小ネタ置場 一
- ザリガニさんとの年越し 1-897様
- ハロウィン小ネタ ◆IyobC7.QNk様
- 供物の娘 ◆IyobC7.QNk様
ザリガニさんとの年越し 1-897様
「はい、蜜柑あげる」
こたつでぬくぬくしている少女は蜜柑を、同じくこたつに入って紅白を熱心に観ている男に渡そうとした。
「あ……ごめん、シザーはそのハサミじゃ剥けないよね」
彼女が蜜柑を引っ込めようとすると、シザーと呼ばれた人型のザリガニがそれを止めさせた。
彼女がシザーのほうを見ると、彼は少女の手の中の蜜柑を器用に奪い取った。
呆気にとられる少女を尻目にシザーは蜜柑の皮を剥き始めた。
しかし、彼の両腕両手は攻撃的なギロチンハサミになっているため悪戦苦闘している。
このままだと蜜柑自体がミンチになってしまうと判断した少女は彼の隣に移動する。
彼女がシザーのほうを見ると、彼は少女の手の中の蜜柑を器用に奪い取った。
呆気にとられる少女を尻目にシザーは蜜柑の皮を剥き始めた。
しかし、彼の両腕両手は攻撃的なギロチンハサミになっているため悪戦苦闘している。
このままだと蜜柑自体がミンチになってしまうと判断した少女は彼の隣に移動する。
「もー!負けず嫌いなんだからー!
ほら、貸して。あたしが剥いてあげるから!」
ほら、貸して。あたしが剥いてあげるから!」
少女がそう言うとシザーは不服そうにヒゲを動かした。
彼女はそれを見て苦笑し、ゆらゆらするヒゲを撫でた。
彼女はそれを見て苦笑し、ゆらゆらするヒゲを撫でた。
「負けず嫌いなとこ、嫌いじゃないよ。
でもね、無理そうだったら無理にしなくていいから!」
でもね、無理そうだったら無理にしなくていいから!」
彼女は人の頭を簡単に潰せる大きく発達したハサミから蜜柑を取り、少し潰れた蜜柑の皮を剥き始めた。
シザーは黙ってそれを見る。
シザーは黙ってそれを見る。
「はいどーぞ、剥けたよ」
綺麗に薄皮まで剥いた蜜柑を少女は彼の口元に持っていく。
すると彼の口元から小さな管が出て、橙の蜜柑を啜る。
すると彼の口元から小さな管が出て、橙の蜜柑を啜る。
「美味しい?」
少女が小首を傾げて笑顔で尋ねるとシザーは無音で頷いた。
シザーは人型であるものの、声帯がないため声を発することができない。
しかし、通じ合う二人には言葉は不要だ。
シザーは人型であるものの、声帯がないため声を発することができない。
しかし、通じ合う二人には言葉は不要だ。
「紅白終わったら二人で初詣行こうね」
シザーは静かに頷いて彼女を抱きしめた。
(来年もこうやって二人で年越ししよう)
ハロウィン小ネタ ◆IyobC7.QNk様
今年も子供たちは仮装をして家々を巡る。お化けになりきって普段は行かない怖い人の家にも。
意気揚々と子供たちは戦果を確かめながら、それぞれ帰途についた。
ドラキュラに扮した少年が帽子いっぱいのお菓子の中からアメをひとつ取り出し口へ放り込む。
「今年もいっぱい貰えたな」
「だな」
答えたのは、自分と同じくらいの背丈のカボチャをくり抜いたお面を被った少年だった。
「……。お前誰?」
いくら考えてもこの少年の正体が分からなかった。
例え仮装をしていても、そう大きくはない村である、知らない子がいるはずなど無い。
その少年はいつの間にか彼の隣で本当に嬉しそうに袋を握りしめていた。
「あ、俺はジャック。毎年来てるんだ。お前はトーマスだよな」
少年が自分の名前を知っていたことに驚きながら曖昧に返事をする。
「え、うん。ジャックは別の村からわざわざ来てるのか、変わってるな」
「これが年一回の楽しみだからな」
「ふーん」
その言葉に少しの違和感を覚えながらドラキュラに扮した少年、トーマスはもう一つお菓子を摘んだ。
「なあ、トーマス。お前はこの話知ってるか?」
何気無い調子でジャックが始めたのは村の大人たちが子供の頃の話だった。
無愛想なきこりのおじさんと優しいパン屋のおばさんが結託して村長に仕掛けた悪戯。
気難しいおばあさんのお転婆だった頃のこと。
ジャックのまるで見てきた様に喋る大人たちの子供時代の話は面白く飽きなかった。
「今でも傷が残ってるはずだぜ。しわの下に隠れてるかも知れないけどな」
トーマスの家の近くに着く頃には村の大人たちほぼ全員の話を聞き終えていた。
「あとさ」
嬉々として喋り続けようとしたジャックを止める。
「あ。僕の家はここだから」
「そっか、じゃあ話はここまでだな。俺は、遠くから来てるから」
