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ナイトウィザード!クロスSS超☆保管庫
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ナイトウィザード!クロスSS超☆保管庫

第08話01

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第八章 九秒前の白 _at_one_or_zero_



 超能力開発機関『学園都市』第六学区。
 とうの昔に日の暮れた街で、狂おしいほどに加速する魔王同士の争い。

 花火のように。夜空を抉り瞬く光。
 星のように。夜天を切り裂き流れる光。
 鼓膜を襲う轟音の波は、瞬くたびに世界を揺るがせる。

 五感を超えた恐怖を産む。

 『蝿の女王』ベール・ゼファー、『荒廃の魔王』アゼル・イヴリス、そして、『東方王国の王女』パール・クール。
 それは、ブレーキの壊れた殺戮機構。
 夫々が裏界の名立たる魔王である彼女らの戦闘。人智を超えた暴力の応酬は、際限なく加速する。
 二対一。
 ベルとアゼルの二柱と、鎬を削るパール。
 けれど、常に優勢であるのは、パール・クールであった。

 ―――世界には、

 どれほど知略をめぐらせても、どれほど力で圧倒しようとも、全てをひっくり返す、絶対的な力が在る。

 非常にキニクワナイ。が―――、今のパール・クールが、正にソレだった。

 魔導具『東方王国旗』。
 この『学園世界』の『震源』に立てられた『旗』は、この世界をパール・クールの所有物であると証明する。
 此処が、ただの忘却世界であるのなら、この世界一つ分の『力』を得るだけの筈であった。しかし問題は、此処が、ただの世界ではなかったこと。

 『学園世界』。
 それは、ありとあらゆる世界の学校/学園が集合する世界。
 それは、ありとあらゆる、ソレこそ無限の世界の断片を寄せ集めた領域。
 それは、無限の世界が重なり合った、一つでありながら無限(スベテ)である『世界』。
 だからこそソレは―――、『学園世界』の『震源(中心)』は、無限の世界の中心足りうる。

 故に、『震源』に立てた『東方王国旗』は、所有者たるパール・クールに『無限の力』を供給する。

 だから、同じ基準の上では、決して追いつけない。
 幾らこの身が、『蝿の女王』ベール・ゼファーの『力』が強大であろうとも、同じ方向の力を競ってしまっては、勝利はない。

 必要なのは別の基準(フィールド)。別の方向性(ベクトル)。

 幸運にも、手元にあった二枚のカード。
 最強の最弱、上条当麻の幻想殺し(イマジンブレイカー)。『荒廃の魔王』アゼル・イヴリス。
 即ち、端的な『秩序』と『死』。

 けれど。それでも、届かない。

 適材適所(さいだいげんのこざいく)。
 しかし、その程度で追いつけるほどに、両者に開いた性能差は易く無かった。
 それもまた、忌々しい。

 必要なのは、もう一つ上の性能。
 必要なのは、もう一つ先の能力。


 成長が、喪失の回復であるのなら、ソレがもたらされるのは絶望の先。
 失くし続けていた事に、気付くだけでは足りない。
 其処から更に奪われなければ、届かない。

 心に刻まれた虚は、大きければ大きいほどに、喪失の怨嗟は比例して、動的で強大な『力』足り得るのだから。

 時計の針を、進めるしかない。
 役目を終えた役者の粘り(ワガママ)が、スベテの日程を破壊する。

 与えたものが至宝に至るには、まだ時間がかかる。
 ならば、奪うべきものは―――

「………答えは、一つしかないわね」


 花火のように。光が夜空を抉り瞬く。
 星のように。流れ夜天を切り裂く光。
 そして、瞬く光の度に、鼓膜を襲う轟音の波。

『―――情報、通信関係が何者かにハッキングされています。
 自己診断(システムスキャン)では異常(ノイズ)を発見できませんでしたが、現状を鑑みるにそう考える他在りません』

