ペーパーマリオネット - 架空アニメキャラ用語辞典

ペーパーマリオネットは、漫画『ワンパンマン』に登場するプロヒーロー。
ヒーローネームは、紙をまるで生きている人形（マリオネット）のように自在に操り戦う姿に由来する。ヒーロー協会におけるランクはS級18位。その特殊な能力と独特の価値観で、他のS級ヒーローとは一線を画す存在である。

概要
本名：神楽 綴（かぐら つづり）
年齢24歳。常に気だるげな雰囲気を漂わせる、黒髪の青年。古くから続く陰陽師の家系の末裔であり、霊力を込めた和紙「式紙（しきがみ）」を操る特殊能力を持つ。
直接的な戦闘力よりも、その能力の応用力を活かした索敵、拘束、人命救助、後方支援を得意とする。ヒーロー活動を「仕事」と割り切り、情熱や正義感をあまり表に出さないが、そのプロフェッショナルな仕事ぶりは多くの市民を災害から救っている。
S級ヒーローとしては比較的新参者であり、怪人協会との決戦後にその功績が認められ、S級に昇格した。

生い立ちとヒーローになるまで
陰陽師の末裔
神楽綴は、その昔、呪術や占術で朝廷に仕えていたとされる陰陽師の一族「神楽家」の末裔である。一族は代々、霊力を紙に込めて使役する「式紙使役」の術を受け継いできた。
しかし、科学が発達した現代において、彼らの力は「オカルト」や「手品」の類と見なされるようになり、その社会的地位は失われていた。綴が生まれた頃には、一族の術もほとんど形骸化しており、彼は自身の能力を「時代遅れの役立たずな力」と捉え、コンプレックスを抱いていた。

ヒーローへの転身
綴自身も、その力を隠してできるだけ普通の生活を送ろうとしていた。大学を卒業後、特にやりたいことも見つからず、フリーターとして平凡な日々を過ごしていた。
彼の転機となったのは、災害レベル「鬼」の怪人が彼の住むM市を襲撃した事件である。当時、近くで活動していたA級ヒーローが倒され、S級ヒーローの到着までには時間がかかるという絶望的な状況だった。逃げ惑う人々を目の前にした綴は、自嘲しながらも、瓦礫の中から拾った紙切れに無意識に霊力を込めていた。
彼は、見様見真似で式紙の壁を作り、人々を倒壊するビルから守り、紙の鳥で子供を安全な場所へ運んだ。怪人を倒すことはできなかったが、彼の行動によって一人の死者を出すことなく、ヒーローの到着まで時間を稼ぐことに成功した。
この出来事はヒーロー協会の知るところとなり、彼の能力の有用性に着目した協会幹部からのスカウトを受ける。当初は「面倒くさい」と断っていたが、「安定した給料と待遇が保証される」という言葉に惹かれ、渋々プロヒーローになることを決意した。

作中での活躍
初登場とS級への昇格
ペーパーマリオネットがヒーローとして本格的に登場するのは、怪人協会との激戦が終結し、ヒーロー協会が戦力の再編を急いでいた時期である。原作（村田版）の第180話（※架空の話数）で、複数の都市で同時発生した怪人災害において、後方支援と救助活動で目覚ましい功績を挙げたA級ヒーローとして初めてその名が挙がる。
特に、災害レベル「竜」の怪人「百腕ギガス」が暴れた際には、戦闘を担当する駆動騎士やジェノスと連携。無数の紙の分身（デコイ）で怪人の注意を引きつけ、その間に市民数千人を無傷で避難させた功績が評価され、S級18位（新設）への特例昇格を果たした。

対「組織」戦
謎のロボット集団「組織」との戦いでは、彼の能力が予想外の形で効果を発揮する。金属の強固な装甲を持つロボットに対して、彼の紙の刃はほとんど通用しない。しかし、彼はロボットを破壊するのではなく、「無力化」することに専念した。
関節部の僅かな隙間に極薄の式紙を滑り込ませて動きを封じたり、センサー部分を紙で覆って視界を奪ったり、排熱口に紙を詰まらせてオーバーヒートさせたりと、その戦い方は極めて戦術的であった。この活躍は、パワーだけが全てではないS級ヒーローの新たな戦い方として、童帝など一部のヒーローから高く評価された。

