サイボーグ×豹合成獣 機械×少女 の前日譚
ロボットと少女 1-318様
「いーち、にー、さーん・・・」
少女のぱたぱたという足音が遠ざかっていくのを聞きながら、ロビイはわざとゆっくり数を数え始めた。10まで数え終わって、つむっていたまぶたを開け、キャシーを探し始める。
彼女が難しいところに隠れていたためしはない。案の定、三箇所目に探したクローゼットの中から、ふくれっ面をしたキャシーをあっさりと発見した。
「ぜーったい見てたでしょう、ロビイ!いっつもすぐ見つけちゃうんだから!」
「いやいやお嬢様、自分の不手際を私のせいにされては困りますなァ」
暴れる少女を抱き上げ、全力で引っぱたかれながら呵呵と笑ってみせるロビイ。いささか旧式のロボットである彼は、その分頑丈に作られており、多少の事ではビクともしない。キャシーの隠れ場所が、いつも特定の4~5箇所の内からランダムに決定されているという事は言わなくてもいいだろう。
少女のぱたぱたという足音が遠ざかっていくのを聞きながら、ロビイはわざとゆっくり数を数え始めた。10まで数え終わって、つむっていたまぶたを開け、キャシーを探し始める。
彼女が難しいところに隠れていたためしはない。案の定、三箇所目に探したクローゼットの中から、ふくれっ面をしたキャシーをあっさりと発見した。
「ぜーったい見てたでしょう、ロビイ!いっつもすぐ見つけちゃうんだから!」
「いやいやお嬢様、自分の不手際を私のせいにされては困りますなァ」
暴れる少女を抱き上げ、全力で引っぱたかれながら呵呵と笑ってみせるロビイ。いささか旧式のロボットである彼は、その分頑丈に作られており、多少の事ではビクともしない。キャシーの隠れ場所が、いつも特定の4~5箇所の内からランダムに決定されているという事は言わなくてもいいだろう。
「ねぇお父様、ロビイったら酷いのよ?」
見てたらかくれんぼにならないじゃない、と少女は父の腕に抱かれて頬を膨らます。
「いやあ、それはキャシーの努力が足りないんだよ。パパもロビイとはよくかくれんぼしたものさ。でも覗き見されていた事なんて一度もなかった。ねぇ、楽しかったねロビイ」
「いいえ、悪夢のようでした。あの頃のリチャード様は恐ろしいクソガキでしたからな。私がロボットで本当に良かった」
人間だったら20回は縊り殺されておりますよ、と付け加えてやる。蛍光色素や揮発性物質をぶっかけられたり、池にはまっていたり庭で一番高い木の梢に引っかかっていたり。今度こそ死んだかと顔を青く(比喩的な意味で)した事も一度や二度ではない。近所1の悪ガキと悪名高かったリチャードと、毎日毎日双方命がけで遊んでいれば、彼がかくれんぼを卒業する頃には自然と一人前の兵士に鍛え上げられていた。正直キャシーなど、束になってかかってきても負ける気はしない。
「本当に?お父様、嘘ついてない?」
「本当だとも。いいかいキャシー、相手のやる気を削ぐのが勝利への第一歩だ・・・」
「いたいけなわが子に何を教えているんですかあなたは」
「まずは簡単なトラップの仕掛け方を教えてあげようね」
何やら不穏な会話を始めた親子に、ロビイはとりあえずツッコミをいれてみたが、軽く無視された。
「あの子も後5年もしたら、パパの事キラーイとか言い出すのかな」
足取り軽く走り去る娘の背中を見つめ、何故かやたらと感傷的になっているリチャード。あと5年もかかるかどうかと言ってみようかどうしようか悩むロビイ。
「そんで10年もしたら彼氏を連れてきたりするんだよな!!パパより好きな人が出来たのーとか言って!おおお俺は絶対に許さーん!!」
リチャードはやにわに立ち上がり、目の端に薄っすらと涙すら溜めながら絶叫する。ああ、なんでこの人はこんなにバカなのか、泣きたいのはこっちだ。メカだから涙は出ないが。こんな主に仕えねばならないわが身の不幸を呪いながら、ロビイは朝発見し、こっそりと回収しておいた物を差し出す。
「将来嫌われる可能性についてよりも、今嫌われる危険性について考えてみてはどうですかな?」
それを目にして、リチャードは瞬時に石化した。
「『リアリティを追求したオトナのボディ!セクサロイド「ツボミちゃん」があなたの満足をお約束します!』・・・ああ、今は亡き奥様がこれをご覧になったらなんと仰ることやら。このロビイ情けのうございます、思えばリチャード様の性欲の持て余しっぷりは少年期から全く・・・あっ」
リチャードは熟練した兵士の動きでそのチラシを奪取し、光の速さで机の中にねじ込んだ。処分はしないようである。