 0-Phoneのスピーカーは耳元だと言うのに、電話の向うの初春の声が、上手く聞き取れない。

『残念ながら、回線越しでは『対話の相手(わたし)』が初春飾利と証明できません。ですが―――』

 意識が他所に奪われる。
 三柱の魔王が争う光景は、その余波だけで学園都市を震撼させる。
 まるで、夜戦の記録映画だ。
 遠目で見るには美しく、けれど虐殺を約束する死の光が、途切れる事無く、学園都市の空を埋め尽くしていた。

『………って、柊さん、聞いてます? そっちは通話環境があんまりよくないみたいですけど』
「ああ………、聞いてる」

 返す言葉も上の空。ただ、その光景に圧倒される。
 あまりにも巨大な暴力の発露に、超能力(レベル5)という『力』を持つ御坂美琴ですら、その暴力の主を知っている柊蓮司は、更に輪を掛けて、

 常に、言葉を喪失している。

『兎も角そっちに行きましたから、彼女から聞いてください』

 初春飾利は、そんなコトを言った。
 そして、

「お待たせで在りますよ!! 蓮司! 美琴!!」

 マーセナリー・オブ・イタリアンヴァンパイア。
 ノーチェという名の吸血鬼傭兵は、分を置かずに登場した。
 けれど、そんなコトどうでも良くなるぐらいに、気にかける余裕をなくすほど、遠雷の戦場が二人の心を占めて居た。

 ―――絶望的に、

 魔王という名の暴虐の塊。地獄から這い出た悪鬼の暴力。
 絶望的なのは人間(ひと)の命だ。
 柊蓮司(ナイトウィザード)と御坂美琴(超能力者)ですら、その余波に恐怖する。
 五感を超え、精神すら蝕む恐怖を前に、魔王同士の争いに巻き込まれて、上条当麻(ただの高校生)が無事であるなどと、どう信じろと言う。
 心が軋む。
 余計な回り道が悔やまれる。もっと早く助けに行っていれば、もしかしたら。

 だから、

「―――急いで上条当麻を保護して欲しいので在ります―――」

 傭兵吸血鬼が吐いたその科白を、理解するのに少し時間が必要だった。


 花火のように。夜空を抉り瞬く光。
 星のように。夜天を切り裂き流れる光。
 鼓膜を襲う轟音の波は、瞬くたびに世界を揺るがせる。

 学園都市で繰り広げられる、異世界の魔王の狂宴は、未だ終わりを告げる気配が無かった。

 『東方王国の王女』パール・クールは、余りある『力』を、余す事無く火力につぎ込んで、異世界の街並みを灰塵に埋めてゆく。
 学園都市で繰り広げた、『蝿の女王』と『荒廃の魔王』との闘争。パール・クールは、己が策謀を以って、ベール・ゼファーの策を打ち破り勝利した筈だった。
 本当ならばソレで終わり。あとはこの世界を奪い取って、更なる力を得るだけ。
 その筈だったのに。

 (嗚呼、イライラする………)

 爆炎の向うから、光が走る。肌に覚える感覚から、尋常ではない威力を感じ取った。
 並みの魔王ならば、一撃で消し飛ぶ魔光。しかし、今のパールには児戯に等しく。

「――――。」

 一瞥。ただそれだけでベール・ゼファーの光は霧散する。
 直後、いつ間に回りこんだのか、背後からも弾丸が迫る。
 反応できずに直撃。けれど、アゼル・イヴリスの血弾も、自慢の柔肌に。キズ一つ付けられない。

 そう、彼我の戦力差を鑑みれば、勝負はとっくに決まっている筈だった。それでも、敵対する二柱の魔王は、諦める事を知らなかった。

「あんたらいい加減にしなさいよね。仮にも魔王が晩節を汚すんじゃないわよ」

 まるで人間のように。諦めが悪く、逃げ回りながら、隙を見て攻撃を重ねてくる。
 キズ一つつかない。とは言え、だからこそ、そんな敵を潰せない事に、パール・クールのストレスは右肩上がりに昇っていく。

