」
「笑いたくもなるよ。どうやったって無理なことを願うのを見て、笑わずにいられる?」
「笑いたくもなるよ。どうやったって無理なことを願うのを見て、笑わずにいられる?」
観念したかのように、紗代子はゆっくりと樹の根元へと這いずってへたり込む。
どのみち、この怪我では朋花からは逃げられない。
紗代子の命脈などとっくに尽きている。流した血も既に、致死の一歩手前だ。
どのみち、この怪我では朋花からは逃げられない。
紗代子の命脈などとっくに尽きている。流した血も既に、致死の一歩手前だ。
「……どういった意味合いで言っているんでしょうか」
「綺麗なままで、在り続けられるって……本当に思っているの?」
「綺麗なままで、在り続けられるって……本当に思っているの?」
こうなってしまっては、もはや何もすることはない。
ただ、諦観に任せるまま、死んでいく。
結局、何もできなかった。ただいたずらに場をかき乱しただけで、自分はこの舞台からは退場する。
それが、悔しいと思うのと同時に何処か納得もしていた。
中途半端に迷った自分じゃあ、最後まで生き残れない。
心の奥底では紗代子自身、未来なんて存在しないことに気づいていた。
ただ、諦観に任せるまま、死んでいく。
結局、何もできなかった。ただいたずらに場をかき乱しただけで、自分はこの舞台からは退場する。
それが、悔しいと思うのと同時に何処か納得もしていた。
中途半端に迷った自分じゃあ、最後まで生き残れない。
心の奥底では紗代子自身、未来なんて存在しないことに気づいていた。
「私達が願った明日は永遠に還ってこない」
「黙って受け入れるよりは抗う方がマシかと思いますけど~」
「抗うことで、どうにかなるなら……どれだけ良かったことか」
「黙って受け入れるよりは抗う方がマシかと思いますけど~」
「抗うことで、どうにかなるなら……どれだけ良かったことか」
諦めた者と諦めてない者。
両者の隔絶は決定的で平行線のまま、彼女達は終わるしかなかった。
両者の隔絶は決定的で平行線のまま、彼女達は終わるしかなかった。
「首輪の解除方法、島からの脱出案、敵対した者達の処遇。
考えるだけで問題は山積み、八方塞がりで解決方法は不明。
現に、犠牲はもう出ている。明日なんて、もう願えたものじゃない」
考えるだけで問題は山積み、八方塞がりで解決方法は不明。
現に、犠牲はもう出ている。明日なんて、もう願えたものじゃない」
夢から醒め、アイドルから等身大の少女に戻ったら何が残っているのか。
咀嚼して、飲み込んで、消化して、その果てに、彼女達の願うものが本当にあったのだろうか。
こんなことになってまで、戦う必要は本当にあったのか。
二人の少女の中で、幾つもの疑問が過る。
咀嚼して、飲み込んで、消化して、その果てに、彼女達の願うものが本当にあったのだろうか。
こんなことになってまで、戦う必要は本当にあったのか。
二人の少女の中で、幾つもの疑問が過る。
「それでも、まだ戦える?」
投げかけられた問いに、朋花は即座に答えられなかった。
彼女の想いをあっさりと否定できる強さを、朋花はまだ持てていない。
奪って、踏み越える強さを未だ――見つけていない彼女にとって、この問い掛けはあまりにも意地悪が過ぎた。
彼女の想いをあっさりと否定できる強さを、朋花はまだ持てていない。
奪って、踏み越える強さを未だ――見つけていない彼女にとって、この問い掛けはあまりにも意地悪が過ぎた。
「……抗わなくては何も始まりません」
「最初から終わっているのに? 抗う必要なんて、どこにあるの?」
「終わっているかどうかは私が決めます~。
