銃声のする頃に ~暇つぶし編~
「さて……まずは支給品の確認だな」
柳洞一成(61番)は聖堂から出ると、近くの茂みに身を隠し、支給品の確認を始めた。
(これから先、生き残っていくためには少なくとも武器に属するものが欲しいところだが……)
デイパックを開帳し、てきぱきと中身を確認していく。
言峰という神父が言っていた通り、地図や水、食料は一通りちゃんと揃っていた。
残るは参加者にひとつ与えられるというランダムアイテム。
一成に支給されたものは――――
「これは……銃か?」
超大型回転式拳銃、S&W M500であった。
銃のことなどまるで知らない一成にも、それの全長と重さに思わず呆然としてしまう。
「と、とりあえず説明書を読んでみるか……」
はっと我に返った一成は付属していた支給品の説明書を読んでみることにした。
――説明書によると、このM500は「世界最強」を目指して開発された代物で、市販品としては最強の拳銃弾を使用しているとのことだ。
そのため反動も膨大で、それに耐えうるためにこのような超大型のフレームを使用しているそうだ。
「これは、むやみやたらに使おうものなら使用者の方が吹っ飛んでしまう可能性があるな……」
そう呟くと一成は一緒に入っていた弾丸をとりあえず装填しておこうとデイパックの方に手を伸ばした。
刹那――――
パン!
一発の銃声とともに近くの木が木片をぶちまけた。
「!?」
すぐさま一成はデイパックを手に取ると近くの木々の隙間に滑り込む。
パン! パン!
またしても銃撃。
先ほどまで自身がいた付近の木々に穴が開く。
間違いない、敵だ、と一成は判断した。
(まずいな……反撃したいところだが、こちらはまだ弾丸を装填していない……!)
茂みの向こう側にいるであろう見えない敵を睨みつけながら一成は考える。
そして即座に自身が取るべき行動を決定する。
(止む終えん、ここは逃げる!!)
そう判断すると同時に一成は全力疾走で森の奥へと走り去った。
何度か背後から銃声が聞こえたが、振り返ることなく走り続けた。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「逃げられちゃったか……まあ銃の使い方も大体判ったし、いっか……」
一成が走り去って行った方角を眺めながら森来実(59番)はゆっくりと支給されたマカロフを下ろした。
彼女は退屈な日常というものに飽き飽きしていた。
だから、この聖杯戦争というデス・ゲームに普段は決して得ることが出来ない刺激を求めることにした。
つまり、ただつまらない日常に生まれ育ってしまったことで手に入れてしまった虚無感を少しは埋められるかもしれないという思いから彼女は殺し合いに乗ったのだ。
彼女のそれは、俗にいう『退屈しのぎ』、『暇つぶし』ともとれる行為であると同時に、最近の若者が薬物や犯罪に手を出す過程に類似していた。
いや、というよりもソレだ。
(考えてみれば、私の人生って普通に学校通って、普通に友達つくって、普通に馬鹿なことやって、本当に普通すぎて嫌になっちゃう毎日だったし……退屈をしのぐにはいい機会だよね?
ふふっ……今の私のこと知ったら、乙女ちゃんたちどんな反応をするかな? 楽しみだなあ…………)
そんなことを考えながら来実はデイパックを肩に提げ、その場を後にした。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「どうやら……なんとか逃げ切れたようだな…………」
一成は、あれからしばらく走り続けて銃声が完全に聞こえなくなったことを確認するとゆっくりと足を止めた。
「しかし、もう殺し合いに乗ってしまった者が現れたとは……これは本当に油断できん……」
そう呟きながら近くの木の根元に一度腰を下ろすと、今度こそ一成はM500に弾を装填した。
「――これでよし。さて、まずは衛宮や殺し合いに乗っていない者たちと合流するのが最優先だな。日も沈み始めたことだし、急がなくては……」
そう言って立ち上がり、M500をズボンとシャツとの間に挟むと、一成は再び歩き出した。
【時間:1日目・17:30】
【場所:森林地帯】
柳洞一成
【装備:S&W M500(.500S&W弾5/5)】
【所持品:予備弾丸(.500S&W弾)×30、支給品一式】
【状態:健康】
【思考】
1)士郎やゲームに乗っていない参加者を探し、合流する
2)ゲームから脱出する
森来実
【装備:マカロフPMM-12(9ミリマカロフ弾7/12)】
【所持品:予備マガジン(9ミリマカロフ弾12発入り)×3、支給品一式】
【状態:健康。マーダー】
【思考】
1)とりあえず他の参加者を見つけ次第襲撃する
2)とりあえず生き残る
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最終更新:2010年06月27日 15:01