IMPRESSION
「ひぐ……えっぐ………うぅ………」
島の、丁度中心あたりに建てられたキャンプ場。
申し訳程度に整備された、自然豊かな場所の中心で、嗚咽が響く。
ロコ――そんな名称でアイドルとして活動していた少女、伴田路子は、たった一人で座り込んで震えていた。
肩を抱いて、その表情は恐怖で引きつり、涙は止まらず。
そこから一歩も動くことができずに、彼女は怯えていた。
申し訳程度に整備された、自然豊かな場所の中心で、嗚咽が響く。
ロコ――そんな名称でアイドルとして活動していた少女、伴田路子は、たった一人で座り込んで震えていた。
肩を抱いて、その表情は恐怖で引きつり、涙は止まらず。
そこから一歩も動くことができずに、彼女は怯えていた。
(怖い……こわいこわいこわい……っ!)
少し前まで、平和に過ごしてきていたはずだ。
からかわれたり、いじられたりもしたけど。それでも、とっても充実していて楽しかった日常。
なのに。どうして、こんな事に。
日常が奪われて、社長が殺されて、そして今、殺し合いを強要されていて。
一瞬にして、彼女の居場所は崩れ去ってしまって。
からかわれたり、いじられたりもしたけど。それでも、とっても充実していて楽しかった日常。
なのに。どうして、こんな事に。
日常が奪われて、社長が殺されて、そして今、殺し合いを強要されていて。
一瞬にして、彼女の居場所は崩れ去ってしまって。
「どうして、こんな……プロデューサー……!」
そして、何より。
一番信頼していた人に、見捨てられた。その事実が、彼女の心を乱していた。
彼女の事を全て理解している――とはいかなくても、親身になって、頑張ってくれた人。
何より、ロコ自身がその人と一緒にいて、安心できた。心を許していた。
ロコは無意識のうちに、その優しさに依存しきっていた。
一番信頼していた人に、見捨てられた。その事実が、彼女の心を乱していた。
彼女の事を全て理解している――とはいかなくても、親身になって、頑張ってくれた人。
何より、ロコ自身がその人と一緒にいて、安心できた。心を許していた。
ロコは無意識のうちに、その優しさに依存しきっていた。
それなのに、突き放された。あの場所で仮面の奥を見た瞬間に、全てが崩れ去ってしまった。
よりにもよって、彼女達のプロデューサー自身が、この最悪な舞台に突き落とした。
信じられない、信じたくない。今まで見てきた姿は、嘘だったの?
弱い心は、必死に否定しようとする。
でも、彼女の思考には目をそらせないほどに、その光景はくっきりと焼き付いていた。
よりにもよって、彼女達のプロデューサー自身が、この最悪な舞台に突き落とした。
信じられない、信じたくない。今まで見てきた姿は、嘘だったの?
弱い心は、必死に否定しようとする。
でも、彼女の思考には目をそらせないほどに、その光景はくっきりと焼き付いていた。
(死にたくない、しにたくないよ………)
ごちゃごちゃになった頭の中によぎる、自分の『死』のヴィジョン。
彼女が生きてきた今までの短い人生の中で、一度も考えたことのない思考。
なまじ人より感性豊かな少女は、より鮮明にその恐怖を感じ取ってしまう。
震えが、止まらない。心構えもできてないし、どうすればいいかもわからない。
ただ、うずくまる事しかできなかった。目を背けて、現実から逃げる事しか。
彼女が生きてきた今までの短い人生の中で、一度も考えたことのない思考。
なまじ人より感性豊かな少女は、より鮮明にその恐怖を感じ取ってしまう。
震えが、止まらない。心構えもできてないし、どうすればいいかもわからない。
ただ、うずくまる事しかできなかった。目を背けて、現実から逃げる事しか。
そんな彼女の耳に届いた、物音。
「―――っ!?」
びくりと、ロコの体が大きく震える。その顔を上げて、辺りを見渡す。
早朝の日差しが差し込む広場は静かで、本来物音ひとつたつ事はない。
だからもし、彼女に何かが聞こえたとしたら、それは彼女以外の『誰か』がたてたものであって。
早朝の日差しが差し込む広場は静かで、本来物音ひとつたつ事はない。
だからもし、彼女に何かが聞こえたとしたら、それは彼女以外の『誰か』がたてたものであって。
(誰か……来る……?)
