キュクロプス(Κυκλωψ;Kyklops、Cyclopes)

額の中央に一つだけの目を持つ巨人

「鍛冶」キュクロプス

創世神話、神々の戦争の神話には彼等は3兄弟で登場し、それぞれの名は以下の通りである。

ブロンテス(Brontes「雷鳴」)
アルゲス(Arges「落雷」)
ステロペス(Steropes「雷光」)

ウラノスガイアの最初の子供だが、彼等の奇怪な姿を嫌ったウラノスにより、
兄に当たるヘカトンケイル兄弟と共に地下世界タルタロスに幽閉されてしまう。

子供達に対する父ウラノスの仕打ちに怒ったガイアは、
ウラノス粛清をティターン神族のクロノスに依頼し、その企みは成功する。
しかし、クロノスによる粛清後もヘカトンケイル・キュクロプスの6兄弟がタルタロスから救出される事は無かった。

その後、「第三世代」に当たるゼウスらとティターン神族の戦い・ティタノマキアが起こる。
戦いは10年間もの膠着に陥り、ゼウスガイアの教えを受けて
ヘカトンケイル・キュクロプスらを地下から解放する。

この戦いにおいてヘカトンケイル・キュクロプスらは神々の武器・防具を創造する。
(ヘファイストスの弟子とされるキュクロプスのみが創造に携わったとも)
ゼウスには「雷鳴と稲妻」を、ポセイドンには「三叉戟・トライデント」を、ハデスには「身隠しの帽子」を贈った。

ヘカトンケイルらと違い、キュクロプスはこの戦いに直接参加した様子は無い。

後にゼウスが雷光でアポロンの息子・アスクレピオス?を殺した際、
報復としてアポロンは弓でキュクロプスらを皆殺しにした。


「牧者」キュクロプス

オデュッセイア』第9巻には、羊の番をするキュクロプスが登場する。
「牧者キュクロプス」は「鍛冶キュクロプス」と違い、残酷な人食いの怪物であり、
「鍛冶」と違いポセイドンの息子とされている。

オデュッセウス一行は旅の途中、ある島にたどり着く。
島には人が住んでいる様子の大きな洞窟があり、食料が沢山あった。しかし、住人はいない。
オデュッセウスは住人に断って食料を分けてもらおうとしたが、住人はなかなか帰ってこない。
空腹もあり、つい食料に手を出してしまったところ、住人であるキュクロプスのポリュペイモスが帰ってきた。
ポリュペイモスは怒り狂ってオデュッセウスの仲間らを捕らえ、食べてしまった。
更に一行の残りも捕らえられた。次の食事である。

1食につき2人づつ仲間が食われていく中、怪物が眠りに付く間を狙ってオデュッセウスらは策を講じた。
そしてポリュペイモスの「夕食」の時に持参したぶどう酒を差し出し、オデュッセウス自身は自分の名前を「ウーティス」と偽って名乗った。
「ウーティス」とは「誰でもない」という意味の言葉である。
そして再びポリュペイモスが眠りにつく。
すかさずオデュッセウス一行はポリュペイモスの体を縛り上げ、目を突き潰してしまった。

狂乱するポリュペイモスは大声で仲間を呼んだ。
どうしたと尋ねるキュクロプス仲間に対し、ポリュペイモスは
「俺にこんな事をしたのは『ウーティス(誰でもない)』!」と答えた。
他のキュクロプスらはポリュペイモスは病気で目を失ったと誤解するだけであった。

命からがら逃げ出したオデュッセウスは、逃げ去る船の上からポリュペイモスを大声で嘲った。
更に自分の名前まで名乗ってしまった。

これが元でオデュッセウスポセイドンの呪いを受け、彼の旅はますます困難なものとなった。


「キュクロプス」という言葉の用例

胎児異常の一つに「単眼症(cyclopia)」という症例がある。
全前脳症(holoprosencephaly)の最重症型で、本来2つあるべき眼窩が1つしか生成されないという症例である。
日本でも10万人に5人の割合で発症するという。
ヒトの場合は死産となるが、動物の場合そのまま成長していくケースもある。


参考

尾形隆之介『通読 ギリシア神話』東京図書出版会
ルネ・マルタン『図説ギリシア・ローマ神話文化事典』原書房
楠見千鶴子『ビジュアル版ギリシア神話物語』講談社

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最終更新:2005年06月16日 16:11