人外と人間
虫さんと女の子 非エロ・ほのぼの
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虫さんと女の子 1-883様
「あったけー……人間ってホント羨ましい……」
甘えてくる猫のようにすりすりと擦り寄る私の恋人。
私の手を握る手があまりにも冷たく、びっくりして小さく「うわ」と声を上げる。
私の手を握る手があまりにも冷たく、びっくりして小さく「うわ」と声を上げる。
「手袋、買ったら?」
「手袋なんて買ったら、お前にもう二度と手を温めてもらえないだろ」
「手袋なんて買ったら、お前にもう二度と手を温めてもらえないだろ」
こんなこっ恥ずかしい台詞を素面で言うこの男、先の言葉からわかる通り、普通の人間ではない。
私も詳しくは知らないが、昆虫に限りなく近い人型の種族だそうだ。
黒いダイヤモンドみたいな眼がじっと私を見ている。
それと恥ずかしい台詞とのコンボ攻撃でつい視線を逸らしてしまう。
私も詳しくは知らないが、昆虫に限りなく近い人型の種族だそうだ。
黒いダイヤモンドみたいな眼がじっと私を見ている。
それと恥ずかしい台詞とのコンボ攻撃でつい視線を逸らしてしまう。
「そんな恥ずかしいこと、言わないでよ……」
「え、何で?」
「何でって……こっちが照れるからでしょ!」
「え、何で?」
「何でって……こっちが照れるからでしょ!」
きょとんと私を見る顔が可愛いな、……なんて思わないようにしている。
もしかしたらわかっててからかっているのかもしれない。元の生物の性質上、表情がないので何を考えているのかわからないから。
付き合い始めの頃はよくからかわれ、恥ずかしい思いをしたものだ。
もしかしたらわかっててからかっているのかもしれない。元の生物の性質上、表情がないので何を考えているのかわからないから。
付き合い始めの頃はよくからかわれ、恥ずかしい思いをしたものだ。
「よくわからんが……まあとにかく、お前は温くてホントに最高だよ。
ま、それしかいいところないし」
「……私の魅力はそれだけなんかい!」
ま、それしかいいところないし」
「……私の魅力はそれだけなんかい!」
思わずツッコミの平手打ちを彼の眉間の辺りに入れた。
……友人らから漫才夫婦と呼ばれ、茶化されるのは私がツッコミを入れるから。
……友人らから漫才夫婦と呼ばれ、茶化されるのは私がツッコミを入れるから。
「馬鹿、そんな訳ないだろ?
この柔らかい肌やさらさらの髪、あんなところやそんなところも好きに決まってるじゃないか!」
「ち、ちょっと!こんな大声で!恥ずかしいよ!」
この柔らかい肌やさらさらの髪、あんなところやそんなところも好きに決まってるじゃないか!」
「ち、ちょっと!こんな大声で!恥ずかしいよ!」
そして、彼がフォロー(?)を入れるので友人らからはバカップルと呼ばれ、呆れられる。
彼の顔を見るとひょこひょこ触角が揺れ、目がほんの少しだけ細められている。
笑っている。
彼の顔を見るとひょこひょこ触角が揺れ、目がほんの少しだけ細められている。
笑っている。
「もう!わざとでしょ!」
「ははは……げ、雪だ」
「ははは……げ、雪だ」
怒る私を無視し、彼は暗く閉鎖的な空を見つめる。
ふわふわと落ちてくる白いものが見えた。
ふわふわと落ちてくる白いものが見えた。
「あー、今日寒いから……。積もるかもね」
さっきのお返しにちょっと意地悪に言ってみるが、彼は何も言って来ない。
不審に思って顔を見上げると、本来ならないはずの瞼が閉じかかっていた。
うつらうつらと頭が揺れ、今にも眠たそうだ。
今思い出したが彼はとても寒さに弱く、ある一定の温度になると急激に眠くなるんだそうだ。彼いわく動物の冬眠と同じらしい。
