#prologue 言語という名のプロトコル / Xohon fe þlat Int Qaklusta Ptaeuskleh
…知らない天井だ。
この言葉を、生きているうちに使うとは思わなかった。でも、目が覚めたら見覚えのない部屋だった、という場合真っ先に思い浮かぶのはこの言葉だろう。
思い出せることから思い出して行こう。
名前は袴田 詩織。16歳の高校生。秋田県民で、生まれてこの方秋田に住んでいた。
思い出した。トラックにはねられて意識を失って...そのあと、どうなったか記憶がない。
起き上がって辺りを見回すと、そこは寝室のようだった。誰かに助けてもらったのだろうか。などと思っていると、一人の少女がドアを開けて入ってきて、起き上がった私に声をかけてきた。
「Eh. Dam Dram pam. Ti… Jem þlat Int Als Sparlje. Dam þlat Int þatt mi?」
「だむ...どらむ...何ですって?日本語で喋ってくれませんか。」
「どうして日本語で喋る?私苦手。」
...ふむ。これはさては最近話題の異世界転生という奴だろうか。しかし、相手もカタコトながら日本語を喋ってくる。...とりあえず...
「私は詩織。あなたは?」
なるべく簡単な語彙を選んで話しかける。敬語はかえって理解の邪魔になるだろうから、不躾に思えるけど外す。
「Als。」
「アルス、私は日本語しか分からない。」
「なんだ、あなたエスティナ人?」
エスティナ、というのは何処のことだろうか。
「いや、日本人。」
「あなた...Uh…日本から遊びに来る、人?」
観光客のことだろうか。
「いや、トラックにはねられて……起きたらここに居た。」
「ふむ...?」
アルスは首をかしげて、難しそうな顔をしていた。
「ちなみにここは...どこ?」
「Nestnia共和国連邦。しばらく、ここ居るといい。私あなたを助ける。」
「...ありがとう。」
親切な人に拾ってもらえてよかった。...にしても、周りにあるものはすべてよくわからない言語で書かれている。どのくらいこの世界にいることになるか分からないが、どのみちこの世界の言葉を知る必要があるだろう。幸い、言語の知見はちょっとだけある。役に立つかもしれない。
「ねぇ、私にその言語を教えて。」
「うまく、教えられるかわからないけど。...そうだ、代わりに日本語、教えて。次のテストが...」
どうやら日本語を学校で学ぶらしい。日本でも学校で英語を学ぶように、何らかの理由で日本語を学ぶ必要のある国際情勢なのだろうか。
「OK、任せて。まずは...」
最終更新:2025年05月30日 15:42