勝利が真に勝利であるためには
敵が再び戦いに訴えてこないような状態にする必要がある
By 塩野七生
この世界で平和主義的思想が現実に勝利することを心から望んでいる人があるなら
彼はドイツ人による世界の征服を願って、あらゆる手段を用い全力を尽くすべきであろう
By アドルフ=ヒトラー
カノッサ機関の≪No.6≫
グラトン=ブルーガー=ウルバヌスの研究プロジェクトを推進する、設備・人員・資金を総括する研究・開発チーム
ナンバーの昇格に伴い権限の強化されたグラトンが、自らの研究の全てを統括するために結成した
主に『人工強化プロジェクト』と、その成果を継承・発展させた『食人鬼兵プロジェクト』の研究・開発を任としている
透徹された組織理念は、グラトンによる『少数の能力者によって戦局を左右されえない兵団の実現』であり、上記2つのプロジェクトも、その理念にのっとって研究を進められている
責任者兼主任研究員はグラトンが担当し、ほぼ全ての新技術や新兵器のプロデュース・ディレクションを彼1人で行っている
なお、設立に際して、本来ならライバル的立場であるはずの
GNOSIS工房リーダーである
レギンの援助を受けている
これは、グラトンの技術を見込んだレギンに依頼された兵器の開発を担当した縁による
その為、機関内部の利害が対立しがちな立場でありながら、リーダー同士が非常に良好な関係を築くに至っている
リーダーであるグラトンの死後、その活動規模は大幅に縮小する事になり、独自兵器の再生産や、小規模の改良などに留まっている
セードムシティ一連の騒動で手に入れたデータなどの含蓄はあるものの、それを使えるヘッドがいなくなってしまった事に起因する
中心的な設備と言うものが存在せず、主だった研究施設は
雷の国、
夜の国、
風の国の3ヶ国に分散している
これは、RAGNAROK LABORATORY設立以前の体制の名残である
ただし、現在は
襲撃によって風の国支部は壊滅してしまっており、設備は雷の国支部と夜の国支部へ二極化が進んでいる
『人工強化プロジェクト』
『普通の(能力者ではない)人間の力を高めて、能力者に匹敵する戦力の兵士を生み出す』事を目的とした研究の総称
A~Gまでの7つのプロジェクトが並行して進められていたが、この内A・C・D・Eは、防諜などを目的としたダミープロジェクトとなっていて、実際に進められていたのはB・F・Gの3つのプロジェクトとなっている
3つのプロジェクトの内訳は、以下の通りになっている
『B』:生物兵器、生物的な強化技術などの研究
『F』:個人用の高性能・多機能装備の開発
『G』:人間のサイボーグ強化に関する研究
しかし、
機関の活動停滞期前で他に優秀な人間が多かった事、当時のグラトンが≪No.37≫とさほど高いナンバーではなかった事、そして初期の研究が中々成果を生み出せなかった事などが重なり、プロジェクトは一時期凍結の危機にまで晒されていた
それを打破したのが、『G』プロジェクトの成功例であり、実戦においても一定以上の戦果を上げたサイボーグ『
G-616』であった
『G-616』の活躍により、プロジェクト全体が再び軌道に乗り始め、グラトンの研究チームは解散の危機を免れる
そしてその後、プロジェクトそのものは継続されながら、その成果の更なる効率的な運用を目的とし、次段階のプロジェクトである『食人鬼兵プロジェクト』が始動する事になる
・『B-772』
それ自体が特殊な細胞になっている液体で、注入した対象の身体機能を強化し、戦闘用に作り替えていく能力を持つ
この細胞自体には、生存能力が無く、故に他の生物の細胞に取りつき、共存関係を構築すると言う性質がある
ただし、他の生物の肉体で増殖を行い、比率が一定以上を超えると、宿主もろとも自壊してしまうと言う欠点がある
その他、様々な問題点があり、それ故に未だ実験段階の域を超えていない
『オロチ』
『フラースドラゴン』と言う大蛇を改造した生物兵器。個体によっては体長8mにも及ぶ巨大な蛇
体表を強固な鱗で覆っており、接地面である腹部以外の箇所への攻撃の効果が薄い
更に、人間を食いちぎる強大な顎と、身体の側面から放射する事の出来る神経毒、そして全身で捲きついた際の圧力によって、敵を攻撃する能力も高い
また、大半の蛇の舌や、毒蛇サイドワインダーの眉間の様に、周囲の状況を察知する感覚器を備えている蛇も多いが、この『オロチ』もその例に漏れず、独自の感覚器を備えている
目の外側、人間で言えば米神の辺りから、それぞれに触角が突き出ており、この2本の触角によって、視覚だけに留まらない周囲の情報を収集する事が出来る
基本が蛇である為、地形に対する適応力も高く、また変温動物としての特性で、休眠状態に入ると維持の為のエネルギー供給を必要としなくなる
戦闘用の改造生物としては性質も穏やかで、コストパフォーマンスの高く、扱いやすい兵器として扱われている