そんな彼女の元に、物音は断続的に鳴っていく。
気のせいなんかじゃない。確かに、誰かいる。しかも、こちらに近づいてきている。
それが一体誰か。そこまでは、分からない。
きっと、ロコと同じ境遇に立たされた仲間のうちの誰かなのだろう。
だからこそ、ロコは恐怖で身が固まっていた。
気のせいなんかじゃない。確かに、誰かいる。しかも、こちらに近づいてきている。
それが一体誰か。そこまでは、分からない。
きっと、ロコと同じ境遇に立たされた仲間のうちの誰かなのだろう。
だからこそ、ロコは恐怖で身が固まっていた。
彼女だって、仲間の事を信用していないわけじゃない。
今まで素直に言えた事はあまりなかったけど、いつも助けられたし、励まされた。
彼女達と過ごす日常は、とても楽しかった。
ロコにとって、他の49人も確かになくてはならない、大切な人達だった。
今まで素直に言えた事はあまりなかったけど、いつも助けられたし、励まされた。
彼女達と過ごす日常は、とても楽しかった。
ロコにとって、他の49人も確かになくてはならない、大切な人達だった。
だが、それはあくまで日常での話で。
ここはもう、今までと同じ場所なんかじゃない。いつ、どこで自分の命が奪われるか分からない世界。
そんな状況で、皆が今までと同じ保証はあるだろうか。ロコは、胸を張ってそうだと思う事が出来なかった。
かつての仲間に、殺されてしまうかもしれない。その可能性が否定できずにいて、彼女は怯えていた。
ここはもう、今までと同じ場所なんかじゃない。いつ、どこで自分の命が奪われるか分からない世界。
そんな状況で、皆が今までと同じ保証はあるだろうか。ロコは、胸を張ってそうだと思う事が出来なかった。
かつての仲間に、殺されてしまうかもしれない。その可能性が否定できずにいて、彼女は怯えていた。
そんなロコの存在などいざ知らず、近づいてくる物音。
隠れなきゃ。そう思っても、体が言う事を聞かない。
ただ焦りだけが増幅され、それでも足が動かずに。
隠れなきゃ。そう思っても、体が言う事を聞かない。
ただ焦りだけが増幅され、それでも足が動かずに。
「ひっ……!」
「あ……っ」
「あ……っ」
彼女達は、邂逅した。
「……ロコ、ちゃん?」
自身の名を呼ぶその少女の事を、ロコは知っていた。
妖美と表すにふさわしい、派手な容姿。でも、その性格は臆病で、人見知りで恥ずかしがり屋な少女。
その名は、篠宮可憐と言った。ロコとは特別深い仲だったわけではないが、同じ仲間であることは、確かだった。
妖美と表すにふさわしい、派手な容姿。でも、その性格は臆病で、人見知りで恥ずかしがり屋な少女。
その名は、篠宮可憐と言った。ロコとは特別深い仲だったわけではないが、同じ仲間であることは、確かだった。
「か、カレン………」
すがるような目で、彼女を見つめる。
何も信じられない。でも、何かにすがりたい。
1人は嫌だ。でも、誰かに襲われるのも嫌だ。
矛盾した二つの心は、ただ純粋に助けを求めていていて。
ロコの知っている可憐は、優しくて、いつも誰かを気遣っていた筈だから。
今はただ、その優しさがほしい。
大丈夫だって言ってほしい。少しでも、守ってほしい。
ただ一緒に悩んで、哀しんでくれるだけでも、救われる。それだけで、いい。
何も信じられない。でも、何かにすがりたい。
1人は嫌だ。でも、誰かに襲われるのも嫌だ。
矛盾した二つの心は、ただ純粋に助けを求めていていて。
ロコの知っている可憐は、優しくて、いつも誰かを気遣っていた筈だから。
今はただ、その優しさがほしい。
大丈夫だって言ってほしい。少しでも、守ってほしい。
ただ一緒に悩んで、哀しんでくれるだけでも、救われる。それだけで、いい。
そう願った彼女に差し出された手は。
救いの手でも、何でもなく。
「………ごめん、ね」
ただ、『現実』を突き付けられただけだった。
「―――え」
それが、『何か』を理解するより先に、轟音が広場に響く。
少し遅れて右腕に走った、熱い痛み。
理解が、追い付かない。ロコは混乱しながらも、痛みのする場所を見る。
血が、溢れ出ていた。何かが、右腕の肉を抉り取っていた。
少し遅れて右腕に走った、熱い痛み。
理解が、追い付かない。ロコは混乱しながらも、痛みのする場所を見る。
