それは、とある魔王の言葉から始まった。
「ふむ…ずいぶんと溜まったものだ」
“風雷神”フール=ムールは、自らに寄せられた願いの量に、軽く溜息をついた。
最近できたと言う挟界、学園世界。
彼女と契約した侵魔召喚師の手で呼び出されたことからこの世界に縁を持った彼女は今、
学園世界ではかなり名の知れた魔王である…恋の願いを叶える、女神的な存在として。
「いかに私と言えど、これだけの量をいちいち相手にするは骨が折れるな…ならばこうしよう」
そして、彼女はとある“神託”を下す。
“風雷神”フール=ムールは、自らに寄せられた願いの量に、軽く溜息をついた。
最近できたと言う挟界、学園世界。
彼女と契約した侵魔召喚師の手で呼び出されたことからこの世界に縁を持った彼女は今、
学園世界ではかなり名の知れた魔王である…恋の願いを叶える、女神的な存在として。
「いかに私と言えど、これだけの量をいちいち相手にするは骨が折れるな…ならばこうしよう」
そして、彼女はとある“神託”を下す。
『学園世界、F-34と54の境に、小さな神社を用意した。
来年最初にその神社の鈴を鳴らした“女”に、1年間の間、この風雷神が全力で加護を与えよう』と。
来年最初にその神社の鈴を鳴らした“女”に、1年間の間、この風雷神が全力で加護を与えよう』と。
それはその名の表す通り、風のように気まぐれで、雷のように唐突な神託。
風雷神の全力の加護。それはすなわち『来年1年間、恋愛運は絶対無敵になる』と言う意味を持ち。
その神託は彼女の加護を受ける資格を持つ『好きな子(性別問わず)のいる女の子すべて』に届いた。
風雷神の全力の加護。それはすなわち『来年1年間、恋愛運は絶対無敵になる』と言う意味を持ち。
その神託は彼女の加護を受ける資格を持つ『好きな子(性別問わず)のいる女の子すべて』に届いた。
初詣地獄篇
―――極上生徒会管理棟 執行部
「平和だなあ」
迫る年の瀬。ぼんやりとこたつにあたりつつ、柊は1人ごちる。
「さすがに年末まで色々あってはたまらないでありますよ」
それに答えるノーチェものんべんだらりとしている。
大晦日。1日位は平和な日があっても良い。
そんな気分であった。だが。
「―――ええ!?」
そんな平和は年明けまでに溜まった仕事を片付けるんだと張り切っていた初春の声によって破られる。
「なんだ?今度は何の喧嘩だ!?」
その声に思わず立ち上がった柊に初春が答える。
「いえ、何か起こってるわけじゃないんですけど、何でもF地区にある小さな神社に女の子が集まってて、物凄い不穏な空気が流れてるって…」
困惑しながらも初春は柊たちに内容を伝える。
「は?なんだそりゃ?初詣…にしちゃあまだ昼間だよな?」
「はい、それにいくらなんでも数が多すぎるって話なんですけど、何のためなんですかね?」
初春が首をかしげる。彼女には『神託』は届いていなかったため、理由不明としか思っていなかった。
「う~ん。一応見に行った方がいいのか?」
「かも知れませんね…」
そんな話をしていた2人に、ノーチェがブラブラと手を振り、言う。
「ああ、それなら問題ないでありますよー」
「なんだ?何か知ってるのか?」
「ええ。知り合いから聞いてきたであります」
柊の問いにノーチェが頷く。
ちなみにノーチェ自身もこの前、『ろんぎぬす』に行ったときに友達の吸血鬼から聞いて来ただけで直接は聞いていなかったりする。
「何でも今年…いえ、まだ来年でありますな。来年、一番最初にそこで初詣した人に物凄い"御利益"があるとかで、それ狙いでありますな」
と言ってもわたくしが欲しい金運はこれっぽっちも上がらないらしいので行く気にもならないのでありますよ、と朗らかに笑う。
「そうか…ならいいけど…」
理由を聞き、邪魔をするのもどうかと思うが、だからと言って放っておいて良いものかと思った柊が首をかしげる。
そしてそれにノーチェは大丈夫でありますよと答えた。理由は…
「『危なそうだから私が行ってくる!何か起こる前に!』とイリヤと美羽が朝から行ったでみたいでありますから」
「そう言えば御坂さんが『黒子の馬鹿を止めるために仕方なく…そう、仕方無くなのよ!?』って言って出かけたみたいなんですが、もしかしてそれなんでしょうか?」
ノーチェのセリフに、出かける間際に貰った電話の内容を思い出した初春も、ノーチェに尋ねる。
