エララ - 架空アニメキャラ用語辞典

エララは、りゅうせんひろつぐによるライトノベル作品『賢者の弟子を名乗る賢者』、およびそのメディアミックス作品群に登場する、森と共に生きるエルフに似た長命種族「森の民」の若き賢者。
主人公ミラとは異なる、この世界の理（ことわり）に基づいて自然の力を操る。よそ者、特にプレイヤーの系譜を引く者に対して、強い警戒心を抱いている。

概要
大陸でも有数の広さを誇る「囁きの大森林」の守護者を務める、「森の民」の女性。
苔色の長い髪と、琥珀色の瞳を持ち、その見た目は20代前半の若さだが、種族的な特性から、実年齢は100歳を超えているとされる。
動物や植物と心を通わせ、風や水の流れを読み解く、自然と一体化した特殊な魔術の使い手。プレイヤーが用いるような、派手で強力な魔術とは全く異なる体系の力を持つ。
当初は、ミラが使う強力な召喚術を「自然の理を乱す禁忌の力」とみなし、危険な存在として彼女の前に立ちはだかる。

生い立ちと背景
プレイヤー不在の時代に生まれた賢者
エララが生まれたのは、ダンブルフをはじめとするプレイヤーたちが姿を消した「大異変」から、数十年が経過した後のことである。彼女の属する「森の民」は、かつて「アーク・アース・オンライン」がゲームであった時代には、世界の背景を彩る要素の一つに過ぎなかったが、プレイヤーという絶対的な存在が消えたことで、世界の表舞台に現れた種族の一つ。
彼らは、自然との調和を何よりも重んじ、プレイヤーたちが残した古代文明の遺物や、その強力すぎる魔術を「世界の均衡を崩す災厄の種」として忌み嫌っている。エララは、そんな彼らの思想を色濃く受け継いだ、新世代の賢者である。

「空の民」の伝説
エララたち森の民は、かつて世界に君臨したプレイヤーたちのことを、伝説上の存在「空の民」と呼んでいる。彼らの伝承によれば、「空の民」は、世界を自らの庭のように作り変えるほどの絶大な力を持ちながら、ある日突然、世界への興味を失って姿を消した、気まぐれで身勝手な存在として語られている。
エララは、プレイヤー本人に会ったことはない。彼女にとってのプレイヤーとは、森を汚染し、モンスターを凶暴化させる原因となった「負の遺産」を残した、遠い過去の災厄そのものであった。

囁きの大森林の守護者
彼女は、若くして森の声を聞き、その意思を代弁する能力に目覚め、大森林の守護者としての役割を担うことになった。
彼女の使命は、森の民の集落を守ることだけではない。人間たちの王国の無秩序な拡大や、近年森の奥深くで発生している、動植物が凶暴化する謎の「汚染」から、森そのものの生命（いのち）を守ることにある。

作中での活躍
賢者の弟子との対立
ミラが、希少な錬金術の材料を求めて「囁きの大森林」の奥深くに足を踏み入れた際、エララは初めて彼女の前に姿を現す。
エララは、ミラが使役する召喚獣たちから、ゲームのシステムに由来する「不自然で、歪んだ魔力」を感じ取り、彼女を森を汚染しに来た侵略者と判断。森の木々や獣たちを操り、警告もなしにミラに襲いかかる。
ミラの常識外れの魔術と、エララの自然と一体化した戦術が激突するこの戦いは、プレイヤーが作り上げた「ゲームの理」と、この世界に新たに生まれた「自然の理」との、最初の衝突であった。

共通の敵「汚染」
当初はミラを敵として排除しようとしていたエララだったが、ミラが「汚染」の中心地で、その元凶である「悪魔」と呼ばれる存在と戦っている姿を目撃し、考えを改める。
エララが感じていた森の病の正体と、ミラが追っている敵が、同じ根を持つ存在であることに気づいた二人は、森を守るという共通の目的のため、一時的に休戦し、不本意ながらも協力関係を結ぶことになる。