 諦めが悪い。この絶望的な状況で、何故心を折らないのか。
 ここに固執する理由など無い。所詮、忘却世界の一つ。
 いまに固執する理由など無い。奪還する気なら、今は損害を抑えておくべき。

 なのに何故、『蝿の女王』と『荒廃の魔王』は足掻き続けるのか。

「あの人間。かしらね……」

 特異な右手を持つ。けれども普通の人間。ソレを使って、あの二柱は状況を逆転できると思っているのか。

 一笑に付す。

 幾らなんでもソレはありえない。人間如きに、仮にも魔王が希望を見出すなど。
 嘲弄を貼り付けて、パール・クールは攻撃は苛烈の一途を辿る。


 * * *


 紅い月の光の下で、激突する力と能力(チカラ)。刻まれる、人智を超えた争いの爪痕。
 パール・クール。アゼル・イヴリス。
 世界を震撼させる二柱の魔王。その闘争は、既に元第六学区では収まりきらず、ビルを砕き、道を抉り、破壊の爪あとは拡大の一途を辿る。

 機銃を掃射するように、爆撃がばら撒かれる。
 二柱の魔王は光の航跡を引いて、高層ビルの谷間を縫うように飛行する。

「いい加減! 諦めなさい!!」
「私は―――、負けない!!」

 整然と立ち並ぶ高層ビル群を挟んで、攻撃魔法の応酬は更に加速の一途を。
 黒々とそびえるビルの合間。高速飛行の最中では、針の穴のような僅かな隙間から、僅かに覗く敵の姿に、致命的な魔術を投げつけた。
 針穴を抜け、肉薄するものは防ぐ。そうでないものは、ビルの壁面を抉り取り、そもそも身体に届きはしない。
 流れる風景は、ビル壁と敵とを交互に繰り返す。

 壁、敵、壁、敵、壁、敵、壁、敵、壁、敵、壁、敵、壁、敵、壁、夜。

「!?」

 幾つ目かのビルを過ぎた瞬間、驚愕にアゼルは身を留めた。
 攻撃の瞬間、その視力は、何も居ない空間を認識する。
 パール・クールは何処だ。隠れるところなど、何処にもない筈。

――!?

 第六感に走る脅威に、即座に反転。
 奇襲。
 ビルを突き抜け、粉塵に身を隠し、パール・クールは、右手に刃を生んで斬りかかっていた。

「くぅっ!!」

 変形した右手の刃が、魔力を束ねた光剣を受け止める。
 無音の衝撃に、夜気が震えた。

 鍔迫る右手が焼ける。プラーナをつぎ込み即座に修復。痛みが続く限り、敵の刃は届かない。
 斟酌の間を越え、互いの瞳にお互いを見出せる距離で、にらみ合う。

「………ホント、しつこいわよ、アンタ」

 口火を切る、『東方王国の王女』。
 光剣をギリギリと押し込みながら、嗤う。

「………、―――っ!!」

 対するアゼルに、返答の余裕は無い。
 ここでヘタに力を抜けば、右手ごと身体を二つに割られる。

「絶望と諦観がアンタのクセに! 荒野のヒキコモリが、このパールちゃんの手を煩わすんじゃないわよ!!」

 諦めろ。そして、死ね。
 漆黒の瞳に、燈る敵意が謳う。
 だが、

「私は―――、負けない」

 パールの光剣が押し戻される。
 アゼルの右手が、首筋に向かうのを止められない。

「っ!! このっ!」


 からみ合う刃を外し、パールは一歩退いた。
 抵抗を失ったバイオオーガンは、鋭く夜気を切り裂いた。
 向けられる刃に、不機嫌に、パール・クールは眦を吊り上げる。

「なに、ソレ――――」

 負けない。私は、負けない。
 アゼル・イヴリスはそういった。
 彼我の戦力差は絶望的。出来るのは惨めに足掻く事だけ。如何在っても、彼女(アゼル)にこの状況をひっくり返す事などできないのに。

