ガストン - 架空アニメキャラ用語辞典

ガストンは、ニンテンドーDS用ゲームソフト『牧場物語 風のグランドバザール』に登場する、町の外れに一人で暮らす、伝説の風車職人。
ゲームがある程度進行すると出会うことができる、隠しキャラクターの一人である。

概要
そよ風の町の象徴である、数多くの風車を一代で作り上げたとされる伝説の職人。65歳。
白く豊かな髭をたくわえた、頑健な体つきの老人。ぶっきらぼうで、人と関わることを嫌う頑固者だが、その内面には町への深い愛情と、自らの仕事に対する強い誇りを秘めている。
かつては町の中心人物であったが、ある出来事をきっかけに一線を退き、現在は町の丘の上にある工房で、半ば隠居するようにひっそりと暮らしている。
彼との交流は、主人公の牧場をさらに発展させるための、重要な鍵となる。

人物・来歴
風車職人の家系
ガストンの家は、そよ風の町の歴史と共に歩んできた、代々続く風車職人の家系である。風の力を利用して生活を営むこの町にとって、風車は町の心臓部であり、それを作り、維持するガストンの家は、町の人々から常に尊敬を集めてきた。
彼自身も、若い頃からその才能を発揮し、先代であった父親を超えるほどの腕を持つ職人として、町の発展に大きく貢献した。現在、町に立ち並ぶ美しい風車のほとんどは、彼が若い頃に手がけたものである。

バザールの黄金期と、彼の誇り
彼が職人として最も脂が乗っていた時期は、そよ風の町のバザールが「大陸一」と呼ばれ、最も活気に満ちていた黄金期と重なる。世界中から集まる人々、珍しい品々、そして子供たちの笑い声。その全ての中心で、町の動力源として力強く回り続ける自らの風車を眺めることが、彼の何よりの誇りであり、生き甲斐であった。
彼は、自らの仕事を「ただの物作り」ではなく、「町の未来を作ること」だと信じていた。

風が止んだ日、そして孤独
しかし、十数年前、そよ風の町を原因不明の「無風」の時期が襲う。町の生命線であった風が弱まり、風車がその力を失ったことで、バザールの活気は急速に失われていった。人々は町を去り、あれほど賑やかだったバザールは、見る影もなく寂れてしまった。
ガストンは、自らの技術の限界を痛感し、無力感に苛まれた。「自分の作った風車では、町を守れなかった」。強い責任感と、自らの仕事への誇りを打ち砕かれた彼は、心を閉ざしてしまう。
以来、彼は誰とも顔を合わせるように、丘の上の工房に引きこもり、町の住民たちとも疎遠になってしまった。彼が頑固で気難しい老人になったのは、この深い失意が原因である。

ゲーム内での役割
出会いの条件
ガストンは、ゲーム開始直後には会うことができない。彼と出会うためには、バザールの規模をランク4以上に発展させ、町の復興が軌道に乗っている必要がある。
条件を満たすと、町長のフェリックスから「町の大きな風車を修理したいのだが、一人の頑固な老職人がどうしても首を縦に振ってくれない」という相談を受ける。これが、ガストンと出会うためのきっかけとなるイベントである。

頑固な隠居職人
フェリックスの紹介で工房を訪ねても、ガストンは「今さら風車を直したところで、昔の賑わいが戻るもんか」「若造の遊びに付き合う気はない」と、主人公を冷たく追い返す。
彼の心を開くためには、言葉ではなく、行動で示す必要がある。彼が必要とする高品質な資材（「かたい木材」や「オリハルコン」など）を届けたり、バザールで高い売上を記録したりと、主人公が本気で町の復興を目指していることを、何度も証明しなくてはならない。

マスタークラフトマンの技
主人公のひたむきな努力が認められ、一度彼が心を開くと、これ以上ないほど頼もしい協力者となってくれる。彼は、自宅の工房で、他の店では不可能な、特別な仕事を引き受けてくれるようになる。

道具の限界突破改造： 町の店でできる改造の、さらに上の段階まで農具を鍛え上げてくれる。彼の改造した道具は、性能が飛躍的に向上する。

「メーカー」の製作： 「タネメーカー」や「ヨーグルトメーカー」「毛糸メーカー」といった、牧場の生産性を大きく向上させる特別な機械（メーカー）を、貴重な素材と引き換えに製作してくれる。これらは、牧場経営を極める上では不可欠な設備である。

他の住民との関係
主人公
当初は、町の過去も知らない若造として、懐疑的な目で見ていた。しかし、利益度外視で町の復興に尽力する主人公の姿に、かつての自分自身の情熱を重ね合わせ、次第に心を動かされていく。
最終的には、主人公のことを「わしの後継者」とまでは言わないものの、自らの技術と町の未来を託すに値する、信頼できる若者として認めるようになる。主人公にとっては、厳しくも温かい、祖父のような存在となる。

フェリックス
ガストンにとっては、数少ない幼馴染であり、親友。町が寂れていく中で、お互いの無力さを分かち合い、そして袂を分かってしまった過去がある。フェリックスは、ガストンが引きこもってしまったことに責任を感じており、ずっと気にかけていた。主人公の登場は、この二人の老人の、長年にわたる心のわだかまりを解かすきっかけともなる。

町の若い世代
ディルカやエンジュといった若い世代にとっては、「丘の上に住む、気難しいおじいさん」という以上の認識はなかった。しかし、彼が再び町の行事などに顔を出すようになると、彼が作った風車の素晴らしさや、町の歴史について知ることになる。ガストンの存在は、町の若い世代が、自分たちの町のルーツと誇りを再発見する上で、重要な役割を果たす。

性格・思想
職人としての矜持
彼の根幹をなすのは、「本物の仕事」に対する、一切の妥協を許さない職人としての矜持である。彼は、手抜きやごまかしを何よりも嫌い、素材の声を聞き、道具を大切に扱うことを信条としている。その厳しさは、他人だけでなく、自分自身にも向けられている。彼が引きこもったのも、自らの仕事が「本物」ではなかったのではないか、という自己への失望からであった。

町への不器用な愛情
ぶっきらぼうな言葉とは裏腹に、彼の町への愛情は誰よりも深い。彼は、賑やかだった頃の町の風景、人々の笑い声を、決して忘れてはいない。彼が頑なだったのは、中途半半端な復興で、その美しい思い出が汚されることを恐れていたからでもある。
彼の願いはただ一つ、かつてのように、風車が力強く回り、その下で人々が心から笑い合えるバザールが戻ってくること。ただ、その想いを素直に口に出せない、不器用な老人なのである。

物語への影響
町の過去と未来を繋ぐ存在
ガストンは、そよ風の町の「古き良き時代」を知る、生き証人である。彼の物語に触れることで、プレイヤーは、自分が行っている町の復興が、ただお金を稼ぐだけでなく、この町の失われた誇りと歴史を取り戻すための、尊い営みであることを実感する。彼は、町の過去と、主人公が作る未来とを繋ぐ、物語の縦軸を担う重要なキャラクターである。

ゲーム後半のキーパーソン
彼の存在と、彼が提供してくれる高度なクラフト機能は、ゲームの後半における牧場発展の鍵となっている。彼の心を開くことができるかどうかは、プレイヤーが一流の牧場主になれるかどうかの、一つの大きな試金石と言えるだろう。
彼の頑固な心が、主人公のひたむきな努力によって雪解けのように溶けていく過程は、そよ風の町のバザールが、人々の心をも動かす本物の賑わいを取り戻していく物語と、見事に重なり合っている。