例え、他の誰もが終わっていると囁いても、私が終わっていないと宣言する限りは、絶対に終わらせません」
「最初から終わっているのに? 抗う必要なんて、どこにあるの?」
「終わっているかどうかは私が決めます~。
例え、他の誰もが終わっていると囁いても、私が終わっていないと宣言する限りは、絶対に終わらせません」
けれど。けれど。
君臨者としての意地が此処で止まることを許さない。
天空橋朋花はこの巫山戯た殺し合いを終わらせると固く誓っている。
その思いは、今も違えず胸の中で大きな炎として灯り、心を揺らがせることはない『はず』だ。
君臨者としての意地が此処で止まることを許さない。
天空橋朋花はこの巫山戯た殺し合いを終わらせると固く誓っている。
その思いは、今も違えず胸の中で大きな炎として灯り、心を揺らがせることはない『はず』だ。
「強いね、朋花ちゃんは」
紗代子の言う通り、朋花は強い。
精神的な在り様ならば、この島で今も生き残っているアイドル達の中でも有数であろう。
意志で覆った外殻は、何物にも破られることはない。
精神的な在り様ならば、この島で今も生き残っているアイドル達の中でも有数であろう。
意志で覆った外殻は、何物にも破られることはない。
「――――だから、わからない。弱い人達のことを、全く貴方はわからない」
そう、朋花は思っていたはずだった。
ぐらりと視界が揺らぐ。
彼女の口から放たれた言葉は、まるでチェス盤をひっくり返すかのようで。
自分の中で定めたルールごとぶち壊す必殺の一撃だった。
朋花の根底をひっくり返すその一言は外殻を突き破り、抱いた理想の中心を鋭く穿つ。
ぐらりと視界が揺らぐ。
彼女の口から放たれた言葉は、まるでチェス盤をひっくり返すかのようで。
自分の中で定めたルールごとぶち壊す必殺の一撃だった。
朋花の根底をひっくり返すその一言は外殻を突き破り、抱いた理想の中心を鋭く穿つ。
「アイドルで在ることを貫ける朋花ちゃんには、強さを持っている人には、持たざる者の気持ちなんてわからない」
大切な何かが散華する。
それだけは決して譲ってはいけなかったものが、ぽとりと零れ落ちた。
いつでも気づけるものが、既に気づいていたものが、必死で気づくまいとしていたものが、引きずり出されていく。
朋花が賢しい少女である。
それ故に、自分がどれほど頑張ろうが、『彼』に罰を与えようが、求めている世界は何処にもないことを知っている。
こんな地獄を生きて、それでも尚――――今までどおりにアイドルを続けられるとしたら、それはもう、『狂っている』証拠だ。
紗代子からすると、朋花の方がよっぽど異常である。
今まで通り、強く在ることができる彼女は何を寄辺にして此処に立っているのだろうか。
それだけは決して譲ってはいけなかったものが、ぽとりと零れ落ちた。
いつでも気づけるものが、既に気づいていたものが、必死で気づくまいとしていたものが、引きずり出されていく。
朋花が賢しい少女である。
それ故に、自分がどれほど頑張ろうが、『彼』に罰を与えようが、求めている世界は何処にもないことを知っている。
こんな地獄を生きて、それでも尚――――今までどおりにアイドルを続けられるとしたら、それはもう、『狂っている』証拠だ。
紗代子からすると、朋花の方がよっぽど異常である。
今まで通り、強く在ることができる彼女は何を寄辺にして此処に立っているのだろうか。
「…………紗代子、さん、貴方」
どうせ、誰も救われない。
もはや生きて還るなんてものも大好きな『あの人』に会うこともなかった。
ただ、流れるままに。眼前の敵を少しでも道連れにできればいいなとだけ、思っていた。