「私は―――、負けない。
 上条君を信じてる」

 繰り返し、曇りの無い瞳で、アゼルは言った。
 月匣に送り込んだ少年が、必ず戦況をひっくり返すと、『信じている』。

「は?」

 一瞬、パール・クールは忘我した。
 アゼルが何を言ったのか理解できなかった。

『信じている』

 彼女はそういった。
 仮にも魔王が、人間に向って『信じている』。

「あ―――。
 は。アハハハハハハハハハハハハははッッ!!!!!!!!!!!!!」

 嘲笑う。
 腹を抱えて呵呵大笑。
 なんてこと。人間如きに、魔王が、仮にも魔王が。

「あははははは!!!!!!!!
 ねぇ、アンタ。あたしを笑い殺す気!? 最高じゃない、その冗談!!」

 嗤う。哂う。

「―――貴女には、解らない」

 ただ一言。アゼルはそうとだけ告げる。
 曇りなく揺ぎ無く、ただ確信していると。

 その様子に、パールは眦から涙をこぼす。

「あははははは!!! いいわ、最高よ!!
 私の月匣を、たかが人間が踏破できるなんて本気で思ってるんだ!!」

 そして決める。
 その貌を絶望に染めてやると。
 月匣を任せている配下に命じて、上条当麻を必ず殺してやる。
 そしてその死骸を見せ付けてやれば、こいつはどんな表情をするだろう―――?

「あははははははははは!!!!」

 せめて、ソレまでは保ちなさいよ、アゼル・イヴリス。
 哂いながら、パール・クールは侵攻を再開した。


 トンネルを抜けると、其処は雪国だった。

「みぎゃあっ!!」

 まるで猫のような悲鳴をあげて、普通の高校生・上条当麻は雪原にダイブする。
 『じゃあ逝って来い』と、不吉な科白と共に背中に弾けた鋭い痛みは、ハイヒールの踵で蹴られたもの。
 ハイヒールである。しかも踵。
 理不尽な不意討ちに悲鳴をあげて、その上。

「おぶっ!?」

 硬質な地面に顔面を打ち付けて、重なる悲鳴。

「ふ、不幸だ―――」

 顔を抑え、よろよろ。ゆらゆら。と、起き上がる。

「ちょっとっ!! いきなり蹴りくれるとは、余りに乱暴じゃぁございませんことっ!! その辺何か申し開きがあるなら、今すぐ口頭にて報告のこと!!」

 口調錯乱。そして怒鳴る。
 けれど、

「あれ?」

 振り向いた先に加害者たる黒いドレスの女は無く。

 白い。
 雪原のように白い世界が其処にはあった。

「………。え?」

 あくまで白く、果てまで白い世界。
 視覚でわかる。
 リノリウムのような、アスファルトのような硬質の感触が、ソレが雪の色でないことを如実に語っている。
 つい先ほどまで、瓦礫の転がる廃墟に居た筈なのに、コレはいったい如何言うことか。経験は無いが、まるで空間移動でもしたかのようだった。
 上条は自分の右手を見つめる。
 それが異能の力であるのなら、仮令神様の奇跡ですら打ち消す右手。その効果があるのは右手の手首から先だけ。右手以外ならば効果は素通りする。
 しかし例外的に、右手を含む全身に効果を及ぼすような異常は、打ち消される事がある。
 例えば、夏の御使い堕し(全人類の中身の入れ替え)や、神の右席の神罰執行(強制失神)などは、上条当麻に効果を及ぼさなかった。
 存在を喰らう結界に囚われても、無事であったのも右手の力だ。
 だと言うのに、コレはいったい如何言うことか。
 首を傾げながら、上条はぐるりと辺りを見回す。