血が、溢れ出ていた。何かが、右腕の肉を抉り取っていた。
「ぇ……あれ、なんで」
「ごめんね、ロコちゃん」
「ごめんね、ロコちゃん」
痛みと恐怖で錯乱するロコに、可憐は口を開く。
その瞳は哀しく――でも、まっすぐに見つめていて。
その瞳は哀しく――でも、まっすぐに見つめていて。
「次は、ちゃんと当てるから……!」
その『銃口』を、こちらへ向けていて。
震えた声は確かに、少女の非情な覚悟を表していた。
震えた声は確かに、少女の非情な覚悟を表していた。
「あ……い、いや、やだ! いやっ、助けて!」
告げられた残酷な現実。そして、目を背けられない痛み。
今、自身が命の危機に晒されていると言う事を知って。
そして、『また』裏切られた。その事実に直面して、もう平常心は残っていなかった。
ただ子供が駄々をこねるように、抵抗にならない抵抗をすることしか、できない。
今、自身が命の危機に晒されていると言う事を知って。
そして、『また』裏切られた。その事実に直面して、もう平常心は残っていなかった。
ただ子供が駄々をこねるように、抵抗にならない抵抗をすることしか、できない。
「う、動かないで……!」
そんな彼女の姿を、両手で構えた銃でとらえる。
不慣れな銃では、一撃で仕留める事が出来なかった。
痛みと恐怖で狂乱する彼女を見ても、可憐の意思は揺らがない。
その銃口は、変わらずに狙いをつけていて―――そして。
不慣れな銃では、一撃で仕留める事が出来なかった。
痛みと恐怖で狂乱する彼女を見ても、可憐の意思は揺らがない。
その銃口は、変わらずに狙いをつけていて―――そして。
「やだ……いや、やめっ、死にたく、な…い、あああああああああああああ!!」
やがて、彼女の心に限界が訪れる。
* * *
「………はぁ」
あれから、少しだけ時間が経って。
キャンプ場の中心で、可憐は小さくため息をついた。
キャンプ場の中心で、可憐は小さくため息をついた。
結果から言えば、可憐はロコを殺す事ができなかった。
限界を迎えた彼女が起こした行動。それはなんという事はない、ただ逃げるだけだった。
死にたくないという本能が、怯えて動かなかった体を突き動かして。
限界を迎えた彼女が起こした行動。それはなんという事はない、ただ逃げるだけだった。
死にたくないという本能が、怯えて動かなかった体を突き動かして。
その突然の行動に対し、可憐は追おうとし、しかしそれは叶わなかった。
一歩踏み出そうとした彼女の足は何かに引っかかり、盛大に倒れたのだ。
整備されていない道は容赦なく可憐の体を痛めつけ、暫く痛みにうずくまり。
そして顔を上げた時には……もう、狙った者の姿はなかった。
一歩踏み出そうとした彼女の足は何かに引っかかり、盛大に倒れたのだ。
整備されていない道は容赦なく可憐の体を痛めつけ、暫く痛みにうずくまり。
そして顔を上げた時には……もう、狙った者の姿はなかった。
「はぁー………ふぅ」
殺すことが、できなかった。その事実に、可憐はまた何度目かのため息をつく。
それが自分を落ち着かせるものか、あるいは安堵によるものなのか。彼女自身にも、それは分からない。
それが自分を落ち着かせるものか、あるいは安堵によるものなのか。彼女自身にも、それは分からない。
深呼吸をして、自分が持っていた銃を見つめる。
彼女も、決して平常心とは言えない。その精神は、追い込まれていた。
篠宮可憐―――本来なら、虫一匹も殺せないような少女。
そんな彼女が、殺人を決意する。かつての仲間を殺す。
その弱い心は、今にも押しつぶされそうになっていた。
彼女も、決して平常心とは言えない。その精神は、追い込まれていた。
篠宮可憐―――本来なら、虫一匹も殺せないような少女。
そんな彼女が、殺人を決意する。かつての仲間を殺す。
その弱い心は、今にも押しつぶされそうになっていた。
(できるの、かな……ううん、やらなくちゃ……)
それでも、彼女はその道を歩む事をやめなかった。
弱気で、いつも一歩を踏み出せなかった可憐。
そんな彼女に、自信を与えてくれた人。その人が言った、たった一つの指示。
それが、どれだけ間違っていると知っていても、やってはいけない事と知っていても。
いつだって、彼女の事を後押ししてくれたのは『プロデューサー』だったから。
