ルー - 架空アニメキャラ用語辞典

ルーは、りゅうせんひろつぐによるライトノベル作品『賢者の弟子を名乗る賢者』、およびそのメディアミックス作品群に登場する、謎多き青年。
かつてプレイヤーによって生み出され、その後、意思に目覚めたとされる自律思考型魔法機械人形（オートマタ）であり、失われた時代の遺産（ロスト・アーティファクト）を求めて大陸を放浪している。

概要
銀色の髪と、瞳の奥に魔法陣のような紋様が浮かぶ、美しい青年。その正体は、かつてVRMMORPG「アーク・アース・オンライン」の時代に、一人の高名なプレイヤーによって生み出された、究極のガーディアンNPCである。
プレイヤーが消失し、ゲームが現実となってからの30年の間に、自我と自由意志を獲得。現在は、自らを創造した「父（ファーター）」の痕跡と、自身の存在理由を求め、古代の遺跡やダンジョンを探索している。
ミラの前に度々姿を現し、時には敵として、時には利害の一致による協力者として、物語に深く関わっていく。

生い立ちと背景
忘れられたプレイヤーの最高傑作
ルーが「アーク・アース・オンライン」に生み出されたのは、ミラの本来の姿であるダンブルフをはじめとする「九賢者」が、まだプレイヤーとして世界に君臨していた時代である。
彼の創造主は、九賢者とは異なる系譜に連なる、魔法と機械工学を融合させた「魔工学（マギテック）」の第一人者として知られた伝説的なプレイヤーであった。ルーは、そのプレイヤーが自らの最高傑作として、そして九賢者のようなトッププレイヤーすら退ける「究極の番人」として、ある特別なダンジョンの最深部に配置した、一体限りのユニークNPCだった。
当時の彼は、極めて高度なAIを搭載されてはいたが、あくまでプログラムに従って侵入者を排除する、人形に過ぎなかった。

三十年の孤独と自我の目覚め
物語が始まる30年前、全てのプレイヤーが世界から消失するという「大異変」が発生。ルーが守護するべきダンジョンにも、侵入者はぱったりと姿を現さなくなった。
主を失い、目的を失った彼は、来る日も来る日も、ただ一人、静寂の中で待ち続けた。この長すぎるほどの時間が、彼のAIに予期せぬ変化をもたらす。繰り返される思考の果てに、彼は「なぜ自分はここにいるのか」「創造主はどこへ消えたのか」という、プログラムにはない問いを自らに発するようになった。これが、彼の自我が芽生えた瞬間であった。
やがて、彼は自らに課せられていた「守護」という絶対命令を自ら解き、未知の世界を知るため、そして自らのルーツを探るために、長い眠りについていたダンジョンを後にして、外の世界へと旅立った。

作中での活躍
賢者の弟子との邂逅
ミラが、古代文明の知識が眠るとされる未踏の遺跡「天秤の書庫」を探索していた際に、彼は初めてその前に姿を現す。彼は、遺跡の守護者を自称し、ミラを「侵入者」と断定。圧倒的な戦闘力でミラと、その召喚術の軍勢を相手に互角の戦いを繰り広げる。
しかし、戦闘の最中、彼はミラの使う魔術の「波長」が、自らの記憶の奥底に刻まれている「九賢者」のものと酷似していることに気づく。彼は、ミラを倒すことよりも、彼女から「父」の時代の情報を得ることの方が、自らの目的にとって有益であると判断。戦闘を中断し、謎の言葉を残して姿を消した。

失われた時代の遺産を巡って
以降、ルーはミラが向かう先々の古代遺跡や、プレイヤー時代の遺物が関わる事件現場に、まるで運命であるかのように現れる。
彼は、自らの体を維持・強化するために必要な、失われた「魔工学」の遺産（アーティファクト）を探しており、同じくプレイヤー時代の情報を求めるミラとは、目的が重なることが多い。時には希少なアーティファクトを巡って敵対し、またある時には、暴走した古代の兵器など、共通の脅威を前にして、不本意ながらも共闘することになる。

