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貴方の想いに救いを

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貴方の想いに救いを


いやぁ、茜ちゃんも災難だね。
だってだって起きたらなんと殺し合いだよコ・ロ・シ・ア・イ!
どう考えても現代の発想じゃないよね。
何年前の発想だよって話だよね殺しあってもらいますって。
しかも警察とか発展してるこの現代でだよ?
流石の茜ちゃんもそんな中でそんな事を成功させようとか思わないよ。
というかそもそも殺し合いなんか開かないし。
そんな殺し合いしてる暇があったらね、プリン食べてるよ。
だってそっちの方が誰も悲しくないし茜ちゃんはハッピーだし最高じゃん。
周りは不幸じゃない、茜ちゃんは幸せ! 一石二鳥だよ!

「……本当にさぁ」

プロちゃんは一体何を考えたんだろうね。
あんなに、皆をアイドルとして輝かせるために頑張ってたのに。
それは茜ちゃんだって認めてるんだよ。
というより、否定出来る人は絶対にいない。
1人で50人分のスケジュールを管理して、仕事を取ってくる。
そんな事出来る人がそうそういるわけがない。
すっごくすっごく仕事熱心だったのにさ。
なんというか、信じたくないよね。
信じられないじゃなくて、信じたくない。
そこにどういう差があるとかどうこうじゃないんだよ。
茜ちゃんとしては、信じたくないから。
だからこそ信じたくないに尽きるんだよね。

「プロちゃんはさ」

だから、きっとこれにも理由があるんだって。
そうやって言い聞かせるしかないのかもなーって思うしー。
でもね、一つだけというか言いたいことがあるんだよね。
そりゃあそうだよ、こういう状況になって一言も文句ない人がいるわけないよ。
流石の茜ちゃんであっても言いたいことの一つや二つや十つもあるよ。
というか百個まで行くかもしれないよ。

で、まぁ言いたいことって言って結局言えてないね。
流石に茜ちゃんも空気を読むとするよ。
茜ちゃんだって空気くらいは読むよ。
そこら辺はわきまえてるつもりだしね。
それじゃあ言うとするよ。



「茜ちゃんを怒らせたって、わかってないのかな」



そう、茜ちゃんはすごく怒ってるんだよ。
自分が危険な目に遭ってるってのもあるけどさ。
それだけじゃあないんだよ。
シアターの全員を危険な目に遭わせているんだよ。
そりゃあ怒るよ、仏も一度で怒るレベルって奴。
仏より懐が深い茜ちゃんも怒ってるんだから当然だよね。
激おこぷんぷん丸だね、いや……激オコスティックファイナリアリティぷんぷんドリームだから。
仏さんが激オコスティックファイナリアリティぷんぷんドリームなんだよ。
それは異常事態だよ、それくらいだって事だよ。

「ま、そういう事だけどさ……殺し合いってナンセンスというかセンスがおかしいよね本当さ……。
 あまりにもセンスがひどいと人も離れてっちゃうよ?」

まぁ、センスがどうこうと批判した所でもう関係はないんだけどさ。
プロちゃんは、茜ちゃんが知ってるプロちゃんじゃなくなった。
理由があるのかもしれないけど、プロちゃんはよほど何かがあっても折れる人じゃないから。
そこだけは茜ちゃんが太鼓判を押すよ。

「……ま、とりあえず……動くとしますかな」

このまま色々言ってても何も変わらないし。
動いて誰かと会えればきっとなんとかなるだろうからさ。
流石に茜ちゃん一人で全部解決とかできないからね。
誰かと協力するってのはすっごく大事だよ。

一人って言うのは、怖いからね。
赤信号みんなで渡れば怖くないとかっていうでしょ?
え、言わない?
そっか言わないか……じゃあこれから言うようにしよう。
茜ちゃんが言った言葉は流行らなくちゃいけないからね。

「……ん」

おやおやおやおや、そんなこんなでやってたら少し遠くになんか見えるね。
観覧車にしか見えないものとか空中に浮いてるレールみたいなものとか。
誰がどう見ても遊園地としか言えないような物があるね。
というか実際遊園地だね。

本当だったら遊びたいってねだるところなんだけどね。
今はそうも言ってられないのが残念だよね。
というか今動いてなさそうだし。
そういうところケチケチするって茜ちゃん的にはどうかと思うよね。
プロちゃんの駄目な所はそういうところだよ。

「……まぁ、とにかく行ってみよっかな! 茜ちゃんを待っている声が聞こえる気がするからね!」

誰もいないにしても、遊園地なら道具か何か探せばありそうだし。
行くだけ損はないよね、うん。
ちょっと遊べる可能性があるかもとかは思ってないよ。

――――さすがに、そんな状況じゃないからね。



◆       ◆       ◆



遊園地に行こう、そう思考を固めて数分後だった。
その予定ははかなくも崩れることになる。
別に茜ちゃんは死ぬわけじゃないけどね。
ただ、そこに向かってる途中で人がいたから。
それに尽きるんだよね、うん。

