ギガス(Gigas)

複数形ギガンテス(Gigantes)。
野獣のような毛に覆われ、両足には大蛇の鱗を備える巨人の一族。
両足は大蛇そのものだったともいわれる。

神話

ティタン神族のクロノスウラノスの男性器を金剛の鎌で切り取った際、複数の神々が生まれた。
性器そのものからはアプロディテが生まれた。
滴る血液からは復讐の女神の三姉妹エリニュスが生まれた。
そして血液が落ちた大地(=ガイア)から生まれたのがギガスである。

その後、ティタン神族は彼等の子供の世代であるオリュンポス神族との戦いに敗れ、
タルタロスに封じ込められてしまった。

これに激怒したティタン神族の母ガイアゼウスらに主権が移行するのを嫌っていたこともあり、
ギガス達をゼウスらと戦わせた。これが「ギガントマキア」である。


ギガス達は長い槍を持ち、大岩を拾っては投げつけてきた。
更に大木に火を点け松明代わりにし、天空を焼き払わんと突撃してきた。

ガイアはギガス族を更にパワーアップさせるために特殊な薬草を大地に生じさせた。
しかしゼウスは太陽や月、星々(の神々)に命じて世界を闇で包んだ。
こうして薬草はギガス族の手に渡る前にオリュンポスの神々が摘んでしまった。


ゼウスの元にはあらゆる神々が結集し、人間のヘラクレスまでもが味方についた。
更にゼウスは自らの神獣である鷲を飛びかからせ、
ディオニュソス?は葡萄の木を利用して豹や蛇などの害獣をけしかけた。

ギガス族が敗北した後、怒り狂うガイアは更なる刺客・テュポンを向かわせる。

列伝・ギガントマキア

ギガスは総勢14人とも17人とも言われるが、名前が確認できた14人を戦闘の様子と共に列挙する。

①ポルピュリオン(Porphyrion)
 ギガスの頭領。ヘラを強姦しようとした所をゼウスの雷に撃たれ、
 更にヘラクレスの弓矢に射られて殺された。

②アルキュオネウス(Alkyoneus)
 自分が生まれたトラキアのパレネで戦っている限りどんな傷でもたちまち治ってしまうという
 不死身の身体を備えていたが、ヘラクレスに外まで引きずり出されて殺された。
 ギガス族の中で最も大きく、強いという。

③パラス(Pallas)
 翼を備えている。アテナが彼の皮膚を剥いで、その皮から鎧(もしくは盾)を造った。
 これ以後、彼女は「パラス・アテナ」と名乗る。

④ミマス(Mimas)
 ヘファイストスに赤熱する鉄鉱を投げつけられて殺された。

⑤エウリュトス(Eurytos)
 ディオニュソス?の杖・テュルソスに打たれ、殺された。

⑥エピアルテス(Ephialtes)
 ヘラクレスに右目を、アポロ?に左目をそれぞれ射られて殺された。

⑦ヒッポリュトス(Hippolytos)
 ハデスの身隠しの帽子をかぶったヘルメスに急所を突かれて殺された。

⑧ポリュボテス(Polybotes)
 ポセイドンがコス島の大岩を投げつけて抑えつけられた。
 現在は火山のニシュロス島となっている。

⑨エンケラドゥス(Enkelados)
 もはや勝ち目無しと逃げ出したところを、アテナにシチリア島を投げつけられ、海底に沈む。
 現在はベスビオ火山となっている。

⑩エウリュメドーン(Eurymedon)
 名前以外不明。

⑪ロイコス(Rhoikos)
 名前以外不明。

⑫ロイトス(Rhoitos)
 名前以外不明。

⑬オギュゴス(Ogygos)
 名前以外不明。

⑭オピーオーン(Ophion)
 名前以外不明。

現代のギガス

巨人」そのものを意味する英単語「Giant」の語源となっている。
また、多くの神々や英雄の集うギガントマキアの様子は古代から美術作品の主題として好まれた。

参考

尾形隆之介『通読 ギリシア神話』東京図書出版会

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最終更新:2005年06月21日 06:31