「ジャック、来年も来いよ」
少し悲しげな相手の声に、なんとなくトーマスは、そう言わなければならない気がした。
「ああ、また来年……」
お面であるカボチャの顔は変わらないが笑ったのかな。
そう思った瞬間、強い風が吹き抜け身に付けていたマントが視界を奪う。
「お前の母ちゃん、アニーによろしくな」
急に母親の名前を呼ばれ驚き、慌ててマント引き剥がすとカボチャの少年ジャックの姿はなかった。
「ジャック?」
呼び掛けは夜の闇に吸い込まれ消える。
「トーマス、誰か一緒にいるの?」
家の方から聞き慣れた声がした。軋んだ音に合わせて明るい光が筋になり足元を照らす。
振り返り目をこらすが、ジャックは居なかった。
「帰り道でお菓子を食べちゃダメって言ったでしょう」
「ごめんなさーい」
全く反省していない様子の息子を軽いため息と共に迎え入れる。
「あ、ねぇ、母さん。ジャックって奴を知ってる? 変わったカボチャのお面を被っててさぁ」
その名に一瞬、身体が強張る。
大人になり、彼の姿を見なくなってからも噂だけは耳にしていた。
まさか自分の子供に話をされるとは考えてもいなかった。
「あら、あなたも会ったのね。ジャックは母さんだけじゃなくて、この村のみんなを良く知ってるのよ」
しかし努めて平静を装い、お伽話をするのと同じ調子で彼の話をする。
「僕も知ってるよ。ジャックから色々聞いたもん」
息子のニッと笑った顔に、子供の頃のことが頭をよぎった。
あの事を話してなければいいけれど、と心配になる。
それは子供の頃の淡い思い出と言うには少し重すぎるし、愛と呼ぶには軽すぎた。
「そうね、トーマス。さあ、顔を洗って着替えてきなさい」
少々引きつった笑いを浮かべながらアニーは浴室へとトーマスを促す。
混乱をどうにか納めて視線を巡らせ、あることに気が付き思わず苦笑が漏れた。
「ジャック、あなたは変わらないのね。人を驚かせてその隙に黙ってコッソリ持って行くんだから」
机の上に多めに用意しておいたはずの、お菓子が無くなっている。
「また、来年ね」
呟き、トーマスが大人になればまた、その子供から彼の話を聞くのだろうとアニーは思った。
意気揚々と子供たちは戦果を確かめながら、それぞれ帰途についた。
ドラキュラに扮した少年が帽子いっぱいのお菓子の中からアメをひとつ取り出し口へ放り込む。
「今年もいっぱい貰えたな」
「だな」
答えたのは、自分と同じくらいの背丈のカボチャをくり抜いたお面を被った少年だった。
「……。お前誰?」
いくら考えてもこの少年の正体が分からなかった。
例え仮装をしていても、そう大きくはない村である、知らない子がいるはずなど無い。
その少年はいつの間にか彼の隣で本当に嬉しそうに袋を握りしめていた。
「あ、俺はジャック。毎年来てるんだ。お前はトーマスだよな」
少年が自分の名前を知っていたことに驚きながら曖昧に返事をする。
「え、うん。ジャックは別の村からわざわざ来てるのか、変わってるな」
「これが年一回の楽しみだからな」
「ふーん」
その言葉に少しの違和感を覚えながらドラキュラに扮した少年、トーマスはもう一つお菓子を摘んだ。
「なあ、トーマス。お前はこの話知ってるか?」
何気無い調子でジャックが始めたのは村の大人たちが子供の頃の話だった。
無愛想なきこりのおじさんと優しいパン屋のおばさんが結託して村長に仕掛けた悪戯。
気難しいおばあさんのお転婆だった頃のこと。
ジャックのまるで見てきた様に喋る大人たちの子供時代の話は面白く飽きなかった。
「今でも傷が残ってるはずだぜ。しわの下に隠れてるかも知れないけどな」
トーマスの家の近くに着く頃には村の大人たちほぼ全員の話を聞き終えていた。
「あとさ」
嬉々として喋り続けようとしたジャックを止める。
「あ。僕の家はここだから」
「そっか、じゃあ話はここまでだな。俺は、遠くから来てるから」
「ジャック、来年も来いよ」
少し悲しげな相手の声に、なんとなくトーマスは、そう言わなければならない気がした。
「ああ、また来年……」
お面であるカボチャの顔は変わらないが笑ったのかな。
そう思った瞬間、強い風が吹き抜け身に付けていたマントが視界を奪う。
「お前の母ちゃん、アニーによろしくな」
急に母親の名前を呼ばれ驚き、慌ててマント引き剥がすとカボチャの少年ジャックの姿はなかった。
「ジャック?」
呼び掛けは夜の闇に吸い込まれ消える。