もっとも普通の冬眠と違い、一日の内半日寝るだけでいいらしい。昆虫人間の事情はよくわからないが。
最初見た時ぴくりとも動かないから死んでしまったのかと思い、揺すりながらわんわん泣いてしまった。
……ちなみにいまだにそのことが笑い話になったりする。
不審に思って顔を見上げると、本来ならないはずの瞼が閉じかかっていた。
うつらうつらと頭が揺れ、今にも眠たそうだ。
今思い出したが彼はとても寒さに弱く、ある一定の温度になると急激に眠くなるんだそうだ。彼いわく動物の冬眠と同じらしい。
もっとも普通の冬眠と違い、一日の内半日寝るだけでいいらしい。昆虫人間の事情はよくわからないが。
最初見た時ぴくりとも動かないから死んでしまったのかと思い、揺すりながらわんわん泣いてしまった。
……ちなみにいまだにそのことが笑い話になったりする。
「ちょっと!?こんなところで寝ないでよ?」
「ああ……と言いたいが……、ごめ、も……無理……」
「ああ……と言いたいが……、ごめ、も……無理……」
そう言って完全に瞼が閉じるのと、彼が私に体を預けたのはほぼ同時だった。
ずしりと彼の体重がかかり、足がふらつく。
私が倒れたら誰も私たちを助けてくれないだろうし、
何より真冬の公園でそのほら、えっと……勤しむカップルと間違えられかねない。
何とか根性で彼の重たい体をベンチまで引きずり、優しく座らせた。
ずしりと彼の体重がかかり、足がふらつく。
私が倒れたら誰も私たちを助けてくれないだろうし、
何より真冬の公園でそのほら、えっと……勤しむカップルと間違えられかねない。
何とか根性で彼の重たい体をベンチまで引きずり、優しく座らせた。
「全くもう……」
人の苦労も知らずぐーぐー眠る彼に悪戯でもしてやろうかと考え、止めた。
覚醒した時にお返しされるのが目に見えたから。
ため息一つついて隣に座った。
じっと彼のほうを見ていると、彼の触角が寒そうにぴくぴく震えているのに気付いた。
私は慌てて彼の手を握りしめ、息を吹き掛けて温める。
やっぱり手袋は必要なんじゃ、と考えて彼の嬉いような恥ずかしいような妙なこだわりを思い出して悩む。
……私の手づくりの手袋ならどうだろう?
私の作った手袋で温かくなるから、一応私が温めていることになるはず……。
ふと思い付いた割に中々いい考えだ。
手袋を作った時に彼がどんな反応をするのか考えながら、持っていた携帯電話でタクシー会社に電話した。
電話を切った後もいろんな反応を思い浮かべたら笑いが込み上げてきた。
隣で眠る憎たらしくも愛しい異種の恋人のこめかみに淡いキスをして、
帰ったらクリスマスまでに頑張って編まないと、と計画を立てながらタクシーが来るのを待った。
もちろん、彼の冷えた手を温めながら。
覚醒した時にお返しされるのが目に見えたから。
ため息一つついて隣に座った。
じっと彼のほうを見ていると、彼の触角が寒そうにぴくぴく震えているのに気付いた。
私は慌てて彼の手を握りしめ、息を吹き掛けて温める。
やっぱり手袋は必要なんじゃ、と考えて彼の嬉いような恥ずかしいような妙なこだわりを思い出して悩む。
……私の手づくりの手袋ならどうだろう?
私の作った手袋で温かくなるから、一応私が温めていることになるはず……。
ふと思い付いた割に中々いい考えだ。
手袋を作った時に彼がどんな反応をするのか考えながら、持っていた携帯電話でタクシー会社に電話した。
電話を切った後もいろんな反応を思い浮かべたら笑いが込み上げてきた。
隣で眠る憎たらしくも愛しい異種の恋人のこめかみに淡いキスをして、
帰ったらクリスマスまでに頑張って編まないと、と計画を立てながらタクシーが来るのを待った。
もちろん、彼の冷えた手を温めながら。
- やべえ。虫さんも女の子も可愛すぎる。 -- (名無しさん) 2009-02-14 23:34:35