もうどうにもならなくなるまでに壊れてしまった自分は、きっと大切なモノを根こそぎ忘れてしまったのだろう。
紗代子の頭の中に満ちた諦観は、この先を導くことをしない。
もはや生きて還るなんてものも大好きな『あの人』に会うこともなかった。
ただ、流れるままに。眼前の敵を少しでも道連れにできればいいなとだけ、思っていた。
もうどうにもならなくなるまでに壊れてしまった自分は、きっと大切なモノを根こそぎ忘れてしまったのだろう。
紗代子の頭の中に満ちた諦観は、この先を導くことをしない。
「私は、春香さんを殺した」
だから、今なら何の気兼ねなく言えてしまうのだ。
「怖い、顔」
特大の爆弾が、起爆し、朋花の表情から内面に至るまで余裕が消え去っても、尚。
彼女の刃は紗代子へと向かなかった。
やはり、彼女は強い。
一時の激情に支配されない強靭な心を持っている。
それがたまらなく、憎らしい。
彼女の刃は紗代子へと向かなかった。
やはり、彼女は強い。
一時の激情に支配されない強靭な心を持っている。
それがたまらなく、憎らしい。
「仇討ち、しないの?」
もう何処にも戻れないなら、進むしかない。
諦めも一周回ってしまえば、ポジティブな方向へと向いてしまう。
自分という存在がわからなくなっても、この刃を以って前へ、前へ。
紗代子は痛む足を無理やり奮い立たせて、ゆっくりと立ち上がる。
ただ、呆然とする朋花はそれを見ても動けない。
目の前に天海春香を殺した『敵』がいるにもかかわらず、刃を抜き放つことをできずにいる。
諦めも一周回ってしまえば、ポジティブな方向へと向いてしまう。
自分という存在がわからなくなっても、この刃を以って前へ、前へ。
紗代子は痛む足を無理やり奮い立たせて、ゆっくりと立ち上がる。
ただ、呆然とする朋花はそれを見ても動けない。
目の前に天海春香を殺した『敵』がいるにもかかわらず、刃を抜き放つことをできずにいる。
「……諦めたんですね、貴方は」
ここで、漸くといった形で、朋花が口を開く。
その口元は震え、途切れ途切れだった。
今まで、朋花が出会った人達はまだ人殺しではない。
戻れる立ち位置にいた、境界線を踏み越えていないアイドルだけだった。
しかし、紗代子は違う。
彼女の一線は疾うの昔になくなっている。
その口元は震え、途切れ途切れだった。
今まで、朋花が出会った人達はまだ人殺しではない。
戻れる立ち位置にいた、境界線を踏み越えていないアイドルだけだった。
しかし、紗代子は違う。
彼女の一線は疾うの昔になくなっている。
「どんなに困難な局面であっても、思考を閉ざすのは愚の骨頂ですよ?
貴方にとって、切磋琢磨しあった仲間とはこの程度で切り捨てるものでしたか?」
「そう、だね……そう、なのかもしれない。
でも、それって逆に言うと――朋花ちゃんにとって、『あの人』はその程度のものだったって証明だよね」
「……ッ!」
「だって、そうじゃない。心穏やかに思考を閉ざさずに真っ直ぐと。
悩まず、正しい選択を取れるぐらい落ち着いていて、脱出への思考に浸れて!
朋花ちゃんにとって、プロデューサーなんて、所詮はその程度だったってことでしょう」
貴方にとって、切磋琢磨しあった仲間とはこの程度で切り捨てるものでしたか?」
「そう、だね……そう、なのかもしれない。
でも、それって逆に言うと――朋花ちゃんにとって、『あの人』はその程度のものだったって証明だよね」
「……ッ!」
「だって、そうじゃない。心穏やかに思考を閉ざさずに真っ直ぐと。
悩まず、正しい選択を取れるぐらい落ち着いていて、脱出への思考に浸れて!
