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The hop, step, and……?

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The hop, step, and……?




「うーん……」

見渡す限りの平原。朝の優しい日差しが照らし、涼しい風が吹く。
そんな世界を縦断する道の上で、1人の女性が俯いていた。

「………」

俯いて見えるのは、足元すら見えない程に豊満な、自身の胸。
本人としては正統派なアイドルを目指したいのに、いつもお色気系とかセクシー系ばかり持ってこられる、おそらくその原因。
贅沢な悩みだが、少しぐらい縮んでくれてもいいのにとさえ、思ったこともある。
それもまた彼女にとって憂鬱なものではあったが、今はそれ以上に彼女の心に影を落としている事があった。

「殺し合い……なんて、できるわけないですよ……」

ぽつりとつぶやいた単語は、ひどく不穏で、現実離れしている。
しかし、風花にはそれを冗談だという事ができないでいた。
あの場所で、社長はあっさりと殺されて。
そして、間接的とはいえそれを実行したのはプロデューサーだ。
そんなの、ありえない。信じられるはずがない。
でも、あの人はこんなことを冗談でもする人じゃなかったから。だからこそ、もう現実を否定することができなかった。

「……プロデューサーさん。一体、どうして……」

風花にとって、その人はとても優しい人だったはずだ。
自分が嫌だと言った衣装を、毎回なし崩し的に着せられた記憶ばかりがよぎるが。
それでも、プロデューサーは確かに皆の事を思って頑張っていた、と、思う。
……よぎる思い出が恥ずかしい事ばかりなのも、今考えれば笑い話だろうし。
だが、今回は違う。たった1人しか生き残れない。正真正銘の殺し合い。
そこに、優しさなんて微塵もない。

彼が、一体何を思ってこんなことをしたのか、分かるはずもない。
今までの思い出が、嘘だったのかのように崩れ落ちていく。
楽しかった事も、苦しくても頑張った事も、あんな衝撃の前では、ひどく脆い。

「……はぁ、どうしよう」

豊川風花は、迷っていた。
殺し合いなんて、できるはずがない。
しかし、無理だ無理だと駄々をこねてどうにかなると思えるほど、彼女も子供ではない。

ぎゅっと、手を強く握る。
その手に強く握られていたのは、小さな、しかし鋭いアイスピック。
こんなモノでも、その気になればきっと人は殺せるのだろう。
かつての仲間達を、プロデューサーの言われた通りに殺す。そんな事、悪夢以外のなにものでもない。
でも、他の皆が殺し合いに乗らないとは限らないのだ。殺さなければ、殺される……かも、知れない。

アイスピックの先が、怪しく光ったように感じた。
決意しなければ、ならないのだろうか。彼女がごくりと喉を鳴らして。


たたた……と、何かが駆け寄る音。


「……?」

そんな思考にふけっていた彼女に、物音が届く。
気付いた後には、その音は段々と大きくなり、力強さも増していき。
何だろう、と。その方向へ振り向いて。


「ふうかーーーーーーっ!!」
「きゃあっ!?」


強烈な一撃を受けた。


「いっ、たあ……」
「ひぐっ、ぐすっ…………うわぁぁぁぁん!」

どすん、とその勢いのままに尻もちをつく。
痛みに悶える風花の事を全く気にせず、突撃してきた少女はその胸の中で泣きじゃくる。
彼女の事を、風花は知っていた。この場所にいたのは、同じ事務所の仲間だったから。

「……環ちゃん? ど、どうしたの!?」

それを認識して、風花は困惑する。
好奇心旺盛で、いつも元気に頑張っていた女の子――大神環
そんな彼女が、今まで見せた事のない程の勢いで泣いている。
彼女の身に何か、起きてしまったのだろうか。そんな悪い予感がよぎって、心配しない筈がない。

「うえぇ……ふうか、ふうかぁ……!」

その答えは返ってこなかったものの、胸の中で無防備に泣き続けている彼女の姿で、なんとなく察してきた。
見たところ、彼女に目に見えるような怪我があるわけではなく、何か危機が迫っているわけでもない。
その涙は、どちらかといえば安堵によるものにも感じられる。

見知らぬ場所でたった一人で投げ出され、右も左も分からず、殺し合いをしろなんて言われて。
ましてや、まだ小学校すら卒業していないような少女だ。その不安は、風花の比ではないだろう。
この環境は、彼女にはあまりにも酷であった。

「……怖かったのね。もう、大丈夫だからね」

彼女が自身を見つけて、感極まったのか。
胸の内にいる彼女が、ほんの少しでも安心してくれたのだろうか。
それなら、よかった――そう思って、今はただ彼女を優しく、しっかりと抱きしめ返していた。