「……このみちゃん」

座っていたのは馬場このみだった。
顔を隠し、泣いているような。
そんな感じに見えた。
こんな道中で座って泣く、というのはかなり異質な行動である。
流石の茜ちゃんもそこまではしないかなとは思う。
だが、茜ちゃんよりもずっと大人である、長く生きてきた彼女が今泣いているのだ。

「このみちゃん、どしたの?」

声をかけても、返事が返ってこない。
寝ているという訳でもないし、ましてや死んでいるわけでもない。
返答する余裕がない、と言った所なのかもしれないね。

でもだからといってこのまま、はいそうですかと言う茜ちゃんじゃないよ。
それにこのまま放置しておいたらどうなるかわからないから。
信じてはいるけど、万が一誰かが殺し合いに乗ってたりなんかしたら。
その時は、こんなこのみちゃんなんか一発で殺せてしまう。
それがわかってて放置ってなんて酷い気もするよね。
うんうん、可愛くて優しい茜ちゃんが一肌脱ぐしかないようだね。
一肌脱ぐって言ってもエッチぃ意味じゃないよ?
期待してる人もいるかもしれないけど茜ちゃんは清純派だから無理だね☆

いやそれは置いておくとしようかな。
とりあえず遊園地にまでこのみちゃんを連れて行くとしよう。
このみちゃんはまだ軽い方だから時間はかかるけど多分大丈夫だろうね。

「このみちゃん、ちょっと我慢しててね」

抱きかかえてなんとか背中に乗っける。
あぁ、やっぱり重いなぁ。
茜ちゃんもそんなに力があるわけじゃないからね。

「……ねぇ、このみちゃん」

ふと声をかけたが、返事はまたない。
さっきからずっと、黙ったままである。
この沈黙が思った以上に重いものなのだ。
いつもなら、どんなことでも楽しく反応してくれるのがこのみちゃんだった。
そんな彼女が今、こんな状態になっている。

「このみちゃん、勝手に茜ちゃんは喋らせてもらうね」

「前も言ったと思うけどさ、このみちゃんさ――――茜ちゃんに頼ってくれてもいいんだよ?」

「このみちゃんはすっごくしっかりしてる、茜ちゃんにはそんな真似は出来ないってくらいにさ」

「そういうところはすごいって思うよ、真似しようとは思わないけどさ」

「でも、全部全部一人で背負いこもうとする」

「あのライブの時もそうだったよね、昴ちゃんに対してさ」

「一人で背負いこんで、落ち込んで、潰れそうになって」

「このみちゃんはさ、そういう所があるよね、本当」

「聞いてくれてなくてもいいけど、聞いてたら覚えておいてほしいな」

「……あのさ」





「茜ちゃんを、皆を、もっと信用して話してほしいよ」





「それでも言えないって言うのなら仕方ないね」

「黙秘権の行使って言葉が世の中にははびこっちゃってるからね!」

「茜ちゃんが頑張ればそんな権利なくせるけどここは世間の風潮に大人しく埋もれてあげないとね」

「……さてと、遊園地についたよこのみちゃん」

「とりあえず、フードコートにでもいこっか」

「ここは茜ちゃんが何でも奢っちゃうよ! え? 人がいないだろうから奢るも何もないって?」

「そこに自分で気づいて言っちゃう茜ちゃんって嘘がつけないいい子だね!」



それでも、このみちゃんは、喋らない。



◆       ◆       ◆



フードコートは予想通り人がいなかった。
店は開いているがもぬけの殻と言ったような。
このみちゃんを席のうちの一つに座らせて適当に冷蔵庫を覗く。
ジュースや料理の材料がぎっしりと言った所だった。

「……んー」

正直言ってあまり今お腹は減っていない。
一応ジュースを持ってくくらいにしておこうか。
このみちゃん的にはお酒とかの方が良いかもしれないけど、こういう場所だしね。
流石にわきまえるってやつだよ。

ジュースを持って席に戻ると、相変わらずこのみちゃんが下を向きながら黙り込んでいた。
ちゃんと顔が見れていないけど、目は虚ろになっている。

どうしてこうなったとか教えてくれればいいけれど、期待は出来そうもない。
今茜ちゃんが出来ることは、そんなにない。
いくら悔しがっても、それはどうしようもない事だから。
無理やり聞き出していいような状態出ない事もわかっている。

ただ一言、それが欲しかった。
このままいても状況は進まない。
むしろ悪化するかもしれない。
少なくとも、いい方向に行くとは思えない。
いや、いい方向に行くことはないだろう。