朋花ちゃんにとって、プロデューサーなんて、所詮はその程度だったってことでしょう」
紗代子の口から漏れ出す言葉には遠慮なんてもう消えてしまった。
沸き立つ苛立ちをぶつけて、暗い気持ちを快楽に変えることだってしてみせる。
どうせここまでの生命なら、最後の敵に一矢報いるぐらいはしたい。
それも、対極の位置にいる天空橋朋花ならば不足はない。
沸き立つ苛立ちをぶつけて、暗い気持ちを快楽に変えることだってしてみせる。
どうせここまでの生命なら、最後の敵に一矢報いるぐらいはしたい。
それも、対極の位置にいる天空橋朋花ならば不足はない。
「私は違うの。朋花ちゃんと違って、私は、私は――」
差し伸べられた手を払いのけ、武器を握ることを選んだのは、間違いだったのだろうか。
一瞬だけ、春香の手を取った自分の未来を想像して、儚げに表情が緩む。
それは、正しくて、王道で、目が眩むくらいに――輝いていて。
一瞬だけ、春香の手を取った自分の未来を想像して、儚げに表情が緩む。
それは、正しくて、王道で、目が眩むくらいに――輝いていて。
「好きだった。プロデューサーのことが好きで、あの人がいない世界なんて考えられなかった。
私を今まで導いてくれた人が、支えてくれた人が殺せって言うなら――それしか、道は残っていない」
私を今まで導いてくれた人が、支えてくれた人が殺せって言うなら――それしか、道は残っていない」
春香と進む道が魅力的ではなかった、なんて誰が言えるものか。
高山紗代子によって、アイドルの仲間達はかけがえのない大切な宝物だ。
軽んじてなどいない。選べるならば、彼女達と手を取り合うことだってしたかった。
現実という冷たくて、夢を許さない空間でなければ、きっと。
高山紗代子によって、アイドルの仲間達はかけがえのない大切な宝物だ。
軽んじてなどいない。選べるならば、彼女達と手を取り合うことだってしたかった。
現実という冷たくて、夢を許さない空間でなければ、きっと。
「頑張りたかった、諦めたくなかった。そんなの、私だって同じで、ずっとずっとそう在りたいって願っていた。
でも、無理に決まっている。どっちかしか選べないもの。だから、私は決めた。。
あの人か、朋花ちゃん達のどっちかしか選べないのがこの島のルールなら――――」
でも、無理に決まっている。どっちかしか選べないもの。だから、私は決めた。。
あの人か、朋花ちゃん達のどっちかしか選べないのがこの島のルールなら――――」
どちらかだけしか、手を取れない。
両方いいとこ取りの可能性なんて存在しない。
聡明である紗代子は選ぶしかなかった。
大切の比重を傾ける相手を、彼女は悩んで、悩んで、悩み抜いて、決めたのだから。
両方いいとこ取りの可能性なんて存在しない。
聡明である紗代子は選ぶしかなかった。
大切の比重を傾ける相手を、彼女は悩んで、悩んで、悩み抜いて、決めたのだから。
「――――私は、皆を殺すよ」
後悔はしている。この胸に響く痛みは永遠に取り除かれないだろう。
土と血と涙で彩られた道は、決して誇れるものではないけれど。
それでも、それでも、ただ一つだけ。
高山紗代子は、プロデューサーのことが好きだ。
これだけは譲れないし、誰にも否定はさせない。
もう一度、あの人の笑顔を見たいから。
ファンを笑顔にするアイドルよりも、たった一人の人間を笑わせる少女になることを決めたことに、今は殉じたい。
土と血と涙で彩られた道は、決して誇れるものではないけれど。
それでも、それでも、ただ一つだけ。
高山紗代子は、プロデューサーのことが好きだ。
これだけは譲れないし、誰にも否定はさせない。
もう一度、あの人の笑顔を見たいから。
ファンを笑顔にするアイドルよりも、たった一人の人間を笑わせる少女になることを決めたことに、今は殉じたい。
「ねぇ、朋花ちゃん。仲間達が、笑顔が、ファンが、自分が、大切で大切で仕方がない『アイドル』なんだからさ」
さあ、問おう。
この死に体を前に、天空橋朋花<アイドル>はどのような行動をするのか。
逃げるなんて事はさせないし、相手もそんな無様な真似をするつもりはないだろう。
君臨者として頂点に立つ者が、問いを前に目を背ける赤点を取る訳にはいかないはずだ。
この死に体を前に、天空橋朋花<アイドル>はどのような行動をするのか。
逃げるなんて事はさせないし、相手もそんな無様な真似をするつもりはないだろう。
君臨者として頂点に立つ者が、問いを前に目を背ける赤点を取る訳にはいかないはずだ。
――――誇り高き朋花様が、逃げちゃ、嫌だよ?