「トーマス、誰か一緒にいるの?」
家の方から聞き慣れた声がした。軋んだ音に合わせて明るい光が筋になり足元を照らす。
振り返り目をこらすが、ジャックは居なかった。
「帰り道でお菓子を食べちゃダメって言ったでしょう」
「ごめんなさーい」
全く反省していない様子の息子を軽いため息と共に迎え入れる。
「あ、ねぇ、母さん。ジャックって奴を知ってる? 変わったカボチャのお面を被っててさぁ」
その名に一瞬、身体が強張る。
大人になり、彼の姿を見なくなってからも噂だけは耳にしていた。
まさか自分の子供に話をされるとは考えてもいなかった。
「あら、あなたも会ったのね。ジャックは母さんだけじゃなくて、この村のみんなを良く知ってるのよ」
しかし努めて平静を装い、お伽話をするのと同じ調子で彼の話をする。
「僕も知ってるよ。ジャックから色々聞いたもん」
息子のニッと笑った顔に、子供の頃のことが頭をよぎった。
あの事を話してなければいいけれど、と心配になる。
それは子供の頃の淡い思い出と言うには少し重すぎるし、愛と呼ぶには軽すぎた。
「そうね、トーマス。さあ、顔を洗って着替えてきなさい」
少々引きつった笑いを浮かべながらアニーは浴室へとトーマスを促す。
混乱をどうにか納めて視線を巡らせ、あることに気が付き思わず苦笑が漏れた。
「ジャック、あなたは変わらないのね。人を驚かせてその隙に黙ってコッソリ持って行くんだから」
机の上に多めに用意しておいたはずの、お菓子が無くなっている。
「また、来年ね」
呟き、トーマスが大人になればまた、その子供から彼の話を聞くのだろうとアニーは思った。
供物の娘 ◆IyobC7.QNk様
山深い人の身では入り込めない沢の源流で娘は水浴びをしていた。
主が不快にならないよう充分に身体を冷やしてから傍へ侍る事にしている。
背を向けていた娘が主を振り返りその薄い殻に覆われた腹に顔を寄せた。
肩から前に流した黒髪が肌に絡みその白さを際立たせている。
その身体は細いより薄いと表現した方が正しい。
抱えるようにして撫でた主の大きな鋏は、娘に触れている内側と違い堅固な殻と鋭い突起に覆われていた。
なぞると亀裂が走っているのがはっきりと解る。
主が不快にならないよう充分に身体を冷やしてから傍へ侍る事にしている。
背を向けていた娘が主を振り返りその薄い殻に覆われた腹に顔を寄せた。
肩から前に流した黒髪が肌に絡みその白さを際立たせている。
その身体は細いより薄いと表現した方が正しい。
抱えるようにして撫でた主の大きな鋏は、娘に触れている内側と違い堅固な殻と鋭い突起に覆われていた。
なぞると亀裂が走っているのがはっきりと解る。
「御身も随分と傷付いておられます。……贄の頃合かと存じますが」
寄り掛かる娘の下肢を締め上げるように黒く堅い脚が包む。
堅牢な主に比べ、どこを取っても娘の身体は余りも脆く柔らかい。
近隣の村唯一の水場の主の滋養として捧げられてから娘はその日を待ち続けていた。
返事はなかったが予想の内だったのか短く息を吐き続ける。
堅牢な主に比べ、どこを取っても娘の身体は余りも脆く柔らかい。
近隣の村唯一の水場の主の滋養として捧げられてから娘はその日を待ち続けていた。
返事はなかったが予想の内だったのか短く息を吐き続ける。
「私に使命を全うさせて下さいませんか、人を喰らえば幾らかでも御身は回復するのでしょう?」
娘の言葉を遮るように下腹部で主の剪毛が蠢いた。
衝動に突き上げられ逃れようと身を捩らせる娘を主の大きな鋏が押さえ付ける。
衝動に突き上げられ逃れようと身を捩らせる娘を主の大きな鋏が押さえ付ける。
「主様、私を」
「黙れ」
「黙れ」
尚も言い募る娘に岩の様な沢の主が初めて声を発する。
凄みを効かせるつもりは無いのだろうが間近で発せられた声音に本能的に娘は身を竦ませた。
傷を付けないように主は自身には無い娘の柔らかさを存分に愉しむ。
程なく華奢な身体が震え娘は悦びの悲鳴を上げた。
逃げ切れない快楽に溺れながら、それでも娘は声にはならぬ声で訴える。
凄みを効かせるつもりは無いのだろうが間近で発せられた声音に本能的に娘は身を竦ませた。
傷を付けないように主は自身には無い娘の柔らかさを存分に愉しむ。
程なく華奢な身体が震え娘は悦びの悲鳴を上げた。
逃げ切れない快楽に溺れながら、それでも娘は声にはならぬ声で訴える。
主様、供物でありながら滑稽でありましょうが、私は主様をお慕い申し上げております。