『ウェンカムイ』
『フルーソヒグマ』と言う巨熊を改造した生物兵器。平均的な体長3.2m、体重740kgの巨大肉食獣
極めて肉食の傾向が強い凶暴な熊であり、ほぼ1体に付き1人、専用の管理者が必要となる程の扱いが難しい獣である
その為、扱う人間は、特殊な処置(識別用のパッチの装着など)を事前に施して必要がある
その分、身体能力は非常に高く、巨大に発達した筋肉による打撃は、腕の爪や、頭部・肩部に発達した角も伴い、装甲に穴を空けてしまう程の破壊力を誇る
また、四足走行の最高時速は81km/hを記録した例もあり、そのスピードに体重を乗せた体当たりは、驚異の一言
分厚い剛毛と適度な脂肪分が、ただでさえ強固な筋肉・骨格で構成されている身体を包んでいるため、その防御力も驚異的である
攻撃力・防御力・機動力の全てを兼ね備えている為、人間相手の戦闘力も非常に高いが、むしろ人間以上の装甲兵器との戦闘が主眼に置かれている
なお、その名前はアイヌ語で『邪悪な(ウェンペ)神(カムイ)』と言う意味である(転じて人食い熊などを指す)
『ガルーダ』
『エルジオホーク』と言う鷹を改造した生物兵器。素体から大きく肥大し、平均体長1.5m程の大きさとなった
その最大の特徴は、全身に分布している、特殊な振動波を放射する発信器を備えている事である
この振動波は、空気の流れをある程度制御する事が可能であり、自分の前方の空気を薄めて空気抵抗を減らし、後方の空気の密度を上げる事で反発力を上げて、飛行能力を高めている。その為、速度・旋回・高高度性能など、総合的な飛行能力は非常に高い
また、仲間内同士での意志疎通にもこの振動波が使われ、個々の知能はそこそこ程度だが、集団としての統率力・効率は非常に高い
更に、喉から口を通じて前方に放射する振動波は、場合によっては対象への共振現象を利用した遠距離攻撃の手段としても用いられる
それ以外にも、嘴や鉤爪、そして尾羽の代わりに発達した尾による串刺し攻撃を得意とする(形状は蠍の尾に近いが、毒は持っていない)
やはり対人兵器として優秀な能力を持っているが、主に統率力の高さを活かした防衛・遊撃用の兵器として見られている
その他にも、飛行能力と機動力の高さを活かした一撃離脱用、カメラを括り付けての偵察用など、活躍できる場面は非常に多い
ただし、こちらも『ウェンカムイ』と同様、ほぼ1体に1人、特殊な処置(識別用のパッチの装着など)を施した管理者が必要になる、扱いの難しい兵器でもある
・『F-112』
暗殺用の銃器であり、傍目には大型のハンドガンに見える
専用の弾丸を用い、弾丸の中には2種類の薬品が仕込まれている。この薬品が、発射・着弾のショックで混合すると、強力な溶解液となり、敵の肉体、あるいは死体を溶かし去ってしまう
しかし、専用の大型弾丸を用いる為、頻繁に射撃を行う事は出来ず、また、内部に薬品を仕込む関係上、銃弾は非常に大型になり、発射時には強力な反動を伴う
また、装弾数も3+1発と、非常に少ないため、近接戦で用いるにはやや不便な兵器である
通称『ボルトシューター』と呼ばれる、個人携行用の特殊ハンドガン
通常の銃口の下に、ワイヤーに繋がれたアンカーショットの発射口を備えているのが特徴である
この銃器は電撃攻撃専用の構造をしており、内蔵バッテリーから供給される電力を、電量調節して発射する事が出来る
蓄電残量を100%と考えた場合、10%消費しての電撃弾と、30%消費しての炸裂弾の撃ち分けが可能となっている
10%消費の場合、対人に使用した際には一瞬の電気ショックによって動きを乱す程度の威力だが、1発命中した所から連射すれば、対象を無力化する事も可能となっている
また30%消費の場合は、着弾の瞬間に炸裂し、電撃に加えて物理ダメージを与える事も可能である
両方共に電子機器などに使用すれば、効率的にショートさせる事も可能となっている
弱点としては、エネルギーの燃費が悪い点があげられるが、これを補うためにアンカーショットが搭載されている
これはアンカー単体で前方へと発射し、着弾した時点で更に操作する事によって、20%の電力で電撃によるダメージを加えると言う機能となっている
発射=消費ではない為、この機能を用いればエネルギーの無為な消費を避けつつ戦闘を継続させる事が出来る
その代わり、こちらはこちらでアンカーを外してしまった場合、巻き取るまで再発射が出来なくなる為、連射は効かないと言う問題点が存在する
通称『蟷螂剣』と呼ばれる特殊な刀剣で、グリップの操作によって、刃の根元と中間の2か所の『節』を操作し、自在に折りたたむ事が出来る
折りたたんでの暗器としての使用、または通常の刀剣とは異なる複雑な操作による幻惑的な戦闘を想定している
使い方によっては、剣と鎌を兼用する様なトリッキーな戦闘が可能になる
『マイティロッド』と言う正式名が与えられた兵器であり、一般兵用の装備強化を目的とされている