「私を殺しなよ? 愚かで諦めばっかりで友達を殺した仇を討たないのかな?」
終わらせないといけない。分かり合うという範疇はとっくに超えている。
朋花と紗代子にはもはやどちらかが死ぬ以外に結末は残されていない。
善とか、悪とか。
そういう次元ではなく、対極の彼女達が進むには、何かを切り捨てなければならない。
朋花と紗代子にはもはやどちらかが死ぬ以外に結末は残されていない。
善とか、悪とか。
そういう次元ではなく、対極の彼女達が進むには、何かを切り捨てなければならない。
「ええ、そうですか。それが貴方の最後の一撃ですか」
けれど。けれど、まだ。
朋花が諦めていないならば。
一パーセントでも高山紗代子が救われる可能性が残っているならば。
朋花が諦めていないならば。
一パーセントでも高山紗代子が救われる可能性が残っているならば。
「――――お断りですよ」
君臨者の務めとして、彼女を救いに行く。
繰り返す罪の連鎖は此処で断ち切らなければならない。
絶望の袋小路なんてこれ以上作ってなるものか。
確かに、紗代子の背負ったモノは重く、清算できるものではない。
ここで生き延びたとしても、彼女は一生後悔をし続ける。
生きている限り心の底からの幸せを感じることはないだろう。
それでも、それでも。
償いには安堵が在るはずだ。辛くても、救われることはあるはずだ。
繰り返す罪の連鎖は此処で断ち切らなければならない。
絶望の袋小路なんてこれ以上作ってなるものか。
確かに、紗代子の背負ったモノは重く、清算できるものではない。
ここで生き延びたとしても、彼女は一生後悔をし続ける。
生きている限り心の底からの幸せを感じることはないだろう。
それでも、それでも。
償いには安堵が在るはずだ。辛くても、救われることはあるはずだ。
「衝動的な行動をしては、そこらの獣と同じだと思いますがね~。
私達は人間であり、理性を持つ生き物として最先端を往く者達です。
短絡的な思考で、その誇りを汚すのは――私は御免なので」
私達は人間であり、理性を持つ生き物として最先端を往く者達です。
短絡的な思考で、その誇りを汚すのは――私は御免なので」
だから、紗代子には生きてもらわなければ困る。
彼が企てた絶望など、予め決められた結末など、朋花は認めない。
勝手に視野狭窄と決め付け、見るべきものを見ようとしない。
殺し、殺されるだけの両極端なものしかないと誰が決めつけたのか。
彼が企てた絶望など、予め決められた結末など、朋花は認めない。
勝手に視野狭窄と決め付け、見るべきものを見ようとしない。
殺し、殺されるだけの両極端なものしかないと誰が決めつけたのか。
「それともう二つ。私、利用するのはいいんですが、利用されるのは嫌いなんですよ~。
なので、貴方を殺すのは謹んでご遠慮致しますね。はい、後もう一つは――――」
なので、貴方を殺すのは謹んでご遠慮致しますね。はい、後もう一つは――――」
人間は賢い生き物だ。
思考して、相違して、妥協して、その果てに見つけた境界線に自分達を並べていくことだってできるのに。
何故、諦める。何故、膝を屈して背を向ける。何故、眼前の不条理から逃げてしまう。
思考して、相違して、妥協して、その果てに見つけた境界線に自分達を並べていくことだってできるのに。
何故、諦める。何故、膝を屈して背を向ける。何故、眼前の不条理から逃げてしまう。
「――――逃げ道に私を利用しないで下さい」
簡単に言うと、天空橋朋花はムカついていたのだ。
まだ間に合うはずの愚者が努力をやめ、諦めることに多大な嫌悪感を抱いていた。
生きたくても生きれない、無念のままに死んでいった人達がいるにも関わらず、だ。
彼女達が譲った願い<今>を想いの残滓<過去>で穢す彼女が腹立たしくて仕方がない。
まだ間に合うはずの愚者が努力をやめ、諦めることに多大な嫌悪感を抱いていた。
生きたくても生きれない、無念のままに死んでいった人達がいるにも関わらず、だ。
彼女達が譲った願い<今>を想いの残滓<過去>で穢す彼女が腹立たしくて仕方がない。
「仇を討った所で、死んだ人達は還ってこない。世界は何も揺らがない」
故に、朋花からするとその申し出は受けるに値しないものだ。
自分に何のメリットもないのに、紗代子の自慰行為なんかに付き合う必要などない。
この身は、理想を叶える為の大切なモノであり、頂点に立つ象徴もである。
自分に何のメリットもないのに、紗代子の自慰行為なんかに付き合う必要などない。
この身は、理想を叶える為の大切なモノであり、頂点に立つ象徴もである。
「春香さんを殺した仇と知ることで、私が激情に身を任せて殺すと思いましたか?