新たな同盟へ
行動を共にする中で、エララはミラの持つ圧倒的な力が、必ずしも破壊のためだけにあるのではないことを知る。また、ミラが見せる、老成した思考や、世界の行く末を案じる姿に、彼女がただの「空の民」の末裔ではないことを感じ取っていく。
最終的に、彼女は森の民の賢者として、ミラや、彼女が協力するアルカイト王国と、限定的ながらも同盟関係を結ぶことを決断。以降、ミラたちに対して、森の民にしか知り得ない情報や、自然の力を借りた支援を提供する、頼もしい味方となる。

他の登場人物との関係
ミラ
エララにとってミラは、自らが信じてきた世界の理を根底から揺るがす、理解不能な存在である。その可愛らしい見た目とは裏腹に、神のような力を振るい、老人のような口調で語るミラに対し、彼女は強い警戒心と、それ以上に強い好奇心を抱く。
ミラとの出会いは、エララが「空の民」を一括りに災厄と見なす考えを改め、世界の多様性を受け入れるきっかけとなる。

ソロモン
アルカイト王国の国王であるソロモンとは、森の境界線を巡る領土問題などで、以前から緊張関係にあった。エララは、ソロモンの進める開拓政策を「自然への侵略」と見なしており、彼のことを「欲深き人の王」として、全く信用していない。ミラが、そのソロモンと親しい関係にあることも、彼女がミラを警戒する一因であった。

マリアナ
妖精郷の女王であるマリアナとは、同じく自然と共に生きる種族の長として、古い盟約を結んでいる。しかし、よそ者であるミラを積極的に受け入れようとするマリアナに対し、エララは反対の立場を取るなど、その方針を巡っては意見が対立することもある。

性格・思想
「自然との共存」
彼女の行動原理は、全ての生命は、森羅万象を司る巨大な循環の一部であり、その「調和（バランス）」を乱すものは、何者であれ排除されるべき、という、極めて自然本位な思想に基づいている。
彼女は、人間やプレイヤーの文明を、その調和を乱す最も大きな要因と捉えている。そのため、彼女の正義は、必ずしも人間のそれとは一致しない。時には、人間にとっては有益な開拓も、彼女にとっては許しがたい破壊行為と映る。

よそ者への不信感
森の民の閉鎖的な社会で育ったため、よそ者、特に人間に対しては、根深い不信感を抱いている。その態度は、一見すると傲慢にも映るが、それはこれまで何度も人間の身勝手な行動によって、森が傷つけられてきた歴史の裏返しでもある。
彼女の物語は、この不信の壁を乗り越え、異なる価値観を持つ他者と、いかにして信頼関係を築いていくか、という、異文化交流の物語としての側面も持っている。

物語への影響
「世界の新しい住人」の視点
エララというキャラクターは、ミラやソロモンのような「プレイヤーの系譜を引く者」とは全く異なる、「ゲームが現実となった後に生まれた、この世界の原住民」の視点を、物語に導入する重要な役割を担っている。
彼女を通じて、プレイヤーたちが去った後の30年間で、この世界がどのように変化し、独自の文化や生態系を育んできたのかが、具体的に描かれる。彼女の存在は、この物語の世界観に、ゲームの延長線上にはない、生きた現実としての深みを与えている。

ミラに投げかけられた問い
彼女は、主人公ミラに対して、「その強大な力は、この世界の理にとって、本当に歓迎されるべきものなのか？」という、根源的な問いを突きつける存在である。
ゲームのプレイヤーであった頃は、何のためらいもなく使っていた強力な魔法や召喚術が、この現実となった世界では、自然のバランスを崩しかねない危険な力であるという事実を、彼女はミラに、そして読者に突きつける。
エララとの出会いは、ミラが自らの力の意味と、その使い方を、賢者ダンブルフとしてではなく、この世界の一人の住人として、改めて見つめ直す、大きなきっかけとなるのである。