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The star

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The star

【星】
正位置:希望、ひらめき、願いが叶う
逆位置:失望、絶望、無気力、高望み、見損ない


   ◇   ◇   ◇


遠くに山を望むことのできる緩やかな道。
三人の少女が重い足取りで歩を進めていた。
一番背の高い青髪の少女が何かを抱えながらゆっくりと歩き、髪を横に束ねた少女が心配そうに付き添う。
そして少し遅れて、一番小さな少女が陰鬱とした表情で後に続く。
景観こそ晴れやかな場所だが、彼女たちを包む空気は決して穏やかとは言い難かった。

「あら皆さん、お元気そうで何よりです~」
「げぇーっ! と、朋花様!?」

道なりに進んでいくと、また新たな少女が現れる。
髪を団子のように束ねたどこか神秘的な少女、天空橋朋花だ。

「真美ちゃんも怪我はありませんか~?」
「は、はい! 無事であります!」

朋花はにこやかに微笑み、仲間の無事を祝う。

「ところで……瑞希さん、これはどういうことか説明していただけますか?」

だが、青髪の少女が抱えている「それ」を視界に捉えると、途端に鋭く冷淡な表情へと変わる。
瑞希と呼ばれた少女の腕には――子供の遺体が抱かれていた。


   ◆   ◆   ◆


話は数刻前に遡る。

休憩を終えた瑞希たちは、島の南東にある研究施設を目指していた。
この島に関すること。あるいは殺し合いに関すること。
とにかく何かしらの手掛かりが残されているのではないか。
そう期待しての判断だった。

「あれ?」

キャンプ場へ向かう際にも通過した分かれ道に差し掛かったあたりで、誰かが声を上げる。

「どうしましたか、双海さん?」
「あそこ、誰かいるっぽくない?」

サイドテールの少女、双海真美が彼方を指差す。
視線を向けると、確かに茂みの中から何者かの靴が覗いているのが見えた。

「うーん、さっき通ったときは全然気づかなかったのに……」
「とにかく行ってみましょう。誰かが怪我をしているかもしれません」

瑞希の一声で、三人は茂みへと駆け寄る。



「ッ!? そ、そんな……」
「……っ」

そこにいたのは確かに人だった。
正確には、人であったもの。
全身に金属片が突き刺さり、体中から血を流したまま静止している少女。

「……育」

劇場の最年少メンバー、中谷育だった。



「亡くなっているとは聞いていましたが……やはり、辛いです」

瑞希が言葉を零す。
変化に乏しい彼女の表情からも、確かな悲しみが感じられた。
真美は今にも吐き出してしまいそうになりながら、凄惨な光景から目を背けている。

「周防さん……」

真美の近くにいる少女、周防桃子は唇を固く結び、拳を握りしめている。
その小さな体は僅かに震えていた。

「……っ、大丈夫。さ、早く行こ」

桃子はそそくさとその場を後にしようとする。
その立ち振る舞いが虚勢であることは誰の目から見ても明らかだった。
親友の死を目の前にして冷静さを保つことが出来るほど彼女は強くない。

一人先に行ってしまった桃子の後を追い、真美もそれに倣う。
だが、瑞希がついてくる様子がない。
瑞希は遺体の前でじっと立ち尽くしていた。

「あれ、みずきん何してんの?」
「いえ、ちょっと……」

何かを思案しているのか、瑞希はその場を動こうとしない。

「来ないなら置いてくよ」
「……」
「何? 言いたいことがあるなら早く言いなよ」

桃子が若干苛立った様子で声をかける。

「……わかりました。皆さん、ちょっと聞いてください」

何かを決意したのか、瑞希は顔を上げ、二人に向き直った。
あまり言いたくないことなのだろうか。その表情はどこか曇っている。


「中谷さんを連れて行こうと思います」
「…………は?」


全く状況が呑み込めない二人は、少しの間その場で固まっていた。

「え? え? どういうこと? 育りん、もう死んでるんだよ?」
「だからこそです」
「ますますわかんないよ!」

真意が読めない瑞希の発言に、真美はただ混乱している。
死んだ仲間を連れていくとはどういうことなのか、と。

「今から説明します。まず第一に、プロデューサーは私たちが死んだことをどうやって知ると思いますか?」

見かねた瑞希は、二人に事情を説明するべく問いを投げかける。

「え? そりゃあ監視カメラとかっしょ?」
「間違いではないと思います。ですが、カメラだけでこの広い島全てを見張ることが出来るでしょうか?
 たくさん設置すれば可能かもしれませんが、それだけカメラがあればきっと私たちでも気づきます」
「た、確かに……」