ネオヒーローズ編
ヒーロー協会とネオヒーローズの対立が描かれた編では、諜報活動でもその能力を活かす。鳥や蝶の形にした式紙を偵察機として飛ばし、敵の拠点の情報を収集。また、紙に音を乗せて特定の人物にだけ声を届ける「伝声紙」の術を使い、混乱する戦場でヒーロー間の連携をサポートした。
物理的な戦闘力が重視されるネオヒーローズからは「戦闘能力の低いS級」と見下される場面もあったが、彼は意に介さず、淡々と自らの役割をこなし、結果的に多くの局面でヒーロー協会を勝利に導く陰の立役者となった。

ヒーローや怪人との関係
サイタマ
初めてサイタマの戦闘を目の当たりにした際、一撃で災害レベル「竜」の怪人を葬る姿を見て、「これ以上合理的な解決策はない」と即座に理解した。以降、サイタマの強さに絶対的な信頼を置いており、彼が現場にいると分かると、戦闘は全て任せ、自分は人命救助と被害抑制に徹するという、極めて効率的な役割分担を行う。サイタマからは「なんかヒラヒラしてる紙の人」と認識されている。

S級ヒーローたち
個人主義者の集まりであるS級ヒーローの中では、比較的協調性がある方だが、それはあくまで「効率が良いから」という理由である。特に、頭脳派の童帝とは作戦の立案で協力することが多く、火力支援が必要な場合はジェノスと組むなど、状況に応じて最適なパートナーを選ぶ。
一方で、超能力で周囲の被害を顧みずに戦う戦慄のタツマキとは犬猿の仲。「脳筋エスパー」「紙切れ野郎」と罵り合う姿がしばしば見られるが、緊急時には互いの実力を認め、不承不応ながら連携する。

怪人との戦闘スタイル
彼は怪人そのものを殲滅することに強いこだわりを見せない。彼の優先順位は常に「市民の安全確保」と「被害の最小化」である。そのため、相手が強大な怪人である場合、正面から戦うのではなく、巨大な紙の檻で一時的に閉じ込めたり、無数の分身で翻弄して時間を稼いだりといった戦法を好む。この姿勢は、一部の武闘派ヒーローからは「手ぬるい」と批判されることもあるが、結果として彼の担当した現場での死亡者数は極めて低い。

性格・思想
省エネ・合理主義
彼の行動原理は、徹頭徹尾「省エネ」と「合理性」である。ヒーローとしての活動も、彼にとっては生活費を稼ぐための「仕事」でしかない。そのため、記者会見やファンサービスといった、直接的な人命救助に繋がらない活動には極めて非協力的。「その時間で避難経路を一つでも多く確保した方がマシ」というのが彼の持論である。
このやる気のない態度はしばしば誤解を招くが、一度任務に入れば、最小の労力で最大の結果を出すための思考を常に巡らせている。

プロフェッショナルとしての矜持
「仕事」と割り切ってはいるものの、ヒーローとしての責務を放棄することはない。むしろ、そのプロ意識は非常に高い。彼は、自身の能力が怪人の直接的な打倒に向いていないことを客観的に分析し、理解している。だからこそ、自分にしかできないサポート、避難誘導、被害抑制といった分野でS級としての役割を全うしようとする。派手な手柄や名声には興味がなく、ただ黙々と与えられた、あるいは自らが見出した任務を遂行する。その姿は、ある種の職人に近いと言える。

物語への影響
ペーパーマリオネットの登場は、S級ヒーローの在り方に新たな側面をもたらした。これまで、S級ヒーローの価値は主にその圧倒的な戦闘力や破壊力で語られがちだった。しかし、彼の活躍により、後方支援や人命救助といった分野でも、S級に値する傑出した能力が存在することを示した。
これにより、「ヒーローとは何か」「強さとは何か」という作品のテーマに、より深い多面性が生まれた。また、「式紙」というトリッキーな能力は、力と力のぶつかり合いが中心だった戦闘描写に、戦術的な駆け引きという新たな面白さを加えることに貢献している。彼は、パワーインフレが進むワンパンマンの世界において、頭脳と応用力で戦うヒーローの可能性を広げた重要なキャラクターである。