| これが最初です | 次の話 |
一月。一年の始まり、出会いの季節。
期待を胸に抱き、陽炎の揺れる校庭から手元の210mm×297mmの紙の束に視線を移し、マイクの前でお腹を夏の空気で満たした。
「只今から、州立ミスティリフ高等学校、入学式を始めます。」
迎える側の代表としての宣言。万雷…とまではいかない、800人弱の全校生徒の拍手が体育館に鳴り響いた。
夢は、叶うだろうか。
期待を胸に抱き、陽炎の揺れる校庭から手元の210mm×297mmの紙の束に視線を移し、マイクの前でお腹を夏の空気で満たした。
「只今から、州立ミスティリフ高等学校、入学式を始めます。」
迎える側の代表としての宣言。万雷…とまではいかない、800人弱の全校生徒の拍手が体育館に鳴り響いた。
夢は、叶うだろうか。
じめっとした暑い空気に包まれた1年F組の教室で、新年の恒例イベント…新しいクラスでの自己紹介が行われていた。
「…では、一番のアルジュさんから自己紹介をお願いします。」
先生の号令と共に、いちばん右前の席の生徒が立ち上がる。
「アルジュ・ヴァン・クラスタです。趣味はキャンプで、よく一人で行きます。…一緒に行きたい人とか居たら、ぜひ声をかけてください!」
出席番号順だから、名前の頭文字順に…A,B,C,D,Ʒ,…,R,S,Ʃ。天井で首をふる扇風機が自分に向いた時に精一杯すずみ、それ以外は我慢する、というのを繰り返していたら私の名前が呼ばれた。
「…次、シェストさん、お願いします。」
「シェスト・パーター、です。ラノベとか、好きです。仲良くしたいと思っています。…よろしく。」
少し不愛想だっただろうか。気の利いたギャグの一つも言えなかったが、人並の拍手を貰って自己紹介を終えることができた。及第点は貰えるだろうか。
「ありがとうございます。次、シルフさん、お願いします。」
…滞りなく、自己紹介は続いていく。ガラス窓の外の校庭には陽炎が揺れていた。…「だから夏は嫌いなんだ。」というのは何の一節だったか、思い出せないが激しく同意する。
学校から配られたばかりの机の上の大き目の画面に手を滑らせ、スケジュールを確認する。今日はまだ入学式だからか、この自己紹介が終われば帰れるようだ。
再び扇風機を待ちながら、教室の前を見やった。
「…では、一番のアルジュさんから自己紹介をお願いします。」
先生の号令と共に、いちばん右前の席の生徒が立ち上がる。
「アルジュ・ヴァン・クラスタです。趣味はキャンプで、よく一人で行きます。…一緒に行きたい人とか居たら、ぜひ声をかけてください!」
出席番号順だから、名前の頭文字順に…A,B,C,D,Ʒ,…,R,S,Ʃ。天井で首をふる扇風機が自分に向いた時に精一杯すずみ、それ以外は我慢する、というのを繰り返していたら私の名前が呼ばれた。
「…次、シェストさん、お願いします。」
「シェスト・パーター、です。ラノベとか、好きです。仲良くしたいと思っています。…よろしく。」
少し不愛想だっただろうか。気の利いたギャグの一つも言えなかったが、人並の拍手を貰って自己紹介を終えることができた。及第点は貰えるだろうか。
「ありがとうございます。次、シルフさん、お願いします。」
…滞りなく、自己紹介は続いていく。ガラス窓の外の校庭には陽炎が揺れていた。…「だから夏は嫌いなんだ。」というのは何の一節だったか、思い出せないが激しく同意する。
学校から配られたばかりの机の上の大き目の画面に手を滑らせ、スケジュールを確認する。今日はまだ入学式だからか、この自己紹介が終われば帰れるようだ。
再び扇風機を待ちながら、教室の前を見やった。
「…これで全員ですね。皆さん、是非クラス皆で仲良く過ごしてくださいね。本日はこれで放課となります。」
ヴェルエッヒと名乗った先生が、教壇からそう言ったのを合図にクラスは喧騒に包まれる。
「…シェストちゃんはさ、どうする?」
荷物をまとめていると、ふいに後ろから頭をつつかれ、名前を呼ばれた。
「…どうする、っていうのは?」
振り返ると視界に入ったのは…シルフ・クルス。出席番号が一個後ろのクラスメイト。長めのサイドテールが特徴的な子だ。
「このあと!部活動体験行くか、行かないか!」
…初対面なのに、ずいぶん積極的に話しかけてくれる。部活動体験、そういえばそんなのもあったっけ。