「まず間違いなくそうでありましょうな。さつきが言ってた『条件』には一致するでありますから。まあ、それと…」
ノーチェが遠い目をする。思い出すのは執行部が巻き込まれた案件の中でも特に大がかりになった、あの事件。
「下手に刺激すると本気で新春早々『タオル事件』再びの危機でありますからなー…」
「うっ…あ、あれか…」
その時の騒動を思い出した柊の顔が歪む。
あのとき、暴徒と化した学園世界の女生徒たちに柊は倒された。そりゃあもうあっさり倒された。
特技は生死判定ですなんて言ってた頃を思い出させるほどの倒されっぷりだった。
「さすがにあれをもう1回は勘弁だな…色んな意味で」
「ああ、それなんでありますが…」
心底げんなりした表情の柊に、ノーチェがしれっと言う。
「今回の『条件』に一致する女生徒はタオル事件のとき以上でありますから、下手をしたらあの時以上の騒ぎになりますな」
そんな恐ろしい指摘を。
迫る年の瀬。ぼんやりとこたつにあたりつつ、柊は1人ごちる。
「さすがに年末まで色々あってはたまらないでありますよ」
それに答えるノーチェものんべんだらりとしている。
大晦日。1日位は平和な日があっても良い。
そんな気分であった。だが。
「―――ええ!?」
そんな平和は年明けまでに溜まった仕事を片付けるんだと張り切っていた初春の声によって破られる。
「なんだ?今度は何の喧嘩だ!?」
その声に思わず立ち上がった柊に初春が答える。
「いえ、何か起こってるわけじゃないんですけど、何でもF地区にある小さな神社に女の子が集まってて、物凄い不穏な空気が流れてるって…」
困惑しながらも初春は柊たちに内容を伝える。
「は?なんだそりゃ?初詣…にしちゃあまだ昼間だよな?」
「はい、それにいくらなんでも数が多すぎるって話なんですけど、何のためなんですかね?」
初春が首をかしげる。彼女には『神託』は届いていなかったため、理由不明としか思っていなかった。
「う~ん。一応見に行った方がいいのか?」
「かも知れませんね…」
そんな話をしていた2人に、ノーチェがブラブラと手を振り、言う。
「ああ、それなら問題ないでありますよー」
「なんだ?何か知ってるのか?」
「ええ。知り合いから聞いてきたであります」
柊の問いにノーチェが頷く。
ちなみにノーチェ自身もこの前、『ろんぎぬす』に行ったときに友達の吸血鬼から聞いて来ただけで直接は聞いていなかったりする。
「何でも今年…いえ、まだ来年でありますな。来年、一番最初にそこで初詣した人に物凄い"御利益"があるとかで、それ狙いでありますな」
と言ってもわたくしが欲しい金運はこれっぽっちも上がらないらしいので行く気にもならないのでありますよ、と朗らかに笑う。
「そうか…ならいいけど…」
理由を聞き、邪魔をするのもどうかと思うが、だからと言って放っておいて良いものかと思った柊が首をかしげる。
そしてそれにノーチェは大丈夫でありますよと答えた。理由は…
「『危なそうだから私が行ってくる!何か起こる前に!』とイリヤと美羽が朝から行ったでみたいでありますから」
「そう言えば御坂さんが『黒子の馬鹿を止めるために仕方なく…そう、仕方無くなのよ!?』って言って出かけたみたいなんですが、もしかしてそれなんでしょうか?」
ノーチェのセリフに、出かける間際に貰った電話の内容を思い出した初春も、ノーチェに尋ねる。
「まず間違いなくそうでありましょうな。さつきが言ってた『条件』には一致するでありますから。まあ、それと…」
ノーチェが遠い目をする。思い出すのは執行部が巻き込まれた案件の中でも特に大がかりになった、あの事件。
「下手に刺激すると本気で新春早々『タオル事件』再びの危機でありますからなー…」
「うっ…あ、あれか…」
その時の騒動を思い出した柊の顔が歪む。
あのとき、暴徒と化した学園世界の女生徒たちに柊は倒された。そりゃあもうあっさり倒された。
特技は生死判定ですなんて言ってた頃を思い出させるほどの倒されっぷりだった。
「さすがにあれをもう1回は勘弁だな…色んな意味で」
「ああ、それなんでありますが…」
心底げんなりした表情の柊に、ノーチェがしれっと言う。
「今回の『条件』に一致する女生徒はタオル事件のとき以上でありますから、下手をしたらあの時以上の騒ぎになりますな」
そんな恐ろしい指摘を。
―――F地区 風雷神社の境内
今年最後の12月31日。