だから、言われた通りに殺し合いに乗る道を進む。他の皆を、切り捨ててでも。
弱気で、いつも一歩を踏み出せなかった可憐。
そんな彼女に、自信を与えてくれた人。その人が言った、たった一つの指示。
それが、どれだけ間違っていると知っていても、やってはいけない事と知っていても。
いつだって、彼女の事を後押ししてくれたのは『プロデューサー』だったから。
だから、言われた通りに殺し合いに乗る道を進む。他の皆を、切り捨ててでも。
「わ、私……頑張りますから。見ていてください……プロデューサー、さん」
空を見上げ、どこにいるかも分からないプロデューサーへ。
不器用な想いは、少女をどこまでも苦しめて。
不器用な想いは、少女をどこまでも苦しめて。
それでも彼女は、優しさの残り香を追ってゆく。
それしか、彼女は選べなかったから。
【一日目/朝/E-5】
【篠宮可憐】
[状態]健康
[装備] グロック19(14/15)
[所持品]支給品一式、予備マガジン×3、ランダム支給品(0~1)
[思考・行動]
基本:殺し合いに乗る
1:逃がしたロコを捜索しつつ、他の参加者も探す
[状態]健康
[装備] グロック19(14/15)
[所持品]支給品一式、予備マガジン×3、ランダム支給品(0~1)
[思考・行動]
基本:殺し合いに乗る
1:逃がしたロコを捜索しつつ、他の参加者も探す
* * *
息を切らし、走り続けて。
ただただ逃げ続けた少女は、やがて足を止めた。
後ろを振り向いても、誰もいない。
どうやら、逃げ切れたようだった。
それを理解すると同時に、崩れ落ちるようにひざをついた。
ただただ逃げ続けた少女は、やがて足を止めた。
後ろを振り向いても、誰もいない。
どうやら、逃げ切れたようだった。
それを理解すると同時に、崩れ落ちるようにひざをついた。
「………っ」
冷静になって、段々と現状を理解し始める。
ロコは、殺されかけた。それは、未だに痛む腕が証明している。
それも、かつての仲間に。よりにもよって、あの消極的な筈の少女に。
結局、そんなものだった。築いてきたものなんて、漠然としたものであって。
殺し合いとなれば、誰だって命が惜しい。だから、かつての仲間だって殺す。
ロコは、殺されかけた。それは、未だに痛む腕が証明している。
それも、かつての仲間に。よりにもよって、あの消極的な筈の少女に。
結局、そんなものだった。築いてきたものなんて、漠然としたものであって。
殺し合いとなれば、誰だって命が惜しい。だから、かつての仲間だって殺す。
「……ぅ、あ……うぅぅ………!」
ぽろぽろと、涙が溢れ出す。
嫌でも、実感してしまう。もう、あの時には戻れない事を。
もう、誰も自分の事を見てはくれない。誰も、自分の事を助けてくれない。
今この世界で、彼女はひとりぼっち。
いつか感じていた孤独が、彼女の心を苛んでいく。
嫌でも、実感してしまう。もう、あの時には戻れない事を。
もう、誰も自分の事を見てはくれない。誰も、自分の事を助けてくれない。
今この世界で、彼女はひとりぼっち。
いつか感じていた孤独が、彼女の心を苛んでいく。
「やだ……嫌だよ………誰か……」
幼い彼女が、1人に耐えられる筈もなくて。
それでも、助けてくれる人も信頼できる人も、もういない。
その重荷は、少女の心を壊していく。
それでも、助けてくれる人も信頼できる人も、もういない。
その重荷は、少女の心を壊していく。
震えるその腕を掴める『誰か』は、未だ現れず。
【伴田路子】
[状態]右腕に傷、錯乱
[装備] なし
[所持品]支給品一式、ランダム支給品(1~2)
[思考・行動]
基本:???
1:誰か、助けて
[状態]右腕に傷、錯乱
[装備] なし
[所持品]支給品一式、ランダム支給品(1~2)
[思考・行動]
基本:???
1:誰か、助けて
| Day dream believer | 時系列順に読む | Getaway |
|---|---|---|
| Day dream believer | 投下順に読む | Getaway |
| GAME START! | 篠宮可憐 | Lion Heart |
| GAME START! | 伴田路子 | エスケープフロムディストピア |