ここに来るまでの道中、カメラのようなものは一つも見つからなかった。
仮にあるとしても、相当発見しにくい場所に数個ある程度なのだろう。

「なので私は、この首輪に秘密があると睨んでいます」
「首輪? ……あっ、そういえばこんなの付けられてたっけ」

瑞希につられ、真美も自身の首に手を伸ばす。
指先に硬い感触が触れた。
彼女たちの安寧を脅かす、爆弾入りの首輪。

「はい。恐らくこの首輪には体温、あるいは脈を測る機能が備わっているのではないかと思います」
「と、いうと?」
「つまり、死んだかどうかを首輪が判断しているかもしれない、ということです。……ハイテク」

考えもしなかった可能性を前に、真美は呆気にとられている。
にわかには信じがたいが、この仮説が真実なら確かにカメラなど必要ない。

「で、でも、それと育りんに何の関係があるっていうわけ?」
「私の考えが正しいなら、今の中谷さんの首輪は、比較的安全である可能性が高いんです」
「安全!? バクハツするかもしれないのに!?」

強引に外そうとすれば瞬時に装着者の首を弾き飛ばす首輪。
そんなものが安全であるはずがない。

「もし双海さんがプロデューサーだったら、死んだ人の首輪はどうしますか?」
「え? うーん、真美なら、わかりやすいように電源をオフにして……あっ!」

だが、すぐに合点がいったといわんばかりに、真美は声を上げる。

「そういうことです」

瑞希は小さく頷く。
「首輪の装着者が死んだ場合に機能を停止させる」と決めれば、誰がいつ死んだのかすぐに特定できる。
それが瑞希の立てた仮説だった。

「もちろん爆弾が完全に止まらないという可能性もありますが、それでも危険性はかなり減ります」

そして、彼女はひとつ息を吸い――


「私はこれから、首輪の解除に挑みたいと思います。……やってやるぞ」


首輪の解除。
それはこの島にいる全員に課せられた最大の課題。
首輪が装着されている限り決して逃げることは叶わず、常に命の危機に晒され続ける。
だが、解除法を見つけ出し、その呪縛を取り去ることが出来るのならば、事態は大きく変化する。

爆弾によって戦いを強制されているのならば、戦う理由をなくしてしまえばいい。
そして、瑞希にはそれを可能にする力がある。
機械の腕を図面から設計・開発し、自身の分身たる人形リトルミズキを作り上げた彼女の技術力。
安全に分解できる可能性の高い首輪。
この二つが合わさればあるいは――