「で、なんであなたがいるのかしら?最近また調子に乗ってる泥棒猫のエメレンツィア?」
鷹栖絢子はじと目でその少女の顔を見ていた。最近また私の護にちょっかい出しやがってこの泥棒猫がと目が語っていた。て言うか口に出してた。
「それはこっちの台詞です。ベアトリーチェはもう護から十分愛されているでしょうに。まさかまだ足りないとでも?」
対するエメレンツィアもじと目だった。この色惚けはあんだけいちゃいちゃしてんのにまだ足りないのですかと目が語っていた。て言うか口に出してた。
じと目のにらみ合い。だが、2人とも手を出そうとはしない。
本気でやり過ぎて"鈴"を破壊するようなことになれば、来年1年の恋愛運がふいになるばかりか、この場にいる恋する乙女の怒りを一身に背負うことになる。
流石にそれは色々とまずい。
鷹栖絢子はじと目でその少女の顔を見ていた。最近また私の護にちょっかい出しやがってこの泥棒猫がと目が語っていた。て言うか口に出してた。
「それはこっちの台詞です。ベアトリーチェはもう護から十分愛されているでしょうに。まさかまだ足りないとでも?」
対するエメレンツィアもじと目だった。この色惚けはあんだけいちゃいちゃしてんのにまだ足りないのですかと目が語っていた。て言うか口に出してた。
じと目のにらみ合い。だが、2人とも手を出そうとはしない。
本気でやり過ぎて"鈴"を破壊するようなことになれば、来年1年の恋愛運がふいになるばかりか、この場にいる恋する乙女の怒りを一身に背負うことになる。
流石にそれは色々とまずい。
それはこの場にいる全員の共通認識なのだろう。
その境内にいる少女たち…恐るべき戦闘能力を持つ少女たちも多数いるこの空間では、似たような火花があちこちで散ってはいるものの、誰も手を出そうとはしない。
凄まじい牽制とにらみ合い、熾烈な位置取りを争う乙女たちの静かな戦いは23時59分59秒…31日の終わりまで続いた。
その境内にいる少女たち…恐るべき戦闘能力を持つ少女たちも多数いるこの空間では、似たような火花があちこちで散ってはいるものの、誰も手を出そうとはしない。
凄まじい牽制とにらみ合い、熾烈な位置取りを争う乙女たちの静かな戦いは23時59分59秒…31日の終わりまで続いた。
―――F-34地区 矢神高校
「射角、問題なし。風向き、現在は無風。天気予報では明日朝まで変化なしの予定。本日は絶好の狙撃日和…」
そんな、乙女の戦場と化した神社から離れること1km。神社の境にある学園の教室に不法侵入を果たした緋室灯はただじっと時を待っていた。
手にしているのは、使いなれたガンナーズブルーム。中には鈴を破壊しないよう執行委員相良宗介より譲り受けたゴムスタン弾が込められている。
「風雷神は鈴を鳴らした女と言っていた…」
ならば、修羅場となるのが目に見えている場所での"近接戦"よりある程度離れた距離からの鈴の"狙撃"の方が自分に向いている。
強化人間の優れた頭脳はそう、結論をはじき出していた。
「命…」
"決行"まではまだまだ時間がある。それまでの間、過度な緊張による精神消耗を避けるべく、灯は"うまく行ったときのこと"を考える。
最強の恋愛運を手にいれた場合、更なるらぶらぶモードに突入したときの命とのめくるめく愛の日々について。
「…あふぅ」
そのもうそ…思考に顔を真っ赤にして溜息をつく彼女は、知らない。
そんな、乙女の戦場と化した神社から離れること1km。神社の境にある学園の教室に不法侵入を果たした緋室灯はただじっと時を待っていた。
手にしているのは、使いなれたガンナーズブルーム。中には鈴を破壊しないよう執行委員相良宗介より譲り受けたゴムスタン弾が込められている。
「風雷神は鈴を鳴らした女と言っていた…」
ならば、修羅場となるのが目に見えている場所での"近接戦"よりある程度離れた距離からの鈴の"狙撃"の方が自分に向いている。
強化人間の優れた頭脳はそう、結論をはじき出していた。
「命…」
"決行"まではまだまだ時間がある。それまでの間、過度な緊張による精神消耗を避けるべく、灯は"うまく行ったときのこと"を考える。
最強の恋愛運を手にいれた場合、更なるらぶらぶモードに突入したときの命とのめくるめく愛の日々について。
「…あふぅ」
そのもうそ…思考に顔を真っ赤にして溜息をつく彼女は、知らない。
―――F-54地区 泉坂高校
