姉妹、そして妬むモノ


―番号は次々と呼ばれて行く…

それを、強張らせながら不安に見つめる少女。
現在おきている現実に、何か冷たい"黒いモノ"が心を染めていく感覚を感じる。
その表情も、どこか冷く、感情というものが消えてしまったようだ。
「お姉ちゃん…」
様子のおかしい姉の手を、ギュッと掴む妹。
「大丈夫よ、心」
ぎこちなく精一杯笑顔をつくる桂言葉(12番)…
不安ながらも笑顔をくれる姉に、少し安心する桂心(11番)

「おねえちゃん、これからどうなっちゃうのかなぁ?」
「わからない。でもお姉ちゃんが、ついているよ」
「え~!!おねえちゃんじゃ頼りないよぉ~。だってお姉ちゃんは、只のひきこもりだも~ん」
「違います!もう~ 心ったら、すぐ嫌な言い方する」
「えへへ♪」
「フフ♪」
妹との会話で、いつもの自分を取り戻す。


そんな和らいだ一時に、現実が突き刺さる。
「11番、桂心」

「お、おねえちゃん」
ぎゅっと姉にしがみつく妹。
「心、入り口で隠れて待っていて、直ぐにいくから」
「う…うん」
抱きしめ合う事で、姉妹の絆をたしかめあう二人。

桂心は、走るように去っていった。その体には不釣合いな、大きな支給品を抱えながら…

そして次の番号が呼ばれる。
「12番、桂言葉」
彼女は、呼びかけに答えなかった。

目を閉じ、静かに正座する桂言葉…
(とにかく、心を守らなければ…私は、お姉ちゃんなんだから)
精神を整え、平静を取り戻そうとする彼女の脳裏を、一瞬乱すかのように、ある人の姿が脳裏に浮かんだ。
――伊東誠。
「…誠くん」
小さく呟き、彼女の瞳から、涙が流れる。
(ごめんなさい。誠君…私は守らなければいけない人がいるから…)
傾いだ心を、整え静かに立ち上がる言葉。
その瞳には、迷いのない決意を感じる。

支給品を受け取ると、彼女は進行を続けるモノ達に、こう言い放った。
「こんな事、人として間違っています!」
「だからどうした?」
「……」
悔しさと、悲しみに絶えるように、彼女はその場を後にする。

教会(大聖堂)の入り口で、言葉は、立ち止まり、両手で口を多いながら呟いた。
「泣いては駄目… 泣いたらもう、妹を守れない」
瞳からこぼれそうな、涙をこらえながら…

「おねえちゃん、大丈夫?」
隠れていた、心が出てきた。
「うん、大丈夫」



―教会の中では、次の名前が呼ばれた
「13番、加藤乙女」

小泉夏美(23番)が話しかけた。
「乙女、呼ばれたよ」
「う…うん」
立ち上がる加藤乙女。
「乙女、大丈夫?」
「うん…大丈夫……私いくね」
「後でね、乙女ちゃん」
そんな彼女に緊張感なく言うのは森来実(59番)だ。

そして乙女にも、山のように詰まれた支給品の一つを渡される。
受け取ってしばらく考え込む、加藤乙女
考えあぐねた挙句、乙女はデイパックをつき返し、 そして別のデイパックを指差した。
次に出た言葉に、聖堂の中にいる者達は多少ながら驚いた。
「そっちのがいい」
「…まあいいだろう」
指定の支給品を受け取り、満足気に去る加藤乙女。乙女は悔しかったのだ。
伊東の傍に平然と座り、話かける桂言葉が…
そして聞いていた。小さくだが教室から出る前に、桂が「…誠くん」と呟いたのを…

聖杯戦争なんてどうでもいい、彼女の心には他に目的がある。
「桂……!!」
その一言には、間違いなく殺意を感じた。



【時間:1日目午後1時35分】
桂言葉
【場所:森林地帯】
【所持品:携帯電話(多分FOMA)、支給品(未開封)】
【状況:妹を守る】

桂心
【場所:森林地帯】
【所持品:携帯電話(多分FOMA)、支給品(未開封)】
【状況:姉と一緒】

加藤乙女
【場所:教会前】
【所持品:支給品(未開封)】
【状況:桂言葉への殺意】




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最終更新:2010年06月27日 16:25