「特に決めてないなぁ…別に、何かやりたいことがあるわけでもないし。」
「勿体ないなぁ!シェストちゃんも青春しなよ!…因みに私は天文部を…」
…青春、か。
「…めんどい、帰る。」
「えぇ~!つまんないの!」
むくれるシルフを後目にワイヤレスイヤホンをポケットから取り出し、教室を離れる。
「…あ、メグち曲出したんだ。」
スマホを弄り動画サイトで曲を探そうとしたところ、最近気に入って見ているバーチャルアイドルが歌う曲が目に入った。ワイヤレスイヤホンを耳にはめ、サムネイルを触ろうとしたとき。…真っ白に燃え尽きたような顔で階段下の日陰に座る先輩が目に入った。
「…み、水…」
「…行き倒れ…!?」
ヴェルエッヒと名乗った先生が、教壇からそう言ったのを合図にクラスは喧騒に包まれる。
「…シェストちゃんはさ、どうする?」
荷物をまとめていると、ふいに後ろから頭をつつかれ、名前を呼ばれた。
「…どうする、っていうのは?」
振り返ると視界に入ったのは…シルフ・クルス。出席番号が一個後ろのクラスメイト。長めのサイドテールが特徴的な子だ。
「このあと!部活動体験行くか、行かないか!」
…初対面なのに、ずいぶん積極的に話しかけてくれる。部活動体験、そういえばそんなのもあったっけ。
「特に決めてないなぁ…別に、何かやりたいことがあるわけでもないし。」
「勿体ないなぁ!シェストちゃんも青春しなよ!…因みに私は天文部を…」
…青春、か。
「…めんどい、帰る。」
「えぇ~!つまんないの!」
むくれるシルフを後目にワイヤレスイヤホンをポケットから取り出し、教室を離れる。
「…あ、メグち曲出したんだ。」
スマホを弄り動画サイトで曲を探そうとしたところ、最近気に入って見ているバーチャルアイドルが歌う曲が目に入った。ワイヤレスイヤホンを耳にはめ、サムネイルを触ろうとしたとき。…真っ白に燃え尽きたような顔で階段下の日陰に座る先輩が目に入った。
「…み、水…」
「…行き倒れ…!?」
「ぷは……助かったよ。ありがとう。」
「いえいえ、…今にも死にそうな顔してたんで…なんであんなことに?」
買ってきた天然水を飲んで息を吹き返した先輩に、経緯を訊ねることにした。
「いや~、大した話じゃないんだけどね?部活の勧誘に熱中してたら水飲むの忘れてて…めまいがしてきたからヤバいと思って日陰に逃げ込んだらそのまま動けなくなっちゃって…命の恩人だよほんとに!」
さっきまでぐったりしていた人と同一人物とは思えないほど、はきはきと喋る人だった。
「やめてください、ほんとに…恥ずかしいです…」
「いやいやホントに…あ、名前訊いてなかった。訊いてもいい?」
「シェスト・パーター、1年F組です。」
「シェストちゃんかぁ!私は2年B組、ヴラース・チェーティリー!…よかったら、うちの部活見て行かない?お礼もしたいしさ!」
…今までの流れ的に、断ってもこの人は食い下がるだろう。仕方ない、見るだけだ。
「それじゃ、お言葉に甘えて。」
「よ~し、それじゃあ行こうか!」
…着いていきながら、シルフちゃんにチャットで「やっぱり見ていくことにした」と送った。
「いえいえ、…今にも死にそうな顔してたんで…なんであんなことに?」
買ってきた天然水を飲んで息を吹き返した先輩に、経緯を訊ねることにした。
「いや~、大した話じゃないんだけどね?部活の勧誘に熱中してたら水飲むの忘れてて…めまいがしてきたからヤバいと思って日陰に逃げ込んだらそのまま動けなくなっちゃって…命の恩人だよほんとに!」
さっきまでぐったりしていた人と同一人物とは思えないほど、はきはきと喋る人だった。
「やめてください、ほんとに…恥ずかしいです…」
「いやいやホントに…あ、名前訊いてなかった。訊いてもいい?」
「シェスト・パーター、1年F組です。」
「シェストちゃんかぁ!私は2年B組、ヴラース・チェーティリー!…よかったら、うちの部活見て行かない?お礼もしたいしさ!」
…今までの流れ的に、断ってもこの人は食い下がるだろう。仕方ない、見るだけだ。
「それじゃ、お言葉に甘えて。」
「よ~し、それじゃあ行こうか!」
…着いていきながら、シルフちゃんにチャットで「やっぱり見ていくことにした」と送った。
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