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子守唄

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子守唄



「リヒルト。私、わかったんです。」


桃が、手を伸ばす。
大きなエメラルドの眼球に、アノニマスが映った。アノニマスは狂犬じみた笑みを浮かべると、形状を変えた。
彼女のてのひらへと収束する。
しゅるりと渦巻いて集ったそれは、濃い紫色の球体と成った。
「敵は、あの女だけじゃないんです。」
それを携えて桃は、一歩、樹へと歩みよる。
樹の目に光はなく、目の前の桃さえ映らない。ぼうっと、虚ろに虚空を見つめていた。
桃は慈しむような微笑みを浮かべて。
また一歩。樹へと。その身体を、抱きしめた。

「私達を包む世界そのものが、私達の敵なんです。」

そう。桃の瞳からも光が消える。
この世界の全ての事象が、私達の心を殺ぎ、私達の希望を奪ってゆく。
貴方がどれだけ楽になりたいと願っても、身勝手な者達が縛りつけ。
私がどれだけ貴方と逝きたいと願っても、叶える素振りで嘲笑い。
『なに、君や、あの戦乙女がそう気張らなくても、翠たちが尽力しても、この夢はじきに醒めるのさ。』
酷い話。桃は目を、細めた。
なんて、酷い。酷い。まだ私の願いはひとつも叶っていない。甘い淡い夢を嘯いて、叶えもせずに放りだすのね。酷い、酷い。
嘘つきな"悪夢世界"。放りだされた先は彼と手も触れられない"未来世界"。
"世界"はみんな、残酷な、敵だわ。

貴方もそうでしょう?私の手を弾いてしまった貴方。
かわいそうに。呪われているのね。手を取りたくても取れない呪い。
空を望む貴方を阻む呪いの鎖。
愛しい人。
私が手を貸してあげる。

背を抱きしめたそのてのひらから。
「リヒルト。」
球体がずるりと、樹へ染み込む。
「敵を、鎖を、」


「―――断ちましょう。」

全て染み込んだその瞬間、金色の目が、大きく見開いた。




―――迸る絶叫も、桃には産声に思える。
頭を抱えてのたうつ彼に、桃の姿は見えていない。見えているのは桃の言伝を樹へ伝えるアノニマス。アノニマスという、悪夢。

…命じた以上の事は赦さないわよ、アノニマス。
彼の為に仕方なく、彼を食べさせてあげるだけ。
今はせいぜい彼から蜜を吸うといいわ。
あなたの本能を利用して、あなたを、あなたのオリジナルを、私達は壊す。

地に崩れ落ちた樹を、桃は静かに見下ろす。
やがて叫ぶ声も収まり、気味が悪い程の静寂が訪れた。
ゆらり、樹が立ち上がる。ぼろぼろに涙を零しながら、表情が無い。
…よかった。桃がふわりと微笑する。桃の想いは彼に"伝わった"、ようだ。

「さぁ、行きましょうかリヒルト。」
少し背伸びをして、その涙を指で拭う。

「全てを壊して、逝きましょう。」




どゆこと:
  • アノニマスが体内に入りました。
  • 世界に対する恐怖と絶望を煽る悪夢を脳に直接見せられています。

以降樹:
  • 表情が無くなります。
  • 動揺すれば恐怖やら絶望やら吐露するかもしれない。
  • 目に見える人全てを殺しにかかります。
  • 桃からの強い洗脳を受けているので、桃の殺意に従って動きます。
  • 桃の考えに強く共感している(させられている)状態。

以降桃:
  • 樹と共に目に見える人全てを殺しにかかります。
  • 特に嫌いな人・邪魔な人を殺しに行こうとします。
  • 事実上親衛隊離脱。親衛隊も討伐隊も構わず殺します。
  • 樹に手を弾かれて以降ほとんど誰も殺してないので、心中ストックはありあまってる。

以降アノニマス:
  • 樹の体内にいます。
  • 樹から引きはがす事ができれば桃の洗脳下から解放し、樹の暴走を和らげられる。
  • 少なくとも寄生中は動揺はさせられても桃の洗脳下から逃れられない。
  • どうやったらひきはがせるのよ→もう少々お待ちください。

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