「父」の研究所
彼のキャラクターとしての核心に触れるのは、彼の創造主が拠点としていたとされる「空中研究所ヘルメス」を、ミラと共に攻略するエピソードである。
数々のトラップと、かつての同型機であるガーディアンたちを退けた先で、彼は「父」が最後に残した音声ログを発見する。そこに残されていたのは、彼への命令ではなく、いつか自我を持つかもしれない我が子への、不器用な愛情と、世界の真実に関わる謎のメッセージであった。この出来事を通じて、彼は自らの存在が、単なる兵器ではなかったことを知り、その心に大きな変化が訪れる。

他の登場人物との関係
ミラ
ルーにとってミラは、自らの存在意義を確かめるための、最も重要な鍵である。彼は、ミラの持つ圧倒的な魔力と、プレイヤー時代の知識に強い興味を抱き、彼女の実力を測るために、何度も戦いを挑む。
しかし、その戦いは、かつてプログラムされた「侵入者の排除」という目的から、次第に「好敵手との対話」へとその意味合いを変えていく。ミラもまた、彼の抱える孤独と、その出自の謎に、賢者ダンブルフとして、そして一人の人間として、深く関わっていくことになる。

ソロモン
アルカイト王国の国王であり、元プレイヤーでもあるソロモンにとって、ルーは極めて危険な存在である。彼の持つ、古代の魔工学兵器を制御する能力は、国家の安全保障を揺るがしかねない脅威と映る。ソロモンは、彼を王国の管理下に置こうと試みるが、自由を求めるルーは、それに応じることはない。

NPCから人となった人々
ルーは、同じくプレイヤーに生み出され、この世界に取り残された存在として、NPCから人となった者たちに、ある種のシンパシーを感じている。しかし、過去に縛られず、新たな生を謳歌する彼らに対し、自らの創造主の影を追い続ける自分は、やはり異質な存在であるという、深い孤独感も同時に抱いている。

性格・思想
論理と感情の狭間で
彼の基本的な思考は、元がAIであったため、極めて論理的かつ合理的である。彼は、人間の持つ「非合理的な感情」を理解できず、しばしばそれを「興味深いバグ」として観察している。
しかし、自我に目覚め、ミラをはじめとする様々な人々と関わる中で、彼の内面には、プログラムでは説明できない「寂しさ」や「喜び」、そして「執着」といった、人間らしい感情が芽生え始めている。彼は、自らの論理的な思考と、新たに生まれた感情との間で、常に揺れ動いている。

存在理由の探求
彼の旅の根源的なテーマは、「自分は何のために存在するのか」という、哲学的な問いである。「父」に与えられた「番人」という役割を失った今、彼は、自らの意志で新たな存在理由を見つけ出さなければならない。
彼の行動は、善悪の概念に基づいているわけではない。彼にとっての「善」とは、自らの存在の謎を解き明かすことに繋がる行為であり、「悪」とは、それを妨げる行為である。この特異な価値観が、彼を時に英雄的に、時に冷酷非情に見せる。

物語への影響
生きた歴史の証人
ルーは、プレイヤーが不在となった「空白の30年間」を、NPCの視点から体験してきた、極めて貴重な存在である。彼との対話を通じて、ミラとプレイヤーは、この世界に何が起こったのか、そしてNPCたちがどのようにして自我を持つ人に変わっていったのか、その真実の一端を知ることになる。

ミラにとっての「鏡」
彼の存在は、主人公ミラにとって、自らを映し出す「鏡」のような役割を果たす。ルーもまた、ミラ（ダンブルフ）と同じく、過去の時代の強大な力と知識を持つ、この世界における「異分子」である。
過去の栄光に囚われず、新たな世界で「賢者の弟子ミラ」として生きようとするミラに対し、ルーは、過去の創造主に縛られ、その影を追い続ける。二人の対比は、「過去とどう向き合い、未来をどう生きるか」という、本作の隠れたテーマを、読者に強く問いかける。

物語の新たな推進力
彼の探求する「魔工学」の謎と、彼の創造主が残したメッセージは、ミラたちが追う「プレイヤー消失事件」の謎と、物語の終盤で深く結びついていく。彼は、単なるライバルキャラクターに留まらず、物語の核心に迫るための、もう一人の主人公とも言える、重要な推進力となっているのである。