「いいじゃないか、娘がいるとはいえ俺だって男なんだよっ!硝煙渦巻く戦場から帰ってきて安らぎを求めて何が悪い!」
「ですから悪いとは申し上げてはおりません、ただこれがお嬢様の目に触れたらと思うと」
その一言でリチャードは納得したらしく、何やらブツブツ言いながらも大人しくなった。
見てたらかくれんぼにならないじゃない、と少女は父の腕に抱かれて頬を膨らます。
「いやあ、それはキャシーの努力が足りないんだよ。パパもロビイとはよくかくれんぼしたものさ。でも覗き見されていた事なんて一度もなかった。ねぇ、楽しかったねロビイ」
「いいえ、悪夢のようでした。あの頃のリチャード様は恐ろしいクソガキでしたからな。私がロボットで本当に良かった」
人間だったら20回は縊り殺されておりますよ、と付け加えてやる。蛍光色素や揮発性物質をぶっかけられたり、池にはまっていたり庭で一番高い木の梢に引っかかっていたり。今度こそ死んだかと顔を青く(比喩的な意味で)した事も一度や二度ではない。近所1の悪ガキと悪名高かったリチャードと、毎日毎日双方命がけで遊んでいれば、彼がかくれんぼを卒業する頃には自然と一人前の兵士に鍛え上げられていた。正直キャシーなど、束になってかかってきても負ける気はしない。
「本当に?お父様、嘘ついてない?」
「本当だとも。いいかいキャシー、相手のやる気を削ぐのが勝利への第一歩だ・・・」
「いたいけなわが子に何を教えているんですかあなたは」
「まずは簡単なトラップの仕掛け方を教えてあげようね」
何やら不穏な会話を始めた親子に、ロビイはとりあえずツッコミをいれてみたが、軽く無視された。
「あの子も後5年もしたら、パパの事キラーイとか言い出すのかな」
足取り軽く走り去る娘の背中を見つめ、何故かやたらと感傷的になっているリチャード。あと5年もかかるかどうかと言ってみようかどうしようか悩むロビイ。
「そんで10年もしたら彼氏を連れてきたりするんだよな!!パパより好きな人が出来たのーとか言って!おおお俺は絶対に許さーん!!」
リチャードはやにわに立ち上がり、目の端に薄っすらと涙すら溜めながら絶叫する。ああ、なんでこの人はこんなにバカなのか、泣きたいのはこっちだ。メカだから涙は出ないが。こんな主に仕えねばならないわが身の不幸を呪いながら、ロビイは朝発見し、こっそりと回収しておいた物を差し出す。
「将来嫌われる可能性についてよりも、今嫌われる危険性について考えてみてはどうですかな?」
それを目にして、リチャードは瞬時に石化した。
「『リアリティを追求したオトナのボディ!セクサロイド「ツボミちゃん」があなたの満足をお約束します!』・・・ああ、今は亡き奥様がこれをご覧になったらなんと仰ることやら。このロビイ情けのうございます、思えばリチャード様の性欲の持て余しっぷりは少年期から全く・・・あっ」
リチャードは熟練した兵士の動きでそのチラシを奪取し、光の速さで机の中にねじ込んだ。処分はしないようである。
「いいじゃないか、娘がいるとはいえ俺だって男なんだよっ!硝煙渦巻く戦場から帰ってきて安らぎを求めて何が悪い!」
「ですから悪いとは申し上げてはおりません、ただこれがお嬢様の目に触れたらと思うと」
その一言でリチャードは納得したらしく、何やらブツブツ言いながらも大人しくなった。
思えばロビイがこの屋敷に来て、そろそろ30年近くになる。最新型だった彼は、今ではもう何世代も前の骨董品だ。
しかし、彼はその事を誇りに思っている。それは彼がベイツ家に仕え続けてきた証なのだから。初めて会った時は少年だったリチャードも成人し、軍に入りそこで恋をして、娘までこさえた。彼もまた軍人である、いつ妻と同じように戻ってこなくなるか知れたものではない。
ロビイは願う。そんな事が起こりませんように。この幸せがいつまでも続くようにと。
「ねーねーロビイ、もう一回かくれんぼしよっ」
・・・そして、願わくばこれからの日々が安全なものでありますように。
しかし、彼はその事を誇りに思っている。それは彼がベイツ家に仕え続けてきた証なのだから。初めて会った時は少年だったリチャードも成人し、軍に入りそこで恋をして、娘までこさえた。彼もまた軍人である、いつ妻と同じように戻ってこなくなるか知れたものではない。
ロビイは願う。そんな事が起こりませんように。この幸せがいつまでも続くようにと。
「ねーねーロビイ、もう一回かくれんぼしよっ」
・・・そして、願わくばこれからの日々が安全なものでありますように。
その後、所嫌わず仕掛けられた罠に、ロビイはおろかリチャードやキャシー自身まで嵌ることになるのはまた別の話である。