「……」

だが、沈黙は終わらない。
流石にこれ以上喋り散らしても期待は薄そうである。
基本的に反応があるからこそ喋れるのであって、ここまで無言だと逆に辛くなる。

「……あ」

などと考えていたら、いつの間にかジュースがなくなってしまった。
コップになみなみに入れてきたはずなのだが、いつの間にかなくなっていた。

このまま、時間を潰していていいのだろうか。
このみちゃんを放っておけないのは当然である。
だが、このままいてもなにもできない。

最初に横に置いてあった鞄の中身を探る。
何かいいものでもあればいいのだが。
そう思いながら探っていると、手に何か固いものが触れた。
それを取り出す、無線機……トランシーバーというのか。
それが1セット出てきた。

「……そうだ」

このみちゃんの目の前にそれを置く。
視線が一瞬そのトランシーバーに移ったような気がする。
だが、一向に表情は変わる様子がない。


「ごめんねこのみちゃん、今の茜ちゃんじゃ力不足かもしれない
 だから、他の皆を探して必ず戻ってくるから……それ持ってて
 茜ちゃんに何かあったらすぐに知らせるんだよ! 絶対だよ! フリじゃないからね!」


相変わらず反応はないが、聞こえてはいるだろう。
今はどうしようもないけど、時間が経てばきっとこのみちゃんも落ち着くはずだ。
その時に全部聞けばいい、焦る必要はない。

もし誰かが殺し合いに乗ってて来たら、と考えたら怖いけれどね。
それでも、何もしないで座っていても同じだ。
だったら、状況を変えるために動くしかない。

「……このみちゃん、茜ちゃんがすぐに飛んでくる……までは行かないかもだけど、来るからさ
 だから、それ持ってて、お願い」

それを最後に、場を離れることにした。
このみちゃんは、結局一言も話してはくれなかった。



◆       ◆       ◆



悔しくないかと言ったら嘘になる。
このみちゃんを支えてあげることが出来なかったのだから。

「……このみちゃん」

だが、これで落ち込んでは同じだ。
今は駄目でも、いつかなんとかなる。
プロちゃんを止めて、みんなで帰る。
そのためには、やらなくちゃいけないことが多い。

「不安なんかない、茜ちゃんは……いつも通りいくだけだよ」

でも、いつも通りでいく。
それが野々原茜だから。
それを否定だけは、したくなかったから。


【一日目/朝/H-1遊園地付近】

【野々原茜】
[状態]健康
[装備]
[所持品]支給品一式、トランシーバー、ランダム支給品(0~1)
[思考・行動]
1:プロちゃんを止める、いつも通りの野々原茜でいる
2:皆を探す、そしてこのみちゃんを迎えに行く




◆       ◆       ◆




嬉しくないと言えば嘘になる。
茜ちゃんの優しさは感じていた。
それでも、『想い』が『重すぎた』のだ。

「……本当に、さ」

情けないと自分でも思う。
お姉さん面をしていたあの頃の自分はどこに行ったのやら。

「……私って、本当……なんでこうなんだろうなぁ」

涙が出てくる。
茜ちゃんが頑張ってくれていたのに。
私は何もできなかったししなかった。
それが本当に、悔しくてたまらない。
でも、あの場で茜ちゃんに言いたくなかったのだ。

「……あ」

トランシーバの横に、ジュースが置いてあった。
茜ちゃんが持ってきてくれたのだろう。
それに手を伸ばし、一口飲む。
良くあるオレンジジュースだった。
だけれど、何故か、それがすごく甘かった。
美味しかった、嬉しかった。
ここに来て初めて、誰かの優しさに触れれた気がした。

「……」

今の自分が本当に滑稽に見えた。
こんな姿を昴ちゃんが見たらどう思うだろうか。
あの子なら、一緒に立ち上がろうと言ってくれるかもしれない。
でも、私からしたら情けないと思う。

プロデューサーの意図も、なにもわからない。
だけど、このままいても何もできない。
彼を信じることも、できない。

私をここまで導いてくれた彼を信じることも、疑う事も、何もできない。
ただ、想いに縛られるだけなのは嫌だ。

「――――乗り越えなきゃ」

茜ちゃんにもらった勇気しかないけど。
少しでも、前に進まなくてはいけない。
乗り越えなくてはいけない。

ただ、今は……落ち着く時間が欲しかった。

【一日目/朝/H-1遊園地フードコート】

【馬場このみ】
[状態]健康
[装備]
[所持品]支給品一式、トランシーバー、ランダム支給品(1~2)
[思考・行動]
1:彼への『想い』を乗り越えたい
2:でも今は、落ち着く時間が欲しい


【トランシーバー】
野々原茜に支給
携帯型の無線機である
2つで1組となっていて、それぞれの機体で周波数が固定されている
そのため他の無線機と交信するなどはできない


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