 どこまでも、何処までも。見渡す限りに白一色。

 単色の世界。地平の境界線は曖昧。
 対象物は無く、広大な空間に、遠近感が狂う。
 奥行きは見て取れぬ。白い壁が目前に迫るような圧迫感。

 鳥肌が立った。

「……う゛ぇ……。キモチワル」


 慣れない光景に、眩暈を覚える。
 悶絶する事、数秒。上条は再び視線を上げた。
 何時までも、悶えているワケには行かない。

―――アイツの力の要は『東方王国旗』。
   問答無用のマジックアイテムなんだから、アンタの右手にかかれば一発でぶっ壊れるわ。

 上条が此処に送り込まれたのは、その『旗』を叩き折るため。
 そのために、アゼルたちは二人で強大な敵に立ち向かっている。一秒たりとも、無駄にして良い時間など無い。

「と、兎も角。この何処かに月匣ってのが在る筈だ―――」

 けれど、見渡す限りに白、白、白。
 地平線は曖昧で、対象物すらない。ただ只管に広大で、無辺な、空白の世界。
 こんな、意味不明な白の中で、


「……―――。一体、何処に行けってんだよォオおおおおおおおおおおおおお!!!」


「うっさい。黙れバカ」

 今度は、革靴(ローファー)で蹴っ飛ばされた。

「まったく。巣から落ちた小鳥じゃあるまいに、ピーピーピーピー鳴いてんじゃ無いわよ」

 理不尽な体罰を執行した張本人を、上条当麻は恨めしげに睨み付ける。

「て、てめぇなぁ……―――」

 紫を基調とした上品な制服の上から、星と太陽をあしらった高山外套を羽織った銀色の少女。
 今夜の騒動の原因その一、大魔王ベール・ゼファー。
 魔王は、軸足に体重を預け佇んでいる。すぐにでも第二撃を放つ準備は万端だ。
 三白眼を半眼にして、上条は言った。

「スカート」
「!?」

 輝明学園の制服は丈が短い。だからといって見えたわけではないが。
 地味な復讐に、今度は、鉄拳が飛んできた。

「いきなり何しやがるコンチクショウ!!」
「………ふん。こんな所で油売ってんじゃないわよ。何が出るか判らないし、時間無いんだから」
「いや、ソレは俺だって判ってんよ。でも、何処に行けってのさ」

 明らかな八つ当たりに、上条はぐるりと首をめぐらせる。
 そこは変わらず、あたり一面の真白。空薄で空虚な、純白の闇。
 そんなもの星の無い夜の海と何が変わろう。導なく寄る辺無い空間で、一体どちらに向えというのだろうか。

 上条だって焦っている。
 ソレを見て、
 魔王は一つ溜息をついた。

「道は、何処にあると思うの?」
「…………?」

 余りに唐突な発言に、上条は首を傾げる。


「ごめん。いきなりそんな哲学っぽい事訊かれても訳判んねー」
「……。はぁ」

 魔王は再び溜息をついて。

「―――まったく、コレが肉のある人間の限界なのかしらね……」
「……肉て」

 生々しい表現に呻く上条を他所に、波打つ銀髪を掻きあげる。

「意思在る所。よ」
「……???」
「『意思あるところに道はある。』
 たとえ未踏の砂漠であろうと、不毛の氷原であろうと。意志を持って進むと決めれば、おのずと道は生まれでる―――。覚えておきなさい―――」

 ベルの黄金の瞳が、真直ぐに上条を捉えた。

「あんたが、アゼルを助けたいと願うのなら、その過程(道)は目的(結果)に、繋がるべくして繋がるもの―――」

 そう、魔王が言い終えると同時、

「!? うおぅわぁ!!?」

 ソレは如何なる業か。あらゆる異能を打ち消す少年は、見えざる手により大地から持ち上がる。
 視界が俯瞰に書き換えられる。鳥ではなく、空中浮遊系能力者でも無い上条が、経験したことも無い鳥瞰の視界。
 鳥瞰に捉える無辺の視界に、輝線が走った。
 果てに向かい真直ぐに引かれる線は、垂直に、そして水平に、一定の法則を伴い縦横無尽に駆巡る。

「嘘だろ。おい」

 『道』が、そこに。

 ファンタジー映画のようなクオリティの現象に、上条はポカンと口を開く。
 呆然とする彼の足元には、ワイヤーフレームで描かれた、万里に架かる長城の偉容。それが、押し上げられた上条当麻の身体を、受け止めていた。


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