侮辱も大概にして下さい。月並みな言葉ですけれど、折り合い、つけているんですよ」
侮辱も大概にして下さい。月並みな言葉ですけれど、折り合い、つけているんですよ」
だから、高山紗代子を真正面から論破する。
無理矢理にでも、此方側へと引きずり下ろす為にも、手を伸ばそうと。
無理矢理にでも、此方側へと引きずり下ろす為にも、手を伸ばそうと。
「そっか……そう、なんだね。あーぁ……やっぱり。朋花ちゃんは、強くて、綺麗で、賢くて」
――――その選択が最後のトリガーだと気付かずに。
紗代子の中にあった覚悟が、完全に定まった。
伸ばされた朋花の手を払いのけ、両の瞳には諦観だけが映し出されている。
ふらりと立ち上がり、冷艶鋸を拾い上げる。
もう、迷いはなかった。一分、一秒でさえも惜しい。
これ以上、この場で息をすることすら耐えられない。
彼女の強さをもう――――見たくない。
だから、答えを返そう。
境界線<鏡界線>の彼女を、もしかするとあったかもしれない自分の可能性を殺す為にも、終わりにしよう。
伸ばされた朋花の手を払いのけ、両の瞳には諦観だけが映し出されている。
ふらりと立ち上がり、冷艶鋸を拾い上げる。
もう、迷いはなかった。一分、一秒でさえも惜しい。
これ以上、この場で息をすることすら耐えられない。
彼女の強さをもう――――見たくない。
だから、答えを返そう。
境界線<鏡界線>の彼女を、もしかするとあったかもしれない自分の可能性を殺す為にも、終わりにしよう。
「なぁんにも、見えてない」
紗代子はくるりと柄を回し、刃の切っ先を首元へと向けて。
勢い良く、突き刺した。
血が勢い良く吹き出し、視界の明るさが徐々に消えていく。
結局、何も見えていないのは両者共に同じだった。
勢い良く、突き刺した。
血が勢い良く吹き出し、視界の明るさが徐々に消えていく。
結局、何も見えていないのは両者共に同じだった。
――――諦める時だ、紗代子。
もう一度会いたかった『あの人』は、最後まで笑ってくれなかった。
◇
天空橋朋花は本気で生きない人達が嫌いだ。
ただ流されるがままに、自分で物事を考えない愚鈍な連中には反吐が出る。
埋没したくない。大衆の愚かさに身を浸したくない。
故に、彼女は君臨者になろうと誓った。
全てを率いて大きなことを為そう。
始まりはそんな決意だったはずだ。
ただ流されるがままに、自分で物事を考えない愚鈍な連中には反吐が出る。
埋没したくない。大衆の愚かさに身を浸したくない。
故に、彼女は君臨者になろうと誓った。
全てを率いて大きなことを為そう。
始まりはそんな決意だったはずだ。
何処で自分は間違えた?