「付けることが出来るなら、きっと外す方法があります。まずは施設まで中谷さんを――」
「――ふざけないで」

沈黙を貫いていた桃子が、瑞希の言葉を遮った。

「ばっかみたい! そんなことの為に……育を……! 育を……! 育を何だと思ってるのよ……!」

震える声で、桃子は静かに叫ぶ。
友の尊厳を汚すなと訴えるかのように。

「周防さんの気持ちは理解しているつもりです。本当に申し訳ないと思っています」

こうなることはわかっていたといわんばかりに、瑞希は眉尻を下げる。
事実、桃子の言い分も尤もだ。
文字通り死体に鞭を打つような瑞希の行為は、人道的にも疑わしい。

「ですが、この機会を逃したら、今よりももっと犠牲が増えてしまいます。
 わかってください、周防さん。中谷さんの死を無駄にしない為にも」

このまま何も行動しなければ、いたずらに死人を増やすばかりであるのも事実。
瑞希にとっても、この決断は辛いものであった。

「……別にいいよ、もう。好きにすれば?」

先に折れたのは桃子の方だった。
これ以上の説得は無駄だと判断したのか、その表情からは幾らかの諦念が感じ取れる。

「本当にすみません。……そろそろ行きましょう」

そう言って、瑞希はゆっくりと育の亡骸を抱きかかえる。
その体は、彼女が想定していたよりもずっと軽かった。


   ◆   ◆   ◆


「なるほど……そんな事情があるとは知りませんでした……」

そして現在に至る。
瑞希は朋花への説明を終え、誤解を解いていた。

「はい。なので私たちは、この先の研究施設へ向かおうと思います」
「それなんですけど……やはり育ちゃんを連れていくのはどうかと思います~」

話に関心を示していた朋花は、意外なことに瑞希たちの行動を制止しようとしている。
彼女は鞄から端末機を取り出し、それをいじりながら言葉を続ける。

「桃子ちゃんの言う通り、死んだ人を無暗に連れ回すのはよくないことだと思うんです。
 死者への冒涜は、きっと神もさぞお怒りになることでしょう」

やがて朋花は端末の操作を終了し、その画面を瑞希たちへと向けた。
そこに表示されていたのは、短い文章。


『話を合わせてください。盗聴されている可能性があります』


真美は思わず声を上げそうになりながら、慌てて口元を抑える。
考えてもみれば確かにそうだ。
殺し合いの中止を考えるのならば、まず真っ先に対処しなければならないのは首輪。
その首輪に対し何かしらの対策を施すならば、盗聴器をつけることも当然候補に挙げられるだろう。
その可能性が思い浮かばなかった瑞希は、思わず顔をしかめる。
今はまだ黙認されているのか、あるいは気付かれていないのか。
彼女たちはまだ死なずにいるが、今後は細心の注意を払う必要がある。

「なので、育ちゃんは静かに眠らせてあげるべきだと思うんです。如何でしょうか~?」
「……確かに、そうかもしれません」

ぎこちない口調で、瑞希が応じる。
言葉を交わしながら、二人は端末の操作を続けていた。

『以後、首輪や脱出方法に関する話は出来る限り筆談で行った方が良いと思います』
『はい。ばれないように頑張ります』

「……わかりました。やはり中谷さんは、そっとしておいてあげましょう」

本心にない受け答えを淡々と続ける。
何かを書きながら話すのは慣れていないのか、瑞希は終始苦い顔をしていた。


   ◆   ◆   ◆


その後、四人は互いの持つ情報を交換し、知識の共有を行った上で別れを告げた。
もちろん、天空騎士団への勧誘も怠らない。
新たに三人の戦士が朋花の味方に加わった。
相変わらず武器を手に入れることは叶わなかったが、それでも十分な成果を得られたといえるだろう。

「これで四人。海美さんは無事役目を果たせているでしょうか~」

送り出した尖兵の身を案じる。
いつ死ぬかもわからないこの地で、そそっかしい海美の心配をせずにはいられない。

(ですが、もっと心配なのは……)

朋花は先程のやり取りを想起する。
筆談を交わした瑞希。話についていけず戸惑っている真美。
そして、その後ろにいたもう一人の少女。
絶望に満ちた表情で茫然と立ち尽くしていた少女、周防桃子。

「……何も起こらなければよいのですが」

聖母の呟きは誰に届くともなく、虚空へと溶けていった。


【一日目/午後/F-5】

【天空橋朋花】
[状態]健康、固い決意
[装備]なし
[所持品]基本支給品一式、不明支給品1~2(銃に匹敵するような武器はない)
[思考・行動]
基本:プロデューサーに罰を与える
 1:誰か人と合流する
 2:徳川まつりへの対策を考えておく
 3:様子のおかしい桃子が心配

最上静香星井美希が殺し合いに乗っている可能性があることを認識しました。


   ◆   ◆   ◆


なんでみんな、そんなに冷静でいられるの?
なんで誰も、育を眠らせてあげようとしないの?
もう死んでるんだよ?
なのに、みんな揃って……。
朋花さんはわかってくれたと思ったのに、あれも嘘だったんだ……。

「ももーん、大丈夫?」
「うん……いまいく……」

わかってる。
桃子は大人なんだから、我儘なんて言わない。
首輪を外す方法を見つけて、育の敵を討つまで我慢しなくちゃ。

敵を討ったら、その後は――


【一日目/午後/F-5】

真壁瑞希
[状態]健康
[装備]金鎚、中谷育
[所持品]支給品一式、ランダム支給品(0~1)
[思考・行動]
基本:皆で帰るぞ……えいえいおう
1:周防さんと一緒に他の人を探す
2:とりあえず、北からは離れる。でも本当は止めたい
3:周防さんがおかしい……気のせいなら、いいのですが
4:首輪を外す為とはいえ、やはり悪いことをしてしまったでしょうか

【周防桃子】
[状態]健康?
[装備] プラスドライバー
[所持品]支給品一式、ランダム支給品(0~1)
[思考・行動]
基本:死にたくない
1:瑞希さん達と一緒に行く
2:『敵』と出会ったなら、躊躇はしない
3:もう誰も信じられない

【双海真美】
[状態]健康
[装備]なし
[所持品]支給品一式、ランダム支給品(1~2)
[思考・行動]
基本:死にたくない。でも人は殺さない
1:二人と一緒に行動する
2:亜美ー!どこー!?
3:静香お姉ちゃんとミキミキには気をつける。できれば会いたくない
4:まつり姫が敵ってやばすぎっしょ……

※三人は徳川まつりが敵、高坂海美が味方であると認識しました。


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