    *    *    *



「環ちゃん、少しは落ち着けた?」
「……うん」

胸の内で泣きじゃくってから、少し時間が経って。
大神環は、だいぶ落ち着きを取り戻したようだった。
しかし、その表情は浮かない。
当然だろう。状況が何か良くなったわけでもなく、彼女達の先の見えない不安は一向に晴れていない。

「………ねぇ、ふうか」

そして、何より。その不安を大きくしていたのは。

「おやぶん……たまき達のこと、きらいになっちゃったのかな……?」

脳裏に浮かぶ、1人の男性の事であった。

「………ッ」

彼女がおやぶんと呼ぶ人物。それは、彼女達のプロデューサーの事だ。
ただ、環にとってその人物は、ただ『プロデューサー』という括りに収まるものではない。
いつも仲良く乗ってくれる『遊び相手』でもあり、困った時に頼りになってくれる『保護者』でもあり。
彼女の中で、その男性は確かに大切な存在となっていた筈だ。

しかし、その人物はあっさりと彼女達を見放してしまった。
その事で彼女が受けたショックはきっと、並大抵のものではなかったはずだ。
まだ幼い少女が背負うには、重すぎる哀しみ。
そして彼女だけではなく、多くの仲間達が同じような感情に苦しまされているのだろう。

「大丈夫よ、環ちゃん」

なら、大人である自分が泣き言をいっている暇はない。
そう決意して、彼女の頭を優しくなでる。
プロデューサーの事は、未だに何も分かっていない。
あれが本性で、今まで見せてきたものが全て紛い物だったと言われればそれまでなのだろう。

ただ、それでも。
それでも、彼女にはまだ見限る事ができない。あの思い出が、嘘だと思う事ができない。

「きっと、プロデューサーさんも皆にも、また会えるから」

今の自分に何ができるかなんて、まったくわからない。
でも……だからこそ、みんなを信じる事だけはあきらめたくない。
仲間と――大切な人達と共に過ごした時間を、ただ『嘘』の一言で片づけたくなかった。

「環ちゃん、一緒に皆を探しに行きましょう」

だから、みんなを探しにいく。
プロデューサーにすこしでも、あの時の思い出と同じ気持ちがあるなら。
またもう一度、その手を掴めるはず。
皆で一緒に、戻れるはずだから。

「………うんっ!」

環は涙を拭って、笑顔でうなずく。
夢物語、なのかもしれない。
大人としてあるまじき、ただ幻想に逃げているだけなのかもしれない。
ただ、そもそもアイドルはそういうものなんじゃないかなとも、風花は思う。
沢山の人に、夢を与える。だったら、今も希望へ向かって進んでいくのがきっと『アイドル』なのだろう。
こんな世界でも、私達は希望であり続けたい。

(……なんて、大層な考えでしょうか。プロデューサーさん)

環の手を握り、彼女は想いを馳せる。
不本意な事もたくさんやられたけど、それ以上に恩義も、それ以上の想いもある大切な人。

(私に色々やっておいて、こんなお別れではすみませんからね……!)

となれば、これはある意味で『復讐』でもあるのかもしれない。
今までのアイドル活動で随分と好き勝手させられたのだ。だったら、今度はこっちが好き勝手させてもらおう。
こんなルールになんて、従ってやるものか、と。
そう思って、今までの彼女からは考えづらいような不敵な笑みを浮かべて、空を見上げる。
その瞳に、先ほどまでの迷いはない。
先の見えない、険しい道になるだろう。それでも、進むと決めた。
同じ場所にいる、仲間達の為。そして、自分の気持ちの為に。

「ふうか! はやくいこうよー!」
「もうあんなところまで……待ってて、今行くから!」

いつの間にやら道の向こうにまで駆けていった環を追い、風花は歩き出す。
子供の想いを、その胸に受けて。1人の大人は、この過酷な現実へ立ち上がった。


【一日目/朝/C-2】

【豊川風花】
[状態]健康
[装備] アイスピック
[所持品]支給品一式、ランダム支給品(0~1)
[思考・行動]
基本:皆を信じて、このイベントに立ち向かう。
1:まずは仲間を探す。


【大神環】
[状態]健康
[装備] なし
[所持品]支給品一式、ランダム支給品(1~2)
[思考・行動]
基本:豊川風花についていく。
1:まずは仲間を探す。


【アイスピック】
氷を割る為の調理器具。刑事ドラマ等で凶器として使われる事もある。
サイズは小さいものの鋭いため、力を入れれば人体にも刺さる。
急所を狙えば命を奪う事も不可能ではない、立派な武器。


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