気づかぬ内にへたり込み、何の表情も出せない今の自分はどうしようもない。
誰か敵意を持つアイドルが現れたら、すぐにでも生命を刈り取られるだろう。
そもそも、今の朋花は誰が見ても平常なものとは思えない。
誰か敵意を持つアイドルが現れたら、すぐにでも生命を刈り取られるだろう。
そもそも、今の朋花は誰が見ても平常なものとは思えない。
ただ一つ確かなのは、天空橋朋花は高山紗代子を救えなかったこと。
彼女の最後の後押し<殺人>を行ったのは――自分だ。
彼女の最後の後押し<殺人>を行ったのは――自分だ。
――――信じていた正しさとは、何だったのか?
もはや、君臨者として、聖母として、最後に根こそぎ奪われた朋花に残っているのは何なのか。
血に濡れた神輿は誰も担がない。許しを請う逃げ道など何処にもない。
ただ、本気で生きることを諦めてほしくなかった。
それだけを、願っていたのに。
血に濡れた神輿は誰も担がない。許しを請う逃げ道など何処にもない。
ただ、本気で生きることを諦めてほしくなかった。
それだけを、願っていたのに。
「私の強さが、紗代子さんを、殺した?」
彼女を構成していた強さが、剥がれていく。
それは、どうしようもない絶望だった。
それは、抗いようがない絶対だった。
何かを成しえると思った瞬間に、滑り落ちた。
真っ直ぐに、手を伸ばして。
誰かを救える自分があるのだと顔を上げた瞬間に、現実を見せつけられた。
救おうと思い、亡くし。
拾おうと思い、壊して。
それは、どうしようもない絶望だった。
それは、抗いようがない絶対だった。
何かを成しえると思った瞬間に、滑り落ちた。
真っ直ぐに、手を伸ばして。
誰かを救える自分があるのだと顔を上げた瞬間に、現実を見せつけられた。
救おうと思い、亡くし。
拾おうと思い、壊して。
「――――!」
気づいた時には、もう手遅れだった。
自分のような失格者<殺人者>が生きている事自体が恥だった。
それを理解した上で、無様に、生き汚く縋りたくなった自分が、気持ち悪く感じてしまった。
けれど、成した結果は良き未来に繋がっているはずだ。
なくなったはずの希望が顔を見せ、その瞬間に裏切られた。
自分がどれほど迷惑な生き物か思い知り、よく見える絶望――紗代子の死体は朋花の心を完全に砕いてしまう。
自分のような失格者<殺人者>が生きている事自体が恥だった。
それを理解した上で、無様に、生き汚く縋りたくなった自分が、気持ち悪く感じてしまった。
けれど、成した結果は良き未来に繋がっているはずだ。
なくなったはずの希望が顔を見せ、その瞬間に裏切られた。
自分がどれほど迷惑な生き物か思い知り、よく見える絶望――紗代子の死体は朋花の心を完全に砕いてしまう。
――――諦める時だ、朋花。
きっと、誰もが、この悪夢から逃れられない。
【高山紗代子 死亡】
【一日目/午後/F-5】
【天空橋朋花】
[状態]――――
[装備]なし
[所持品]基本支給品一式、不明支給品1~2(銃に匹敵するような武器はない)
[思考・行動]
基本:なにがただしくて、なにがまちがっていたのか
1:もう、わからない。
※最上静香、星井美希が殺し合いに乗っている可能性があることを認識しました。
※高山紗代子の死体(冷艶鋸は首に刺さっています)と支給品は近くに落ちています。
[状態]――――
[装備]なし
[所持品]基本支給品一式、不明支給品1~2(銃に匹敵するような武器はない)
[思考・行動]
基本:なにがただしくて、なにがまちがっていたのか
1:もう、わからない。
※最上静香、星井美希が殺し合いに乗っている可能性があることを認識しました。
※高山紗代子の死体(冷艶鋸は首に刺さっています)と支給品は近くに落ちています。
| 折れた明日に何を祈ろう | 時系列順に読む | Cause of U |
|---|---|---|
| 折れた明日に何を祈ろう | 投下順に読む | Cause of U |
| 武器を持った奴が相手なら、『うみみんバックハンドスプリング』を使わざるを得ない | 高山紗代子 | 死亡 |
| The star | 天空橋朋花 |