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「それじゃ、まずはオリエンテーションでもしようか。」
自己紹介が終わると、クランツ先輩がそう言いだし、ノルビス先輩がプリントを配りはじめた。
「俺たち放送部は普段の校内ラジオ放送をこなしつつ、毎年夏と冬にある放送部の大会に向けて、日々文章を読む練習とか番組の製作をしてるんだ。大会には大きく分けて番組部門と読みの部門があって、読みは朗読とアナウンス、そして日本語とネストニア語に分かれるんだ。」
配られたプリントにはたくさんの平仮名。五十音順かとも思ったが、そうではないようだ。
「…というわけで。日本語部門で役に立つ発声練習をやってみるよ。」
そこで先輩たちは立ち上がり、私たちも立つよう促された。皆で机を囲んでいる様子は何かの宗教儀式のようだ。
「まずは先輩たちがお手本をやってみるね。お腹で息を吸って...」
「あ、え、い、う、え、お、あ、お。」
…さっきまでの優しい感じとは一風変わった、力強い声。口角を上げて、力強く読んでいる。
息を吸うときに胸ではなくお腹が膨らんでいる。腹式呼吸というやつだろうか。
「それじゃ、皆もやってみて。」
そう言って、クランツ先輩は私たちのほうを見てくる。
「あ、え、い、う、え、お、あ、お。」
「あ!え!い!う!え!お!あ!お!」
「A、Æ、I、U、E、O、A、O…」
「う~ん、三者三様!」
クランツ先輩は笑顔、ヴラース先輩はゲラゲラと笑い、ノルビス先輩は困ったような顔をしている。
「まずクラフくん。」
「はい。」
「元放送部ってだけあってやっぱり上手いよ。この調子で伸ばしていけば大丈夫。」
「ありがとうございます。」
当然のことだとでも言うように、素っ気なく応じている。
「次、アカリちゃん。」
「はい!」
「ハーフだからか、発音はたぶん一番上手い。でももう少し力抜いてもいいかな。腹式呼吸を意識してみよう。」
「わかりました!」
相も変わらずずっと元気なアカリ。
そして次が…
「最後、シェストちゃん。」
「は、はい。」
正直、自分が一番下手なのは聞いていれば分かる。
「悪くはないけど、ネストニア語の発音だね。声はいいから、練習すればよくなると思う。磨けば光るから入部して一緒に練習してくれると嬉しいな。」
「…はい、ありがとうございます。」
伸びしろがあるだけマシなのだろうか。
「今日はここまでだけど、ほんとに練習するときはワ行までちゃんとやるよ。あとそれから…これ。」
そう言いながらクランツ先輩が本棚から取り出したのは、またしてもプリントの束。表紙には漢字で何か書いてあるが…「がいろううり…」?
「あ、外郎売だ。」
アカリの反応があって助かった。ういろううり、らしい。
「歌舞伎の演目の一つなんだけど、とにかく滑舌が要求されるから放送部でよく練習に使われるんだ。…試しにノルビス、最初のとこだけ読んでみて。」
「えぇ…僕ですか…」
指名されたノルビス先輩は、ブツブツと文句をいいながらもプリントを受け取って、大きく息を吸い込むと…
「拙者、親方と申すは、御立会 の中 に御存 じのお方もござりませう が、お江戸を立 て二十里上方 、相州小田原 、一しき町をおすぎなされて、青物町を登りへお出 なさるれば、欄干橋 虎屋藤右衛門 、只今は剃髪 いたして圓斎 と名乗りまする。」
…圧倒的な読みだった。正直なところ詳しい単語の意味が取れない部分もあったが、それでも雰囲気が伝わってくる。クラフくんも「お~…」と拍手をしているので、おそらく本当にすごいのだろう。
「…さて。次は…番組部門の説明もしよっか。」
クランツ先輩がそう言うと同時に、ヴラース先輩は待ってましたと言わんばかりに目に見えてウキウキし始めた。
「私が説明します!番組部門はテレビとラジオ、それからドラマとドキュメントに分かれてるんだ。テレビは映像、ラジオは音だけ。ドラマはイチから脚本を書いて作るやつ、ドキュメントは取材なんかを通してして事実を伝える部門だ。…といっても、いきなり編集とか説明されてもわからないと思うし、とりあえず去年作った作品か何か見せるよ。」
そう言って、ヴラース先輩はパーカーのポケットからUSBメモリを取り出して、パソコンに挿し込んだ。
「…どれにしよっかな~…やっぱ去年のテレドラの『フォル・ムジーク』かな…いやラジドキュの『100km先へ』も捨てがたい…ぐぬぬ…」
「『フォル・ムジーク』はやめて…あのセリフ、今思い出しても吐きそうだから…」