「わざわざお姉様(オリジナル)を筆頭にした連中と現場でやりあうくらいならば、ここからの狙撃の方が確実である、とミサカ10032号は独白しつつ決行時刻を待ちます」
「最初に思いついたのはこのミサカであるのに真似しやがってこいつら、とミサカ10039号は便乗してきたミサカたちに毒づきつつも狙い続けます」
「その発想はほぼ同時に思いついたことは、ネットワークに伝わった時刻記録から明白である、と万全の狙撃態勢を整えつつミサカ13577号は反論します」
「ネットワーク経由で元の世界に残ったミサカたちから激しい抗議が殺到していることに不安を覚えつつも、ミサカ19090号は狙撃に集中するべくネットワークから思考を遮断します」
「最初に思いついたのはこのミサカであるのに真似しやがってこいつら、とミサカ10039号は便乗してきたミサカたちに毒づきつつも狙い続けます」
「その発想はほぼ同時に思いついたことは、ネットワークに伝わった時刻記録から明白である、と万全の狙撃態勢を整えつつミサカ13577号は反論します」
「ネットワーク経由で元の世界に残ったミサカたちから激しい抗議が殺到していることに不安を覚えつつも、ミサカ19090号は狙撃に集中するべくネットワークから思考を遮断します」
冬休みで人気のない学園の、とある教室から"1人"の声が延々と響く。
中では、とある極上生徒会執行委員によく似た、学園への不法侵入を果たした少女が"4人"、ひたすらに時を待っていた。
ごつい軍用ゴーグルをつけ、同じライフルを構えた彼女たちは口々にお互いを罵りながらも、決して対象から目を離さない。
中学生ほどの体格の彼女が持つには大き過ぎるそのライフルの名は…鋼鉄破り(メタルイーターMX)
"学園都市"の技術力を持って作られた、極めて強力な対戦車ライフルである。と言っても込められた弾丸は命中しても鈴を破壊しないように軟性ゴム弾だが。
中では、とある極上生徒会執行委員によく似た、学園への不法侵入を果たした少女が"4人"、ひたすらに時を待っていた。
ごつい軍用ゴーグルをつけ、同じライフルを構えた彼女たちは口々にお互いを罵りながらも、決して対象から目を離さない。
中学生ほどの体格の彼女が持つには大き過ぎるそのライフルの名は…鋼鉄破り(メタルイーターMX)
"学園都市"の技術力を持って作られた、極めて強力な対戦車ライフルである。と言っても込められた弾丸は命中しても鈴を破壊しないように軟性ゴム弾だが。
「…ところで、せっかくなので別の教室から狙ってみるのも悪くないのでは?とミサカ10032号はごく純粋な親切心から、他意無くミサカたちに勧めます」
「ネットワークから思考を遮断してそれではただ単にベストポイントから追い出したいだけでは無いのか?とミサカ10039号は10032号に反論します」
「衣替えの時に1人だけ特別扱いの抜け駆けをした裏切り者の魂胆などお見通しだ馬鹿。とミサカ13577号は吐き捨てます」
「さ、さすがにそれは言いすぎなのではと、ミサカ19090号はこの嫌な空気を打ち消すことを試みます」
「ネットワークから思考を遮断してそれではただ単にベストポイントから追い出したいだけでは無いのか?とミサカ10039号は10032号に反論します」
「衣替えの時に1人だけ特別扱いの抜け駆けをした裏切り者の魂胆などお見通しだ馬鹿。とミサカ13577号は吐き捨てます」
「さ、さすがにそれは言いすぎなのではと、ミサカ19090号はこの嫌な空気を打ち消すことを試みます」
決行まで、まだまだ時間を残し、教室に険悪な空気が漂い始めていた。そう、いずれこの場が戦場になる、そんな空気だった。
そう緋室灯は、知らない。
神社の鈴を様々な場所から都合"10以上"の銃口がただ静かに、時に騒がしく、その時を待っていたのだと言うことを…
神社の鈴を様々な場所から都合"10以上"の銃口がただ静かに、時に騒がしく、その時を待っていたのだと言うことを…
―――とある報道委員の手記
多くの乙女の、様々な思いを乗せて、ただ静かに年末は過ぎていった。そして、12月31日が終わった、そのとき。
学園世界に新年早々新たな騒動が巻き起こった。
その騒動については…あえて語るまい。
その騒動については…あえて語るまい。
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