形状は、機械的な構造のグリップと、その内部に織り込まれた特殊繊維からなっており、使用時にはグリップから繊維の束が放出される
この繊維は、電気刺激によって形状を変えると言う性質を持っており、グリップの操作によって、いくつかの形状パターンを再現する事が出来る
伸縮や硬軟などの性質が、電気刺激によって自在に変えられるため、短棍棒・鞭・登攀用のハーケンなどの機能を、この武器一つで補う事が出来る
更に収納時には、隠し武器としても使用可能な程にコンパクトに収まると言う利点もある
正式名称『バーサークヘリオス』
機関の六罪王
レギンの要請に応じて開発された『装着者の感情を増幅させる全身鎧』
くすんだ赤胴色の鈍い光沢をしている
首の後ろの部分に、動力源であるバッテリーと、装着者の感情を感知するセンサー、そしてマイクロコンピューターが搭載されており、全身には人工筋肉によるパワーアシスト機能が施されている
電気刺激による脳内物質の干渉により、特定の感情を抑制・増幅させる事ができ、そのパターンをコンピューターが制御する事で、装着者の精神状態を操る事が出来る
また、鎧としての防御力よりも感情操作を優先している為、鎧自体の防御力は高くないものの、パワーアシストによって動きが重くなる事を防いでいる
弱点は、機能の中枢部分が集結している首の後ろの部分で、パフォーマンスが落ちると感情がナチュラル状態に近くなり、パワーアシストも機能を落とす為、ただの重い鎧となり果ててしまう
正式名称『ブラスターフレーム』
腰回りから背中にかけて装着される、2基のスラスターとコントロールボックス、固定装着用のフレームが一体となった、個人用空中機動機器
腰部のコントロールボックスによって背部の翼とスラスターを操作し、それによって空中機動を可能とする、移動強化の装備である
体重70kgの装着者を想定した場合、最高時速64km/h、限界稼働時間17分前後となり、身一つでの空中戦を可能とする
また、未使用時には背部に翼とスラスターを収納する事が出来る為、地上戦での妨げにもなりにくいと言う利点がある
ただし、コントロールボックスによる制御は非常に難度が高く、自在に飛行する為には相応の習熟を要するものである
更に、推進剤の問題もあり、被弾した場合に誘爆を引き起こす危険があり、それをカバーする立ち回りを考える必要性が出てくる弱点も存在する
また、その装備の構造上、上記『バーサークヘリオス』との併用も不可能であり、実質的に二者択一を迫られる事になる
総じて、長所と短所のハッキリしている、一芸特化の装備と取る事が出来る
『食人鬼兵プロジェクト』
上記『人工強化プロジェクト』の成果を継承し、力を効率よく振るう『意志』を作り上げる事を目的とした研究の総称
その手段として『食人鬼兵(グールソルジャー)』と言う存在を、前面に押し出している
現在、その実戦評価部隊として『
ネバーランド』と言うチームが活動している
食人鬼兵とは、文字通り「人間の血肉を食する兵士」の事であり、人間に特殊な改造を施した存在である
敵を倒す事を、本能的な欲求と直結する事によって、より戦意を高めやすい兵士として扱われている
現に、試作兵器的存在である『ネバーランド』は、その全員が好戦的な性格を宿し、積極的に他者を害するメンタリティを獲得するに至っている
無論、彼らの戦闘の最終目的は『人肉を喰らう事』であり、各々がその為に敵を確実に撃破しようと努める傾向が見られる
それもあり、積極的に戦闘の技術を研鑽していくと言う傾向も強い
ただし、敵味方の区別は一応つけられる(事が多い)ものの、ある程度の空腹状態で人間を見ると、それだけで食欲が昂進してしまい、味方に対しても捕食対象として見てしまうと言う欠点が存在する
それを補う為、食人鬼兵を操る立場の人間は、食人鬼兵の食欲を減退させる人工フェロモンの詰まった袋を所持し、それを使う事で食欲を制御し、同志打ちを予防している
『移植体』
グラトン死後、カテドラルの手によって開発された、新たなRLの兵器カテゴリー
『人工強化プロジェクト』の成果である生物兵器などに、人間の脳を乗せ換えて、肉体を取りかえる事によって、新たな兵器としたもの
確実な命令伝達、高度な状況判断など、人間の強みを生物兵器に乗せる事が出来るので、これまでの生物兵器に比べて、より戦力が底上げされる
本来、脳を乗せ換えると言う行為は限りなく不可能であるのだが、そこを解決したのが、新リーダーのカテドラルであるらしく、彼の手腕の成果と言える
だが、カテドラル自身は「自分にはグラトンの猿真似しか出来ない」と言った趣旨の発言を残している
元の人間の肉体は保存され、脳を元に戻す事も可能であるらしい。が、まだ実験段階な為、内部の兵士などを用いず、拉致した一般人を強制的に改造し、脅迫によって使役しているのが現状である
最終更新:2015年12月27日 12:31