ヴラース先輩が選んでいるところにノルビス先輩が文句を言う。何があったのだろう。
「それじゃあ、これ!去年のテレドキュ、『授業中の居眠り対策委員会』!」
自己紹介が終わると、クランツ先輩がそう言いだし、ノルビス先輩がプリントを配りはじめた。
「俺たち放送部は普段の校内ラジオ放送をこなしつつ、毎年夏と冬にある放送部の大会に向けて、日々文章を読む練習とか番組の製作をしてるんだ。大会には大きく分けて番組部門と読みの部門があって、読みは朗読とアナウンス、そして日本語とネストニア語に分かれるんだ。」
配られたプリントにはたくさんの平仮名。五十音順かとも思ったが、そうではないようだ。
「…というわけで。日本語部門で役に立つ発声練習をやってみるよ。」
そこで先輩たちは立ち上がり、私たちも立つよう促された。皆で机を囲んでいる様子は何かの宗教儀式のようだ。
「まずは先輩たちがお手本をやってみるね。お腹で息を吸って...」
「あ、え、い、う、え、お、あ、お。」
…さっきまでの優しい感じとは一風変わった、力強い声。口角を上げて、力強く読んでいる。
息を吸うときに胸ではなくお腹が膨らんでいる。腹式呼吸というやつだろうか。
「それじゃ、皆もやってみて。」
そう言って、クランツ先輩は私たちのほうを見てくる。
「あ、え、い、う、え、お、あ、お。」
「あ!え!い!う!え!お!あ!お!」
「A、Æ、I、U、E、O、A、O…」
「う~ん、三者三様!」
クランツ先輩は笑顔、ヴラース先輩はゲラゲラと笑い、ノルビス先輩は困ったような顔をしている。
「まずクラフくん。」
「はい。」
「元放送部ってだけあってやっぱり上手いよ。この調子で伸ばしていけば大丈夫。」
「ありがとうございます。」
当然のことだとでも言うように、素っ気なく応じている。
「次、アカリちゃん。」
「はい!」
「ハーフだからか、発音はたぶん一番上手い。でももう少し力抜いてもいいかな。腹式呼吸を意識してみよう。」
「わかりました!」
相も変わらずずっと元気なアカリ。
そして次が…
「最後、シェストちゃん。」
「は、はい。」
正直、自分が一番下手なのは聞いていれば分かる。
「悪くはないけど、ネストニア語の発音だね。声はいいから、練習すればよくなると思う。磨けば光るから入部して一緒に練習してくれると嬉しいな。」
「…はい、ありがとうございます。」
伸びしろがあるだけマシなのだろうか。
「今日はここまでだけど、ほんとに練習するときはワ行までちゃんとやるよ。あとそれから…これ。」
そう言いながらクランツ先輩が本棚から取り出したのは、またしてもプリントの束。表紙には漢字で何か書いてあるが…「がいろううり…」?
「あ、外郎売だ。」
アカリの反応があって助かった。ういろううり、らしい。
「歌舞伎の演目の一つなんだけど、とにかく滑舌が要求されるから放送部でよく練習に使われるんだ。…試しにノルビス、最初のとこだけ読んでみて。」
「えぇ…僕ですか…」
指名されたノルビス先輩は、ブツブツと文句をいいながらもプリントを受け取って、大きく息を吸い込むと…
「拙者、親方と申すは、
…圧倒的な読みだった。正直なところ詳しい単語の意味が取れない部分もあったが、それでも雰囲気が伝わってくる。クラフくんも「お~…」と拍手をしているので、おそらく本当にすごいのだろう。
「…さて。次は…番組部門の説明もしよっか。」
クランツ先輩がそう言うと同時に、ヴラース先輩は待ってましたと言わんばかりに目に見えてウキウキし始めた。
「私が説明します!番組部門はテレビとラジオ、それからドラマとドキュメントに分かれてるんだ。テレビは映像、ラジオは音だけ。ドラマはイチから脚本を書いて作るやつ、ドキュメントは取材なんかを通してして事実を伝える部門だ。…といっても、いきなり編集とか説明されてもわからないと思うし、とりあえず去年作った作品か何か見せるよ。」
そう言って、ヴラース先輩はパーカーのポケットからUSBメモリを取り出して、パソコンに挿し込んだ。
「…どれにしよっかな~…やっぱ去年のテレドラの『フォル・ムジーク』かな…いやラジドキュの『100km先へ』も捨てがたい…ぐぬぬ…」
「『フォル・ムジーク』はやめて…あのセリフ、今思い出しても吐きそうだから…」
ヴラース先輩が選んでいるところにノルビス先輩が文句を言う。何があったのだろう。
「それじゃあ、これ!去年のテレドキュ、『授業中の居眠り対策委員会』!」
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